福岡には地下鉄が3路線あります。空港線、箱崎線、七隈線です。この路線に乗って実際の姿を観察してみました。
写真1. 人でにぎわう天神南駅構内(七隈線)
空港線:福岡の大動脈
まずは地下鉄空港線です。福岡空港から博多、天神と通り、姪浜まで通じています。その姪浜から先はJR筑肥線と直通運転をしています。そのため、単に福岡市内の移動だけではなく、近隣の都市と福岡市の移動にも使われています。例えば、糸島などへのアクセスは地下鉄空港線に乗って、そのまま筑肥線に直通します。
写真2. 地下鉄空港線の主力車両1000系
空港線の主力車両は1000系です(写真2)。1984年に製造が開始されて以来、現在まで現役を続けています。いつの間にか機器更新が行われており、現在の車両と遜色のない走りを実現しています。その内装を見てみましょう。
写真3. 1000系の内装
写真4. 1000系の連結部分
1000系は赤いシートが目に付きます(写真3-4)。また、連結部分や運転席仕切部分への木目調の化粧板も目を引きます。これは1980年代に流行していた内装です。
(参考)写真5. 同時期の国鉄車の内装(117系100番台、2012年に撮影)
ここには国鉄型の117系電車を出しましたが、やはり木目調の化粧板を使用していますね(写真5)。
写真6. 1000系の蛍光灯
この車両の蛍光灯はカバーありのタイプが採用されています。私の知る限り、東京地区の通勤電車は都営12-000形や京急2100形程度でしか見ませんので、違和感があります。
このように車内を観察しましたが、ある程度空いていることが観察の前提です。夜の博多-福岡空港は空いていたので、この区間で撮影いたしました。一方、空港線の博多から天神までは混雑しています。中洲川端から西は箱崎線からの直通があり、それなりに空いているので、穴場ともいえましょう。ただし、箱崎線への直通電車は博多を通りません。
JR車も乗り入れてきます。地下鉄直通用といえども、水戸岡先生は独自のデザインを緩めることはしません。
写真7. 305系外観
817系3000番台に似た、ホワイトな車体です(写真7)。
写真8. 305系ドア付近
水戸岡先生はさまざまなレタリングがお好みなのか、この車両にも文字がデザインされています(写真8)。
写真9. 305系の椅子(817系3000番台に似ていますね)
椅子は木の枠を前面に出しています(写真9)。著作には、「木は傷ありのものを安く仕入れた、乗客は木に傷があるかどうかは気にしない。そのぶんはコストダウンだ!」と書いていました。このような合理的な考えは好きです。事実、このときの(マニアである)私であっても、木に傷があるかどうかを気にしていません。
写真10. ドア(客席側)
キャラクターが描かれています(写真10)。
写真11. 305系の照明
照明は最近の流れで天井と同一平面になっています(写真11)。LED化のおかげともいえましょう。
このような2種類の車両を主力として、今日も空港線は多くの乗客を運んでいるのです。
七隈線:福岡市南部に伸びる新たな動脈
2005年に生まれた新たな動脈、それが地下鉄七隈線です。「しち」くまではありません。「なな」くまと読みます。この路線は無人運転が可能であることが特徴です。
現在は、天神南が起点です。天神ではありません。天神駅から地下街を歩いて天神南駅にアクセスします。
写真12. 黒が基調の地下街
天神の地下街の特徴は黒がベースカラーになっていることです(写真12)。地下街は「暗い、閉鎖的」というイメージを払拭することを目的に明るい色を選択することが多いですが、ここ天神は黒です。黒だと高級感が演出できますので、そのような印象づくりを狙ったのでしょう。地下街にある店は高級なのかという言及は避けることにします(私はどのような店があるかは興味ない!)。
写真13. 天神南の券売機周辺
地下街の11番街付近に地下鉄天神南駅があります(地下街の地図を参照)。ここにくると安心します。それは私が鉄道ファンであるがゆえのことでしょう。
写真14. 天神南の改札口
このように地下鉄の改札がここにあります。
写真15. 天神南のホーム
天神南は地下鉄七隈線の起点です。ここで多くの乗客が乗り込みます(写真15)。では、多くの乗客が乗り込んだ車両はどのようなものなのでしょうか。
写真16. 3000系の内装
建設コストの削減を目指して、トンネルは小さく作られました。そのため、使う車両のサイズも限られます(写真16)。その小さな車体で少しでも広く車内を見せようという工夫が見られます。まずは、この車内の照明が通常の車両と異なることに気づきます。そう、電球色の照明を使用しているのです。
写真17. 3000系のドア付近
ドア付近は通常のLED表示機があります(写真17)。2005年ごろの車両としては標準的です。ただし、2010年代後半となってはモニタ画面が主体となっていますから、少し時代遅れの感があります。車両としてはじゅうぶん新しいですが、情報提供装置の進化が早いことを実感できます。
写真18. 3000系の連結部分
狭い車両を広く見せる工夫はこのようなところにも見られます(写真18)。となりの車両との仕切りをガラス主体にして圧迫感をなくしているのです(写真18)。
そんな七隈線に乗ってみると、観光客もいなく(観光名所を通らない!)、鉄道ファンもいなく(種別や車両が単一で興味をひかれない)、本当に地元の人だけが乗っている路線です。天神南と薬院で乗客を乗せて、各駅で徐々に降りていくように見受けられました。私が乗ったのは夕方でしたので、下りは混雑し、上りはそこまで混雑しませんでした。薬院を出て立ちが多かった(ドア間の吊革が埋まる程度の混雑)車内も、橋本に近づくと空席が目立つほどの混雑でした。この路線は橋本までの速達性が求められるわけではない流動でした。このため、快速や急行の運転は適切ではありませんね。
橋本といえば神奈川県にもあるような気がしますが、そことは別物です。その橋本で外に出てみましょう。
写真19. 橋本駅前
写真20. 橋本駅前
写真21. 橋本駅前
ここに着いた乗客はバスに乗るなり、自転車に乗るなり、そそくさと自宅(や目的地)に向かっていきました。よそ者には居場所がないことがわかります。多くの鉄道ファンも同じような気持ちで引き返したことでしょう。ただし、よそ者にも幸運が訪れました。虹が出たのです。この直前は大雨でした。そのため、虹が見えたのです(写真21)。虹は太陽と反対方向に現れます。虹を見たい人、虹と鉄道写真を撮影したい人、は太陽と反対方向に視線を向けましょう。
七隈線は地元に当たり前のように使われていました。当たり前に使われるということは、鉄道にとっては最高の状態です。今後は七隈線の博多延長というトピックが控えていますが、それまでは鉄道ファンにスポットを向けられることなく、淡々と地元の利用者を運び続けるのです。
さて、前後ではどこに行ったのでしょうか?
福岡の地下鉄の素顔を探る(18年夏):今ココ!
門司港のトロッコ列車潮風号(混雑や車窓は?18年夏)(次)→
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