北海道新幹線が140km/hから160km/hにスピードアップ

記事上部注釈
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北海道新幹線がスピードアップするようです。ここでは、その詳細を考えることにしましょう。具体的には、青函トンネルで最高速度140km/hから160km/hにスピードアップなされます。これについて考えてみましょう。
E5系、新青森
写真1. 北海道新幹線のE5系(2015年撮影ですけど…)

北海道新幹線が青函トンネルで減速する理由

「新幹線」というくらいですから、最高速度は250km/h程度ということが通常の姿でしょう。しかし、北海道新幹線の青函トンネルは最高速度が140km/hとなっています。その理由を復習しましょう。

青函トンネルの特殊性

青函トンネルは新幹線と在来線が同居しています。新幹線は高速で走行するアレ、在来線は貨物列車です。貨物列車が新幹線とのすれ違いの際に受ける風圧に耐えられないという理由で、減速しています。これに関する1次資料はさまざまでしょうが、以下のものがあります。
(関連リンク、外部リンクです)青函共用走行問題に関する当面の方針

関連リンクの1ページ目にすれ違い時に減速すると明言されています。そう、すれ違い時に問題が生じているのです。300km/hで走行する新幹線と貨物列車がすれ違うと危険だから、新幹線を減速させようという考えなのです。

青函トンネルの高価さ

では、なぜ青函トンネルで新幹線と在来線は共用しているのでしょうか?その理由は、青函トンネルがとても高価な建築物であるためです。1964年に建造を開始して、1989年の開業まで25年もかかっています。このトンネルをもう1つ建造することは大変な困難が立ちはだかるでしょう。そのため、青函トンネルでは新幹線と在来線が共用する必要があります。
また、貨物列車を全廃することですれ違いをなくすことも1つの方策です。しかし、青函トンネルは、本州と北海道を結ぶ唯一の陸上交通路で、物流にとって必要不可欠な設備となっています。「新幹線を通すから貨物列車は通るな」ということも不可能な話です。

今回のスピードアップ

それを踏まえて今回のスピードアップの概要をおさらいします。

スピードアップの概要

今回、青函トンネルで最高速度140km/hから160km/hに向上することになります。時期は2018年度となっており、ダイヤ上は2019年3月のダイヤ改正から反映される予定です(ダイヤ改正前にスピードアップしてもダイヤ上は問題ありません)。これによって、新青森-新函館北斗は3分スピードアップなされて、東京-新函館北斗で最短4時間2分から最短3時間59分に短縮する見込みです。

計算が合わない?

青函共用区間概念
図1. 共用区間の概念図

実は、新幹線と在来線が共有する区間は青函トンネルだけではありません。前後の区間も含めて82kmを共用しています。具体的には、新中小国信号場から木古内までの82kmが共用区間です。つまり、青函トンネルだけではなく、この区間も現在最高速度140km/hに制限されているのです。

では、82kmの共用区間を通り抜けるのに必要な時間を計算しましょう。140km/hの場合は35.14分、160km/hの場合は30.75分です。つまり、共用区間の最高速度を140km/hから160km/hに向上させた場合、4.39分のスピードアップになるはずです。実際の走行速度がこれより下回っていることでしょう。それでも、この速度域で20km/h向上させた場合は、4~5分のスピードアップは確実でしょう。速度が低いほどスピードアップする効果は大きいので、実際の走行速度で算出するとさらに所要時間短縮の効果は大きいためです。しかし、実際には3分でしかありません。

これは、青函トンネルのみのスピードアップと考えれば納得できます。青函トンネル(53.85km)のみで最高速度を160km/hに向上させたとしたら、計算上2.6分のスピードアップです。報道されている3分のスピードアップとおおむね合致します。

(2018年11月21日追記)

現在、報道されている情報によると、現在4時間2分かかっている東京-新函館北斗の所要時間を4分短縮して3時間58分で結ぶということです。この情報には詳細は書かれていませんが、私の考察が当たっていたら、青函トンネルそのものだけではなく、共用区間も含めて160km/h運転すると読み取れます。これは合理的な判断です。メディアの情報には「青函トンネル」と「共用区間」を混同しているのか、多くの読者が興味ないと踏んでいるのか、ここまで書かれていませんね。そのため、私が考察を加えました。

(追記終了)

将来的には、共用区間全体を最高速度160km/hまでスピードアップすること(どうやらこれは実現しそうですね)、そして共用区間を短くすること(中小国信号場-奥津軽いまべつや湯の里知内信号場-木古内に在来線を建設して、共用区間を63kmに短縮)や更なる最高速度向上(180km/hや200km/hも目指して欲しいものです)。
最高速度を200km/hまで向上させた場合は、現状よりも10分短縮します。また、共用区間を82kmから63kmに短縮した場合では、最高速度160km/h(共用していない区間を260km/hと計算、ただし奥津軽いまべつ、木古内通過便)では、現状よりも6分短縮となります。また、最高速度200km/h、共用区間を63kmに短縮の場合は現状よりも12分短縮となります。

スピードアップの意味

今回のスピードアップは3分でしかありません。3分のスピードアップは大して意味がないという人もいるでしょう、確かに単体の3分のスピードアップでは大きな意味はありません。しかし、これが積み重なると大きな意味に発展します。新函館北斗から札幌までの延伸も決まっています。この際に、1分でも短縮されるとシェア争いに大きく影響します。

札幌延伸後の所要時間とシェアの関係についてもまとめています。

その他のスピードアップの方法

この他のアプローチとして、新幹線を通す時間帯と在来線を通す時間帯を分離するということもあります。国土交通省のWGは全時間帯のうち2時間をとることを考えているようです。これでは、1日1往復だけ最速列車を設定するにとどまりそうです。新幹線の運転前に確認列車を走らせることがネックとなっています。現在は貨物列車の後に新幹線を走らせるときに確認列車を走らせていないので、その必要は薄いでしょう(200km/h超で確認列車が必要で、140km/hなら不要というのが杓子定規と思います)。これを応用すれば、「20分だけ新幹線可能時間帯、40分は貨物列車時間帯」と細かくわけることで、運用が可能と思います。これについても(弊サイトの)今後の課題としましょう。

今回のスピードアップについてのまとめ

・青函トンネルを含む82kmは新幹線と在来線が共用している
・その区間ではすれ違い時の風圧を考慮して新幹線であっても最高速度を140km/hとしている
・2018年から最高速度を160km/hに向上させて3分程度スピードアップする

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