まもなく全線開業30年を迎えようとする京葉線。開業のころはそこまで沿線人口が多くなかったものの、現在は沿線人口も増え、ディズニーランドのような大型施設が設置されています。その京葉線の混雑状況はどの程度なのでしょうか。そこで、新木場-葛西臨海公園の平日の日中時間帯の混雑を実際に観察しました。
写真1. 京葉線E233系
京葉線平日日中時間帯の混雑状況
以下、長い文章を読みたくない人のために、簡単に結論をまとめます。
・快速がそこそこ混んでいて、少々立ちが出る程度である
・各駅停車は座席が埋まるか埋まらないかという程度というくらい空いている
・両端各2両は空いている傾向にある
混雑調査の概要
簡単に調査方法を紹介しましょう。多くのサイトさんでは、調査方法や混雑指標の言及がない(あるいは指標が書いているページがわかりにくい)のでう~んと考えてしまうところがあります。そのようなことを踏まえて、弊サイトではきちんと方法を示します(さすがでしょ?)。
調査区間の選定
混雑調査は都心側最後の駅で行うべきでしょう。京葉線の場合は都心側でりんかい線、有楽町線と分岐します。そのため、最混雑区間は新木場-葛西臨海公園です。そのため、ここでは新木場-葛西臨海公園の混雑を扱うことにしました。
武蔵野線直通の混雑は舞浜以東で興味深いものがありますが、今回はデータに整合性をもたせるために、武蔵野線直通も同じ区間で調査しています。
調査方法と調査結果
弊サイトでは混雑ポイントという概念を導入しております。その概要を示します(表1)。
表1. 混雑ポイントの概要
せっかくなので、120ポイントと140ポイントの様子をご覧いただきましょう(写真2-3)。いずれも個人情報を守ることを目的に、画質を落としています。
写真2. 混雑ポイント120ポイントの様子(右上に私の指が写っていますね…)
写真3. 混雑ポイント140ポイントの様子(右上に私の指が写っていますね…)
混雑調査結果とその分析
生データを示した後に、詳しい分析をしましょう。
混雑状況の生データ
まずは、各列車の各号車ごとの調査結果を示します(表2)。各列車の混雑率も示すことにしましょう。
表2. 京葉線の混雑状況(平日下り)
表3. 京葉線の混雑状況(平日上り)
全体として、京葉線の快速が混んでいることがわかります。また、両先頭車は空いていて中間の車両に乗客が集中していることもわかります。
混雑状況の分析
では、混雑状況を分析します。混雑ポイントは実は定性的評価です。定量的評価ではありません。もっと簡単にいうと、混雑ポイントは、数字と実際の乗車人数が比例関係にはありません。そのため、比例関係にある混雑率に換算して評価することにします。その後、再度混雑ポイントに換算して定性的(わかりやすい言葉)に表現することにします。
種別ごとの混雑状況
まずは、京葉線快速、京葉線各駅停車、武蔵野線各駅停車に分類して考えることにします。
表4. 京葉線の混雑状況(平日日中時間帯、層別)
京葉線快速が比較的混雑しており、京葉線各駅停車と武蔵野線各駅停車は同等程度に空いていることがわかります。具体的には、京葉線快速は立ちが少々発生する程度、そのほかは座席が埋まるか埋まらないかくらいの混雑ということです。
では、単純に層別するだけで全てが説明できるのでしょうか。同じ京葉線各駅停車という分類だけで見ても、混雑率に違いがあります。武蔵野線も同じように列車ごとに混雑率が異なります。これは前列車間隔という要因で説明できます。上りの武蔵野線各駅停車で考えてみましょう。つまり、以下の2本を比較するということです。
・15:20発武蔵野線各駅停車は混雑率22.8%
・15:39発武蔵野線各駅停車は混雑率41.9%
この2本では倍程度の違いがあります。前列車間隔を見てみると、15:20発は3分前に京葉線の各駅停車が行ったばかりなのに対し、15:39発は7分の間隔があるという違いがあります。他には、時間帯が夕方に近づいているために15:39発が混雑しているという原因もあることでしょう。それでも、前列車間隔は重要な要因なことは確かです。
そして、ここでもう1つの重要な点がわかります。武蔵野線からの各駅停車のほとんどが武蔵野線各駅からの利用であれば、混雑率は京葉線内の前列車間隔と関係ありません(武蔵野線は20分間隔と一定です)。しかし、現実には混雑率に差が生じています。これは、武蔵野線からの利用客がそこまで多くないことを示しています。以前の武蔵野線直通は京葉線内快速運転でしたが、現在は各駅停車です。これは乗客流動に合っているのです。
号車ごとの混雑状況
次に、号車ごとの混雑状況を分析しましょう。生データに示していますが、もう一度上まで戻っていただくのも悪いので、号車ごとの混雑状況を示します(表4)。
表4. 京葉線の混雑状況(平日日中時間帯、号車ごと)
上りの6号車が両隣に比べて空いていることが気になりますが、これは列車1本ぶんの測定ができなかったことなどによるノイズかもしれません。基本的には両端2両が空いており(武蔵野線は8両編成のため各先頭車)、蘇我より先頭車が最も空いていることがわかります。乗客は真ん中の車両に集中しているということです。
輸送状況からダイヤを考える
以上の輸送状況からダイヤを考えてみます。現在の輸送状況からすると、快速が混んでいて各駅停車が空いているという状況です。だからといって、快速を毎時4本、各駅停車を毎時3本というのは暴挙でしょう。各駅停車のみ停車の駅が20分間隔になるということを意味するためです。そのため、現在のダイヤはおおむね適正範囲内と結論することもできます。
ただし、これは現在の輸送状況を是とする前提です。また、乗客の増える海浜幕張でのイベント時に混雑する電車に乗せるという前提でもあります。他線区からのシフトを考えると、京葉線快速、京葉線各駅停車、武蔵野線各駅停車をそれぞれ毎時4本運転(武蔵野線各駅停車は毎時1本は西船橋折り返し、南船橋発着と同一ホームで接続)とすれば良いでしょう。
※南船橋-西船橋も同様に毎時4本運転、そのうち毎時1本だけは南船橋-西船橋のシャトル運転、武蔵野線内10分間隔ということです。
このようにすれば、都区内はどの駅でも10分以内で電車が来ることになり、都営新宿線から若干のシフトが期待できます。また、武蔵野線から東西線に乗りかえる人も京葉線利用にシフトすることができます。本数が増えれば舞浜のレジャー施設に自動車で向かう人も鉄道利用にシフトすることでしょう。沿線は新しい街がゆえに、自動車が利用しやすい街です。そのため、少しでも鉄道利用が便利なように工夫することが重要なのです。
京葉線の混雑に関する基本的なデータを完備しています。
京葉線(混雑基本データ)