長崎の交通機関といえば、路面電車。実質的に4系統存在し、市内中心部をきめ細かく結んでいます。その路面電車に乗ってみました。実際の市内観光には使えるのでしょうか?その点も趣味的な面も観察しています。
写真1. 長崎駅前に発着する路面電車
長崎の路面電車の概要
長崎の路面電車は、長崎市ではなく民間の会社(長崎電気軌道)が運営しています。そのため、長崎「市電」という呼びかたは適切ではありません。そのため、弊サイトでは、路面電車と呼ぶことにします。
図1. 長崎電気軌道の路線図
この路線図を見ると、乗り継ぎは新地中華街でのみ可能となっています。そのため、市民会館での乗り継ぎはできません。その都度運賃(120円)を支払うハメになってしまいます。市民会館でも同様の取扱いをするべきと思います…。
運賃は120円です。上記の新地中華街で乗り継ぎをする場合は別ですが、1回電車から降りたら、そこから先はまた運賃を支払う必要があります。たいていの停留所から停留所へは新地中華街で乗り継げば行けますが、桜町から3系統が通っていない停留所へは運賃を2回支払う必要があります。桜町から市民会館や長崎駅前までは400~500mですから、歩けということなのでしょうか。
1日乗車券があり、500円で乗り放題です。1回120円ですから、5回以上乗る人は確実にこちらのほうが安く済みます。1日乗車券を使えばその都度運賃を支払う必要がありませんから、気分的にはラクです。元がとれない?(1日乗車券を使おうか迷う)観光客はたまのことですし、損しても1日380円(1回しか乗らない場合)です。
では、どこで1日乗車券を購入するのでしょうか?弊サイトでいちいち列挙するのも芸がありませんから、公式サイトへのリンクを貼ることにします。JR九州のみどりの窓口か宿泊先のホテルであれば確実ですね。電車車内での1日乗車券の発売はしていないので、注意しましょう。
この記事は2018年8月に執筆していますが、2018年8月1日から停留所の名称が変わっています。この記事では可能な限り旧名称も使用します(やさしー)が、2018年8月以前に発行された観光ガイドや、2018年8月以前に執筆されたネット上の記事では旧名称が使用されています。混乱しないでください。
路面電車の各系統に触れる
ここでは、私の主観を反映した各系統の性格をまとめます。
1系統:エースとして活躍
区間:赤迫-崇福寺(そうふくじ、旧名称:正覚寺下)
1系統はその名前の通り、エースといえる系統です。この系統は長崎駅前を通り、中華街や市内中心部も通りますから、大変混雑しています。私の宿泊先も1系統沿いでした。有名観光地のうち、平和公園と出島をマークしています。また、長崎駅前から大浦天主堂やグラバー園へのチャンネルとしても有効に活用できます。
写真2. 1系統の電車(大波止で撮影)
3系統:メジャーではないが空いていて穴場
区間:赤迫-蛍茶屋
その1系統と長崎駅前以北で重なっているのが、3系統です。長崎の中心部は微妙にスルーするためか、比較的すいています。新地中華街、西浜町あたりが長崎の中心街ですからね。また、長崎駅前以南では観光地を通らない(市民会館がめがね橋に近い程度)であることも空いている要因でしょう。
写真3. 3系統の電車(赤い表示版の赤迫行き)
4系統:マイナーで空いている
区間:蛍茶屋-崇福寺(旧名称:正覚寺下)
蛍茶屋と崇福寺を結ぶ系統です。長崎の中心街だけを通る系統で、有名観光地はめがね橋くらいしかありません。路線の長さが短いためか、比較的空いている系統です。空いているがゆえに、本数も少ないです。
写真4. 市民会館を通る4系統
他の系統の写真は多くありますが、4系統については乗っていないこと、本数が少ないことから、この程度の写真しか撮れていません。それほど、観光客には縁がない路線ともいえるのです。
5系統:長崎駅前には来ないが繁盛
区間:崇福寺(旧名称:正覚寺下)-石橋
沿線には長崎の中心街、そして有名観光地(グラバー園、大浦天主堂)があるため、新地中華街-大浦天主堂が混雑します。長崎の路面電車は基本的には複線ですが、大浦海岸通-石橋までは単線で、途中の大浦天主堂では行き違いできません。そのためか本数が少なくて混雑しがちです。
重要な停留所:新地中華街
主要な系統は1系統と5系統といえます。この2つのジャンクションが新地中華街です。ここで長崎駅前方面と大浦天主堂方面の旅客が乗りかえます。そのジャンクションの様子をご覧いただきましょう。
写真5. 新地中華街に停車中の1系統
ここでは崇福寺(あるいは蛍茶屋)方面行きのホームに降りた乗客が、長崎駅前(あるいは大浦天主堂)方面行きのホームに移動します。これは、長崎駅前-大浦天主堂で直通電車が走っていないためです。そう、流動が大きい区間なのに直通電車が存在しないためです。
これは長崎駅前-大浦天主堂で直通させようとすると、ここ新地中華街で方向転換をせねばならないためです。方向転換は路面電車のお家芸ですし、大塚駅前(都電)や市役所前(福井鉄道)では日常的に行われています。
写真6. 大塚駅前で転線する様子
ここ大塚駅前では本線上で回送列車(といえば良いのかな)が方向転換します(写真6)。
写真7. 市役所前で転線する様子
ここ市役所前では、やはり本線上で進行方向を変えています(写真7)。この系統は営業列車です。
写真8. 新地中華街の西浜町方にある渡り線
ここ新地中華街にも渡り線があり(写真8)、この渡り線を使えばここ新地中華街で方向転換して長崎駅前から大浦天主堂まで直通できます。ただし、乗務員の移動がネックです。大塚での都電の折り返しは営業列車ではないので、乗務員の移動に支障がありませんし、福井鉄道は空いているのでやはり乗務員が移動するのに支障はありません。こちらは大変な混雑が予想されますので、乗務員が移動するのに手間取ることが簡単に予想できます。そのため、長崎駅前から大浦天主堂に直通できないのです。
1系統と5系統の混雑緩和策
新地中華街だけ見ると、このような結論に達してしまいます。しかし、私はそのような結論では諦めません。新地中華街で方向転換することにこだわっているから、このような結論に達するのです。長崎駅前を通る系統と5系統が交差する場所はもう1つあります。それが市民会館です。市民会館の現場を見てみましょう。
写真9. 市民会館の現場(上の写真の使い回し…)
ここで写真の手前側が長崎駅前方面、写真の右手側が大浦天主堂方面です。この交差点では手前側と右側を結ぶ線路はありませんが、ここに線路を設ければ良いのです。すると、3系統と5系統が直結することになります。このようにして、長崎駅前と大浦天主堂を直結できることがわかりました。
しかし、大浦海岸通-石橋は単線のために本数が増やせません。この課題をどのようにクリアするのでしょうか。よく考えてみましょう。大浦天主堂-石橋はそこまで混雑していません。そのため、大浦天主堂までの運転とすれば良いのです。具体的には、既存の5系統が大浦天主堂-石橋を走行している間に大浦海岸通-大浦天主堂を走行して、既存の5系統が折り返す前に大浦海岸通に戻れば問題ありません。
例えば、(大浦海岸通-石橋が4分かかるとして)以下のイメージです。
12:00 大浦海岸通に既存の5系統(石橋行き)が入線
12:02 大浦海岸通に新規系統の大浦天主堂行きが入線
12:04 石橋に既存の5系統が到着
12:04 大浦天主堂に新規系統が到着
12:06 大浦天主堂から新規系統が発車
12:08 石橋から既存の5系統が発車、新規系統が大浦海岸通に到着
12:10 石橋からの既存の5系統が大浦海岸通に到着
このようにして、単線でも本数を増やせます。
長崎の路面電車の趣味的な楽しみ
そんな路面電車を趣味的に堪能しましょう。
前面展望の満喫
路面電車の長所は前面展望に優れていることです(都電の夜はちょっとね…)。そんな前面展望を堪能しました。その一部を公開しましょう。今回の収録は1系統の長崎駅前-出島です。
写真10. 長崎駅前を発車(1系統は直進、3系統は左へ)
長崎駅前を発車します(写真10)。わが1系統は直進します。
写真11. 頻繁にやってくる赤迫行きとすれ違う
1系統は頻繁にやってきます。停留所掲示の時刻表を見ると、1系統は5分30秒間隔で運転と書いています。つまり、その半分の2分45秒間隔ですれ違います。
写真12. 長崎の市街地を行く
そんなメインルートを走ります(写真12)。長崎駅前から出島まではずっと大通りを走りますので、信号待ちの時間は少ないです。
写真13. 大波止の手前で停止する
そうはいっても、信号待ちは生じてしまいます(写真13)。
写真14. 大波止では先行電車に追いつく
大波止は長崎の1つのジャンクションのようです(私の目にはそうは映りませんでした)。この大波止を前にして先行電車に追いついてしまいました。
写真15. 次の出島まですぐ
大波止から出島まではすぐです(写真15)。
写真16. 出島に到着
そして出島に到着しました。私はここで出島を堪能したのです。
名所での撮影
私の思う撮影名所があります。ここでは、長崎西洋館周辺を取り上げます。
図2. 長崎西洋館周辺(googleマップから引用)
この周辺では路面電車とJRが並走していますから、写真撮影には良いスポットです。ただし、夏の熱中症には気をつけたいものです。私の撮影テクニックなどありませんから、テクニックについては聞かないことです。1つ気をつけているとしたら、撮影機材を選ぶ際に、素早くピントが合う種類のものを選択したという程度です。以下のモデルは比較的安く、素早くピントが合います。
さて、実際に写真を紹介しましょう。
写真17. 西洋館から撮影した線路
その西洋館は原爆資料館(旧名称:浜口町)からすぐのところです。私は原爆資料館を訪問していませんが、西洋館を訪問したくてこの停留所に降りました。2018年7月31日までは浜口町という名称でしたから、古い各種ガイドブック、サイトには浜口町と掲載されています。
写真18. 美しい旧式の電車(NSSの広告効果は向上しましたね!)
写真19. 美しい旧式の電車(NSSの広告効果は向上しましたね!)
旧式の車両がやってきました。この電車は広告電車です(写真18-19)。広告電車の効果は実際に見ている人に対することがほとんどですが、このように電子媒体に掲載されると、より効果は増すことでしょう(弊サイトを見る人がそんなにいない、そんなことは禁句!)。
写真20. 左にJR、右に路面電車
ここは左(西)にJRの線路、右に路面電車の線路が広がります。もっとも、この区間では「路面」を走っていませんがね。
写真21. JRの列車がやってきた
写真22. JRの列車が走り去った
JRの快速列車がやってきました(写真21-22)。長崎と佐世保を結ぶ快速シーサイドライナーです。
写真23. 軽快電車が出現(でも古臭い音をたてます)
軽快電車もやってきました(写真23)。でも、足回りは旧式と同じなので、音は古い感じです。車両には疎いので、公式サイトをご参照いただくことにしましょう。
写真24. 軽快電車を下方向から撮影
さて、前後ではどこに行ったのでしょうか?
長崎の路面電車の観察(18年夏長崎・福岡鉄道旅行記):今ココ!
長崎本線(旧線)と島原鉄道の旅(18年夏長崎・福岡鉄道旅行記)(次)→
※それぞれ別ウィンドウで開きます。
コメント
市民会館停留場の長崎駅ー西浜町方面の路線もありましたが、ほぼ使われなかったため昨年撤去されました。
桃のケーキ様、コメントありがとうございます。
市民会館(当時は公会堂前)の線路撤去、何かの機会にそのような情報を得た記憶があります。混雑する1系統と5系統の混雑緩和に長崎駅前-市民会館-新地中華街-大浦天主堂の新規系統を新設できるのにもったいないと思いました。古い車両がおおいことから財務的に厳しくて新規系統を設置できないのかな、とも邪推しております。