大和路快速という列車があります。大阪と加茂を結ぶ大阪環状線と大和路線を結ぶ電車です。この大和路快速の行先表示に奇妙なものが見られます。今回はその謎を紹介しましょう！
写真1. 方向幕が切り替わっている様子
奇妙な表示を見てみる
御託は後にして、まずはその「奇妙な表示」を見てみましょう！
写真2. 天王寺に停車中の大阪環状線普通
天王寺に大阪環状線普通電車がとまっています。大阪環状線の電車は321系(ロングシート)のはずですが、この電車は221系(転換クロスシート)です。明らかに大阪環状線の電車ではありません。大和路線の間合い運用でしょうか。
写真3. 行先が高田に変わった
天王寺を発車するとすぐに行先が高田に変わりました(写真3)。種別幕も「普通」から動いています。写真3では、最後尾の種別幕が中途半端な位置にあることから、種別幕が動いていることがわかると思います。
写真4. 区間快速・加茂に変わった
別の電車を撮影しましたが、区間快速加茂行きに変わりました(写真4)。大和路快速と区間快速の違いは大阪環状線内に通過駅のあるかないかの違いです。
写真5. 普通大阪環状線で発車
別の日にも撮影しました。普通大阪環状線の表示で発車しました(写真5)。
写真6. 普通加茂行きに変わった
行先が大阪環状線から加茂に変わりました(写真6)。行先はLED方式ですから、一瞬で表示が変わります。
写真7. 大和路快速加茂行きに表示が変わった
大和路快速加茂行きに表示が変わりました(写真7)。ここまで多くの例を出したのは、私が見たのが単なる一例ではないことを示すためです。
ここまでの動きをまとめると、以下の通りです。
- 天王寺発車時点では「普通 大阪環状線」と表示
- 天王寺発車すぐに「大和路快速 加茂」と表示を変える
ということです。2の段階では「区間快速 高田」などの表示パターンもあり得ます。1つ確かなことは大和路快速や区間快速は天王寺出発時点だけでは、普通大阪環状線と表示するということです。
復習：大和路快速の運転経路
謎解きの前に、大和路快速の運転経路を整理しましょう！
重要区間快速も同じような動きをするので、簡単のためにここでは大和路快速に絞って紹介します。
図1. 大和路快速の概念図
簡単に大和路快速の概念図を書いてみました(図1)。天王寺から大阪に向かい、大阪から天王寺を通り、奈良方面に向かいます(一部高田方面がありますが本記事では関係ありませんので、高田方面については考えなくても問題ありません)。
本当は大阪－天王寺－奈良の系統としたかったところ、大阪－天王寺の区間運転の大阪環状線の普通電車(大阪－天王寺の東側は西側よりも利用が多い)も兼ねているという説明が、理解しやすいと思います。
ここで重要なのは、大和路快速は結果的に大阪環状線を1周することです。
天王寺駅発車時点では？
では、天王寺駅発車時点ではどうなのでしょうか？簡単に図示します。
図2. 大和路快速の天王寺出発時点の様子
大和路快速が天王寺を環状線の大阪方面に出発したときの状態を示しています(図2)。天王寺から奈良方面に向かうには、大和路線のホーム(16番のりば)から発車する電車に乗るほうが断然早く着きます。そのため、天王寺から奈良方面に向かうのに大阪環状線のりばに向かう必要はありません。下手に「大和路加速 加茂」と表示すると、大回りする経路に乗らされることになります。
図3. 天王寺出発時の様子(奈良には緑色が断然早く着くので、赤の電車を奈良方面と表示する必要がない)
なお、次の駅からは奈良方面に1本で向かえますので、大和路快速の表示となります。天王寺を出発したら、次に方向幕の意味をなすのが次の停車駅ですから、天王寺出発直後に方向幕を切り替えるのです。
では反対方向は？
では、反対方向はどうなのでしょうか。奈良→天王寺→大阪と通ってきた電車は、大阪から普通天王寺行きと表示されます。そのため、このような現象は生じません。
写真8. 大阪に到着した大和路快速(普通天王寺行きの表示)
では、大阪まではどのように表示されるのでしょうか。ここで奈良駅の発車案内を見てみます。
写真9. 奈良駅の発車案内
最終的な天王寺を行先に表示すると、大阪に行かないと誤解される可能性があります。そのため、あえて行先を西九条・大阪方面と表示しているのです(写真9)。
簡単なまとめ
簡単にまとめましょう。
- 大和路快速は天王寺－大阪－天王寺－奈良方面と複雑な走行経路
- 天王寺出発時点で奈良方面に向かう客が乗る必要がなく、あえて大阪環状線と表示
これは誤乗を防ぐJR西日本のおもてなしの精神ともいえましょう。