以前は首都圏でも有数の混雑であった常磐線。ここ30年では北総線の開業やつくばエクスプレス線の開業で徐々に混雑が緩和しています。その常磐線で帰宅する際の混雑はどうなのでしょうか。平日夕方ラッシュ時に調査しました。
写真1. 乗客が集中する品川始発の中距離電車
常磐線快速夕方ラッシュ時の混雑状況
以下、長い文章を読みたくない人のために、簡単に結論をまとめます。
・混雑にムラがあるものの、平均にすると混雑率は110%程度であり、吊革が埋まる程度の混雑である
・品川始発の中電(土浦・水戸方面に向かう列車)が最も混雑し、そのほかは同じ程度の混雑である
・6~8号車が混雑しており、1号車と13~15号車が空いている
混雑調査の概要
簡単に調査方法を紹介しましょう。一部の個人サイトでは混雑状況を書いているところもありますが、調査方法や混雑度の指標についての言及がないのでう~んと考えてしまうところがあります。そのようなことを踏まえて、弊サイトではきちんと方法を示します。
調査区間の選定
混雑調査は最混雑区間で行うべきでしょう。最混雑区間は北千住→松戸(北千住から1つ終点寄りの駅)です。上野や日暮里からの乗客で混んでいる車内に、地下鉄各線からの乗客が合流する区間です。また、足立区や墨田区勤務の人もいることでしょう。そのため、この区間が最も混雑します。具体的には、北千住発車時点での混雑を観察しています。
調査方法と調査結果
弊サイトでは混雑ポイントという概念を導入しております。その概要を示します(表1)。
表1. 混雑ポイントの概要
せっかくなので、120ポイント~160ポイントの様子をご覧いただきましょう(写真2-4)。いずれも個人情報を守ることを目的に、画質を落としています。
写真2. 混雑ポイント120ポイントの様子(右上に私の指が写っていますね…)
写真3. 混雑ポイント140ポイントの様子(右上に私の指が写っていますね…)
写真4. 混雑ポイント160ポイントの様子(写真3と異なり、ドア部分が圧迫されていることがわかります)
混雑調査結果とその分析
生データを示した後に、詳しい分析をしましょう。
混雑状況の生データ
まずは、各列車の各号車ごとの調査結果を示します(表2)。各列車の混雑率も示すことにしましょう。
表2. 常磐線快速夕方ラッシュ時の混雑状況
このような混雑となっています。品川始発の中電(青で示した列車)が混雑している様子がわかります。
混雑状況の分析
さて、詳しい分析をしましょう。では、混雑状況を分析します。混雑ポイントは実は定性的評価です。定量的評価ではありません。もっと簡単にいうと、混雑ポイントは、数字と実際の乗車人数が比例関係にはありません。そのため、比例関係にある混雑率に換算して評価することにします。その後、再度混雑率に換算して定性的(わかりやすい言葉)に表現することにします。
混雑時間帯の把握
まず、調査した時間帯全てがラッシュ時ピークなのでしょうか。そこで、30分ごとに混雑率を集計しました。30分ごとに混雑した品川始発の中電が発車していたので、30分ごとの区分とさせていただきました。
表3. 混雑時間帯の分析
ここから、混雑のピーク時は北千住断面で18:00~19:00であることがわかります。また、19:00~19:30もそれなりに混雑していることもわかります。さらに、19:30以降はラッシュピークが終わっていることもわかります。
いずれにせよ、(後で触れる列車や車両によっての差はあるものの)混雑率は110%程度であることがわかります。吊革が埋まる程度の混雑ということです。
混雑する列車の選別
さて、混雑する列車はあるのでしょうか。先ほどの混雑時間帯である18:00~19:30の間で分析しましょう。
表4. 列車種別ごとの混雑状況
中電(青表示)、快速(緑表示)で層別し、さらに、上野始発と品川始発で層別しました。品川始発の中電(青表示)が一番混雑していることがわかります。中電は遠くに行くので混雑する傾向にあると推定しましたが、上野始発どうしで比べると差はありません。また、品川始発のほうが東京などから乗車する人で混雑する傾向にありそうですが、快速(緑表示)どうしではそうそう差はありません。
このような場合は始発や行先以外の要因が隠れていると推定することが妥当です。そのために、個別に探ることにしましょう。品川始発の中電は上野発18:08、18:39と19:08です。上野発18:08の列車(北千住発18:19)は5分遅れのために上野、日暮里、北千住の乗り込みが普段よりも多く、そして、直後の上野始発の快速が空いた(間隔が短いため)現象が見られたことがあります。この原因で、混雑の差が普段よりも大きくなったということです。
上野発18:39(北千住発18:51)の列車については、中電という条件、品川始発という条件で集客しやすいことがある上に、上野からの前列車間隔が6分とそれなりに大きいことが、混雑しやすいという結果につながったと考えるのが自然です。
上野発19:08(北千住発19:20)については、品川~東京での前列車間隔が20分と空いている(通常は15分程度)ことに加え、上野断面でも6分空いていることが、他の列車よりも混雑している要因と考えるのが自然です。
上野始発で前列車間隔が狭いと空いています。例えば、北千住発19:26(上野発19:11)の成田行きは上野から南千住まで前列車間隔が3分です。つまり、品川・東京方面から乗り込みが全く期待できなく(これらの駅利用者は3分前の列車に乗る)、乗客の多い上野と日暮里でもそこまで集客しません。北千住では3分余計に停車して特急の待ち合わせをしますが、北千住単体での集客はそこまで多くなく(ただし降車より乗車が多いので最混雑区間となります)、10両編成でもさばける程度の混雑となっているのでしょう。
写真5. 北千住に停車中の快速成田行き(10両編成は上野寄りにとまる)
号車ごとの混雑状況
車両ごとの混雑状況を分析しましょう。
表6. 常磐線夕方ラッシュ時混雑状況(北千住→松戸、号車ごと)
これを見ると、1号車、13号車~15号車が空いており、逆に6号車~8号車が混雑していることがわかります。興味深いのが3号車や6号車と比べて4号車と5号車が空いていることです。これはグリーン車連結とグリーン車なしが混在していて、4号車と5号車を避ける人が一定の割合でいることがその原因と考えられます。13号車~15号車が空いているのは、多くの乗客が降りる松戸・柏・我孫子の各駅で不便な位置なためです。
混雑状況から常磐線のダイヤを考える
混雑状況からダイヤを考えてみましょう。
理想系のダイヤを考える
。私の考える夕方ラッシュ時の適正混雑率は100%以下というものです。常磐線では日暮里から松戸まで同様の混雑が続く(=20分ほどは混雑率が変わらない)ことから、この程度が適正でしょう。現在、18時台と19時台は毎時11本運転されています。
毎時11本運転されていて、混雑率は110%です。これを混雑率100%にするには、毎時13本運転する必要があります。特急が30分サイクルで運転されていますので、一般列車も30分サイクルにする必要があります。すると、毎時14本運転が理想です。
さて、この14本の内訳(理想系)を考えましょう。現在、品川直通は毎時4本運転されていますが、(全て品川始発の必要はないでしょうが)東京直通は2倍の毎時8本運転すると良いでしょう。これにより、上野東京ラインへの乗客集中を防ぎます。また、常磐線から新宿直通のニーズもあることでしょう。新宿直通は東京直通の半数の毎時4本で良いことでしょう。
上野東京ラインや常磐線新宿直通についての私の考察(人はそれを妄想と言います)について知りたい人は、以下のページをご参照ください。なお、いずれも新しいウィンドウで開きます。
・夕方ラッシュ時の上野東京ラインの混雑状況(拠点で観察、現場調査結果)
この記事では混雑状況について大規模に調査した結果を示し、最後にダイヤ案を書いています。
これでは、上野始発のニーズに応えることができません。そこで、上野断面で18:00~19:30は30分間隔で通勤快速を走らせましょう。上野始発で集客が限定的になることや、土浦での切り離しに時間がとられるというデメリットを考慮して、10両編成でも構わないでしょう。乗客が集中する列車を除いて、11号車~15号車が空いている傾向にあることもこの理由です。
ある程度現実的に考える
実際には、そこまで理想通りにはいかないものです。そこで、ある程度現実的な路線で考えてみましょう。まず、毎時10本時代よりも混雑はマシになっています。そのような意味では、20時台の電車2本を18時台と19時台に各1本シフトさせた2017年10月ダイヤ改正は正解でしょう。また、10両編成の成田行きもうまいこと処理しています。
私が観察した範囲では、特急のうち上野発毎時15分は、上野始発のためか比較的空いていました。そこで、この特急を通勤快速にシフトし、この時間帯の快速を1本減便します。そのぶん、上野発毎時30分~毎時00分までの快速を1本増発します。19時台後半を増発してもメリットが薄いならば、17時台後半の増発に充てましょう。つまり、以下のイメージです。
・北千住発18:26、19:26の快速を通勤快速に振替(いずれも3分後に快速があるため)
・北千住発17:48、18:48ごろに快速を設定(18:48発は直後の品川始発の中電の混雑緩和につなげる)
ここでは細かな時刻の考察までは行いませんが、このように特急を通勤快速に振り替えると、多くの通勤客にとってメリットがあることでしょう。
朝ラッシュ時の混雑はどうなのでしょうか。実際に多くの乗客が降りる日暮里で観察しています。
この記事はどちらかというと「狭くて深い」内容でした。常磐線の混雑のデータを簡単にまとめた「広くて浅い」記事も用意しています。
常磐線(混雑基本データ)