ゆとりーとラインに乗る(18年秋)

バスは道路を走るもの、鉄道は線路を走るもの、多くの人はそのように信じて疑わないことでしょう。しかし、名古屋には軌道嬢を走るバスがあります。いわば線路を走るバスです。その特殊な乗りものに乗ってみました。


ゆとりーとラインの概要の復習

まずは、ゆとりーとラインの概要です。

ゆとりーとラインの概要
・区間(軌道区間のみ):大曽根-小幡緑地
・距離:6.5km
・形態:ガイドウェイバス

また、地図も示します(図1)。

図1. ゆとりーとラインの走行経路

もともと名古屋市北部は鉄道の密度が低い(JR中央線と名鉄瀬戸線の空白地帯)ため、自動車交通に頼っていた部分があります。そのため、道路渋滞が激しく、大曽根駅-小幡緑地までラッシュ時は1時間もかかっていました。これを解消するために、近くの大規模な駅、大曽根と渋滞の終点である小幡緑地を軌道で結ぼうとしたものです。その形態として、「普通の鉄道」でもなく、「バス専用道」でもなく、「ガイドウェイバス」を選んだことが興味深いです。

実際はどのような姿なのでしょう。2018年の秋の休日(=何もイベントがない日)に訪問してみました。

大曽根から小幡緑地までの乗車

写真1. 大曽根駅前にそびえ立つゆとりーとラインの高架橋

大曽根駅前を歩くと、ゆとりーとラインの高架橋がそびえ立っています(写真1)。

写真2. ゆとりーとラインの大曽根駅

その高架橋を目で追うと、ゆとりーとラインの駅が姿を現します(写真2)。駅に入ってみましょう。

写真3. いかにも鉄道的な時刻表

時刻表を見ますと、いかにも鉄道的な感じです(写真3)。まるで駅ですね。

写真4. バス車両が入ってきた

そのような「駅」に入ってきたのは、いかにもバスの車両です。

写真5. 大曽根どまりのバス

反対側のホームに着いたのは、大曽根駅どまりのバスです(写真5)。大曽根から都心側に向かうには、JR、地下鉄、名鉄のどれかに乗る必要があります。

写真6. 中志段味行きがやってきた

写真7. 中志段味行きの日野車

ゆとりーとラインの多くの便は小幡緑地で終わらずに、その先に向かいます。今回乗車する便は中志段味まで向かいます(写真6-7)。小幡緑地の先から中志段味までは通常の道路を走るバスです。

写真8. ゆとりーとラインの路線図

車に乗った私は前よりに陣取ります。ゆとりーとラインの路線図を撮影できました(写真8)。

写真9. 住宅街を走る

ゆとりーとラインができる前から住宅街だったようすの地区を走ります(写真9)。乗っているだけではわかりませんが、ゆとりーとラインは既存の道路上に建設されています。

写真10. 矢田川を渡る

矢田川を渡ります(写真10)。昔から発展した都市には川がつきものです。

写真11. 名鉄瀬戸線を乗り越える

名鉄瀬戸線を越えます。ゆとりーとライン開業前に名鉄瀬戸線を利用していた人の一部は、ゆとりーとラインにシフトしたことでしょう。ただし、名鉄のほうが都心(栄地区)直結という強みがあるため、シフトは大規模に生じたことはありません。2001年3月に開業していますが、その前年の2000年と2008年の輸送量は29612人と29442人と、170人しか変化していません。

写真12. 対向車とすれ違う

対向車とすれ違います(写真12)。いかにもバスという風情ですね。

写真13. 白沢渓谷に向かって標高を上げる

途中、白沢渓谷に向かって標高をあげます(写真13)。

写真14. 小幡緑地を出ると軌道から道路に

小幡緑地を出ると、軌道から道路上に移行します。そこが軌道と道路の境界です。

写真15. ガイドウェイを装着!

小幡緑地以遠の道路交通に興味はないので、(軌道/道路境界点を超えて1つ目の停留所)竜泉寺口で降りることにしました。竜泉寺口でバスの車体下側を撮影しました(写真15)。ガイドウェイを装着していますね。これが一般的なバスとの唯一かつ最大の違いです。

帰りは同じルートで大曽根駅まで向かいましたが、バスはほぼ満席でした。これは休日の午前中ということもあるでしょうが、それなりに利用が定着していることも示す結果でしょう。

ガイドウェイバスを選択した理由

さて、帰りの車内の中でガイドウェイバスを選択した理由が気になりました。そのため、私が無い知恵を絞って考えてみました。ガイドウェイバスを選択した理由として、以下の2点が説明できれば良いでしょう。

・なぜ普通鉄道やモノレールにしなかったのか
・なぜバス専用道にしなかったのか

普通鉄道やモノレールにしなかった理由

普通鉄道の(物理的な)弱点は勾配に弱いことです。その1点の理由で、ゆとりーとラインに普通鉄道が採用されない理由は説明できます。白沢渓谷付近には急な勾配が存在します。普通鉄道では、この勾配に太刀打ちできません。

一方、モノレールを採用すれば、このような問題点は発生しません。モノレールは勾配に強いのです。しかし、モノレールは輸送単位が大きくないと採算が合いません。現に、利用が「それなりに」ある程度でしかないのです。それならば、わざわざモノレールなり新交通システムを採用する意味はありません。

(モノレールや新交通システムを含めた)一般的な鉄道を採用しないのは、輸送量がそれほど見込まれないという仮説が導き出されました。

バス専用道にしない理由

バス専用道にしない理由は、建設コストの1点に尽きるでしょう。バス専用道よりもゆとりーとラインの幅は狭いです。幅が狭ければ、建設コストは安くなります。また、既存の道路上に建設することから、幅の制限もあることでしょう。このような事情から、バス専用道として建設せず、ガイドウェイ方式を採用したのです。


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