渋谷と横浜を結んでいて、途中に利用の多い駅もある東急東横線。その東横線ではどのようなダイヤパターンで運転されているのでしょうか。簡単な運転パターンをまとめました。

写真1. 東横線には地下鉄の車両も恒常的に入る(中目黒)
重要2023年3月29日に相鉄直通ダイヤに記述を更新いたしました。
復習:ダイヤパターンとは
具体的なダイヤパターンを紹介する前に、ダイヤパターンの基本概念について紹介しましょう。
多くの路線では鉄道ダイヤを作成する際に、基本的なパターンを形成しています。例えば、20分間隔で快速1本、各駅停車が2本が運転されている場合は、20分サイクルのパターンダイヤと呼びます。サイクルとは、列車の運転順序が1回りする時間を示します。例で示した路線の場合は、20分サイクルと呼びます。本記事ではこのような路線の場合、「20分サイクルで快速が1本、各駅停車が2本」というように呼ぶことにします。
多くの路線では、1サイクルを60の約数(何サイクルかすれば60分になる)としています。そうすると、毎時の発車時間が一定になります。
多くの路線では1サイクルに何本かの速達列車と各駅停車を混ぜています。(快速が各駅に停車する場合も含めて)各駅停車は平均10分に1本以上運転するようにしている路線が多いです。これは、どの駅でも10分程度待てば次の電車がやってくることを実現させるためです。
また、1サイクルの間に細かな繰り返しがあるパターンがあります。例えば、20分サイクルで快速2本、各駅停車2本が運転されていて、都心側は快速、各駅停車双方が10分間隔で運転されていて、郊外側で枝分かれするパターンです。この場合は厳密には20分サイクルですが、都心側のダイヤを論じる場合は10分サイクルと考えても差し支えはありません。このような、1サイクルの中で小さな繰り返しがある場合は疑似サイクルと呼ぶことにします。今回の例では、「疑似10分サイクルの中で快速1本、各駅停車1本が運転されている」と呼ぶという具合です。
ダイヤの実態は路線によって異なりますので、疑似サイクルの表記の方法については、適宜対応することにします。
都心側の発着駅について
東急東横線は都心側では地下鉄副都心線と直通運転しており、副都心線から先は東武東上線や西武線にも直通しています。本来であれば、副都心線側の行き先も考えるべきでしょうが、東横線からの利用者の多くは池袋までの利用でしょう。そのため、本記事では池袋以北の発着駅については考慮しないことにします(和光市、石神井公園、小手指などの違いは問わないということです)。
東急東横線の停車駅
東急電鉄が公式に発表している路線図を示します。赤い路線が東急東横線です。

図1. 東急の路線図(公式サイトから引用)
S-trainは休日にわずかに運転されているだけですので、本記事では省略します。特急、通勤特急、急行、各駅停車が有機的に結合し、芸術的なダイヤを形成しています。
各種別の有機的な結合については、以下の章で記すことにします。
東急東横線の朝ラッシュ時上りのダイヤ
15分サイクルのパターンダイヤであり、1サイクル当たりの内訳は以下の通りです。
- 通勤特急:元町・中華街→副都心線1本(副都心線内通勤急行)
- 急行:元町・中華街→副都心線(副都心線内通勤急行)1本、湘南台→副都心線1本
- 各駅停車:元町・中華街→副都心線3本(ただし副都心線内の行先は15分サイクルではない)
基本的に速達列車と各駅停車が1:1で運転されます。速達列車の順序は元町・中華街始発の急行→通勤特急→相鉄直通急行です。渋谷断面では5分間隔で運転されます。その速達列車の間に各駅停車が挿入されれます。速達列車は菊名、自由が丘と祐天寺で各駅停車を追い抜きます。横浜から渋谷までは急行で38分、通勤特急で37分です。都心に近い自由が丘と祐天寺で2回も追い抜いて速達列車と各駅停車に利用状況で大きな差が出ることが懸念されますが、2023年ダイヤ改正で10両編成の速達列車が5分間隔で運転されるようになったから大きな問題ではないと踏んだのかな?
下の章で述べた菊名始発各駅停車から新横浜方面からの急行に振り替えというのが、当たったのがうれしく思いました。ただし、相鉄直通電車というのは予想を外していますが…。
過去2023年ダイヤ改正までは以下のパターンでした。
15分サイクルのパターンダイヤです。1サイクルに通勤特急1本、急行1本と各駅停車4本が運転されています。1時間に24本の運転です。
いいかたを変えると、15分間隔の通勤特急の間に、各駅停車4本と急行1本が運転されています。通勤特急と急行は渋谷から先の副都心線内は通勤急行として運転します。
通勤特急、急行いずれも横浜から渋谷まで先着し、菊名、元住吉、自由が丘で先行の各駅停車を追い抜きます(ただし急行は元住吉では各駅停車を抜きません)。祐天寺に待避設備はありますが、ラッシュピーク時には使われません。自由が丘から渋谷まで各駅停車が先着しないと、利用に差が生じすぎるためです。いずれも元町・中華街始発で副都心線内は池袋の先まで直通します。
4本ある各駅停車のうち、3本は元町・中華街始発です。残りの1本は菊名始発です。おおむね菊名始発は池袋行き、元町・中華街始発のうち2本は池袋以遠直通、1本は渋谷行きです。ラッシュ時は新宿三丁目行きはありません。
所要時間は通勤特急の横浜→渋谷で38分(急行でも同等の所要時間)、横浜→新宿三丁目で46分前後(急行でも同等の所要時間)となっています。
うちに新横浜直通が始まります。速達列車2本+各駅停車4本とはバランスが悪いです。そうであれば、菊名始発の各駅停車を急行に振り替え、その列車を新横浜直通とすれば良いでしょう。各駅停車から急行に振り替えることで、8両編成を10両編成に増強できるメリットもあります。通勤特急としても良いでしょうが、所要時間に差がなければその分停車駅を増やしたほうが、各駅停車からシフトするショックは小さく済みます。

写真2. ラッシュ時の様子(中目黒)
東急東横線の昼間(日中時間帯)のダイヤパターン
30分サイクルのパターンダイヤです(直通先も含めれば60分サイクルですが、副都心線池袋以南では30分サイクルです)。
1サイクル当たりの内訳は以下の通りです。
- 特急:副都心線-元町・中華街2本(15分間隔、副都心線内急行)
- 急行:副都心線-元町・中華街1本、渋谷-元町・中華街1本、副都心線-湘南台1本
- 各駅停車:副都心線(池袋以北)-元町・中華街2本、池袋-元町・中華街1本、渋谷-元町・中華街1本
長く続いた、急行の15分間隔が放棄されています(特急の15分間隔は維持されていますが)。また、2013年3月の副都心線直通以来、久しぶりとなる渋谷発着急行も復活しました。これは、相鉄直通直通急行を運転するために(東横線を走破する)急行の半数を特急の直後(上りは直前)に変更したためです。
基本的に速達列車は自由が丘と菊名で各駅停車を追い抜きますが、以下の列車は自由が丘で各駅停車を追い抜きません。
- 下りの渋谷始発急行(上りの急行渋谷行きは自由が丘で追い抜く)
- 相鉄直通急行
相鉄直通急行は挿入されたようなものであり、各駅停車を抜かさないのは何となく理解できます。しかし、下りの渋谷始発急行が自由が丘で各駅停車を追い抜かさず、スピードダウンを強いられているのは一見納得できません。しかし、当該の急行を後に発車させるとすると、直前の各駅停車を渋谷始発に変更し、当該の急行を副都心線直通に変更せざるを得ません。これは上りと種別・運転区間と組み合わせを変えることとなり、合理的ではありません。
運用を合理的にするのではあれば、相鉄直通急行を渋谷発着に変更し、他の急行を副都心線直通に統一することです。しかし、相鉄の戦略的にこれはなかったのでしょう。そうであれば、現在のダイヤにするしかありません。副都心線のダイヤも調整し、このあたりはスマートに調整してもらいたいものです。
過去2023年ダイヤ改正以前は以下のパターンでした。
副都心線(小竹向原以南)を含めると30分サイクルです。ただし、渋谷-横浜の東横線に限れば、15分サイクルとみなすことができます。
1サイクル(15分)当たりの内訳は以下の通りです。
- 特急:1本(副都心線直通)
- 急行:1本(副都心線直通)
- 各駅停車:2本(30分間隔で渋谷始発)
特急と急行という速達列車と各駅停車が1:1という美しいパターンです。その美しい比率で速達→各駅停車と交互に発車します。
速達列車は自由が丘と菊名で各駅停車を追い抜きます。このようにどちらの速達列車を選んでも接続パターンは一致(ただし東新宿で東横線内特急が東横線内急行を追い抜く)しています。このため、とても利用しやすいダイヤです。
渋谷での各駅停車の発車タイミングは、以下の通りです。
- 特急の直後(上りの到着タイミングは直前)
※この各駅停車は副都心線の池袋始発か、渋谷始発です。この両者が混在するために副都心線を含めると30分サイクルです。 - 急行の発車5分後(上りの到着タイミングは6分前)
※この各駅停車は副都心線直通
副都心線の発着駅は多岐に渡っていますが、池袋までの利用であれば、副都心線の発着駅を考慮する必要もなく、単純で利用しやすいダイヤです。
22年ダイヤ改正以前
厳密には30分サイクルのパターンダイヤです。1サイクルに特急2本、急行2本、各駅停車5本が運転されています。特急、急行はそれぞれ15分間隔で運転され、渋谷-横浜(そして元町・中華街)まで先着します。特急は地下鉄副都心線内は急行として運転し、池袋・新宿三丁目・渋谷-横浜方面の速達列車として君臨しています。
30分に5本運転されている各駅停車のうち、1本は池袋-菊名の運転です。そのほかの4本の内訳は渋谷-元町・中華街が2本、副都心線-元町・中華街が2本で、いずれも15分間隔で運転されています。別の言いかたをすると、15分間隔で渋谷-元町・中華街が1本、副都心線-元町・中華街が1本運転され、さらに30分間隔で池袋-菊名が加わるということです。
基本的に各駅停車は自由が丘と菊名で急行や特急に抜かされます。ただし、池袋-菊名の各駅停車は自由が丘では追い越されずに、元住吉で特急の通過待ちをします。つまり、池袋-菊名の各駅停車は渋谷(どころか池袋)から武蔵小杉まで先着するのです。
各駅停車の渋谷での待ち合わせはありません。特急のすぐ直後に渋谷を発車する(特急の直前に渋谷に到着する)各駅停車は渋谷発着なので、ここで待ち合わせる必要はないのです。各駅停車渋谷行きは下りホームに着くので、特急(渋谷から急行)に乗りかえる人は中目黒で乗りかえたほうがラクです。乗りかえの便利さを追求するのであれば、当該の各駅停車を新宿三丁目まで延長するのがスジですが、副都心線の増発をためらった結果です。
特急の所要時間は渋谷-横浜で27分(急行は31分)、新宿三丁目-横浜で34分(急行は40分)です。池袋から横浜までの先着列車は特急しかありません。とはいえ、池袋から武蔵小杉までの先着列車は30分に2本存在します。
うちに新横浜直通が始まります。池袋-菊名の各駅停車は利用客が少ないという調査結果もあります。そうであれば、この各駅停車を急行や特急に振り替えて、行先を菊名から新横浜にシフトさせれば良いでしょう。新横浜から相鉄線に直通させることも手ですが、相鉄線からはJR線直通で渋谷や新宿に向かうことができます。そうであれば、あえて相鉄直通にする必要はありません。
東急東横線の夕方のダイヤパターン
夕方ラッシュ時は30分サイクルで運転され、以下の構成です。
- 通勤特急:副都心線-元町・中華街2本(15分間隔)
- 急行:副都心線-湘南台2本(15分間隔)、副都心線-元町・中華街1本、渋谷-元町・中華街1本(合わせて15分間隔)
- 各駅停車:副都心線-元町・中華街3本、渋谷-元町・中華街1本
15分間隔の通勤特急の間に急行2本(元町・中華街行きと湘南台行きが1本ずつ)、各駅停車2本が運転されます。30分当たりに急行が4本運転されますが、このうち1本が渋谷始発です。そのほかの3本が副都心線直通です。「渋谷始発か否かを無視すれば、15分サイクル!」のように見えますが、それほど単純ではありません。各駅停車の出発順が異なるのです。
渋谷始発急行がある場合は以下の発車順序です。
(A) 通勤特急→渋谷始発東横急行→各駅停車→相鉄直通急行→各駅停車→通勤特急
一方、東横線急行が副都心線直通の場合は以下の発車順序です。
(B) 通勤特急→各駅停車→東横急行→各駅停車→相鉄直通急行→各駅停車→通勤特急
ただし、19時以降は全て(B)パターンの順序で運転されます。通勤特急の直後に急行が発車する場合は、当該の急行は自由が丘で各駅停車を待たず、相鉄直通急行も同様のほかは、自由が丘と菊名で各駅停車を追い抜きます。
過去15分サイクルのパターンダイヤです。1サイクルに通勤特急と急行が各1本、各駅停車が3本運転されています。
別のいいかたをすると、15分間隔で運転される通勤特急の間に急行が1本運転され、各駅停車が3本運転されます。
通勤特急は副都心線内は通勤急行として運転されます。そのほかは副都心線内は各駅停車です。朝の東横線内急行→副都心線内通勤急行となっていますが、夕方はそうではないということです。
通勤特急と急行は池袋以遠→元町・中華街の運転です。3本の各駅停車のうち1本は渋谷→菊名の運転、1本は新宿三丁目(か池袋以遠)→元町・中華街の運転、そして池袋以遠→元町・中華街が1本となっています。基本的に各駅停車は自由が丘と菊名で速達列車に抜かされますが、菊名行きはこれらの駅での待ち合わせはありません。かわりに元住吉で通勤特急に抜かされます。
渋谷の発車順序は通勤特急→各駅停車→急行→各駅停車→各駅停車→通勤特急、です。通勤特急の2本前の各駅停車が元住吉で抜かされる各駅停車です。
通勤特急の所要時間は渋谷→横浜が30分(急行だと34分)、新宿三丁目→横浜が36分(急行だと42分)となっています。
そのうちに、新横浜直通が始まります。その際は、15分間隔で運転されている各駅停車菊名行きを通勤特急(か急行)新横浜行きに振り替えると良いでしょう。各駅停車のみ停車駅の減便によるショックを小さくするのであれば、急行への振り替えが得策ですし、速達性向上が目的であれば通勤特急への振り替えが得策です。速達列車に振り替えることで8両編成から10両編成に増強できますので、新横浜や相鉄線直結による乗客数増加にも対応できます。

写真3. 夕方の様子
東急東横線のダイヤパターンまとめ
昔の東急東横線は各駅停車が主体の路線でした。その転機が訪れたのは、2001年の特急設定です。このときに日中時間帯の各駅停車を毎時2本削減し、特急を毎時4本増発しました。その後、副都心線との全面的な直通運転開始で、23区の北西部や埼玉県から横浜までの首都圏の南北軸としての役割も与えられました。そのような流れで速達列車と各駅停車が有機的に結合するダイヤに変貌しました。
新横浜やその先の相鉄にも直通しました。あまたある直通先を生かし、首都圏の南北軸の1つとして今後も重要な役割を担うことでしょう。
コメント
昼間のダイヤですが、副都心線内の東新宿で、各駅停車(東横線内急行)が、急行(東横線内特急)に抜かされること(池袋-横浜の有効列車が15分毎にしかないこと)にも触れたほうがいいと思います。
南町田さま、コメントありがとうございます。ご指摘の件ですが、池袋視点から加筆いたしました。このたびは貴重なご指摘ありがとうございました。