徳島県と和歌山県。近い印象はありませんが、紀伊水道をはさんで隣の県と意外と近い場所にあります。その両県を結ぶ便利な交通機関があります。その便利な交通機関に乗ってみました。
写真1. 徳島港に停泊中の南海フェリー
復習:徳島県と和歌山県の位置関係と移動手段
まず、徳島県と和歌山県の位置関係と、その間を結ぶ交通機関について紹介します。
徳島県と和歌山県の位置関係
徳島県と和歌山県の位置関係をおさらいします。
図1. 徳島市と和歌山市の位置関係
徳島県、和歌山県ともにそれなりに広い県ですが、ここでは両県の県庁所在地どうしの位置関係を示しました(図1)。両者は紀伊水道をはさんで向かい合っており、そこまで遠くないことがわかります。本記事の内容にはあまり関係ありませんが、海をはさんで地形が似通っていることもわかります。中央構造線が日本を貫いていることを実感させられます。
徳島と和歌山の移動方法:南海フェリー
では、その両都市はどのようにして移動できるのでしょうか。最も簡単な行きかたは南海フェリーを利用することです。公式サイトによると、2時間の優雅な時間とも書かれています。確かに、狭い高速バスによる移動よりも楽しい時間を過ごせるのは事実です。
このようなフェリーの特徴は自動車積み込みも徒歩での乗船も可能です。フェリー会社は徒歩と表現をされますが、別に「船まで歩いて来い」と言っているわけではありません。フェリー会社としては、「自動車持ち込みで乗るかどうか」が重要であり、自動車を積載しない乗客の交通手段は預かり知らないところなのです。そのため、徒歩での乗船であってもバスや列車などの交通機関を活用して乗船することは全く問題ありません。
さて、その南海フェリーの運転本数はどうでしょうか。
表1. 南海フェリーの時刻表(難波→徳島港)
表2. 南海フェリーの時刻表(徳島港→難波)
両方向の時刻表を示しました(公式ホームページより引用)。難波は大阪の地名で、南海電車の起点でもあります。南海フェリーと南海電車はグループ会社による経営ですので、両者連携の時刻表となっています。もちろん、徳島港から和歌山港(あるいはその逆)のみの乗船でも構いません。
早朝や深夜に運転されているのが、自動車相手の商売という感じです。個人的には毎時1本確保して欲しいと感じますが、本数を増やしたところで、淡路島経由の利便性(高速バスで所要時間2時間30分~3時間程度)には劣るのでしょう。
旅客運賃は2200円です。繁忙期にはグリーン料金や一部の自動車積載料金は値上がりしますが、普通席を利用する徒歩旅客にとっては関係ありません。主な割引は以下の通りです。
単独で利用する場合、Web割が便利です。この場合、徒歩利用が2200円から2090円に割り引かれます。ただし、南海電鉄に乗る場合は好きっぷや徳島好きっぷが便利です。好きっぷや徳島好きっぷの場合は、フェリーと南海電鉄が合わさって2200円です。つまり、南海電鉄を無料で乗ることができます。南海電鉄の初乗りが150円ですから、Web割と南海電鉄の合計が最低2240円です。一方で好きっぷや徳島好きっぷは2200円ですので、最低でも40円安くなるのです。
好きっぷや徳島好きっぷといった区別がありますが、これは南海電車を先に乗るか、フェリーに先に乗るかで名前が異なるだけで本質的に違いはありません。部外者の邪推ですが、徳島からのきっぷは南海フェリーが販売、南海電車各駅からのきっぷからは南海電鉄が販売と、販売者が異なります。異なる事業者で名称を分けたかったということでしょうか。
なお、好きっぷは徳島港の窓口で販売、徳島好きっぷは南海電車の駅で販売です。南海電車で途中下車前途無効という案内がなされることがありますが、難しいことはありません。南海電車では途中で改札を出ない限り有効ということです。例えば、難波→堺(南海電車の駅)→徳島港と移動する場合、「難波から堺の移動はフェリーと関係ない別の移動でしょ?」ということで、ここまで割引の対象にはならないのです。
徳島駅と徳島港の移動方法
ここまでで和歌山港と難波が直結されており、和歌山港のアクセスは比較的便利なことはわかります(和歌山港にやってくる電車の本数は少ないですが、フェリーとの接続は考えられており、フェリーのアクセスという意味では不便はありません)。
では、徳島駅と徳島港のアクセスはどうなのでしょうか。
図2. 徳島市営バス路線図(公式サイトより加工)
徳島市交通局の公式サイトより引用いたしました(図2)。徳島駅の6番のりばから南海フェリー前行きに乗れば着けます。それも均一運賃区間内ですから、220円で済みます。
また、公式サイトの時刻表に示されている通り、所要時間は25分前後で20分間隔(一部40分間隔あり)で運転されています。一見60分のダイヤホールが開いているように見えますが、「周回便」と称する便が挿入されており、それを含めると20分~40分間隔です。地方都市としては破格の利便性なように見えます。
実際に南海フェリーに乗る
では、実際に南海フェリーに乗ってみましょう。
徳島港の様子と供食設備
南海フェリーには食堂などはなく、売店も航行時間は営業しておらず、食事時間帯にかかる場合は注意が必要です。
図3. 徳島港とコンビニエンスストアの位置関係(googleマップより引用)
参考までに徳島港の近くのコンビニエンスストアの位置を示します(図3)。往復1000mの徒歩となりますが、バスで来る場合は南沖洲5丁目バス停から歩くと便利でしょう。
写真2. 南海フェリーの営業所
南海フェリーの営業所です(写真2)。大きなフェリーターミナルを想像していましたが、実際はバスの地方の営業所のように見えます。
写真3. チケット発売所
チケット発売所です(写真3)。営業所入ってすぐの場所にありますので、迷うこともありません。
写真4. レストランは閉鎖された
レストランは閉鎖され、申し訳程度の売店しかありません(写真4)。私はここで多少の腹ごしらえとしました。
写真5. 船内への移動
ある程度の時間になると船内に案内されます(写真5)。自動車族は自家用車で入るのでしょうが、徒歩客は歩いてフェリーに向かいます。
船内の様子
その通路を向かって入った船内はどのようなものなのでしょうか。多様な設備がありますが、そのうちいくつかを紹介します。
写真6. 一般席が並ぶ
一般席が並びます(写真6)。通常の特急列車のような座席が延々と連なっている感じです。
写真7. グループ向けの席もある
グループ向けの席もあります(写真7)。テーブルがあり、食事するにも良さそうです。
写真8. ビジネス席もある
ビジネス席も用意されています(写真8)。ビジネスマンや自習したい人にちょうど良さそうです。
写真9. カーペット席もある
カーペット席もあります(写真9)。なお、チケット購入時に座席を指定されず、席は早いもの勝ちです。
写真10. 屋外の席
屋外にも楽しそうな席があります(写真10)。私が乗ったときは晴れていましたので、ここに座っている人たちもいました。どちらかというとアクティブ系の人が多かったかな?
写真11. 展望デッキ
展望デッキもあります(写真11)。私はたまにここで外の風景を眺めていました。
写真12. ゲームコーナーもある
ゲームコーナーもあります(写真12)。ゲームにはうといですが、レトロなゲームが多そうです。
これらのほかにグリーン席もあります。南海フェリーの船内紹介を見ると、快適そうな空間が広がっています。
船旅を楽しむ
さて、船旅を楽しみましょう!
写真13. 徳島港を出港!
徳島港を出港しました(写真13)。
写真14. 海を走る
海を通っています(写真14)。
写真15. 現在地!
手持ちの電話機でgoogleマップを開きました。まだ四国に近い場所を通っていますね(写真15)。
写真16. 海を眺める
少し船内で休んだあと、また海を眺めに展望デッキにやってきました。海が広がっています(写真16)。
写真17. 陸地が見える
陸地が見えます(写真17)。これは本州でしょうか。
写真18. 現在地
現在地です(写真18)。だいぶ和歌山に近づいてきました。
写真19. 和歌山の光景
和歌山の風景が迫ってきました(写真19)。緑が多いように見えます。
写真20. 和歌山の光景
少し見る角度を変えました(写真20)。和歌山の市街地でしょうか。建物が多いように見えます。
写真21. 和歌山の光景
もう少し角度を変えました(写真21)。こちらも緑が多いように見えます。
写真22. 和歌山港の様子
和歌山港到着直前の様子です(写真22)。工場や倉庫が多いように見えます。
写真23. 和歌山港の様子
和歌山港の様子を別の角度から見てみました(写真23)。
写真24. 接岸の様子
接岸の様子です。客が通る通路をセッティングしています(写真24)。
写真25. 接岸の様子
その通路に近い場所に移ってみました。この時点ではまだ通路が跳ね上げられています(写真25)。
写真26. 通路が下がってきた
その通路が徐々に下がってきました(写真26)。
写真27. 通路が下がってきた
通路が下がってきました(写真27)。
写真28. 通路を歩く
下船時にきっぷの確認はなく(乗船時に確認しているため)、通路を歩きます(写真28)。南海フェリーの和歌山港から南海電車の和歌山港駅は連絡通路で直結されています。さすがグループ会社、連携はしっかりしています。
写真29. 南海電車の駅が見えてきた
南海電車の駅が見えてきました(写真29)。本数こそ少ないですが、フェリーとの接続は良好でフェリー利用客にとってみたら全く問題ありません。
南海フェリーに乗ってみて
今回、四国から本州に向かうのに初めてフェリーを使ってみました。鉄道よりもゆったりとした空間が特長でゆったりと過ごせました。それだけに供食設備がないことは非常に残念でした。自動車族にしてみたら、前後のコンビニエンスストアで購入し、船内で食べれば良いのでしょう。しかし、せっかくの船旅なのですから、別のものを食べて印象に残る行程にしたいものです。船内の食堂は高望みし過ぎにせよ、船内の売店が出航前に営業終了というのはサービス上疑問です。
かつては関西から徳島連絡のメインルートとも聞きます。現在はそこまでの地位はないものの(淡路島経由が主流でしょう)、それなりに便利で優雅な旅が楽しめるルートであるのは事実です。これからも南海電車とのタッグにより、末永く生き続けるルートであってもらいたいものです。