小田急の混雑状況(複々線化後新ダイヤ、朝ラッシュ時現場調査)

記事上部注釈
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2018年3月に新ダイヤが開始された小田急線。複々線化後は朝ラッシュ時は快速急行だけ混んでいるなどの不満も聞かれましたが、実際はどうなのでしょうか。代々木上原到着時点の混雑を実際に調査して、実態を確かめました。さらに、現場調査結果と各区間の乗客数から、主要駅発車時点の混雑もまとめています。また、今回の調査結果は公式の数値と一致することも確認していますので、信頼性もバッチリです!

朝の代々木上原

写真1. 代々木上原で小田急線から千代田線に乗りかえる人の列

小田急朝ラッシュ時の混雑状況

以下、長い文章を読みたくない人のために、簡単に結論をまとめます。

・快速急行と通勤急行は混雑率は同等であり、ドア付近が軽く圧迫される程度の混雑である
・通勤準急、新宿発着各駅停車、千代田線直通各駅停車の順に空く(千代田線直通各駅停車が一番空いている)
・新宿より先頭が混雑しており、最後尾に向かうほど空いている

小田急朝ラッシュ時ダイヤのあらまし

小田急朝ラッシュ時のダイヤがわからないと、以下の内容がわかりにくいので、簡単に朝ラッシュ時ダイヤについてまとめます。

朝ラッシュ時は、10分間に以下の電車が運転されます。

・快速急行(小田原始発)新宿行き
・快速急行(藤沢始発、江ノ島線内は急行)新宿行き
・通勤急行(多摩線始発)新宿行き
※唐木田始発が30分間隔、他は小田急多摩センター始発です
・通勤準急(本厚木始発)千代田線直通
※一部は海老名始発です
・各駅停車(本厚木始発)新宿行き
※一部は伊勢原始発です
・各駅停車(向ヶ丘遊園始発)千代田線直通

基幹となるのは、快速急行です。快速急行は相模大野-代々木上原で5分間で運転されています。乗客が多くなる新百合ケ丘からは通勤急行が加わります。向ヶ丘遊園からは千代田線直通の各駅停車が加わります。

ダイヤ上のテクニックとして、通勤急行と通勤準急の設定が挙げられます。通勤急行は多摩線始発で、登戸を通過します。向ヶ丘遊園と成城学園前から新宿に向かう貴重な速達列車です。これらの両駅から新宿に向かう速達列車は10分に1本しかありません。そのため、多くの乗客が乗り込む町田や登戸を通過して、ある程度ゆとりのある状態でこれら両駅(向ヶ丘遊園、成城学園前)の乗客を乗せられるようにして、積み残しを防いでいます。特に成城学園前については、通勤急行の間に通勤準急を挿入して、速達列車を5分間隔で利用できるようにしています。

その通勤準急は、千代田線直通で混雑が予想されます。そのため、登戸であえて快速急行に接続して一旦乗客を逃しています。乗客を逃してスペースを空けたところに成城学園前と経堂で乗客を吸収します。さて、通勤準急は緩行線走行でしょうか?それとも急行線走行でしょうか?答えは両方です。成城学園前-経堂だけ急行線を走行し、他は緩行線を走行します。具体的な理由は以下で述べましょう。

登戸発車前後で急行線を走ると、登戸で快速急行を待ち合わせた際にスムーズに発車できません。そのため、登戸では緩行線を走ります。そのまま緩行線を走ると成城学園前で前の各駅停車に追いついてしまいます。したがって、成城学園前で急行線に入ります。急行線には前に快速急行がいますが、快速急行は成城学園前には停車しないため、成城学園前のホームはすぐに空きます。その空いたホームに入ります。その後、急行線を走ります。経堂に停車するころには、後の快速急行が迫っています。迫られたら、緩行線に逃げます。その緩行線には成城学園前で追い抜いた各駅停車の前の各駅停車が待避しています。経堂は緩行線に待避線がありますから、快速急行から逃げつつ、各駅停車を追い抜くことが可能です。代々木上原まではもう前を走る各駅停車はいません。そのため、スムーズに走れるのです。また、ここで快速急行に追いつかれます。追いつかれたまま代々木上原に到着します。代々木上原から快速急行は新宿方面に向かいますし、通勤準急は千代田線に向かいますので、相互に乗りかえられます。このことで、通勤準急から新宿へのチャンネルも開いているのです。

このように、通勤急行と通勤準急が2番手としてきちんと機能しているからこそ、快速急行は速達輸送に専念できるのです。そのような縁の下の力持ち的な存在なので脚光を浴びることは少ないですが、それだからこそここでは両者の役割をきちんと説明させていただきました。


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小田急複々線のダイヤについて述べられていますので、こちらの本も読んでみてください。

混雑調査の概要

簡単に調査方法を紹介しましょう。一部の個人サイトでは混雑状況を書いているところもありますが、調査方法の言及がないのでう~んと考えてしまうところがあります。そのようなことを踏まえて、弊サイトではきちんと方法を示します(さすがー)。

調査区間の選定

本来であれば混雑調査は最混雑区間で行うべきですが、最混雑区間の世田谷代田→下北沢の調査は困難です。これは急行線と緩行線でホームが異なり、1度に確認しづらいためです。そこで、そこに準じた区間の東北沢→代々木上原で混雑を調査しました。具体的には、代々木上原到着時点での混雑を観察しています。

調査方法と調査結果

弊サイトでは混雑ポイントという概念を導入しております。その概要を示します(表1)。

表1. 混雑ポイントの概要

乗車ポイントの概要

せっかくなので、120ポイント~160ポイントの様子をご覧いただきましょう(写真2-4)。いずれも個人情報を守ることを目的に、画質を落としています。

混雑ポイント120ポイント相当

写真2. 混雑ポイント120ポイントの様子(右上に私の指が写っていますね…)

混雑ポイント140ポイント相当

写真3. 混雑ポイント140ポイントの様子(右上に私の指が写っていますね…)

混雑ポイント160ポイント相当

写真4. 混雑ポイント160ポイントの様子(写真3と異なり、ドア部分が圧迫されていることがわかります)

混雑調査結果とその分析

生データを示した後に、詳しい分析をしましょう。

混雑状況の生データ

まずは、各列車の各号車ごとの調査結果を示します(表2)。今回の記事から、各列車それぞれの混雑率も示すことにしましょう。

表2. 朝ラッシュ時の小田急線の混雑状況(東北沢→代々木上原)

小田急朝ラッシュ時混雑調査結果

このような結果となっています。下北沢では前方の車両が出口に遠いですので、1~8号車は下北沢到着時点ではもう少し乗客が多いことでしょう。前方の車両が混雑し、快速急行も混雑していることがわかります。また、代々木上原8:20~8:30が混雑のピークであることもわかります。

混雑状況の分析

混雑状況を分析しましょう。分析の1つの手が層別と聞きます。層別とは、似た項目ごとに分けて分析するというものです。まずは、種別ごとに層別しましょう。

表3. 朝ラッシュ時の各種別の混雑状況

小田急朝ラッシュ時混雑分析(種別ごとの層別)

混雑率を求めました。

・快速急行が154%、通勤急行が150%とほぼ同じです。いいかえると、10分に3本運転されている速達列車には乗客が分散しているということです。ドア部分に圧迫が見られる程度の混雑です。

・通勤準急の混雑率は132%です。真の速達列車よりも混雑率は低いですが、それなりに乗客が乗っています。

・各駅停車の混雑率は110%強とそこまで混雑していません。特に、千代田線直通の各駅停車は空いています。これは経堂で多くの乗客を通勤準急に引き渡しているためでしょう。
※吊革が埋まる程度の混雑です。後ろの車両はもう少し空いています。

次に、号車ごとの混雑状況を分析します(表4)。今回の調査結果から、混雑率も表示しています。

表4. 朝ラッシュ時の各号車の混雑状況

小田急朝ラッシュ時混雑分析(号車ごとの層別)

10両編成で6号車から10号車(8両編成で4号車から8号車)の混雑が激しいことがわかります。混雑を避けるためには、1号車(10両編成は2号車)に乗ると良いです。10両編成の1号車は女性専用車ですから、男性は2号車に乗ると良いということです。特に女性は1号車がおすすめです。女性専用だからといって極端に空いているわけではないことも確認できました。ただし、若干すいていることは事実です。ここに男性が乗車できるようになればもう少し乗客も分散することでしょう。そのような意味では女性専用車というのは輸送改善とは相反する施策です。

千代田線乗りかえ状況

特に目立ったのが、代々木上原で千代田線に乗りかえる乗客の多さです。千代田線は10分に4本運転されており、5分間隔で小田急線からの直通が入線、5分間隔で代々木上原始発が挿入されるダイヤです。この千代田線の間隔が空くと、ホーム上は乗りかえ客で溢れます。特に、快速急行や通勤急行が到着した際は、ホームが乗りかえ待ちの列で埋めつくされます(私が立つのが困難でした)。このことから、通勤時に千代田線へのニーズは高いことも実感できました。通勤準急や千代田線直通各駅停車から快速急行に乗りかえが可能なダイヤになっています。しかし、現実はこれらから快速急行に乗りかえる人はそこまで多くなく、快速急行はこの乗客を受け入れる可能な混雑になっていました。どの程度まで空いたのかは控えていませんが、後ろ寄りの車両であれば、吊革も埋まらない程度までに緩和した車両もあったことも事実です。

混雑状況からダイヤを考える

さて、このような混雑状況からダイヤを考えてみましょう。

各駅停車10両編成化後の推定

近い将来、代々木八幡のホームが10両編成対応となり、新宿発着の各駅停車に10両編成を使えることになります(現在、10両編成の各駅停車は千代田線直通のみ)。まず、このことによる輸送改善の程度を考えます。

現在、新宿発着の各駅停車は混雑率125%です。この125%は全て8両編成ですから、10両編成にした場合は単純に混雑率100%になります。実際には、ここまで空けば速達列車からのシフトも考えられることでしょう。そのため、速達列車が5%未満の混雑緩和、各駅停車が混雑率110%程度になるという程度です。輸送量的には、毎時4~5本にしてもまかなえますが、代々木上原→新宿の各駅停車が10分以上の間隔になることは考えにくいです。そのため、各駅停車を減便してそのぶん速達列車を増発することはないでしょう。各駅停車の混雑率が低い現状、新宿発着の各駅停車10両編成化はごく一部にとどまり、大多数は8両編成のままということもありえます。
小田急2000形通勤急行

写真5. 8両編成の通勤急行(2000形なので8両編成であることがわかります)

現在は最後の通勤急行が8両編成で運転されています。これは運用の都合によるもので、折り返しが各駅停車であるために8両編成しか入れないためです。決して当該の通勤急行が8両で良いというわけでもありません。まっさきにこの通勤急行が10両になることでしょう。

千代田線直通の速達列車運転の芽

速達列車が混雑していること、そして代々木上原で速達列車から千代田線に乗りかえる需要の大きさ、の2点を考えると、千代田線直通の速達列車を増発すること良さそうです。現に、複々線区間の運転本数は毎時36本に過ぎず、他の複々線よりも本数が少ないです。例えば、山手線と京浜東北線の並走区間では毎時48本の運転です。この75%に過ぎないのです。

代々木上原での平面交差を避けるため、そして下北沢での千代田線直通のホーム統一を考えると、代々木上原では緩行線に到着することになります。そうすると、代々木上原には8:21ごろ到着となります。通勤急行と同時の到着です。これでは各駅停車の直前を走ることになりますから、無理な相談です。無理に設定しても経堂以西の急行線が毎時24本の設定かつ、速度差があるために挿入する隙間がありません。そのため、せっかく設定しても「駅間にとまる」結果となり、誰も乗らないことでしょう。仮に設定できたとして、向ヶ丘遊園以西の複線区間は限界いっぱいの毎時30本設定です。この区間の各駅停車は毎時12本設定されていますが、これを毎時6本にすることも困難です。また、この区間の増発も困難です。したがって、設定できたとして「停車駅が少ないけど遅い」という誰も乗らない列車になることは目に見えています。

現在の快速急行や通勤急行の行先を新宿から千代田線に切り替えることも1つの手です。その場合、通勤準急を新宿行きに、藤沢始発の快速急行を千代田線直通に振り返るのが最も単純です(現在、両者は下北沢付近から並走しています)。この場合、代々木上原でのホーム滞留は減少しないこと、そして江ノ島線から新宿直通がなくなるという問題があります。ゆえに、現在のダイヤで落ち着いているのでしょう。

混雑調査の妥当性

この混雑調査が信頼できるかどうかを検証しましょう。最も簡単な検証は、今回の結果と公式値を比べて合っていればそれなりに信用できる結果、そうでなければ信用できない、というものです。今回の混雑調査の結果では平均135%という混雑率でした。これは公式発表の151%と食い違っています。一方、公式発表の区間は一番混んでいる下北沢到着のものです。では、今回の混雑調査の結果から、計算してみましょう。

私の手元に平成22年度都市交通年報があります。2010年度のデータですが、下北沢で降りる人の割合はそこまで変わらないことでしょう。定期利用客の代々木上原-東北沢は78533559人、下北沢-世田谷代田は87037364人です。代々木上原-東北沢の流動を100とすると、下北沢-世田谷代田は110.8となります。今回の混雑調査の結果の135%の10.8%増しの混雑率は149.6%で150%と表現できます。この数字は公式発表の151%とだいたい一致します。つまり、今回の混雑調査の結果は公式発表と同じ数字であり、今回の調査結果は信頼できるということです。

推定:小田急各区間の混雑

この区間の混雑率はわかりました。では、各区間でどの程度混雑するのでしょうか。今回の混雑率と各区間の定期利用者人数から推定しましょう。便宜上、全列車10両編成と考えて輸送力を算出しています。なお、手元にあったデータはやや古いですが、数年経過したところで人の流れの傾向は変わらないので、これで良いことにしましょう。例えば、小田急の最混雑区間の世田谷代田-下北沢の定期券利用客は年間で8703.7364万人利用し、今回調査した代々木上原-東北沢の年間7853.3539万人の1.108倍です。小田原始発の快速急行は代々木上原到着時点で156%です。最混雑区間はこの1.108倍ですから、156%×1.108倍=173%となります。このように、各種別の混雑率を計算します(代々木上原到着時点と下北沢到着時点で各種別の分担率はそう変わらないでしょう)。

これをまとめました(表5)。東京から30km離れた町田から主要駅発車後の様子を収録しています。代々木上原にほど近く、本数も同等、そして代々木上原到着時点と10%程度しか乗客数が違わない下北沢到着時点以外は各種別の混雑率は予想できませんから、全体の平均しか算出していません(といっても登戸発車時点と下北沢到着時点では快速急行の混雑率は変わりません)。

表5. 小田急の各区間の混雑状況一覧表

朝ラッシュ時小田急の混雑率(区間ごと、推定)

町田発車時点ですでに混雑率138%に達しています。これは代々木上原到着時点とほぼ同じ混雑率です。いいかたを変えると、町田からずっと混んでいるということです。ただし、新百合ヶ丘発車時点ではやや空いています。これは新百合ヶ丘で多摩線からの通勤急行が加わるためです。これは、新百合ヶ丘発車時点で通勤急行は空いている(推定で123%程度?)ことを示しています。登戸到着時点ではこの数字より下がっていますが、これは1つ手前の向ヶ丘遊園始発の各駅停車がかなり空いているためと解析できましょう。

この登戸でいったん空きます。町田方面から南武線に乗りかえる人がそれなりにいるためです。その後、成城学園前発車時点では混雑率が131%になります。快速急行と通勤急行は成城学園前発車(通過)時点で、下北沢到着時点と同等の混雑です。つまり、快速急行と通勤急行は混雑率170%程度まで膨れ上がります。通勤準急と各駅停車はこれよりも余裕があるものの、各駅で乗客を乗せてだんだんと混雑していきます。一番混むのは下北沢手前で、快速急行と通勤急行は混雑率170%程度まで混雑、その他の平均では混雑率130%程度まで混雑します。

下北沢で多少、混雑が和らぎます。ただし、代々木上原でも混雑が大きく緩和することなく、新宿までこの混雑は続きます。代々木上原で千代田線に乗りかえる人で一瞬車内が空くものの、千代田線直通から新宿に向かう人が同じくらい乗りこむためです。最終的に新宿に到着する際の混雑率は139%です。

一番混む下北沢到着時点で快速急行は混雑率が170%を超えてしまい、車内中ほどにも吊革につかめない人が発生するほど混んでいます。ただし、車内中ほどでは若干の余裕があります。確かに激しい混雑ですが、登戸発車時点から9分間快走するので、登戸発車時点でこれ以上混まないという安心感はあるでしょう。

小田急小田原線の混雑基本情報

ここまで現場での調査という「狭くて深い」内容を示しました。では、基本的な混雑データなどの「広くて浅い」情報はないのでしょうか。そのような声にお応えして、以下のページを作成いたしました。

小田急線(混雑基本データ)

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