仙台と山形を結ぶ仙山線。この路線は県庁所在地の2都市しか通らない一方、山奥を通り、興味深い路線でもあります。そんな仙山線の前面展望を満喫しました。
写真1. 仙台に到着した仙山線快速
復習:仙山線の概要
仙山線の概要は以下の通りです。
・区間:仙台-羽前千歳
※列車は奥羽本線に直通し、山形駅まで直通します
・距離:58.0km(仙台-山形は62.8km)
・所要時間:65分(早朝の上り快速)~90分程度
・運転間隔:おおむね60分間隔
※仙台-愛子はおおむね20分間隔を実現しています
(参考)図1. 仙山線の経路
仙山線はその名前の通り、仙台と山形を結ぶ路線です。宮城県側は全て仙台市、山形県内は全て山形市に位置しますので、県庁所在地の市しか通っていない路線です。このようなJR線は他にはないでしょう(市内完結の路線を除く)。
ただし、山形側の終着駅は羽前千歳駅であり、山形駅ではない点に注意が必要です。歴史的経緯や地理的制約により山形駅に直接乗り入れているのではなく、2つ隣の羽前千歳駅までと解釈しています。利用者的には羽前千歳-山形が奥羽本線だとうが、仙山線だろうがどうでも良いでしょうが、マニア的に重要ですのであえて記しました。
だいたい1時間間隔で運転されています。私が見た限り、4両編成が多いです。そのだいたい半数が快速、もう半数が普通です。快速の一部は仙台-山形間を快速運転しますが、多くの快速は仙台-愛子は各駅にとまります。これは、仙台-愛子は仙台都市圏輸送を担っているので、各駅の乗車チャンスを確保するためです。仙山線は単線ですから、どうしても本数を増やせません。このため、仙台-愛子の快速を別に確保するのは困難です(仙台-愛子を快速運転する場合は快速通過駅はだいたい40分のダイヤホールが開く)。
鉄道愛好家的には、一部区間でも複線化し、仙台-愛子の普通を20分間隔(ただし60分間隔で山形まで延長)、仙台-山形の快速を1時間間隔と別個に設定したほうが良いと思います。輸送力が過剰というなら、4両編成を2両編成に変更して増発するだけのことです。
その快速では仙台-山形は最短65分(だいたい70分強)、普通だと80分~90分かかります。快速が普通を追い抜くことはありませんから、乗った列車が先に着きます。
車窓的には、仙台よりの住宅街(仙台-愛子)、そのほかの山間部と区切られるでしょう。
山形から仙台の前面展望を満喫する
さて、基本的な内容をおさらいしたところで、素晴らしい前面展望を満喫しましょう!
ステージ1. 山形から山寺までの前面展望(普通)
写真2. 山形駅は立派なビルがそびえる
山形駅は立派な駅ビルです(写真2)。旅行に来てまで駅ビルで昼食というのも味気なかったので、駅前の飲食店で昼食をとりました。夏なので暑かったです(暑いのにラーメンを食べた私も変!)。
写真3. 山形の駅名標
山形の証拠、駅名標です(写真3)。山形は奥羽本線の線路がありますが、いわゆる山形新幹線が通る箇所は標準軌、左沢線と仙山線が通る箇所は狭軌となっていて、両者は厳密に区分けされています。そのため、狭軌の線路は南方向に続きません。したがいまして、北方向の北山形のみ示されています。
写真4. 左沢線の主、101系気動車
左沢線の主がいました(写真4)。この車両はオールロングシート車です。
写真5. 仙山線の主、E721系電車
仙山線はセミクロスシート車のE721系電車が主力です(写真5)。2両編成と4両編成の組み合わせで2~6両編成を組みます(8両編成の運用はいつの間にか仙台地区から消滅しています)。クロスシート部分はボックスシートです。仙台と山形の都市間輸送も担うわけですから、転換クロスシートのほうが良いでしょう。
緑色と赤系色の帯で装飾されていますが、2両編成は赤色、4両編成は淡い赤色の帯です。今回乗ったのは淡い赤色の帯ですから、4両編成とわかりますね!2両+2両を運用するよりも運転席が少ないぶん、利用者にとっては客室が広くてwin-会社にとっては高価な機器がある運転台がなくてwinという、win-winの関係です。
写真6. 山形を発車!
E721系は前面展望に優れた車両です。ボックス席が埋まっていたので、運転席後ろに陣取ることにしました。そして山形を発車です(写真6)。
写真7. 狭軌(左側)と標準軌(右側)が並走
われわれ仙山線列車は狭軌側を走ります(写真7)。もし、山形線の列車でこの向きに進んでいたら、右側通行になります。
写真8. 北山形に停車!
北山形に停車します(写真8)。北山形の手前で左沢線が分岐していますので、ここにとまるのは仙山線の列車だけです。ということは、北山形から山形に向かうには、山形線、仙山線、左沢線のどれが先に発車するのか確認したうえで、適切なホームを選択せねばなりません。これは不便ですね!
写真9. 馬見ヶ崎川を渡る
馬見ヶ崎川を渡ります(写真9)。山形から羽前千歳の間は山形の市街地を走る印象があります。
写真10. まもなく羽前千歳!
まもなく羽前千歳です(写真10)。羽前千歳から仙山線は右に進みます。でも線路は左側にあります。この処理はどうするのでしょうか?
写真11. 答えは平面交差!
答えは単純な平面交差です(写真11)。上下など関係なく、羽前千歳で山形新幹線(山形線)の列車と仙山線の列車は必ず平面交差するのです。これは地味にダイヤ設定上の制約でしょう。
写真12. 仙山線として分岐する
羽前千歳を過ぎると、仙山線に入ります。すると緑が広がります(写真12)。
写真13. 楯山に停車!
楯山に停車します(写真13)。日本には「たてやま」と名乗る地名はいくつかありますが、ここもその一員です。多くの人は「たてやま」といって思い浮かべるのは「立山」で、千葉県民を中心に「館山」を思い浮かべるのでしょう。「楯山」を思い浮かべる人はそう多くないでしょう。
写真14. 木々の中を走る
木々の中を走ります(写真14)。この光景だけ見るとローカル線と錯覚してしまいます。
写真15. 高瀬に停車!
片面ホームの高瀬にとまります(写真15)。
写真16. 木々の中を走る
写真17. 木々の中を走る
高瀬を出ると、さらに木々の密度は高くなるように思えます(写真16、写真17)。カーブが多く、速度も上がりません。これでは高速バスとの戦いで劣勢を強いられるのも納得できます。
写真18. まもなく山寺に停車!
とはいえ、仙山線には高速バスにはない「山寺」アクセスという強みがあります。その山寺にとまります。
写真19. 山寺に到着!
そうして、山寺に到着です。山寺の出口は仙台よりにあります。山寺で多くの人が降り、そして多くの人が乗りました。私もここで途中下車です。
ステージ2. 山寺から仙台の前面展望(快速)
山寺で観光を済ませた私は仙台に向かいます。今度は快速です。快速といっても、愛子から仙台までは各駅にとまるタイプです。
写真20. 山寺に入線する快速
快速がやってきました。今度は濃い赤色の帯です。2両編成の車両が使われていることがわかります(この快速は4両編成です)。つまり、2号車と3号車の境目は運転台があるということです。
写真21. 山寺を発車!
山寺を発車します(写真21)。ポイント制限が35km/hというのがいかにも地形的に制約がある場所というのがうかがえます。山寺からはトンネルが多いので、進行方向右側以外の幕が閉められます。この区間でも前面展望を満喫したい場合は、進行方向右側から眺めるのが正解です。
写真22. 山寺の街並を見下ろす
山寺の街並を見下ろして進みます(写真22)。山寺周辺は「古き良き日本」の姿が残っている印象です。
写真23. 山中を走る
写真24. 山中を走る
写真25. 山中を走る
山寺を出ると、宮城県との境目が近づいてきます。境界に近づくにつれて、山中の色合いが濃くなってきました。夏らしく、深い緑色の世界が展開します(写真23~写真25)。
写真26. 面白山高原を通過!
快速は面白山高原を通過します(写真26)。山形県側最後の駅です。ここからすぐに仙山トンネル(面白山トンネル)に入り、山形県から宮城県に入ります。
写真27. 上り勾配から下り勾配に変わった
宮城県に入り、上り勾配から下り勾配に変わりました(写真27)。仙山トンネルは湿度が高いのか、トンネルを抜けると窓が曇ります。景色を楽しみたい人はその点に要注意です。運転席の窓は安全確保のため熱線が入っていて、水滴はすぐに蒸発します。
写真28. カーブが多く、揺れる
カーブが多く、揺れます。その様子がわかるでしょうか(写真28)。
写真29. 山中を走る
まだまだ山中の景色です(写真29)。
写真30. 作並に停車!
作並にとまります(写真30)。作並は快速停車駅です。とはいっても、そこまで発展している様子は車窓からは感じられません。作並は日本の交流電化発祥の地です。
写真31. 山間部を走る
まだまだ山の中を走ります(写真31)。
写真32. 直線区間もある
直線区間もあります(写真32)。山寺-作並よりはやや地形が穏やかなのでしょうか。
写真33. 熊ヶ根を通過!
熊ヶ根を通過します(写真33)。少し開けてきたのでしょうか。
写真34. 渓谷美を堪能できる
渓谷美を堪能できる場所もあります(写真34)。渓谷美が堪能できるということは、まだ山中にいたのですね!
写真35. 少し開けてきた
陸前白沢を通過し、少し開けてきました(写真35)。陸前白沢が最後の通過駅でした。
写真36. スピードを出す
陸前白沢から愛子までは直線もあります。快速運転区間最後の力走といわんばかりにスピードを出します。景色がブレているので、スピード感が伝わるでしょうか(写真36)。
写真37. 愛子に停車!
仙台都市圏西端の駅、愛子にとまります(写真37)。一番右にとまっているのは愛子折り返しの普通仙台行きです。
写真38. 住宅街を走る
住宅街を走ります(写真38)。確かに、仙台-愛子の本数が確保されている理由は納得できます。
写真39. 住宅街を走る
とはいえ、単線の線路が続きます(写真39)。このあたりは土地に余裕があるので、部分複線化だけでも実施すればだいぶ変わりそうな気がします。
写真40. 陸前落合に停車!
愛子から仙台まで各駅にとまる快速に乗ったので、愛子からは丹念にとまります。1つ目の駅が陸前落合です(写真40)。ここから仙台までは12.7kmしかありません。
写真41. また山間部の景色になってきた
写真42. また山間部の景色になってきた
また山間部の景色になってきました(写真41、写真42)。このあたりは住宅街の北側を通ります。
写真43. 葛岡に停車!
葛岡にとまります(写真43)。この駅は片面ホームです。仙台-愛子は都市圏輸送を担っているのですから、列車交換ができない駅はダイヤ作成上のネックとなってしまいます。
写真44. トンネルもある
葛岡から仙台まで10.1kmですが、トンネルもあります(写真44)。仙台から10km以内でこんなに起伏の激しい場所を通るとは想像していませんでした。
写真45. 国見に停車!
次の駅、国見です。ここでは列車交換ができます。わが快速も行き違いを行います。仙台都市圏には基本的に発車音楽は導入されておらず、車掌さんの笛が発車合図です。ただし、よくある笛の音色ではありません。調べてみたら、電子笛で発車の合図を行います。これは、新型肺炎ウィルスの脅威が語られる社会情勢上、マスクを外さずに合図できることに重点を置かれているためです。
参考動画があったので、以下に示します。
(参考動画)仙台支社管内の標準的な発車合図
写真46. 東北福祉大前に停車!
東北福祉大前に停車です。ここも片面ホームですね(写真46)。片面ホームはダイヤ作成上のネックです。仙山線のダイヤが貧弱なのは、このような片面ホームの駅が多いことも原因でしょう。これはどうにかすべきです。
写真47. 高台を走る
住宅街を見下ろす位置で走ります(写真47)。住宅街と線路の高低差があると住人は大変でしょうが、旅行者の立場としては景色が良くて楽しいです。
写真48. 北山に停車!
北山にとまります(写真48)。ここも片面ホームです。次の北仙台から国見まで行き違いができません。この間の所要時間はだいたい8分ですから、運転間隔は16分間隔となってしまいます。
写真49. 住宅街を走る
もうここまでくると仙台まで6kmを切っています。そのためか市街地の中を走る印象があります(写真49)。
写真50. 下り勾配の先に北仙台が見える
北仙台が近づいてきました(写真50)。北仙台というと大したことのないように聞こえますが、ここは仙台市営地下鉄との乗りかえ駅です。仙台市営地下鉄は仙台駅よりも仙台の中心に近い場所を通ります。そのため、仙台中心部と仙山線のチャンネルとしては重要な場所です。
写真51. 下り列車が待っている
下り列車が待っています(写真51)。国見、北仙台と行き違い駅で行き違い列車を待ちます。
写真52. 青信号がともった!
北仙台から仙台の間は東照宮がありますが、ここは列車交換をしません。そのため、仙台まで列車交換なしで進みます。
写真53. まもなく東照宮!
北仙台から東照宮まではそう距離はなく、すぐに着きます(写真53)。
写真54. 東照宮も片面ホーム
東照宮も片面ホームです(写真54)。
写真55. 住宅街を走る
住宅街を走ります(写真55)。
写真56. 東北本線をまたぐ
東北本線をまたぎます(写真56)。またぐのですね!てっきり東北本線の西側を走ると思い込んでいましたが、そうではないのですね!
写真57. 東北本線と合流
東北本線と合流します(写真57)。仙台空港アクセス線との直通を考えるのであれば、仙山線が中央を走るのが好ましいですが、そうはいきません。
写真58. 東北本線の東側を走る
東北本線の東側を走ります(写真58)。ここまでくれば仙台までもうすぐです。
写真59. 仙台に到着!
仙山線の車窓と輸送体系のまとめ
仙山線は山形-愛子は山間部を走り、愛子-仙台は起伏に富んだ住宅街を走ることを実感しました。実質的に60kmの路線でここまでさまざまな表情を見せる路線もそうないでしょう。特に、(路線戸籍上は奥羽本線ですが)山形寄りの2駅は標準軌と狭軌のコラボレーションという趣味的にも興味深い側面もあります。
また、山寺という有名観光地の近くを通ることもあり、風情ある街並を観察する区間もあります。このような変化に富んだ景色を堪能できるのが仙山線の魅力です。
とはいえ、都市圏輸送や都市間輸送の交通機関として観察した場合は、機能不足という側面も見られました。接客設備としてはボックスシートの車両が充当されている点が挙げられます。ダイヤ面では、快速の多くが仙台-愛子間各駅停車であることと、快速の本数が少ない点です。
これを改善するには、仙台-愛子の各駅で列車交換を可能にすることによって、普通毎時3本と快速毎時1本の実現が最低限のサービスメニューです。そのうえで、快速については転換クロスシート車(車端部はロングシートのまま)にすることが重要です。こうして仙山線はより素晴らしい路線に脱皮できるでしょう!
さて、前後ではどこに行ったのでしょうか?
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仙山線の前面展望(山形→仙台、20年夏の乗車記)←今ココ!
★旅行記のまとめです!
新潟、宮城鉄道旅行記の計画と感想
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