仙石東北ラインの乗車記(20年夏)

近い場所を通っていながら、決して交わることのなかった2つの路線。仙石線と東北本線。2015年に両者の線路をつなげる工事が行われ、現在は「仙石東北ライン」として運転されています。その仙石東北ラインの基本情報を掲載するとともに、車窓も紹介します。

写真1. 仙石東北ラインの主、HB-E210系(石巻で撮影)

復習:仙石東北ラインの概要

いきなり仙石東北ラインといわれても戸惑う人もいることでしょう。そこで、私なりに仙石東北ラインの概要を紹介します。前半に実用的な情報、後半に趣味的な情報を記しています。

実用篇:仙石東北ラインの利用方法

仙石東北ラインは仙台-塩釜は東北本線、塩釜-高城町は独自の線路、高城町-石巻は仙石線経由で運転する列車のことです。正確には異なりますが、利用するうえでは上記の理解で良いでしょう。

1日1往復の特別快速を除いて、仙石線内は高城町、野蒜、陸前小野、矢本、陸前赤井、蛇田、陸前山下と石巻に停車する快速として運転されます。東北本線内は朝・夕は塩釜のみ停車、日中時間帯は仙台-塩釜は各駅に停車というスタイルです。特別快速は塩釜、高城町、矢本と石巻にしかとまりません。

つまり、停車駅は以下の3パターンがあるということです。

・特別快速:塩釜、高城町、矢本、石巻

・快速:塩釜、高城町、野蒜、陸前小野、矢本、陸前赤井、蛇田、陸前山下と石巻

・快速:仙台-塩釜各駅、高城町、野蒜、陸前小野、矢本、陸前赤井、蛇田、陸前山下と石巻

停車駅の違いによらず、特別な料金は不要です。仙台-石巻は快速で60分前後、特別快速で49分です。ただし、特別快速は1日1往復の「記録用」としての意味合いも強いですから、そこまで気にする必要はありません。

だいたい1時間間隔で運転されます。仙台発、石巻発ともに6:00~21:00の設定で、特別快速を含めて1日14往復です。ただし、仙台11時台発、石巻12時台発の設定がなく、2時間程度間隔が開くことがあります。また、仙台に8時台に着く列車の設定もありません(仙台着7:35の次は9:17)。これらから、やや不便な感じは否めません。

朝ラッシュ時は異なりますが、仙台発は毎時20分前後、石巻発は毎時55分前後で設定されています。

全列車4両編成で運転されています。日中時間帯の利用が少なくて2時間の間隔を開くくらいであれば、この時間帯を2両編成に変更するかわりに2時間のダイヤホールを開かないようにするのがマナーです。また、仙台着8:30ごろの列車を設定することも重要です。

このように不便な面はあるものの、仙台から石巻までほぼ1時間間隔で、ほぼ60分で結ぶ便利な交通機関であることは間違いのない事実です。

趣味篇:仙石東北ラインができるまで

昔、仙石線は私鉄として運営されていました。それが戦時中に国策により、国鉄の運営にかわりました。とはいえ、元私鉄の路線なので、周囲の路線とは異なる形態で運営されていました。

東北本線(や仙山線)は交流電化でホームの高さが低いです。したがって、これらの路線は「東北向け」の車両が運用されています。

一方、仙石線は直流電化でホーム高さが高いです。この仕様は首都圏と同じです。したがって、仙石線は「首都圏向け」の車両が運用されてきました。

もともと、私鉄と国鉄という別の組織が運営してきたこともあって、仙石線と東北本線は「近い場所を通りながら交じらない」位置関係にありました(図1)。

図1. 仙石線と東北本線が近い場所を通る様子(googleマップより引用)

図の左下に陸前浜田があります。仙石線の駅です。ここから松島海岸、高城町と仙石線の駅が続きます。その仙石線と交わりながら通るのが東北本線です。

仙石線を建設した私鉄は沿線の街を結ぶために、駅とカーブが多くなっています。一方、東北本線は遠方への輸送に重点を置いているので、駅とカーブは少なめです。石巻から仙台に向かうことを考えると、仙台よりは東北本線を通ったほうが良いことは明らかです。線路が近いとなおさらそう思うでしょう。

しかし、両者は電化方式が異なり、線路が近すぎるために交直流電車を走らせることもできません(交直流電車を走られるには、電気が通らない区間がある程度必要だが、その距離を取れない)。そのため、計画はなかなか進みませんでした。

そんな中東日本大震災が発生し、仙石線が長期間不通となりました。その復興の際に、東北本線と仙石線をつなげる計画が立ち上がりました。交直流電車を使えないという問題点は気動車を使って解決です。

図2. 東北本線と仙石線を連絡する連絡線

そして、東北本線の松島駅近くと仙石線高城町駅付近を結ぶ連絡線を建設しました(図2)。建設後の2015年の初夏に「仙石東北ライン」として運用を開始しました。

実際に仙石東北ラインに乗る

さて、実際に乗ってみましょう。

写真2. 仙台に始発の仙石東北ラインがやってきた

仙台に始発の仙石東北ラインがやってきました(写真2)。私が乗ったのは仙台発8:20の快速石巻行きですが、この列車は折り返しではありません。前述の通り、仙台着8時台の設定はないからです。

写真3. 仙石東北ラインの車内

これが車内です(写真3)。ボックス席を主体としたセミクロスシート車です。従来の仙石線では仙台から石巻までロングシートが原則でしたが、仙石東北ラインの開業でクロスシートの選択肢が与えられました。

写真4. 機器用のスペースがある

この車両はハイブリッド車です。簡単にいうと、ディーゼルエンジンで発電し、その電力を動力とします。電気を蓄えるには電池が必要です。そのため、機械が多くなり、室内に機器を置くスペースが生じます(写真4)。乗客観点では従来の気動車のほうが良かったようにも感じてしまいます。

先に述べたように、仙石線のホームは高いので、この車両は仙石線のホーム高さに合わせています。そのため、東北本線内では列車とホームの段差に注意が必要です。

仙台-塩釜:東北本線部分

写真5. 仙台を発車!

仙台を発車しました(写真5)。東北本線の仙台の北側はあまり都市化が進んでいない印象を受けます。

写真6. 車庫を通過!

車庫を通過します(写真6)。お盆の平日に乗りましたので、車内は空いていましたが、ダイヤは通常通りです。そのため、車庫にはほとんど車両はありません(通勤車は平日の朝ラッシュ時に最も多く運用されるので、車庫には残っていない)。

写真7. 東仙台を通過!

仙台の次の駅は東仙台です。この列車は塩釜までノンストップの快速なので、通過です(写真7)。仙台-塩釜ノンストップの列車を快速、仙台-塩釜間各駅にとまる列車を区間快速と称すれば、わかりやすくなりそうです。

写真8. 仙台貨物ターミナル駅付近を走行

東仙台の次は岩切です。その間に貨物駅を通過します(写真8)。

写真9. 水田を走る

仙台の北側はすぐに水田があらわれます(写真9)。日中時間帯が毎時2本がベースなことも納得できます。

写真10. 陸前山王付近を走行中

仙台市の隣は多賀城市です。その多賀城市に入って最初の駅が陸前山王です。「市」にある駅なのに住宅が少ないです(写真10)。これは、多賀城市の中心が仙石線沿線にあるためです。

写真11. 塩竃の市街地を通る

塩竈の市街地を通ります。塩竈市という地名ですが、塩釜という表記も認められています。人口5万人の都市ですが、それ以上に発展しているように見えます(写真11)。

写真12. 塩釜に停車!

塩釜に停車します(写真12)。この次の停車駅は仙石線の高城町です。ただし、営業上は松島まで東北本線を通り、松島から高城町までは300mの連絡線を通るという建前になっています。

塩釜-高城町:東北本線から仙石線に渡る

写真13. 塩釜を発車すると山あいに入る

塩釜を発車すると、山あいの風景です(写真13)。東北本線に駅はありませんが、観光名所の松島近くも通り、険しい地形を行きます。

写真14. 仙石線と並ぶ

仙石線と並びます(写真14)。観光名所松島が近いことを感じさせる景色です。仙石線でいうと、東塩釜-陸前浜田に相当します。

「仙石東北ライン」の受益者に仙石線の松島海岸を含め、観光客のアクセスを容易にするのであれば、ここに連絡線を建設する手もありました。これをやらず、もっと石巻寄りに連絡線を建設したのは、東北本線の走行距離を長くすることで、石巻への所要時間を短縮する狙いがあったのでしょうか。

写真15. 海岸から離れる

海岸から離れます(写真15)。仙石線と高低差がありますね。

写真16. また仙石線が近づく

また仙石線が近づきます(写真16)。ここが最後の接近地点で、東北本線と仙石線の連絡線もあります。

写真17. 連絡線を進む

連絡線を進みます(写真17)。今まで右側に見えていた東北本線の上り線がないことから、東北本線から外れたことがわかりましょう。

写真18. 仙石線と合流!

仙石線と合流します(写真18)。この列車は気動車ですので関係ありませんが、交流電化区間から直流電化区間に入りました。「東北の路線」から「首都圏の香りがする路線」に入りました。

写真19. 川を渡る

川を渡ります(写真19)。「首都圏の香りがする路線」と記しましたが、これはあくまでも車両面のことです。景色は首都圏のものではありません。

写真20. 川を渡る

川を渡ればまもなく高城町です(写真20)。

写真21. 高城町に停車

仙石線に入って最初の駅が高城町です(写真21)。高城町までは仙石線の電車が1時間に2本運転されます。高城町-石巻は仙石線の普通が1時間に1本、仙石東北ラインの快速が1時間に1本が原則です。

高城町-石巻:仙石線の快速

高城町-石巻は従来の仙石線の快速の役割です。高城町は仙台と石巻の中間に位置します。

写真22. 水田を走る

水田の中を走ります(写真22)。

写真23. と思ったら海岸近くを通る

ずっと水田と想像していましたが、そのようなことはありません。陸前大塚周辺では海岸近くを通ります(写真23)。

写真24. 高架に上がる

次の停車駅の野蒜(のびる)周辺は東日本大震災の被災後に、元の線路よりも内陸部に移設しました。その内陸部に入るのに高度を稼ぎます(写真24)。

写真25. 野蒜に停車

野蒜に停車します(写真25)。東日本大震災の被災とそれにともなう人口流出なのか、震災前よりも利用人数が減っている駅です。このような地域の復興の役に立てるために、新しい運転系統が新設された部分もありましょう。

写真26. 川を渡る

川を渡ります(写真26)。このあたりからはもともとの線路なのでしょうか。

写真27. 水田を走る

水田の中を走ります(写真27)。日本は米の生産量が多いことを実感する景色です。

写真28. 陸前小野に停車

野蒜の隣の駅、陸前小野です。ここで仙石線の普通電車とすれ違います(写真28)。

写真29. 矢本に停車

陸前小野の次の停車駅は矢本です(写真29)。このあたりから住宅が再び増えます。宮城県第2の都市、石巻に近づいたためでしょうか。

写真30. 住宅街を走る

住宅街を走ります(写真30)。矢本から石巻まで9km程度なので、石巻のベッドタウンなのでしょう。

写真31. 陸前赤井に停車

陸前赤井にとまります(写真31)。このあたりは快速といえども、停車駅が多いです。市街地に1時間に1本では少ないので、快速をとめて乗車チャンスを確保しているのでしょうか。

写真32. 石巻の住宅街を走る

石巻の住宅街を走ります(写真32)。

写真33. 陸前山下に停車

最後の停車駅、陸前山下です(写真32)。もうこのあたりだと石巻の市街地の中という感じですね。

写真34. まもなく石巻

石巻の手前です(写真33)。宮城県第2の都市の代表駅近くの風景です。やや寂しい感じがありますが、駅と中心市街地が離れていることもあるので、そのように理解することにします。

写真35. 205系電車が停車中

仙石線の車両は元山手線のものが主力です(写真35)。車両需給の関係で他の路線からやってきた車両もありますが、みんな首都圏経験のある車両ばかりです。

写真36. 仙石東北ラインの車両を眺める

改めて仙石東北ラインの車両を眺めます(写真36)。仙石線を意識して床の高さが高いなどの特徴はありますが、基本的に「地方向け」の車両です。そのような車両が「首都圏の香り」のする路線にやってきたのは変な感じがします。

仙石東北ラインに乗ってみて

仙石東北ラインはそれなりに速度を出し、車両もそれなりに快適なものでした。また、仙石線単独で仙台と石巻を結んでいた時代よりも所要時間が短縮されています。これは、今までの常識の「東北本線と仙石線の直通は無理」ものを崩した結果です。大げさな表現ですが、わずかな距離の連絡線を建設して革命が達成されたともいえます。

とはいえ、革命はやっておしまいということではなく、革命後の手直しは必要です。車内設備でいうと、都市間輸送を意識して転換クロスシートを装備することも重要です。また、1日10往復強であれば、完全なパターンダイヤにすることで、乗りやすくすることは最低限のマナーです。

さらにいえば、仙石東北ラインの開業で仙石線の速達サービスが失われました。JR東日本に多い傾向ですが、新サービスが開始した陰で、古くからのサービスが軽視されることがあります。革命の影に隠れた犠牲を限りなく小さくする視点も重要です。

前後を読みたい!
さて、前後ではどこに行ったのでしょうか?

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