近年、8両編成化が計画されている都営三田線。板橋区の住宅街と大手町を結び、とても混雑することが予想されます。しかし、現在は6両編成でさばいています。実際はどうなのでしょうか。最混雑区間の西巣鴨→巣鴨の混雑を実際に確認しました。
写真1. 巣鴨に入線する三田線の電車
都営三田線(西巣鴨→巣鴨)の平日朝ラッシュ時の混雑状況
以下、長い文章を読みたくない人のために、簡単に結論をまとめます。
・朝8:20ごろが混雑のピークである
・混雑率は170%程度であり、車内中ほどに乗客がほぼ隙間なく埋まり、ドア付近にも圧迫が生じる状態である
・号車ごとの混雑の差はあまり大きくない
また、このような混雑は春日までは続くことも確認できました。
混雑調査の概要
簡単に調査方法を紹介しましょう。一部の個人サイトでは混雑状況を書いているところもありますが、調査方法や混雑指標の言及がないのでう~んと考えてしまうところがあります。そのようなことを踏まえて、弊サイトではきちんと方法を示します(さすがー)。
弊サイトでは混雑ポイントという概念を導入しております。その概要を示します(表1)。
表1. 混雑ポイントの概要
せっかくなので、120ポイント~160ポイントの様子をご覧いただきましょう(写真2-4)。いずれも個人情報を守ることを目的に、画質を落としています。
写真2. 混雑ポイント120ポイントの様子(右上に私の指が写っていますね…)
写真3. 混雑ポイント140ポイントの様子(右上に私の指が写っていますね…)
写真4. 混雑ポイント160ポイントの様子(写真3と異なり、ドア部分が圧迫されていることがわかります)
今回の調査区間は最混雑区間とされている西巣鴨→巣鴨としました。この区間が混雑する理由として都営三田線沿線の人が西巣鴨までどんどん乗り込み、巣鴨で山手線に乗りかえるためと説明されています。巣鴨も住宅街であり、ここから都心部に通う人も多いような気がしますが、公式にこのように説明されているので、今回はそれで納得しましょう。ただし、今回は最後に巣鴨から都心までの乗車記を書いていますので、また別の側面も見えます。
都営三田線の混雑調査結果とその分析
生データを示してから、その分析を行います。
混雑の生データ
生データを示します(表2)。
表2. 三田線の混雑状況(朝ラッシュ時、西巣鴨→巣鴨、生データ)
いずれの車両も混雑ポイントが160ポイント(混雑率150%)を超えており、激しい混雑にあることがわかります。数字だとわかりにくいのであれば、どの車両であってもドア付近には圧迫が見られており、車内中ほどもぎっしり埋まっている車両もあるということです。私の目測では混雑率はおよそ170%程度です。
これでおしまいでは芸がありませんので、簡単に分析しましょう。
混雑状況の分析
ここからは分析します。分析することで、少しでも空いている号車や列車を選べれば良いでしょう。
時間ごとの層別
今回は私の都合で7:50~8:20の調査しかできませんでしたが、その中で空いている時間帯はあるのでしょうか。10分ごとに分析しました(表3)。
表3. 時間帯ごとの混雑状況
時間帯ごとに混雑状況をまとめると、巣鴨到着時刻基準で8:00~8:20の混雑がピークであることが読み取れます。このような傾向である場合は、この後の時間帯がさらに混雑している可能性があります。そう統計学では習います。しかし、ここで「常識」を使いましょう。一般に始業時間は9:00で、多くの企業が大手町周辺にあります。巣鴨から大手町は15分程度です。また、多くの社会人であれば始業10分前には職場に着くことでしょう。さらに、駅のホームから職場まで歩いて10分かかることでしょう。このことを考えると、8:30以降にラッシュのピークがあるとは考えにくいです。そのため、巣鴨断面で8:20がラッシュ時のピークと考えても差しさわりありません。これは、この時間を避けると空いているということです。
号車ごとの層別
では、空いている車両はあるのでしょうか。それぞれの号車でどの程度混雑しているのかまとめました(表4)。
表4. 三田線の混雑状況(朝ラッシュ時、西巣鴨→巣鴨、号車ごと)
これを見ると、日吉よりの車両が比較的空いていて(それでも170%近い混雑です)、西高島平よりの車両が混んでいることがわかります。ただし、号車が違っていても混雑状況には大きな差はなく、電車によっては混雑状況が逆転していることもあります。
始発駅や行先による違い
では、始発駅(西高島平と高島平)や行先(白金高輪と日吉)で混雑状況に差はあるのでしょうか。それぞれで分けて考察しました(表5-6)。
表5. 始発による混雑状況の差
西高島平始発のほうが混雑するような予想でしたが、実際は高島平始発のほうが混雑しています。しかし、その差は5%程度とそこまで違いはありません。距離の短い高島平始発のほうが混んでいるのは変ですし、差が少ないことからこの差を明らかな違いがあるとみなさないほうが適切です。つまり、始発駅の違いによる混雑の違いはないということです。これは、西高島平と新高島平から利用する乗客がそこまで多くないことを示しています。
表6. 行先による混雑状況の差
白金高輪行きであっても南北線からの目黒方面行きに接続すること、西巣鴨から白金台まで行く乗客が少ないと予想できることから、行先が異なっていてもそこまで混雑に違いが見られないことが予想できます。事実、行先が違っていても混雑率は2%も違いません。これは誤差範囲です。つまり、行先が違っていても混雑状況は同等ということです。
巣鴨から都心側の混雑はどうなの?
それでは、巣鴨から都心側の混雑はどうなのでしょうか。私は8:19発の白金高輪行きの最後尾に乗りました。最後尾車両(1号車)は巣鴨で空くどころか逆に混雑しました。巣鴨で山手線に近いのは進行方向前よりです。そのため、巣鴨で降りる人がいないのです。この混雑はスマートフォンを操作できないほどです(周囲の人もそうでした)。
千石、白山とも若干ながら人が乗りこみ、さらに混雑しました。この付近まで住宅街が広がり、このあたりから通勤する人もいるためです。ようやく春日で降りる人が現れました。それでも、スマートフォンを操作することは困難です。水道橋でもそこまで降りる人は少なく(進行方向後ろよりだとオフィス街に遠い)、ようやく神保町で多くの人が降りました。このように一息できる雰囲気でした。統計上は西巣鴨→巣鴨が最混雑区間でしょうが、同様の混雑は春日~神保町まで続くということです。
混雑改善の可能性
このように都営三田線は厳しい混雑であることが明らかとなりました(正直、もう少し空いているとタカをくくっていました)。では、この混雑はもう少し緩和できないでしょうか。
1つの答えは6両編成から8両編成への増強です。この混雑を見るまでは、三田線の8両編成化は相鉄直通に伴う東急目黒線からの流入の増加によるものと認識していました。しかし、相鉄直通だの東急直通だのとは関係なく、三田線そのものの混雑緩和が目的の1つなのは明らかです。混雑率171%を2両増結するだけで混雑率は128%まで緩和します。混雑率128%は座席前の吊革が埋まり、なおかつドア付近の密度が高まる程度の混雑です。これであれば、「快適」とはいかなくても圧迫感がないだけ良いです。
もう1つは本数の増加です。8両編成でも2.5分間隔は可能です(10両編成の有楽町線は2.5分間隔です)。現在は3分間隔ですから、2.5分間隔にすれば8両編成化と合わせて混雑率は106%にまで緩和します。この混雑率は座席前の吊革が3/4程度しか埋まらない混雑です。現在の東京のラッシュからするとこれは理想形です。このようにすれば、新板橋で埼京線と連絡を強化して、埼京線-丸ノ内線のバイパスルートとすることも可能です。すなわち、埼京線沿線-大手町地区の人を都営三田線に流すのです。このようにすれば、埼京線の板橋-池袋と丸ノ内線の混雑が緩和します。このように、面で解決-特定の路線の混雑を緩和するのに別の路線を活用-することも必要です。
三田線の混雑データへのリンク
公的機関が発表した三田線の混雑率などの情報はどうなのでしょうか。要点をまとめております。また、他の時間帯の状況へのリンクもあります。コンパクトにまとまったページですので、概要をつかむにはぴったりです!