コンパクトな路線網でありながら特急列車の利便性が確保されている四国地区。そんな特急のなかで比較的地味な存在の特急うずしお。そんなうずしおに乗ってみました。
写真1. 高松に停車中の特急うずしお号
特急うずしお号の概要
まず、特急うずしお号の概要を紹介しましょう。
- 運転区間:高松-徳島(1日2往復のみ岡山直通)
- 運転頻度:約1時間間隔
- 所要時間:70分前後(高松-徳島間)
図1. 徳島と高松の位置関係(googleマップより引用)
特急うずしお号は高松と徳島(図1)を結ぶ特急列車です。営業キロは74.5kmですが、所要時間は70分前後(最短は59分)とあまり速いほうではありません。これは高徳線の線形が良くなく速度を出せないほうであることや、比較的本数が多く、行き違いの待ち時間がかさむという事情がありましょう。とはいえ、振り子車両(2700系)や車体傾斜装置付きの車両(2600系)が積極的に導入(※)され、できる範囲内でスピードアップしています。
※一部は振り子車両ではありません。特急剣山の車両(185系気動車)の入庫を兼ねた運用があります。
高松-徳島は1時間間隔で運転され、地方としては本数は多いほうです。ただし、車両には(観光客受けする)ような面白みはなく、実質本位という印象があります。また、2両編成が多く、長編成は望めません。そうはいっても、多くの人にとっては編成長や車両の装飾よりも本数や速度です。JR四国はこのような基本がなっていて好感が持てます。8両編成にするものの本数が少なく、新型車両で速度低下させるどこぞの鉄道会社にも見習ってほしいです。
四国の特急列車の多くが岡山直通と新幹線連絡を売りにしていますが、特急うずしお号は2往復しか岡山に直通しません。これは、岡山-高松(正確には岡山-茶屋町)は単線が多く、特急うずしお号を挿入できる余裕がないからです。岡山-茶屋町の速達列車は毎時4本(快速マリンライナー2本、松山方面特急毎時1本、高知方面特急毎時1本)運転されているので、これ以上は運転できません。
では、1日2往復だけとはいえ、岡山に直通できるのはなぜでしょうか。岡山-徳島便が入る時間帯だけ、岡山-高知の本数を犠牲にしているのでしょうか。
写真2. 岡山の発車標
その答えは岡山駅で見つけることができました(写真2)。高知行きと連結し、線路容量を確保しています。高知系統(特急南風号)と特急うずしお号の切り離しは宇多津で行い、ここで進行方向を変えています。本来、岡山と高松を結ぶ列車は宇多津を通る必要がなく、快速マリンライナーは短絡線を経由していますが、特急うずしお号はわざわざ迂回しています。
図2. 宇多津付近の線路(googleマップより引用)
よりわかりやすくするために、宇多津付近の地図を示しました。地図の上方向が岡山、下方向が宇多津、右方向が高松や徳島です。岡山と高松(あるいは徳島)をストレートで結ぶには地図の上から右に向かいます。しかし、宇多津で切り離すためには地図下方向の宇多津駅に寄る必要があります。これにより、岡山-高松の所要時間は60分程度必要で、快速マリンライナーの55分程度よりもかかります。
児島で切り離せばこの問題は改善されますが、児島はJR西日本管轄の駅であること(特急うずしお号は主にJR四国の運行です)、連結・切り離し用の人員がいないことが宇多津での切り離しとしているのでしょう(宇多津は特急しおかぜ号といしづち号の連結・切り離し用の人員がいる)。
このようなこともあり、岡山連絡はもっぱら快速マリンライナーとの乗りつぎに頼っています。このため、岡山までの山陽新幹線と高松発着の特急うずしお号は乗継割引の対象です。私もそのようなテクニックを活用し、960円を節約しました。
特急うずしお号の内装(車内の紹介)
さて、特急うずしお号の車内を紹介しましょう。特急うずしお号にはグリーン車はありません。
写真3. 高松に停車中の特急うずしお号
高松に停車中の様子です(写真3)。大型連休でも2両編成と短く、輸送状況の厳しさを感じます。逆に1時間間隔を確保してくれていることが多大なサービスにも思います。
写真4. 先頭の様子
先頭の様子です(写真4)。ことさら前面展望をうたっていませんが、貫通路などから前を見渡すことができ、最低限の良心を感じることができます。
さて、車内に入ってみましょう。
写真5. 車内の様子
今回は2700系に当たりました。車内は緑色系の座席、木目の床、そして白系の壁です(写真5)。さわやかながら冷たすぎない色合いの内装だと思います。
写真6. 横の座席を眺める
横の座席を眺めます(写真6)。
写真7. 指定席は8列のみ
指定席は8列のみです(写真7)。そこまで混雑せずに自由席でも座れるという特性があり、指定席のニーズが少ないためでしょう。
写真8. 座席の様子
座席の様子です(写真8)。指定席のカバーがかかっています。それもそのはずで、指定席車は存在せず、一部の座席のみが指定席なためです。
写真9. 天井の様子
天井の様子です(写真8)。すっきりとしています。
写真10. 座席にコンセントが備わっている
座席にコンセントが備わっています(写真10)。うずしお9号と32号以外は全席にコンセントが備わっています。9号と32号は古い車両である185系気動車なので、コンセントがありません。
写真11. デッキの様子
デッキの様子です(写真11)。白系でまとめられており、モダンな印象を受けます。
写真12. デッキとの仕切扉
デッキとの仕切り扉があります(写真12)。先頭部分以外はこのように窓は小さめです。
写真13. 運転席後ろの仕切り
運転席後ろの仕切りです(写真13)。それなりに前面展望が楽しめます。JR四国はこの車両については割り切っており、全ての車両が先頭車です。つまり、2両編成が基本なのです。
写真14. 運転席側のデッキとの仕切り
運転席側のデッキとの仕切りです。向かって右側は窓が付いており、進行方向右側からは座席から前面展望を楽しめます。運転席が低ければ進行方向左側からも前面展望を満喫できますのですが、現実は運転席が高く、個人的に残念に思います。
写真15. トイレの様子
トイレの様子です(写真15)。清潔な空間です。
写真16. お手洗い
トイレの洗面スペースです(写真16)。
特急うずしお号の車窓を楽しむ
特急うずしお号の車窓を楽しみましょう!
写真17. 快速マリンライナーと並走!
高松を発車しました。快速マリンライナーと並走します(写真17)。
写真18. 快速マリンライナーが近づく
高徳線は単線で、予讃線を走るマリンライナーが一瞬だけ近づきます(写真18)。
写真19. 快速マリンライナーを追い抜く
こちらが特急だからでしょうか。快速マリンライナーを追い抜きました(写真19)。
写真20. 予讃線と分かれる
予讃線と分かれ、左にカーブします(写真20)。
写真21. 高松市内を走る
高松市内を走ります(写真21)。
写真22. 山が見える
山が見えます(写真22)。峰山公園でしょうか。
写真23. ビルが並ぶ
と思ったら、ビル街に入ります。見かたによっては、高松駅周辺よりも中心のように見えます(写真23)。それもそのはずで、高松駅は街はずれ、高徳線と高松駅の間が中心市街地です。
写真24. ことでんをまたぐ
ことでんをまたぎます(写真24)。こちらは高松と徳島を結ぶ(一応)都市間路線、あちらは高松近郊の地方民鉄です。しかし、線路はこちらが単線非電化、あちらは複線電化(しかも標準軌)であちらのほうが幹線に見えます。もっとも、この区間ではことでんは日中時間帯でも15分間隔で運転され、そのインフラを十二分に生かしています。
写真25. 栗林に停車!
図2. 栗林駅の位置(googleマップより引用)
栗林(りつりん)に停車します(写真25)。高松の市街地の南端に位置するためか(図2)、全列車停車します。
写真26. 高架線を走る
高松市内の高架線を走ります(写真26)。
写真27. 春日川を渡る
春日川を渡ります(写真27)。香川県には大きな川がなく、小さな川が多いです。この川もその一員です。
写真28. 前を眺める
前を眺めます(写真28)。まもなく屋島です。
写真29. 上りの特急とすれ違う
上りの特急とすれ違います(写真29)。車体番号を見ると2600番台であり、私が乗っている2700系ではないことに気づきます。あちらは車体傾斜式の2600系です。土讃線運用に適さないと判断され、高徳線で限定的に運用されています。
写真30. のどかな風景になってきた
高松の市街地から離れ、のどかな景色になってきました(写真30)。
写真31. 水田が広がる
水田が広がります(写真31)。香川県産の米をあまり見かける機会はありませんが、地元で消費されているのでしょうか。
写真32. まもなく志度に停車!
まもなく志度に停車します(写真32)。高徳線の普通の本数はそう多くありませんが、主要駅については毎時1本の特急がカバーしているという解釈でしょうか。
写真33. 志度に停車!
志度に停車します(写真33)。ここも全列車停車駅です。
写真34. 散村的風景を走る
散村的風景を走ります。
写真35. 高規格道路をくぐる
高規格道路をくぐります(写真35)。現代の鉄道はこのような高規格道路と渡り合わねばならず、状況の厳しさが見えます。
写真36. オレンジタウンを通過!
オレンジタウンを通過します(写真36)。JR四国グループが開発したオレンジタウンという住宅開発地の最寄駅ですが、発展しているとはお世辞にもいいがたいです。
写真37. 田園風景を走る
田園風景を走ります(写真37)。
写真38. のどかな風景を走る
のどかな風景を走ります(写真38)。
写真39. のどかな風景を走る
のどかな風景を走ります(写真39)。ここまで住宅が少ないということは、毎時1本の普通列車でも間に合うということでしょう。
写真40. 鶴羽を通過!
鶴羽を通過します(写真40)。対向の普通列車が待っており、特急うずしおに道を譲ります。その代償として、普通列車は所要時間がかかります。
写真41. 自然が増えてきた
自然が増えてきました(写真41)。主観ですが、四国の自然は穏やかに感じます。
写真42. 家が増えてきた
家が増えてきました(写真42)。
写真43. まもなく三本松
まもなく三本松に停車します(写真43)。
写真44. 三本松に停車!
三本松に到着しました(写真44)。ここも高徳線の主要駅です。全列車が停車するほか、一部の普通列車はここで折り返します。
写真45. 川を渡る
湊川を渡ります(写真45)。
写真46. のどかな風景が広がる
のどかな風景が広がります(写真46)。春の終わり~初夏は緑も多く、明るくて旅行に良い季節だと思います。
写真47. のどかな風景が広がる
駅に近いですが、のどかな風景が広がります(写真47)。
写真48. 引田に停車!
引田に停車します(写真48)。「ひけた」と読みます。ここまでは普通列車もそれなりに本数が確保されていましたが、引田から板野までは本数が激減します。
写真49. 山に近づいてきた
山に近づいてきました(写真49)。讃岐の国と阿波の国の境の丘陵地帯を超えるのです。
写真50. 山中を走る
山中を走ります(写真50)。このあたりは大坂峠といいます。峠といっても標高は250m程度です。
写真51. 山と水田の対比
山と水田の対比が美しいです(写真51)。
写真52. 山中を走る
山中を走ります(写真52)。もう徳島県に入ったのでしょうか?
写真53. 周囲が開けてきた
周囲が開けてきました(写真53)。
写真54. 板野に停車!
板野に停車します(写真54)。ここから徳島までは1~2時間に1回の乗車チャンスが確保されています。日中時間帯の2時間のダイヤホールがなければ、地方都市圏としてはそれなりのサービス水準でしょう。このあたりから車掌さんが頻繁に運転台に入っていました。各駅の出入口に最適化された場所に陣取り、乗客の乗車券や特急券を見ています。このときも乗客の特急券を見ていました。
写真55. 急に開ける
急に開けてきました(写真55)。
写真56. 徳島平野を走る
徳島平野を走ります(写真56)。
写真57. 池谷に停車!
池谷に停車します(写真57)。鳴門方面の分岐駅です。池谷から徳島は鳴門線の列車も加わり、日中時間帯でも毎時1~2本で列車が運転されます。ただし、等間隔運転はなされず、その点は残念に感じます。
写真58. 心なしか住宅が増えてきた
徳島が近づき、心なしか住宅が増えてきたように感じます(写真58)。
写真59. 水田が広がる
水田が広がります。香川県と異なり、徳島県には吉野川という大河があり、水田の水を確保するのは容易に思えます。
写真60. 旧吉野川を渡る
旧吉野川を渡ります(写真60)。
写真61. 水田と住宅の共存
水田と住宅が共存しています(写真61)。
写真62. 河川敷がある
そうこうするうちに、河川敷の上に差し掛かります(写真62)。
写真63. 吉野川を渡る
吉野川を渡ります(写真63)。この川を渡る橋が少なく、朝夕は橋は渋滞すると聞きます。これが高徳線にとってチャンスです。鉄道は渋滞はなく、時間が読めるのです。
写真64. 川を渡る
川を渡ります(写真64)。
写真65. 緑が美しい
緑が美しいです(写真65)。
写真66. 住宅街に入る
徳島の中心に近づき、住宅が増えてきました(写真66)。
写真67. 徳島線が近づいてきた
徳島線が近づいてきました(写真67)。
写真68. 徳島線と合流!
徳島線と合流します(写真68)。
写真69. まもなく佐古を通過!
高徳線と徳島線の分岐点は徳島ではなく、1駅隣の佐古です。その佐古は立派な高架駅です(写真69)。
写真70. 高架区間を走る
高架区間を走ります(写真70)。非電化であることを除けば、住宅街を通る高架複線であり、大都市近郊を走っているようにも感じます。事実、明治維新のころは日本でも10本の指に入るほどの大都市でした。
写真71. 地上に降りる
高架線は佐古付近で終了し、徳島付近は地平区間です(写真71)。
写真72. まもなく徳島!
まもなく徳島です(写真72)。
写真73. 徳島に到着!
徳島に到着しました(写真73)。うずしお15号は徳島に14:16に到着し、折り返し14:23に発車します。わずか2両とはいえ、車内清掃を実施し、わずか7分で折り返すのです。限られた車両を効率的に運用するための工夫を読み取れました。
特急うずしおに乗ってみて
高松と徳島を結ぶ特急うずしおに乗ってみました。良い意味でシンプルで好みの分かれない内装、2両編成ながらも1時間間隔が確保されるダイヤ、振り子車両などで可能な限り所要時間を短くするダイヤ、どれをとってもコストミニマムでそれなりのサービスを実現するための工夫を読み取れます。表現を変えると、「(地方の特急は)これで良いんだよ!」という理想系を実現しています。
地味な存在でありながらもスピード感もあり、退屈しない道中でした。これからも地方の特急の見本となるとともに、多くの特急もうずしおのようなサービスを見習ってもらいたいものです。