ローザンヌからベルンまではスイスでも有数の幹線です(チューリッヒからジュネーブまでがスイスの幹線にあたり、ローザンヌからベルンはその途中です)。幹線区間を走るということは無味乾燥な車窓なのでしょうか。それともスイスらしく美しい車窓を堪能できるのでしょうか。基本的な利用方法から具体的な車窓まで詳細に観察してみました。
写真1. 堂々たる風格を見せつけるインターシティ
復習:ジュネーブ、ローザンヌからベルンへの特急の概要
いきなり乗車記を書いてもわけがわからないことでしょう。そのため、知っている人にとってはうざいでしょうが、この区間の特急について簡単にまとめます。
図1. スイスの位置関係
スイス全土の位置関係を示します。中央よりもやや北西よりに首都のベルンがあります。この西側にローザンヌとジュネーブがあります。首都ベルン、ローザンヌ、ジュネーブはいずれも人口がスイスの上位5つに入っており(残り2つはチューリッヒとバーゼル)、これらを結ぶ路線はスイスの幹線です。事実、東部のチューリッヒからベルンを経由して、ジュネーブに至る路線はスイスでも重要な幹線です(ローザンヌはベルンとジュネーブを結ぶ幹線上に位置します)。この説明ではわかりにくいですか?そうですか。それでは、スイスの長距離列車網を示します(図2)。
図2. スイスの特急列車網
この系統図でチューリッヒからベルンには多くの系統があることがわかります。このメインとなる線(赤色)はさらに西側に伸びていて、最終的にはジュネーブまで延長されていることもわかります。この赤色の系統はIC1系統とされています。通常、重要順に番号を付けますので、1が付いているこの系統は重要度が高いことがわかります。ただし、IC1系統は1時間に1本しかありません。そこで、IR15系統が補充に回ります。この系統はジュネーブ-ベルン-ルツェルンで運転されます。IRはICより停車駅が多く、やや遅いです。とはいってもジュネーブからベルンまではIRより4駅多いだけです。特筆すべきことは、このIRでベルンまで移動したら、別系統のチューリッヒ方面のICに接続しており、ジュネーブ、ローザンヌ、ベルン、チューリッヒの各駅は1時間に2回の乗車チャンスがあることです。
ここまで書くとわかりにくいでしょう。そこで、簡単に表にまとめることにしましょう(表1)。
表1. ジュネーブ、ローゼンヌ、ベルン、チューリッヒの時刻表
※ベルンでの斜字は乗りかえが必要なことを示す
表2. チューリッヒ、ベルン、ローザンヌ、ジュネーブの時刻表
※ベルンでの斜字は乗りかえが必要なことを示す
チューリッヒとベルンの行き来は30分間隔です。一方、ベルン以西は停車駅の違いによる所要時間の違いにより、完全な30分間隔ではありません。特に、ジュネーブでの運転間隔は大きく開いている箇所があります。ただし、ローザンヌとジュネーブの間は(今回の記事では省略していますが)毎時1本の区間運転の快速があり、それなりの運転間隔が確保されています。チューリッヒは別格として、他の都市はいずれも20万人未満です。それでも、毎時2本を確保していることは素直にうらやましいです。
実際に列車に乗る
ここまで説明が続きましたが、御託はこの程度にして、実際に乗ってみましょう。今回はジュネーブから乗りました。
写真2. ローザンヌでの発車表示
ローザンヌでの発車表示です(写真2)。ベルン、チューリッヒ方面であることがわかります。
写真3. 機関車けん引列車がやってきた
この系統は従来の機関車けん引列車です(写真3)。スイスの多くのICが機関車けん引です。電車はごく一部に限られます。
車内を眺める
では、この特急はどのような車内なのでしょうか。その車内を紹介しましょう。
写真4. デッキ部分
デッキ部分は日本の特急列車と同じく、客席から離れています。ただし、日本と異なるのは、デッキに段差があることです。
写真5. デッキから客席を眺める
デッキはこのように客席と離れています(写真5)。このドアがあることで、客席は駅の喧騒から切り離された、特別な空間となります。
写真6. 1等車の4人掛けの座席
1等は4人のボックスシートと2人の向かい合わせの座席が並んでいます。こちらは4人掛けの座席です(写真6)。4人掛けの座席は進行方向左側に配置されています。
写真7. 1等の2人掛けの座席
反対側は2人掛けの座席です。ローザンヌからベルンまでは進行方向右側の景色が良いですが、それにあたるのは2人向かい合わせの座席です。
写真8. 天井の照明は意外と簡素
ヨーロッパの列車は照明にこだわりがあるイメージですが、この車両はそこまでではありません(写真8)。この車両が古いためでしょうか。
写真9. テーブルの下にはごみ箱がある
テーブルの下にはごみ箱があります(写真9)。ここに使用済みのペットボトルなどを入れることができます。
写真10. 洋式のお手洗い
トイレは当然洋式です(写真10)。そこまできれいな感じはしませんが、最低限の水準は満たしています。
写真11. トイレには鏡もある
トイレには鏡もあります。身だしなみチェックができるので、便利ですね。
車窓を堪能する
さて、スイスの美しい車窓を堪能しましょう。この路線は幹線で味気ない車窓というイメージがありますが、そのようなことはありません。湖と緑の美しい国、スイスならではの車窓が広がります。
写真12. 美しいレマン湖
写真13. 美しいレマン湖
写真14. 美しいレマン湖
写真15. 美しいレマン湖
ローゼンヌの南にはレマン湖が広がります(写真12-15)。レマン湖の西半分は傾斜はゆるやかですが、東半分は傾斜が張れしい場所にあります。そのため、線路は高台を走ります。ここからの景色は想定していませんでしたが、とても美しいです。
写真16. 別方向からの線路が合流
レマン湖から離れると、別方向からの線路と合流します(写真16)。これはモントルー方面からの線路です。モントルー方面はローゼンヌから分岐していますが、ベルン方面とモントルー方面は近い場所を並走します。つまり、モントルー方面からベルン方面に向かう場合にローザンヌを通ると時間がかかってしまいます。そのため、短絡線を建設しているのでしょう。
写真17. 牧草地が広がる
写真18. 牧草地が広がる
湖と離れたら、今度は牧草地が広がります(写真17-18)。スイスが舞台の有名なアニメといえば、アルプスの少女ハイジです。そのようなイメージと一致する光景です。
写真19. 牛も点在
当然、牛もいます(写真19)。ただし、牛そのものを撮影するのは難しいです。車窓から見ると点の存在で、列車が高速で移動しているためです。
写真20. フリブール(フライブルク)に近づく
フリブールに近づきます(写真20)。同じ街なのに2通りの呼び名があります。フリブールはフランス語の呼び名で、フライブルクはドイツ語の呼び名です。この周囲を流れるサリーヌ川(ザーネ川)を境にして使う言語がわかれています。この街にはフランス語を話す人とドイツ語を話す人がいるということになりますが、意思疎通は大丈夫なのでしょうか。
写真21. フリブール(フライブルク)に停車!
写真22. フリブール(フライブルク)に停車!
そのフリブール(フライブルク)に停車します(写真21-22)。駅はザリーヌ川の西側なので、フランス語が優勢なのでしょうか。その後は記憶にありません。寝てしまったようです。この日の朝は夜行列車の中、そして、初めての国スイスを歩き回り、昼食を食べたために睡魔が私を襲ったのです。
写真23. まもなくベルン
まもなくベルンです。スイスの首都でありながら、人口は10万人少々しかありません。したがって、わが首都東京のような巨大な市街地もありません。スイスは山あいにある国ですので、そこまで食糧もなく、人口が増えなかったのでしょう(近隣のドイツやフランスは広大な平野があります)。こうして、私とスイスのメイン幹線の付き合いは幕を閉じたのです。
さて、前後ではどこに行ったのでしょうか?
ローザンヌからベルンへの特急の旅(スイス、インターシティ、19年夏)←今ココ!
ベルンからインターラーケンまでの鉄道旅(スイス乗車記、インターシティ、19年夏)(次)→
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ハンガリー、スイス、フランス旅行のまとめと振り返り
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