フランスの首都パリからドイツ、ポーランド、東ヨーロッパに向けて発車する列車の始発駅のパリ東駅。荘厳な駅舎が出迎えてくれる歴史あるターミナル駅です。その素顔を探りました。
写真1. 美しいパリ東駅の駅舎
パリ東駅の概要
いきなりパリ東駅の詳細について記してもさっぱりな部分があるでしょう。そこで、まずはパリ東駅の概要について示すことにします。まずは超大まかな概要を示します。
・位置:パリ市の北
・方面:フランス東部の都市、ドイツ方面直通もあり
では、それらについて詳しく述べましょう。
パリ東駅の位置
パリ東駅はパリの北部に位置します。その位置を示します(図1)。
図1. パリ東駅の位置(googleマップより引用)
パリ東駅は「東」とは付くものの、パリの東側になく北側に位置します。その証拠に、パリ北駅から徒歩圏内です。では、なぜ「東」駅なのでしょうか。それは、パリから東側に向かう列車が発車する駅だからです。
残念ながら、駅周辺にこれといった観光名所はありません。googleマップを見ると、リアルなお化け屋敷がありますが、わざわざそこに行く人も少ないでしょう(このお化け屋敷はフランス語でおどかしてくれるみたいです)。なお、東駅周辺の治安は悪く、夕方にはアルコール中毒と思われる人が多くいました。何かしようという人は多くないでしょうが、歩いていて気持ちの良いものではありません。
地下鉄4号線でノートルダム大聖堂に、地下鉄7号線でルーブル美術館にダイレクトアクセスが可能ですので、そこまで悪い立地ではありません。これではわかりにくい?そうですか、路線図を示しましょう(図2)。
図2. パリ東駅周辺の路線図
地下鉄4号線、7号線と10号線が乗り入れています。RERの乗り入れはありません。そのため、パリ市内を移動しようとすると駅数が多くあるメトロに乗らざるを得ません。ルーブル美術館には地下鉄7号線で向かえることができます。また、同じ7号線でオペラ座周辺に向かうこともできます。また、4号線でシテ駅に向かい、そこからノートルダム大聖堂に向かうこともできます。そのほかの観光名所へは乗りかえが必要です。
パリを越えての行き来には他の長距離ターミナル駅に向かう必要がありますが、オステルリッツ駅へは地下鉄10号線で、モンパルナス駅へは地下鉄4号線で1本で向かえます。他の長距離ターミナル駅へは乗りかえが必要で不便です。ターミナル駅を直結する環状鉄道が必要でしょう。
パリ東駅から行ける場所
では、パリ東駅からどこに向かえるのでしょうか。近郊輸送は国鉄のP線が担っています。そのほかの遠距離についてはフランス東部に向かう列車が発車してます。
・ランス
・メッス
・ナンシー
・ストラスブール
フランス東部に有名な都市はあまり多くないでしょうが、ストラスブールはそこそこ有名です。ドイツ風の街が素敵な都市です。ドイツ風?フランスなのに?と思った人も多いでしょうが、ストラスブール付近は第一次世界大戦まではドイツの都市でしたので、街並がドイツ風でも問題ありません。そのストラスブールへは毎時1本近く(2時間間隔が開くときもある)が確保されていて、それなりに便利にしようという努力が見えます。
そのストラスブールはドイツと目と鼻の先です(ライン川を渡ればドイツです)。そのため、ドイツ直通も運転されています。主な行先を列挙すると以下の通りです。
・ルクセンブルク直通(ルクセンブルク市):TGV
・ドイツ直通(ミュンヘン、シュトゥットガルト、フランクフルト):TGVまたはICE(ただしミュンヘンへはTGVのみ)
・ドイツ、ポーランド、ベラルーシ、ロシア直通:パリ-モスクワの夜行(週に1本の運転)
多くがルクセンブルクやドイツ西部の都市にしか直通しませんが、最遠でモスクワまで向かう列車も発着します。パリを毎週水曜の18:58に発車して、ベルリン、ワルシャワ(ポーランドの首都)、ミンスク(ベラルーシの首都)を経由してモスクワに金曜の11:45(夏は10:53)に着くというスケールの広い列車です。なお、モスクワ発は火曜に発車して、パリに木曜に着きます。週に1本というのは感心しません。本来であれば毎日運転するべきでしょう。
パリ東駅を訪ねる
御託はこのあたりにして、実際にパリ東駅を訪問してみましょう。
写真2. 荘厳な駅舎が出迎える
パリ東駅はイメージ通りのヨーロッパの駅らしく、頭端式と呼ばれる構造です。頭端式とは、駅舎が終点側にあり、駅舎を通るとホームが一面に広がるという構造です。その駅舎が出迎えてくれます(写真2)。
写真3. 駅舎に入ると正面にホームが見える
写真4. さっきより進んだところ
駅舎に入るとホームが見えます(写真3、写真4)。写真4は写真3より進んだところです。いずれも写真がややぶれていますが、これは東駅の治安面に不安を感じ、なるべく立ち止まらないようにしたためです。私の緊迫度合いが伝わると思います。
写真5. 美しいコンコース
外観こそ古いですが、中は現代的に改装されています(写真5)。歴史的建造物と共に生きるヨーロッパの人たちの知恵です。
写真6. 素晴らしいコンコース
写真7. 美しいコンコース
写真8. 素晴らしいコンコース
写真9. 美しいコンコース
ホームを結ぶコンコースは天井から光が入る仕様になっています(写真6-9)。そのため、ある程度の明るさが保たれます。明るい駅のほうが安心感があります。
写真10. 素晴らしいコンコース
コンコースからホームを見てみましょう(写真10)。ヨーロッパの駅らしく、ドームの屋根がホームまで続いています。この屋根の端部を見ると、ある程度のところまで壁面が下がっていることがわかります。これがないと小雨の際に水滴がホームにかかってしまいます。JR大阪駅の意匠はヨーロッパの駅をイメージしましたが、この壁面がありません。そのため、ホームに小雨がかかってしまいます(JR大阪駅はその後にホームに屋根を取り付けて問題を解決してます)。このような知恵は先人に見習えということなのでしょう。
写真11. 改札機が並ぶ
改札機が並びます(写真11)。国鉄の近郊列車が発車するホームには改札機があります。
写真12. わかりやすい行先表示
わかりやすい行先表示です(写真12)。行先だけではなく、主要な停車駅が画面で示されます。このような工夫は日本にも欲しいところです。
写真13. TGVが停車中
ホームにTGVが停車していました(写真13)。ICEも停車していれば、さらに気分が盛り上がるのに、やや残念です。なお、TGVは機関車がけん引する方式で、端の1両には乗れません。頭端式のホームではコンコースに近い側の車両に乗れません。これは頭端式の欠点の1つです。
写真14. 近郊列車が停車中
別のホームには近郊列車が停車しています(写真14)。フランスの普段着の列車です。近年のヨーロッパに多い低床式の電車です。ドイツ、ハンガリー、スイスなど多くの場所で見ることができます。
写真15. 東駅の駅前
写真16. 東駅の駅前
駅前に出てみましょう。荘厳な風格ある建物が並び、視覚的には素晴らしいです。ただし、いかんせん柄の悪い場所ですので、居心地はあまり良くありませんでした。私はこの後北駅に向かいましたが、とても不安な道のりでした。夜間や女性1人でこの地区を歩くのは奨励しません。
パリ東駅を訪問して
パリ東駅は治安面に不安はありつつも、賑わいがあり、中が立派に改装されており、長距離ターミナル駅としての機能を果たしていることを実感しました。また、駅舎は立派なもので、旅情をかき立てるものがありました。
しかし、多くの利用者に不安を抱えさせながら、市内交通と長距離交通を乗りかえさせるのは良いことではありません。パリ東駅周辺が目的地としての機能があるのであれば話は別ですが、とりたてて目的地となるわけでもありません。また、フランス各地を行き来するのにパリ市内で乗りかえさせるのも理不尽な話です。このことを考慮すると中心部に乗り入れて、パリ東駅での乗りかえを排除することも手でしょう。隣の国の首都ベルリンではこのような交通改革を実施しています。このようにさらに交通の機能を高めることも重要でしょう。
さて、前後ではどこに行ったのでしょうか?
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パリのターミナル駅のまとめ
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