JR東日本の標準車両として首都圏に大量に導入されたE231系。純然たる通勤車として製作されたのがE231系0番台です。その車内を観察しました。
復習:E231系0番台の概要
まず、E231系0番台の概要を紹介します。
- 形態:4ドアロングシート
- 製造初年:2000年
- 編成:4両編成、5両編成、8両編成、10両編成
- 新製時投入線区:中央・総武線各駅停車、常磐線快速(成田線我孫子-成田を含む)
E231系0番台は、E231系一般型電車の通勤タイプです(E231系電車からは近郊型と通勤型という区分を放棄し、一般型にまとめられました)。当初の車両は中央・総武線各駅停車に導入され、故障が問題となっていた103系電車を置き換えました(1998年~1999年は中央線快速や中央・総武線各駅停車は小さな輸送障害が多発していました)。個人的な体感として、E231系導入後の中央・総武線各駅停車は輸送障害はそこまで多くありませんでした(かなり後に地味に増備車が登場しますが、それはまた別の話です)。
その後、2002年からはやや改良した車両が常磐線快速に導入されました。103系電車285両を280両で置き換える予定でしたが、265両しか導入されず、2004年~2006年は細々と103系電車が残っていたのはまた別の話です(結局、つくばエクスプレス開業後のラッシュ時の減便でそのまま廃車されました)。
これらの2タイプあり、車両需給の関係で中央・総武線各駅停車から武蔵野線や川越線に転属した車両も存在します。
いずれも戦時中の通勤電車からの伝統の4ドアロングシート車です。その点は変わっていません。また、ステンレス車であることは、国鉄の分割民営化直前に登場した205系電車から変わっていません。
E231系0番台の車内を観察する
御託はこの程度にして、実際にE231系0番台の車内を観察しましょう。
写真2. E231系0番台の車内(常磐線快速用)
E231系0番台の車内です(写真2)。グレーで無地の床、ステンレスむき出しのドアとあって、灰色の印象です。先代の209系電車のグレーの壁が暗すぎたためか、壁の色は白色に変わっています。比較的地味な色合いの座席と合わせ、地味なイメージです。
グレー系の空間がイメージされた1990年代の流れを受け継いでいる印象です。
写真3. E231系0番台の車内(武蔵野線車両を撮影)
武蔵野線所属車両を撮影しました(写真3)。素人目には常磐線用と変わらないように見えます。
写真4. ドア間の座席は7人がけ
ドア間の座席は基本的に7人がけです(写真4)。2人+3人+2人に区分けされた場所に握り棒があります。見た目にはうっとおしいですが、座席区分の役に立つとともに、立つ場合にも便利です。道具としてよく考えられている印象です。
座席はかためです。後継のE233系がやわらかくなっていることから、この車両のいすは固かったのでしょう。
写真5. 7人がけの座席
7人がけの座席を別の角度から撮影しました(写真5)。窓が2分割されていて、大きいほうが開きます。前身の209系電車が固定窓を採用し、長時間の運転見合わせの際に問題があったためと記憶しています。
写真6. 7人がけの座席
もう少し右側に目を向けました(写真6)。たまたまと思いますが、窓枠や窓の柱が頭を乗っけるのに適切な場所で、電車内で寝るには重宝します。民鉄車だと位置が合わないので、このような芸当は難しいです。
写真7. 先頭部分は6人がけ
先頭部分のドア間は6人がけです(写真7)。運転室スペースを確保した結果とされていますが、民鉄車は7人がけを採用しています。さまざまな事情があるとはいえ、乗客視点では民鉄車に見劣りしてしまいます。
写真8. 運転室の仕切壁
運転室の仕切壁です(写真8)。窓が2枚ありますが、左手には窓はありません。緊急脱出口があるためとされていますが、乗客的には左手にも窓が欲しいところです。窓の下に手すりがあるのは常磐線用からです。
写真9. 運転室の仕切壁(武蔵野線所属車)
当初の仕切壁です(写真9)。握り棒がないことがわかります。
写真10. 前面展望に優れた例
常磐線や武蔵野線は通勤路線とはいえ、前を見ていると通勤の苦しみも少しは緩和するものです。そのため、223系6000番台のような前面展望を期待したいところです(写真10)。
写真11. 車端部は3人がけ
車端部は3人がけです(写真11)。これは103系電車から続く伝統ともいえる配置です。
写真12. 優先席は独自の色
優先席は独自の色を採用しています(写真12)。E233系以降の車両とは異なり、空間の色までは変えられていません。
写真13. ドアはステンレスむき出し
ドアはステンレスむき出しです(写真13)。2000年ごろは民鉄車の多くはドアに化粧板が付いており、比べるとどうしても見劣りしてしまいます。この車両には黄色のテープが貼っていますね。
写真14. こちらには黄色のテープがない
この車両(常磐線所属車)には黄色のテープはありません(写真14)。もともと黄色のテープはE531系から付いたもので、このようにテープなしがもともとの姿です。写真13は後付けでしょうか。
写真15. ドア窓は単板ガラス
ドア窓は単板ガラスです(写真15)。結露しやすく、複層ガラスよりもサービスレベルが劣るように感じてしまいます。
写真16. もともとの車両は電光掲示板は1段
もともとの車両は電光掲示板は1段です(写真16)。
写真17. 常磐線用からは電光掲示板は2段
常磐線用からは電光掲示板は2段になり、情報提供はやや充実しました(写真17)。民鉄車はもう少し文字数が多いのですが、全てのドア上に表示することを重視し、文字数を妥協したのでしょう。
写真18. 視点をやや上に向ける
視点をやや上に向けました(写真18)。天井は白く、明るさを意識していることがわかります。でも、E235系電車よりも暗く感じるのはなぜでしょうか?壁や天井の明度がやや低いためでしょうか?
(再掲)写真19. E231系電車の車内
(参考)写真20. E235系電車の車内
写真21. 車両間のドアは1か所だけ
車両間のドアは1か所だけです(写真21)。そのため、騒音が入ってきたり、渡り板の音が聞こえたりと印象はあまり良くありません。
E231系0番台の車内を眺めてみて
写真22. 府中本町に停車中の車内
室内の色づかい、座席のかたさ、客用ドアの質素さなど、E231系の車内はやや簡素な印象を受けます。当時は103系電車の取り換えや輸送力増強が意識される(幅広車両なのはまさに輸送力増強で当時の要請に合致していたでしょう)時代にあって、必要な機能をクリアすることに重点が置かれ、「合格点をギリギリ上回る」車両という印象です。
確かに当時の鉄道雑誌には「一点豪華主義は全体の悪魔である」とまで書かれており(JR東日本の担当が書いた内容で、ある意味JR東日本のスタンスがわかるものです)、その思想が如実に表れていると思います。2020年代の車両と異なる部分があり、いち時代を象徴する車両なのでしょう。