杜の都、仙台。ここは東北で唯一の地下鉄が通っています。長い間仙台の地下鉄は1路線だけでしたが、2015年からは東西線も含めた2大巨頭体制が構築されています。そんな仙台の地下鉄を趣味的に楽しみました。
写真1. 仙台の主軸、南北線(泉中央で撮影)
仙台の地下鉄概要
仙台の地下鉄は南北線と東西線の2路線があります(図1)。
図1. 仙台市営地下鉄の路線図(公式サイトのPDFファイルより)
比較的古い南北線と、かなり新しい東西線で構成されています。とはいえ、古い南北線の開業も1987年のことであり、東京の地下鉄の半蔵門線(1978年開業)よりは新しい部類に入ります。ちょうど「未来の地下鉄」と呼ばれた営団南北線(※)や都営12号線(※)よりはやや古いくらいです。
※営団南北線はフルスクリーン式のホームドアが採用されましたし、都営12号線(大江戸線)は鉄輪式リニアモーターを使用した地下鉄で、そのころの図鑑には「未来の地下鉄」とはやしたてられたものです。
南北線は仙台駅と南北の住宅地を結びます。仙台駅の北側は仙台の繁華街を通りますので、仙台の都心の輸送も担っています。一方、東西線はサブともいえる路線で、東西に離れた場所の利便性向上のために建設されました。これらの2路線は仙台で交差しています。
ここでご注意いただきたいのは、JR仙台駅と地下鉄仙台駅は500m近く離れた場所にあり、直接乗りかえることはけっこうしんどい点です。
図1. 地下鉄仙台駅とJR仙台駅の位置関係(googleマップより引用)
実際に仙台の地下鉄を楽しむ
では、実際に地下鉄を楽しんでみましょう!
南北線:仙台の南北軸を通る主要ルート
仙台の地下鉄で乗る機会の多いのは、南北線でしょう。仙台の中心街を通っており、泉中央や富沢という南北の拠点まで伸びています。
写真2. 南北線の車両
南北線の車両は一般的な4ドア車です。ただし、多くの地下鉄車両とは異なり、戸袋窓がついています(写真3、写真4)。
写真3. 戸袋窓のある車内
写真4. 戸袋窓のある車内
南北線は郊外では地上を通りますから、戸袋窓があったほうが明るくて良いのかもしれません。
その南北線は郊外では地上を通ります。以下の景色が展開します(写真5)。都市の中心ではなく、ここ30~40年程度で形成された郊外的な景色です。
写真5. 地上を通るときの景色
そして、地上部にある駅ではバスと接続しています。
写真6. 泉中央駅の駅舎
泉中央の駅舎です(写真6)。商業施設に隣接しています。地下鉄建設と同時に街づくりが行われた感じがあり、いわゆる「ニュータウン」の駅に多い構造です。
写真7. バスとの連携が行われている
仙台市営地下鉄の案内板です(写真7)。バスとの連携に重視して撮影しました。「幹」となる輸送を地下鉄が握ることで中心部と郊外を渋滞なく結び、「枝」となる輸送をバスが担い、あらゆる場所に公共交通機関ネットワークが到達するように工夫されています。
写真8. 泉中央駅にやってくるバス群
そのバスが多くやってきます(写真8)。バスは仙台市の運営ではなく、宮城交通です。事業者が異なるにも関わらず、このような素晴らしい連携がとれています。本記事を執筆している際に写真を確認し、改めて感心したところです。
東西線:山のほうに伸びる新規ルート
主役となるのが南北線だとすると、発展目覚ましいのが東西線でしょう。南北線よりもマイナー感があり、上級者向けの路線という印象を抱きました。
南北線よりも車両サイズがコンパクトで、同じ4両編成でも輸送力は少ないです。
写真9. 荒井行きが去っていった
荒井行きが去っていきました(写真9)。南北線が緑系の色をイメージカラーに使っている一方、東西線は青系の色をイメージカラーにつかっていることもわかります。
写真10. 天井が低い
輸送力が少ないことは車両の天井の高さにも表れています(写真10)。大ざっぱな理解ですが、トンネルの断面は円が基本です。トンネルの幅を狭くしようとすると、トンネルの高さも狭くなります。
写真11. シンプルな車内
写真12. シンプルな車内
車内はシンプルです(写真11、写真12)。ただし、2010年代に登場した地下鉄なので、車両も2010年代です。そのため、2010年代の標準的な案内装置である液晶装置が付いています。00年代に開業した福岡の七隈線は電光掲示板でしたから、時代の変化を感じます。
西の終着駅、八木山動物公園で降りてみましたので、周辺の景色を紹介しましょう。
写真13. 八木山動物公園駅
駅舎です(写真13)。泉中央よりもこじんまりとした駅舎であることがわかります。泉中央がニュータウンの核として建設されたのに対し、八木山動物公園は住宅街の中に建設されたのでしょう。
写真14. 駅周辺の光景
駅とは無関係に発達した光景に感じます(写真14)。地下鉄の開業は2015年ですが、それ以前からあるたたずまいの街です。
写真15. 高台の上からの景色
駅は高台にありますが、高台からの景色は見ごたえがあります(写真15)。私が住んでいた場所にはない景色ですので、新鮮に感じます。東京近郊でいえば、多摩地区や神奈川地区の風景が近いのでしょうか。
写真16. 拡大したところ
このような景色です(写真16)。山あいまで住宅が立ち並んでいる景色です。確かに仙山線も仙台近郊でも起伏がありました。
隠れ地下鉄:仙石線
実はもう1路線、仙台には地下を走る鉄道があります。その名はJR仙石線です。JRが国鉄だったころ、旅客列車で通勤電車(※)だけが走る路線は東京地区、大阪地区には多くありました。しかし、名古屋にはなく(中央線は通勤電車「も」走っていた)、福岡と仙台にそれぞれ1路線ずつしかありませんでした。
※本記事では通勤電車は4ドア、オールロングシート車の車両に限定しています。
その仙台で通勤電車が走っていて、今も通勤電車が走っており、なおかつ運転間隔が短いのが仙石線です。仙石線はそのような歴史的経緯から、仙台よりは都市型電車です。そんな仙石線は中心部を地下化工事を行いました。そして、あおば通-仙台を延長しました。あおば通は仙台から500m程度西にある駅です。
その500mの延長に何の意味があるの?という人もいるでしょう。そこで、もう1度仙台駅周辺の地図をご覧いただきましょう(図1、再掲)!
図1. 地下鉄仙台駅とJR仙台駅の位置関係(googleマップより引用、再掲)
地図の上に東西に貫く駅があることにお気づきと思います。それが仙石線のあおば通です。このあおば通駅は地下鉄仙台駅と直接乗りかえが可能です。
写真17. 実質的に3路線が交差する地下鉄仙台駅
地下鉄仙台駅は南北線と東西線が交差します。そのほかにJR線も足を延ばしていますので、実質的に3路線が交差する駅ということもできます。そのため、構内はやや複雑です(写真17)。地下で3路線が交差する駅は日本でもそこまで多くなく、東京と大阪を除くと、他に名古屋、栄(栄町を含む)、大通くらいしか思い浮かびません…。
写真18. 南北線から仙石線へはダイレクトで乗りかえられる
南北線の駅の端から階段を通ることなく、仙石線への連絡改札に行くことができます(写真18)。
写真19. あおば通の改札口
地下鉄の改札を出ると、あおば通の改札があります(写真19)。ここでは仙石線のカラーではなく、JR東日本のカラーが前面に出ています。国鉄時代はどのようなカラーだったのでしょうか?答えは、「あおば通の駅そのものが国鉄時代にはなかった」というものです。
写真20. きれいな地下駅
きれいな地下駅です(写真20)。2000年代の駅ですので、駅にもそれなりに意匠が凝らされているのです。
写真21. 東塩釜行きが停車中
仙石線の電車がとまっています(写真21)。このあたりは日中時間帯でも15分間隔で運転されていて、地下鉄並みとまでいきませんが、それなりの本数が確保されています。地下鉄と同じような通勤電車で運転されていて、それなりに本数が多いことから、本記事では仙石線のことを「隠れ地下鉄」と表現させていただきました。
そのあおば通は意外な実力を持っています。あおば通は東北地方のJRの駅で2番目に利用が多い駅です。それだけ仙石線の利用が多いのでしょう。
仙台の地下鉄のまとめ
仙台の地下鉄は2路線ありますが、仙台市内交通の幹ともいえる南北線と、新たな幹となりつつある東西線があります。また、これとは別に仙石線も地下鉄に近い役割も担っています。また、地下鉄とバスの連携もなされていることもわかりました。
このようにそれぞれがそれぞれの役割を担っています。これからも3路線とも個性を発揮し、それとともに仙台の輸送を担うことになるのでしょう。
さて、前後ではどこに行ったのでしょうか?
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新潟、宮城鉄道旅行記の計画と感想
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