2022年ダイヤ改正のまとめ(東京都23区の全路線を網羅)

2022年ダイヤ改正で縮小傾向が見られた首都圏の多くの路線。では、23区内の路線でダイヤ改正前後でどのような変化があるのでしょうか。簡単にまとめてみました。

写真1. 京王電鉄では種別も再編された

2022年ダイヤ改正の内容一覧

まず、2022年ダイヤ改正の内容を簡単にまとめました(表1)。

表1. 2022年ダイヤ改正の一覧

会社路線朝ラッシュ時の減便朝ラッシュ以外
JR山手線外回り3本/時
内回り2本/時
日中も減便
京浜東北線大船方面行き2本/時特になし
中央線(快速)1本/時日中も減便
中央・総武線三鷹方面行き1本/時
千葉方面行き4本/時
特になし
埼京線特になし特になし
京葉線2本/時平日の日中の快速が減便
東海道線4本/時特になし
横須賀線1本/時特になし
湘南新宿ライン特になし特になし
宇都宮・高崎線宇都宮線2本/時
高崎線1本/時
特になし
常磐線4本/時特別快速減便
日中の品川発着増加
常磐線(各駅停車)3本/時特になし
総武線快速1本/時夕方の通勤快速廃止
東急東横線特になし日中の菊名発着便減便
田園都市線特になし特になし
目黒線特になし特になし
大井町線特になし夕方の15分サイクル化
池上線なしなし
多摩川線なしなし
世田谷線なしなし
京王京王線特になし特急の停車駅増加
準特急の廃止
井の頭線なしなし
小田急小田原線特急ロマンスカー増発日中・夕方の減便
西武池袋線特になし日中の有楽町線直通準急の削減
夕方の池袋発着快速の減便
新宿線通勤急行減便日中の閑散時間帯の12分サイクル化
東武東上線なしなし
伊勢崎線区間急行を中心に減便日中:普通と急行の運転区間見直し
夕方:区間急行を区間準急に変更
亀戸線なしなし
大師線なしなし
京成本線特になし日中:特急を快速に変更
押上線特になし特になし
金町線なしなし
京急本線特になし特になし
空港線特になし特になし
東京メトロ銀座線特になし日中時間帯の減便
丸ノ内線特になし日中時間帯の減便
日比谷線特になし特になし
東西線特になし特になし
千代田線特になし特になし
有楽町線特になし西武線直通の池袋-西武線を減便
半蔵門線特になし特になし
南北線特になし特になし
副都心線特になし特になし
都営地下鉄浅草線特になし日中時間帯のエアポート快特の半数を普通に変更
三田線特になし特になし
新宿線特になし日中時間帯の急行を大幅削減
大江戸線特になし特になし
りんかい線特になし特になし
ゆりかもめなしなし
東京モノレールなしなし
北総鉄道特になし下り待避パターン変更
ラッシュ前後に新鎌ヶ谷以東で増発
つくばエクスプレス線特になし特になし
日暮里舎人ライナー特になし特になし
都電荒川線なし特になし

※「特になし」はダイヤ改正があったものの、重要な変更がなかった路線
※「なし」はダイヤ改正がなかった路線

これを見ると、全般的に減便が中心でした。新型肺炎ウィルスの脅威が語られたことで生活様式が変化し、従来よりも移動しなくなったことがその大きな要因でしょう。

大きな変化があった路線

ここでは、大きな変更点があった路線を述べましょう。

JR東日本

写真2. 常磐線にはメスが入ったが、東京を通る本数はむしろ増える

JR東日本の多くの路線では朝ラッシュ時を中心に減便がありました。また、これと同時に朝ラッシュ時の最混雑時間帯に特急列車を設定する例が見られます。

常磐線、宇都宮線、高崎線では上野行きが減便の対象となっています。特に、朝ラッシュ時の宇都宮線の上野行きは設定が:激減しており、朝方の上野着は6:48、7:30、7:49、8:44、10:05の5本(平日ダイヤ)まで減っています。宇都宮線は高崎線よりも空いており、特に上野行きはその傾向が顕著なのでしょう。

総武線(快速)は通勤快速の消滅、京葉線も朝の通勤快速の半減となっており、遠距離通勤の需要が減ったことがうかがえます(両線ともに通勤快速のほうが空いていましたが)。かわりに一部の特急が最混雑時間帯にシフトしています。

特急の最混雑時間帯へのシフトは中央線(快速)、常磐線でも実施されています。

今回、大幅に変更されたのが常磐線で、日中時間帯の特別快速の減便、中距離電車の土浦分断という変更があります。また、上野発着の品川延長のニーズは高かったと見え、日中時間帯の品川発着は毎時2本から3本に増強されました。

このほかに、中央線(快速)と京葉線は平日の日中時間帯で速達列車が減便されています。具体的には中央線(快速)の中央特快が毎時4本→3本、京葉線の快速が毎時3本→2本となっています。個人的には、平日の中央線の快速が毎時9本運転されているので、これを休日と同じ毎時8本にすることのほうが先だと思いますが…。

小田急電鉄

写真3. 町田発着の急行は6両編成

小田急電鉄の日中時間帯の減便も印象に残ります。主要な変更点は以下の通りです。

  • 新宿発着の急行と千代田線直通の準急を統合し、千代田線直通の急行に変更
  • 本厚木方面の利便性を維持するために、町田-小田原の急行を設定

もともと新宿発着急行の新宿-代々木上原と、千代田線直通準急が空いている傾向にあったため、新宿発着急行と千代田線直通準急を統合し千代田線-向ヶ丘遊園の急行に再編しました。これだと相模大野以西の小田原線の速達列車が20分間隔の快速急行だけになってしまうので、相模大野以西の利便性維持のため、町田-小田原の急行(新松田-小田原は各駅停車)を設定しました。

このほか、夕方時間帯の千代田線直通と新宿発着各駅停車は減便されています。

京王電鉄

京王電鉄の停車駅変更もインパクトの強いものでした。主要な変更点は以下の通りです。

  • 特急の停車駅に準特急の停車駅(笹塚、千歳烏山、高尾線内各駅)を追加
  • 準特急の廃止

ダイヤ改正前は特急よりも準特急のほうが設定本数が多いのが実態でした。朝夕は特急といえどもそこまで速度を出せず、準特急に変更しても所要時間的には問題ありません。種別の種類を減らすことも意図して特急と準特急を統合したのでしょう。

なお、夕方の相模原線特急(ダイヤ改正前は準特急)の所要時間が短縮されています。

京成電鉄

写真4. 特急は大幅に削減される

京成電鉄のダイヤ改正の概要は以下の通りです。

  • 日中時間帯の特急(京成上野-成田空港、40分間隔)を快速(京成上野-京成佐倉)に変更
  • 都営浅草線直通の快速の半数(40分間隔)を京成佐倉発着から成田空港発着に変更
  • 特急から快速に変更することで、京成臼井発着の普通の半数(40分間隔)を京成津田沼発着に変更

もともと、40分間隔の特急(京成上野-成田空港)と快速特急(京成上野-京成成田)が運転され、速達列車が20分間隔で運転されていました(このほかに40分間隔で成田空港発着の快速が設定され、京成成田-成田空港も平均20分間隔を確保)。特急は京成津田沼-京成佐倉間で通過駅がありますが、この区間の速達列車を20分間隔で運転する必要はないと判断されたのでしょう。

このため、特急を快速に変更し、京成津田沼-京成臼井の普通を減便することにしました。この区間は快速も各駅にとまるので、どの駅でも平均10分間隔で電車がやってくることには変わりません。ただし、京成上野発着の特急を快速に格下げし、これをそのまま成田空港まで運転すると、京成佐倉-成田空港の運転間隔は13分、27分の交互となり、各駅での乗車チャンスが偏ってしまいます。

そこで、特急から格下げとなる快速については京成佐倉-成田空港を短縮し、そのぶん都営浅草線直通の快速(40分間隔で京成佐倉発着)を成田空港まで延長しました。このため、京成佐倉-成田空港の増減はありません。あくまでも減便対象は京成津田沼-京成臼井です。

こう見るとそこまで悪くないダイヤに見えます。しかし、上野や日暮里から成田方面に向かうには不便になりました。京成上野を出る快速特急は11:34の次は12:14と、40分間隔です。では、快速成田空港行きに接続する電車は何時でしょうか。そう、11:37発の普通京成津田沼行きです。つまり、11:37発を逃すと次は12:14まで設定がなく、最大37分待ちです。

このほかに、毎時1本のスカイライナーは青砥に停車します。

東武鉄道(伊勢崎線系統)

東武伊勢崎線系統は基本的に(特急りょうもうを除き)久喜で分断されています。久喜以北は6両編成、久喜以南は地下鉄半蔵門線直通の10両編成と分かれているためです。浅草-久喜以北の6両編成の区間急行と半蔵門線-久喜・南栗橋の10両編成の急行の双方を走らせる手もありますが、それは輸送力過剰ということで日中時間帯は行っていません。

しかし、朝夕は浅草-館林の区間急行(8両編成)も走ります。これは半蔵門線直通の10両編成と浅草発着の8両編成(※)の双方を走らせても輸送力過剰にならないためです。

※2013年ダイヤ改正まで館林→北千住で10両編成、北千住から6両編成という運用もありました。

とはいえ、社会情勢の変化もあり、朝夕の区間急行が空いてきているのも事実です。そこで、朝の北千住発着の区間急行や夕方の区間急行を中心に減便されました。夕方の区間急行は20分間隔で運転されていましたが、これを60分間隔とし、残りは区間準急としました。区間準急は新越谷以北は各駅にとまります。すると、北越谷以北の普通を減便できます。

また、日中時間帯の東武動物公園-久喜の急行を毎時4本から毎時3本に減便し、東武動物公園-南栗橋の急行を毎時2本から毎時3本に増便しました。かわりに、東武動物公園-南栗橋で毎時2本設定されていた普通を廃止しました。これで東武動物公園-久喜・南栗橋は毎時4本から3本に減少しています。当該の普通は北春日部-東武動物公園でも減便し、北春日部-東武動物公園の普通は毎時6本から4本に減少してます。

このほかに、北千住着10時台を中心に急行を準急に変更しています。北千住断面での速達列車の本数を変えずに全体的な本数を減らす目的と思いますが、せめて区間急行によるフォローを入れるか、日中時間帯と同様のパターンにするかなどの方策は期待したいものです。

このほかに、特急りょうもう号にもリバティ車両を導入するなどの変化もあります。

なお、東上線系統は基本的に変更はなく、一部の地下鉄直通電車のダイヤが変わるくらいです。

西武鉄道

西武鉄道では2020年3月に日中時間帯の有楽町線直通準急を毎時2本増発し、西武有楽町線の運転本数を毎時8本から10本に増やしました。しかし、その乗車率は低く、再び削減されました。当該の準急を西武線だけではなく、地下鉄も含めての減便となり、有楽町線の池袋-小竹向原も減便されました(有楽町線の新木場-池袋は毎時12本のまま変わりません)。

このほか、池袋線の夕方ラッシュ時の快速も減便されました。これで、池袋から所沢までの先着電車は最大15分(毎時25分の準急-快速リレーと毎時40分の急行)間隔となりました。ひばりヶ丘までは間の準急が先着しますが、急行の混雑が懸念されます。

新宿線では、朝に2本設定されていた通勤急行のうち、1本が廃止されました。確かに通勤急行は空いており、減便対象に入ることは納得できます。また、平日日中時間帯の一部で10分サイクルから12分サイクルに減便されています。休日は10分サイクルのままです。

2022年ダイヤ改正のまとめ

写真5. 大手民鉄の主要路線では東武東上線はほぼ変化なし

2022年ダイヤ改正は全般的に後ろ向きのダイヤ改正でした。これは社会情勢の変化に由来するもので、仕方ないととらえることができます。特に小田急電鉄は2018年ダイヤ改正で大盤振る舞いしていたものが元に戻ったと解釈することさえできます(全国に視野を広げても増発したのは中央線名古屋地区くらいでしょうか)。

とはいえ、減便ダイヤは利便性の低下につながり、好ましいものではありません。仮に減便するとしても利便性維持を念頭に置いてもらいたいです。人件費が問題になるのであれば、ワンマン化や所要時間短縮などの、利便性を犠牲にしないやりかたもあります。今回の変化は社会情勢の変化に由来するのですが、2022年3月時点では新型肺炎ウィルスの脅威が語られているものの、以前ほど脅威は語られていません。語られる脅威が減っていくのは今後も続くでしょう。

広い目で見ると、中世、近代、現代と移動需要が増加してきました。今後もその傾向は続くでしょう。そのときに鉄道が選ばれるように一定水準以上のサービスを保ってもらいたいものです。