写真1. これもダイヤ乱れへの対策!
湘南新宿ラインは成立したいきさつから、ダイヤ乱れに弱い路線です。各線と線路を共有している以上、致し方ありません。それでは、ダイヤ乱れに対して、無為無策なのでしょうか?答えは否です。今回は目に見える対策2点を見ていきましょう。
ダイヤ設定上のテクニック
私は前回の記事で、上野東京ライン開業前後での横浜での発車時刻を比較しました。その結果、上野東京ライン開業で時刻が大きく変わっていないことを示しています。これらの時刻は湘南新宿ラインの大増発(2004年10月ダイヤ改正)から変化なしなのでしょうか?答えは否です。その証拠に横浜での発車時刻を見てみましょう(表1)。
表1. 横浜発車時刻の比較(2004年と2013年)
これが輸送安定化への1つの答えです。これではよくわかりませんね。2004年と2017年の新宿到着時刻を見てみましょう。
表2. 新宿到着時刻の比較(横浜方面から)
これでもよくわかりませんね。これを南行の新宿発車時刻に重ねてみましょう(表3-4)。表3は2004年のもの、表4は2017年のものです。
表3. 新宿での折り返しの様子(2004年)
2004年のダイヤでは、横浜からやってきた列車が新宿に到着した際に、同じ系統で折り返せないダイヤになっています。例えば、東海道線方面からやってきて10:11に到着した列車を折り返そうとすると、10:15に横須賀線方面に折り返せねばなりません。これは、東海道線からの直通先の高崎線内でダイヤが乱れた際に、新宿での折り返しで宇都宮線に支障してしまうことを意味します。つまり、このダイヤでは新宿以北の列車を全て運休せねばならないのです。高崎線がダメで宇都宮線が大丈夫なときでも、新宿以北の湘南新宿ラインを運休せざるを得ない状況です。これでは、ダイヤ乱れの影響が広がってしまいますね。
表4. 新宿での折り返しの様子(2017年)
一方、現在のダイヤでは同方向への折り返しが可能なダイヤになっています。例えば、東海道線方面からやってきて10:18に到着した列車を折り返そうとしますと、そのまま10:30発の快速(東海道線方面)として折り返すことが可能です。これは、宇都宮線-横須賀線の列車をそのまま運行しつつ、高崎線-東海道線の列車の新宿以北だけ運休することが可能になることを意味します。このダイヤでは北側からの折り返し駅を池袋とすることで同様の措置が可能です。つまり、新宿・池袋で折り返すことで運休とする列車を最小限に抑えることが可能なダイヤに改善しているのです。
このような措置は2008年3月のダイヤ改正で実施されています(そのように中の人が「鉄道ダイヤのつくりかた」で述べていました)。
車両の共通運用化
2015年3月ダイヤ改正でE233系が使用開始となりました。これはサービス向上が主たる目的ではありません。現に、いつもの時刻でも使用される車両が変わりますし、両者の併結運転もあり得ます。これは、何らかのトラブルが生じても「そこにある車両」を柔軟に使用することにより、これ以上のダイヤ乱れを阻止するためと理解できます。また、15両編成のパートナーを同形式にこだわることを捨てることにより、車両運用の制約を少しでも小さくすることを狙っているとわかります。
ダイヤ乱れへの対策まとめ
・新宿や池袋での折り返しを想定するダイヤを組むことで、ダイヤ乱れ時に少しでも影響する範囲を減らす
・車両の運用を柔軟にすることで、ダイヤ乱れ時に余計な心配ごとを持ち込まない
このように「すぐにダイヤが乱れる」という印象を払拭しようと努力している様子がうかがえました。それでも最大の弱点を抱えながら今日も運転しているのです。最大の弱点、それは次回にご紹介することにしましょう。