中部地方で一番の駅。名古屋駅。1980年代までは長距離列車が主体で活気が乏しかったですが、今は地域密着の運営がなされ、地元の利用も多いです。そんな名古屋駅の素顔に迫りました。
写真1. JR東海のタワーもそびえたち、目的地にもなる名古屋駅!
名古屋駅の構造
まず、名古屋駅の構造を紹介しましょう。日本を東西に貫く東海道線や東海道新幹線の途中駅なので、線路が東西方向に伸びているような気もしますが、実際には名鉄や近鉄も含めて線路は南北に通っています(※、図1)。そのため、JRのメインの出口は東側と西側にあります。
※地下鉄桜通線だけは東西方向に線路が伸びています。路線図上では東西方向と描かれる地下鉄東山線も名古屋駅では南北方向に伸びています。
図1. 名古屋駅周辺の地図(googleマップより引用)
名古屋の中心は名古屋駅の東側にあります(新幹線と反対側)。そのため、中心街に向かうには駅の東側から出る必要があります。栄などに向かう際は、地下鉄東山線利用も1つの手でしょう。
さて、名古屋駅では「東口」「西口」という単語は使いません。東側は、桜通口や広小路口と呼び、西側は太閤通口と呼びます。太閤通は「たいこうどおり」と発音します。基本的にメインとなるのが桜通口、南東は広小路口、駅の反対の伸びしろのあるほうが太閤通口ということです。
さて、JR線のホームの使いかたは以下の通りです。
・1~6番線:東海道線(1~3番線が豊橋方面、4~6番線が岐阜方面というのが原則ですが、例外もあります)
・7~10番線:中央線(9番線にホームはありません)
・11~13番線:関西本線
・14~17番線:東海道新幹線(14、15番線が東京方面、16、17番線が新大阪方面というのが原則です)
JR東海の名古屋地区には、通勤電車が多くの頻度で運転される路線(東京でいう山手線など)はないので、在来線3路線、新幹線1路線という比較的シンプルなホーム配置です。
JRの南東側に名鉄と近鉄が、JRの東側に地下鉄2路線の駅がそれぞれ位置します。このような基本知識があると、名古屋駅で迷いにくいでしょう。迷ったら、そんな駅空間を楽しめば良いんですよ!
駅構内を歩く
さて、実際に歩いてみましょう!
写真2. 人の多い高島屋周辺
名古屋駅に隣接してビルがあります(JR東海が気合を入れて建設したビルです)。その高島屋周辺が最も人が多いように感じました(写真2)。駅が人々に利用されているという、最もうれしい場面です。
この先が桜通口です。正面が西側の構図ですね!
写真3. 角度を変えて眺める
これは北側を眺めた構図です(写真3)。
写真4. 中央通路を眺める
中央通路を眺めます(写真4)。この先に新幹線の改札などがあります。JR在来線の改札は近くの左側なので、斜め上の表示ですね。確かフランスだと斜め下の矢印になっていますが…。
写真5. 南側を眺める
広小路口や名鉄・近鉄への方向を眺めます(写真5)。こちらも人が多いですね。名鉄百貨店などはこちらなので、そちらに向かう人も多いのでしょう。
写真6. 桜通口
JRの北側の改札口、桜通口です(写真6)。中央通路の改札よりも影は薄いですが、それなりに存在感があります。
写真7. 太閤通口付近を眺める
場所が変わり、太閤通口周辺です。
写真8. 時計がある
時計があります(写真8)。ちょっとした待ち合わせスポットなのでしょうか。
写真9. 太閤通口から南側を眺める
太閤通口から南側を眺めます(写真9)。それにしても人が少ないです。
写真10. 南側を眺める
南側に進みましょう。人が少なく、先ほどの場所と同じ「名古屋駅」であることを疑うくらいです。
写真11. 太閤通南口を眺める
太閤通南口を眺めます(写真11)。東側は桜通と広小路と別の名前がついていますが、西側は太閤通と太閤通南口という名前なのですね。あおなみ線はこのような不便な場所から出ていますので、利用が振るわないわけです(地下鉄との乗りかえにかなり時間がかかる場所です)。
写真12. 通路を眺める
通路はどちらかというと地味な印象です(写真12)。桜通口周辺のきらびやかな様子を見ると、その思いは一層強くなります。
名古屋駅の列車を眺める
駅の主役は何でしょうか。駅ビル?そこに集まる人々?確かにそのようなものも駅には必要です。しかし、駅を駅たらしめているのがそこにやってくる列車でしょう。そこで、そんな名古屋駅にやってくる列車を眺めました。
普通列車・快速列車を眺める
まずは、地域の足、普通列車や快速列車を観察しましょう。普通列車や快速列車こそが地域の足で、これが充実しているということは、地域の人が鉄道を当たり前のように利用しているということです。
写真13. 名古屋都市圏の主力車両、313系電車!
名古屋都市圏の主力車両は313系電車です(写真13)。313系電車は2両編成、3両編成、4両編成、6両編成があり、輸送状況に合わせて適切な編成を実現しています。関西線は比較的利用が少ないですから、2両編成が主体です。もちろん、朝や夕方には3両編成以上の列車も運転されます。
写真14. その313系2両編成
313系2両編成は中央線でも使われています(写真14)。中央線は名古屋でも利用の多い路線です。そんな中央線は10両編成による運転もありますが、2両編成で足りるのでしょうか。
写真15. 313系と211系の連結
313系電車2両編成と211系4両編成を連結していて、6両編成を組成しています(写真15)。313系電車は転換クロスシート、211系はロングシートの車両で、同じ列車に接客設備の異なる車両が連結されていることになります。これはJRでは札幌地区(721系とそのほかの形式)、名古屋地区、福岡地区、仙台地区などで見つけることができます。
写真16. 211系電車が先頭に立つ
JR発足後のJR東海で集中投入された電車が211系電車です(写真16)。この211系電車はオールロングシート車で、短距離利用には適している車両です。短距離利用客を集客して、JRを日常的に利用してもらおうという意図が現れた車内とも認識できます。
写真17. その211系電車の側面
211系電車の側面も撮影できました(写真17)。座席は通勤電車のものと同じです。名古屋地区には通勤電車が頻繁に運転される「国電」こそありませんが、中央線の名古屋市内は日中でも毎時8本運転されていて、「国電」並みの利便性が確保されています。その「国電」にはこのような車両が合うのでしょう。
写真18. 名古屋都市圏の311系電車
211系電車が投入されたあと、名古屋都市圏の速達化向上のために投入したのが311系電車です(写真18)。現在に至るまで東海道線主体で活躍しています。今は普通電車が主な職場です。
写真19. 311系電車の様子
車内をさっと眺めた感じです(写真19)。彩度の低い座席が並んだ、落ち着いた車内です。
写真20. 313系新快速
その東海道線の速達列車には313系が使われることが多いです。東海道線はおおむね普通列車と速達列車が1:1で運転されています。その速達列車の1つの新快速がやってきました(写真20)。東海道線の速達列車には313系5000番台という車両が使われることが多いです。313系5000番台は全席が前を向くことができる車両で、JRの普通列車用車両としては最高傑作の1つともいえます。
ただし、今回見た車両は313系1100番台で、車両端部の座席がロングシートです。このような細部の違いが313系の魅力ですね!
写真21. 313系1100番台と5300番台の連結
その1100番台は4両編成で、東海道線の速達列車(6両編成か8両編成)には足りません。そのため、(このときは)2両編成の5300番台を連結して、6両編成を組成します(写真21)。5300番台は5000番台の2両編成版で内装は5000番台と同じです。
写真22. 区間快速が停車中
名古屋地区には区間快速という種別もあります。今回撮影できたのは、武豊線直通の区間快速です。武豊線直通の区間快速に続行する東海道線の速達列車は新快速でなく、特別快速として運転されます。大府-名古屋の乗客は区間快速に乗せれば良いので、新快速は大府にとまる必要がなく、特別快速(新快速の停車駅から大府を抜いたもの)として運転されるのです。
長距離用の花形:特急列車
長距離用の花形は特急列車です。名古屋駅に発着している特急列車は以下の通りです。
・特急しなの:名古屋-長野を運転、毎時1本
・特急しらさぎ:名古屋-金沢を運転、2時間に1本
・特急ひだ:名古屋-高山方面を運転、1時間~2時間に1本
・特急南紀:名古屋-新宮方面を運転、1日4往復
このように、新幹線がカヴァーしていない場所を結ぶ列車として君臨しているのが特急列車です。特に、特急しなの号は6両編成で毎時1本という充実した運転本数を誇っています。また、特急しなの号は時刻表上は6両編成ということになっていますが、現場では8両編成や10両編成に増結されていることもある需要の高い列車です。
写真23. パノラマグリーン車を先頭にした特急しなの号
特急しなの号の名物はパノラマグリーン車です(写真23)。運転席越しに迫力ある前面展望を満喫できます!ぜひ乗ってみたいものです。
写真24. ヘッドマークもある
JR東海の特急列車は伝統のヘッドマークもあり、しなの号の示す絵柄が表示されています(写真24)。絵柄入りのヘッドマークが登場したのは国鉄時代の1970年代と聞いています。当時の国鉄は「殿様商売」と罵られていました、諸外国にもそのようなヘッドマークがありませんから、意外と日本国有鉄道のサーヴィス水準は高かったのかもしれません(JR東日本などは伝統のヘッドマークがなく、「国際基準」並みになっています)。
写真25. JR東海の特急列車の感じ
JR東海の特急列車は銀色にオレンジの帯、そして、窓回りの黒色処理というデザインを採用しています(写真25)。1990年代のJR東海カラーが今に残っています。
写真26. ひだ号が停車中!
そのしなの号と並んで本数が多いのが、特急ひだ号です(写真26)。特急しなの号は電車で、特急ひだ号は気動車という違いがありますが、基本的なデザインは同じです。特急ひだ号のほうが窓の位置が高く、「観光特急」色があります。全体的にJR東海の車両は「上質な普通」がデザインコンセプトにあるように思えます。地味で奇をてらわない車両でありながら、決して質が劣るわけではないのです。
(参考)写真27. 奇抜なデザインで乗客を集める特急列車の例(窓割と座席割が合わない、旧式車両を無理やり改造した、などのコメントは禁止!)
写真27. 特急しらさぎ号が停車中!
次に本数の多い特急が、特急しらさぎです(写真27)。名古屋と福井・金沢を結ぶ特急列車で、名古屋からは2時間に1本の割合で運転されています。米原-金沢では毎時1本が運転され、首都圏と福井地区を結ぶ主力ともなっています。
写真28. 特急しらさぎ号が停車中!
その特急しらさぎ号は前後でデザインが異なります(写真28)。銀色とオレンジ色のカラースキームを採用している車両の多い、名古屋駅では目立つ存在です。
写真29. 特急しらさぎ号の表示
特急しらさぎ号の表示も独特のものです。列車名と行先を個別に表示するスタイルで、列車名と行先で表示に使う技術を変えています。列車名は視認性に優れた字幕式、行先は柔軟な対応が可能なLED式です。特急しらさぎ号の車両だけここまで異なるのは変です。統一性にこだわるJR東海にしては珍しいです。
それもそうです!特急しらさぎ号の車両はJR西日本担当です。
名古屋駅のまとめ
このように名古屋駅は数多くの列車が発着します。そして、通勤、通学、遊び、旅行、出張など各自の事情をかかえた個人がそれぞれの事情に合致した列車を選び、そして乗り降りする駅です。特に、名古屋駅のような長距離列車と通勤電車が交錯する駅ではその傾向は顕著でしょう。
こうして、今日も名古屋駅-に限りませんが-は今日も多くの人の人生を運び、それが集まり、1つの輸送形態が形作られるのです。