ユーロナイトに乗る(ブダペスト→チューリッヒ、19年夏)




ヨーロッパの各地を結ぶ夜行列車であるユーロナイト。中央ヨーロッパの多くの夜行列車が「ナイトジェット」に置き換えられましたが、今でもユーロナイトが残っているところもあります。今回はその1つのハンガリーからスイスの系統に乗りました。この系統特有の注意点も述べています。

写真1. ブダぺスト発着の夜行列車にはハンガリー車が使われることが多い


復習:ユーロナイトとは?

いきなり、「ユーロナイトに乗りました♪」と言われても、内容がわからない人にとってはいらつくばかりです。そこで、ユーロナイトとはどのようなものかおさらいしましょう。

ユーロナイトは、ヨーロッパで多く運行される夜行列車のことです。ヨーロッパの夜行列車で多くの人が思い浮かべるのはオリエント急行でしょう。しかし、ユーロナイトはオリエント急行とは異なり、庶民に根付いた夜行列車です。私がはじめてユーロナイトに接したのは2016年8月のことでした(ドイツのミュンヘン中央駅で確認しました)。

ブダペスト行きのユーロナイト(電光掲示板)

写真2. ミュンヘン中央駅のザクレブ行き、ブダペスト行きの表示

ユーロナイトの寝台車の表示

写真3. ハンガリー国鉄車の寝台車

このときに普段着で乗っている人が多いことに気づきました。そのため、寝台車だけではなく、普通の座席車や簡易寝台車も必ず連結されているのが特徴です。

西ヨーロッパは高速列車の発達などによってこのような夜行列車は衰退しています(ただし全廃ではありません、私が西ヨーロッパの夜行列車を別途まとめています)。しかし、ドイツより東の中央ヨーロッパと東ヨーロッパには多くの夜行列車が残っています。このような夜行列車をまとめてユーロナイトと呼んでいます。2016年12月以前はドイツ鉄道がシティナイトラインというブランドで、2016年12月ダイヤ改正以後はオーストリア連邦鉄道がナイトジェットというブランドで、それぞれ夜行列車を運営していますが、これはユーロナイトの一部をブランド化しているということです。そのため、ナイトジェットもユーロナイトの一種です。

まとめると、ユーロナイトとはヨーロッパで多く運転される夜行列車の総称ということです。また、ユーロナイトは普段着で乗れる列車で、簡易寝台車と座席車が連結(個室寝台はあったりなかったり)されています。日本でいう四季島のようなクルーズ列車とは真逆の存在と考えればわかるでしょう。

こちらもチェック!ナイトジェットについて
上でナイトジェットという単語を出しましたが、これはオーストリア連邦鉄道(オーストリアの国鉄のようなもの)が運営している多くの夜行列車の総称です。ただし、紛らわしいのはナイトジェットパートナーとされる列車があることです。

多くの列車があるのできちんとまとめないとわからないことでしょう。そこで、私が意地と根性でまとめました。

中央ヨーロッパの夜行列車~ナイトジェットの概要と運行形態解析

スイスとハンガリーを結ぶ夜行列車

ユーロナイトの概要をご理解いただいたところで、今回乗るユーロナイトについて簡単に紹介します。今回私が乗ったのはブダペスト(ハンガリー)とチューリッヒ(スイス)を結ぶ夜行列車です。まずは時刻と経路の概要をご覧いただきましょう。今回乗る系統はナイトジェットパートナーなので、ナイトジェットのホームページにも掲載されています。

表1. ブダペストからスイスまでの停車駅と途中経路

ブダペスト→チューリッヒ

ブダペストを20:40に出発してチューリッヒに8:20に到着します。実に11時間40分もの長旅ですね。ハンガリーとスイスを含めて5か国を通ります。「ハァ?途中のオーストリアを含めて3か国だろ?」と思う人も多いことでしょう。しかし、もう2か国を通るので5か国なのです。途中のザルツブルクとインスブルック付近を拡大してみます(図1)。

オーストリア西部の走行経路

図1. ザルツブルクとインスブルックの間でドイツを通る

ザルツブルクとインスブルックを赤丸で囲みました。その間で通る場所はローゼンハイムです。このローゼンハイムはドイツの都市です。そう、ザルツブルクとインスブルックの間はドイツを通るのです(ただしオーストリアもドイツもドイツ語圏で同じEUなのでそこまで国境を越えた感覚はないでしょう)。また、オーストリアとスイスの間の走行経路を拡大してみましょう(図2)。

リヒテンシュタインを通過

図2. リヒテンシュタインも通る

オーストリア(図の右側)からスイス(図の左側)の間でリヒテンシュタインを通ることがわかります(ただしこの付近のスイス、リヒテンシュタイン、オーストリアともにドイツ語圏なので別の国という感覚は薄いでしょう)。そうフェルトキルヒとブッフスの間でリヒテンシュタインを通過します。このように、ハンガリー、オーストリア、ドイツ、リヒテンシュタイン、スイスを経由しているので、5か国を通ります。余談ですが、私のこの回の旅行はこの後にフランスも訪問しているので、6か国の旅行になります。

普通の人にとっては何か国を通るのかどうでも良いでしょうが、正確な情報を提供したいのできちんと解説させていただきました。

逆方向の運転時刻も示します(表2)。

表2. チューリッヒからブダペストまでの運転時刻と運転経路

チューリッヒ→ブダペスト

チューリッヒを21:40に出発してブダペストに9:24に着きます。どちらの方向の列車もブダペストは東駅、チューリッヒは中央駅に発着します。ブダペストには3つのターミナル駅がありますから、間違わないようにしましょう。

ブダペスト東駅での待ち時間

ブダペスト東駅で早めに列車が入ってきましたから、撮影します。電光掲示板を撮影し忘れましたが、この列車はミュンヘン行きとチューリッヒ行きの連結です。前がミュンヘン行き、後ろがチューリッヒ行きです。いくら夏だからといっても暗くなり始めていますから、なかなかクリアな撮影は困難です。

写真4. ミュンヘン行きの表示がある

各ドアに行先が表示されています。この写真を見るとミュンヘン行きの表示があります(写真4)。26X号車はブダペストからミュンヘンを示す号車番号でしょうか。

実際は8両編成で先頭側から以下の通りでした。

263号車 ミュンヘン行き寝台車(ハンガリー車)
262号車 ミュンヘン行き簡易寝台車(ハンガリー車)
261号車 ミュンヘン行き2等座席車(ハンガリー車)
260号車 ミュンヘン行き2等座席車(ハンガリー車)

319号車 チューリッヒ行き2等座席車(ハンガリー車)
318号車 チューリッヒ行き2等座席車(スイス車)
317号車 チューリッヒ行き簡易寝台車(ハンガリー車)
316号車 チューリッヒ行き寝台車(ハンガリー車)

写真5. ミュンヘン行きの先頭はハンガリー車

ミュンヘン行きの先頭車を撮影してみました。まだ機関車は連結されていません。これもハンガリー車でした(写真5)。

写真6. チューリッヒ行きの318号車はスイス車(色合いがスイス国鉄のもの)

チューリッヒ行きの一部の車両はスイス車による運転でした。この配色はスイス国鉄によくみられる配色です。ヨーロッパの夜行列車の多くは複数の行先の車両をつなげて運転します。これは特定の区間で列車を別々に運転するよりも1本にまとめたほうがコストが安くなる(運転士も1人で済む)ためです。利用者的には車両を間違えると全く変な方向に連れていかれるというリスクがあります。そのため、車内であまり動き回らないほうが得策です。

今回の列車はオーストリアのザルツブルクで切り離されます。そして、ザルツブルクでウィーン発(これはナイトジェット)とプラハ発を連結します。切り離す駅と連結する駅を同じにすることで、連結・切り離しに必要な人員を集約してコストダウンを図っていることがわかります。

私が乗る車両のドアはなかなか開きませんでしたが、ようやく開きました。それでも20:20にドアは開き、発車20分前に車内に入れました。サンライズ瀬戸や出雲と比べればよっぽど余裕があります。

コラム.併結列車の連結相手について
さて、ここでさらりとザルツブルクで連結相手を変える、と記しました。では、連結相手は私の乗る列車(ブダペスト→チューリッヒ)と連結する以外は単独で走るのでしょうか。答えはNo!です。そこで、今回乗る列車の連結相手はどのようなオペレーションで走るのか確認しましょう。

1) ブダペスト→ミュンヘンの列車

こちら自体は比較的単純です。ザルツブルクでリエーカ(※)発ミュンヘン行き、ザクレブ発(※)ミュンヘン行きとヴェネツィア発ミュンヘン行きの併結列車と連結します。ザルツブルクからは4つの始発駅を出たミュンヘン行きとして走るのですね。余談ですが、リエーカ発とザクレブ発は途中のリブリャナ(※)で連結して1本の列車として走ります。また、ヴェネツィア発とクロアチア発(リエーカもザクレブもクロアチアなのでこう表記しました)はフィルラッハで連結します。文章にすると難しいですが、南のほうからやってきた3つの列車と連結すると理解すれば、簡単な話です。

※リエーカはクロアチアの海岸沿いの都市、ザクレブはクロアチアの内陸の首都、リブリャナはスロベニア(スロバキアではない!)の首都です。クロアチア発の列車とクロアチア発の列車がスロベニアで連結されるというのは一見変に見えますが、両国は戦後から1991年まで同じ国(ユーゴスラビア)でした。戦前はリエーカだけ別の国だったというのはまた別の話です。

2) ウィーン→チューリッヒの列車

こちらもそう難しくありません。ザルツブルクまでヴェネツィア行きと連結して走るだけです。

3) ザルツブルクのオペレーション

ここまではそう難しい話ではありません。これくらいのことは昔の日本でもやられていました。ここで注目したいのは1)がヴェネツィア発と連結、2)でヴェネツィア行きと連結と、それぞれ書いたことです。このオペレーションはイタリア行きとイタリア発をまとめて考えていることがミソです。日本の感覚で表現すれば、「上り」と「下り」のオペレーションが密接に関係しているのです。

ユーロナイトの車内

ブダペストからチューリッヒの夜行列車の車内を紹介したサイトさんを見かけませんでしたので、紹介しましょう。

写真7. 通路は片側に寄っている

通路は片側に寄っています(写真7)。日本のサンライズエクスプレスとは異なり、ベッドは進行方向と直角に配置されています。そのため、通路は片方に寄ります。

写真8. 室内全体

室内全体です(写真8)。意外と狭い空間であることに気づかされます。上段の人ははしごを伝ってベッドに行き来する必要があります。なお、このはしごの配置は間違いです。入口の扉にはしごを掛ける場所があるので、そちらにはしごを掛けるのがハンガリー国鉄流です。ベッドと逆側の壁は銀色で部屋を広く見せるための工夫がなされていました。そうすると、ずっと自らのアホ面が視界に入ってしまい、あまり気持ちのよいものではありません。

写真9. ドアにはカギがかかる

ドアにはカギがかかります(写真9)。ハンガリーの車掌さんは「絶対にカギを閉めるように」と言っていました。私は小心者ですので、そのようにしました。ただし、カギは外から開けられません。つまり、トイレで外に出るときはカギを開けっぱなしにするという不用心な構造です。

写真10. テーブル兼洗面器

洗面器も備わっています。洗面が必要な場面はそう多くありませんので、いつもはふたを閉めています(写真10)。ふたを閉めていると、テーブルとして活用できます。

写真11. 洗面器を使う

洗面器を使うときの状態です(写真11)。ふたを開きます。

写真12. ベッドの小物入れ

ベッドには小物入れがあり、とても重宝します(写真12)。目覚ましなどをここに置くと良いでしょう。

写真13. 窓のカーテンを閉める

窓のカーテンは閉められます(写真13)。駅に停車中に着替えているときなや深夜に明るい駅で目が覚めないようにするためにも重宝します。

写真14. 車両全体の見取り図

車両全体の見取り図も掲示されていました(写真14)。

室内は赤色が基調のちょっとシックな内装でした。ただし、ナイトジェットの車内よりも広く感じました。

写真15. (参考)ナイトジェットの室内

楽しいユーロナイトの道中

ブダペストを発車すると、陽気な車掌さんがチケットを見に来ます。私は事前にドイツ鉄道のサイトで手配したチケットを見せて、それで終了でした。紙にスタンプを押すため、ハンガリーの長距離列車は印刷が必須なようです。ネットでの予約画面を見せていたら、どうなったのでしょうか。

車掌さんにシャワーのありかを聞いたら、何聞いているんだ?という態度で、「ない」と言われました。見取り図のトイレ脇の部屋はシャワー室でもありませんでしたし、トイレもシャワーが併設されていませんでした。ブダペストからチューリッヒの列車はシャワーなしということが判明しました。じゃあ、何のためのタオルだ?シャワーで体を拭くためではないのか?そのような疑問も感じました(実際には顔を拭くタオルでしょう)。

この日は1日中ブダペストを観光していたので、とても疲れていました。そのため、すぐに寝てしまいました。

寝ていたら、地震のような揺れを感じて起きました。地震が発生した際の優先事項は身を守ることです。そう思い、布団をかぶりました。ん?でも何かがおかしいです。そう!私は自宅にいるのではなく夜行列車に乗っていました。どうやらオーストリアの西部あたりを走っているようです。

写真16. 正しいはしごの使い方(日本の寝台車ではやっていないですよね?)

翌朝ははしごをちゃんと活用できました(写真16)。オーストリア西部は初めてやってきましたが、整然とした家並みが広がっており、何となく安心感がありました。そろそろフェルトキルヒですね。

写真17. リヒテンシュタインの光景

写真18. リヒテンシュタインの光景

写真19. リヒテンシュタインの光景

フェルトキルヒを発車すると、リヒテンシュタインを通過します。ただし、何か変わった場面があるわけでもなく、のどかな光景が広がるだけです(写真17-19)。

写真20. ブッフスに停車

スイスに入ってすぐにブッフスに停車します(写真20)。ここで進行方向が変わります。ここからスイスの鉄路を本格的に走行します。

写真21. のどかな田園風景が広がる

スイスの鉄道は景色が良いというイメージがありますが、すぐに素晴らしい車窓が広がるわけではありません。しばらくはのどかな田園が広がります(写真21)。

写真22. 美しいチューリッヒ湖

すると、進行方向右側に美しいチューリッヒ湖が広がります(写真22)。スイスというと山というイメージがありますが、湖も美しいです。

写真23. 美しいチューリッヒ湖

写真24. 美しいチューリッヒ湖

私は当初進行方向右側の個室でしたが、これが反転して進行方向左側の個室になっています。個室に閉じこもっていたら見えない光景でした(写真23、写真24)。周囲の人もドアを開いて旅の最後の楽しみを満喫していました。朝になると治安面の不安はないのでしょう。考えてみれば、ハンガリー、オーストリア、スイスともに治安が比較的良い国です(もちろんドイツもリヒテンシュタインも)。

写真25. 朝食が出される

個室寝台の乗客は朝食が出されます(写真25)。ミニサンドイッチなので、よく歩いた私にとっては少ないですが、出るだけOKということでしょう。ジュースや水のサービスもあります。この点はサンライズ号のシングルデラックスよりも素晴らしいです。

写真26. チューリッヒ中央駅が近づいてきた

そうしているうちにチューリッヒ中央駅が近づいてきました(写真26)。チューリッヒはスイス最大の都市で、ドイツ、フランス、オーストリアからの国際列車が到着します。さすがはスイスの首都ですね!いや、スイスの首都はベルンであり、チューリッヒではありません!

チューリッヒ中央駅に到着!

そうして、チューリッヒ中央駅に到着です。日本人では一番有名なスイスの都市ではないでしょうか。次に有名なのはジュネーブでしょうか。ブダペストでは最後尾でしたが、ここチューリッヒでは最前部です。図らずも寝台車が改札(はないけど)に一番近くて歩かずに済む位置に連結されていることになります。

写真27. 2階建ての寝台車が連結されている

ナイトジェットでの当たり車両である2階建ての寝台車が連結されています(写真27)。2階建てで車内にゆとりがあるので、室内にテーブルとイスが常備されています(鉄道ジャーナル1999年10月号にイラストが掲載されています)。

写真28. この車両もナイトジェットカラー

後ろにはナイトジェットカラーの車両が連結されています。ウィーンからは5両編成で個室寝台車が2両、簡易寝台車が2両、座席車が1両です。301号車、302号車が寝台車、303号車と304号車が簡易寝台車、305号車が座席車の構成です。

写真29. 2階建て寝台車と簡易寝台車が連結されている

その寝台車と簡易寝台車の連結部分です(写真29)。

写真30. 座席車の隣は機関車

座席車の隣は機関車です(写真30)。引き上げるためにもう機関車が連結されているのですね!スイスの鉄道のオペレーションは素晴らしいものと聞いています。さっそく、そのオペレーションを見せつけられました。

写真31. 機関車が先頭に立っている

私を乗せたユーロナイトは車庫に引き上げるのでしょう(写真31)。

写真32. ナイトジェットをもう1枚

このように私とユーロナイトの旅は終わりを告げました。でも、まだスイスに来たばかりです。

前後を読みたい!
さて、前後ではどこに行ったのでしょうか?

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チューリッヒ中央駅を楽しむ(19年夏)(次)→

※それぞれ別ウィンドウで開きます。

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