スイス最大都市、チューリッヒ。そのチューリッヒは地形の制約もあり、多様な交通手段が発達しています。そんな都市交通を堪能しました。路線図、運賃制度などの実用的な情報も掲載しています。
写真1. チューリッヒ湖近くを走る路面電車
チューリッヒの都市交通の概要
チューリッヒの都市交通は面白いものがあります。しかし、そんな興味よりも実用的な情報を知りたい人もいるでしょう。そこで、実用的な情報を集めました。
- 種類:国鉄系(Sバーン)と路面電車が主体
- 運営:Zurich Transport Network(英語表記、ドイツ語表記ではZürcher Verkehrsverbund)、略称ZVV
- 運賃:ゾーン制
チューリッヒ近郊の鉄道は基本的にZürcher Verkehrsverbundのサイトを見ればわかるようになっています。多くの人に関係するのはチューリッヒ市内のトラム、次に関係するのはチューリッヒ近郊のSバーンでしょう。ここでは2023年に入手した路線図を示します。
図1. チューリッヒのトラム・バスの路線図(ZVV公式サイトより引用)
この範囲はゾーン110圏内のみの掲載ですが(図1)、ゾーン110圏内でもじゅうぶんな広さです。
図2. チューリッヒのSバーン路線図(ZVV公式サイトより引用)
チューリッヒのSバーンの路線図です(図2)。上のゾーン110を通り越していますが、多くの系統が運転されていることがわかります。
では、運賃はどうでしょうか。基本的にゾーン制で運営されています。
図3. チューリッヒのゾーン一覧(ZVV公式サイトより引用)
ゾーン一覧です(図3)。観光客は110ゾーンまたは121ゾーンのみ考慮すれば問題ありません。多くの観光客は2回以上乗り、かつ集中的に乗るはずです。そして1回ずつ買うのはわずらわしいです。そのような人は24時間券を購入するのが無難です。
表1. 24時間券の価格(単位はスイスフラン、ZVV公式サイトより引用)
ゾーン数 | 大人2等価格 | 大人1等価格 |
---|---|---|
1-2 | 8.8 | 14.6 |
3 | 13.6 | 22.4 |
4 | 17.6 | 29.2 |
5 | 21.6 | 35.6 |
6 | 26.0 | 42.8 |
7 | 30.0 | 49.6 |
全 | 34.4 | 56.8 |
※110ゾーンと120ゾーンはそれぞれ2ゾーン扱いとする(110ゾーンと140ゾーンの場合、2ゾーンぶんでなく2+1=3ゾーンぶんの料金とするということ)
海外の鉄道は信用乗車制といい、改札がないかわりに抜き打ちで検札があり(車内で回ってくる)、その検札時に無賃乗車と判断されると高額な罰金が課されます。そして、信用乗車性の場合、多くのサイトでは刻印が必要と書かれています。では、チューリッヒのトラムの場合はどうでしょうか。
A 24h-ticket or a multiple 24h-ticket is the best choice for occasional travellers who only want to use public transport for one day.
Zones and validity times are printed on all tickets or shown in the app. You can travel as often as you wish on all types of transport in your selected zones for 24 hours.
公式サイト24h-tickets
日本語に訳すと以下の通りです。
24 時間チケットまたは 24 時間複数回チケットは、公共交通機関を 1 日だけ利用したい、時々旅行する人に最適です。
ゾーンと有効期限はすべてのチケットに印刷されるか、アプリに表示されます。選択したゾーン内のあらゆる種類の交通機関を 24 時間何度でもご利用いただけます。
公式サイト24h-tickets
刻印の理由は有効期限を明確にするためです。しかし、公式サイトに書かれている通り、有効期限が印刷されているので刻印の必要はありません。これは非常にやりやすいですね!ただし、買ったときに有効期限が明示されますので、あらかじめ買うと使うまでに時間が経過してしまい、有効期限が短くなってしまいます。極力、直前に購入するのが良いでしょう。
写真2. 有効期限が表示される24時間券
実際の券面を示します(写真2)。利用客としてありがたいのは、1日券でなく24時間券であることです。この場合、5/2だけでなく5/3の11:34まで利用可能なことです。
さて、購入方法を示しましょう!
写真3. 券売機の前に立つ
券売機の前に立ちます(写真3)。よく使うであろう機能は最初の画面に表示されます。24h-Ticketの項目があるので安心です。
写真4. 24h-Ticketを選択した
24h-Ticketを選択しました(写真4)。
写真5. 確認画面が表示される
確認画面が表示されます(写真5)。この後にこの脇にあるカード読み取り部にタッチすると、無事に発券されます。
チューリッヒを実際に歩いた様子を記しています。
実際にチューリッヒの交通機関と触れ合う
以上で「利用ガイド」という側面からチューリッヒの交通機関について紹介しました。では、実際に乗ってみましょう!市内交通の主力のトラム、郊外との交通のSバーン、そして変わり種のケーブルカーを紹介します。
チューリッヒのトラム
ここまでトラムなどについて書きましたが、通常のチューリッヒ観光の範囲内であれば、トラムは必要ありません。チューリッヒ中央駅からチューリッヒ湖までが観光地らしい雰囲気が味わえますが、その距離は1km余りとじゅうぶん歩ける距離のためです。
写真6. チューリッヒ中央駅前に停車中のトラム
チューリッヒ中央駅の東側に停車中のトラムです(写真6)。系統によっては中央駅の南側に発着するものもあります。中央駅は大きいので、道路交通に合わせた線形のトラムだとどうしてものりばを1か所に集約できないのです。
写真7. Seilbahn Rigiblickにやってきたトラム
Seilbahn Rigiblickからトラムに乗って山肌を下ることにしましょう!
図4. Seilbahn RigiblickからCentralまでの経路(googleマップより引用)
写真8. チューリッヒの住宅街を走る
チューリッヒの住宅街を走ります(写真8)。
写真9. 住宅街を走る
住宅街を走ります(写真9)。丘の中腹から川沿いの谷まで坂を徐々に下ります。
写真10. 閑静な住宅街を走る
閑静な住宅街を走ります(写真10)。このあたりは観光客も来なさそうな場所です。
写真11. 中心街に少し近づいてきた気配
レストランもあり、中心街に少しずつ近づいてきた印象です(写真11)。
写真12. 住宅街が続く
住宅街が続き、中心市街地の範囲が狭いことがわかります(写真12)。
写真13. まもなくCentral
まもなくCentralです。リマト川対岸のチューリッヒ中央駅方向から合流します。ここCentralは北・南・西方向からトラムがやってきて、それぞれの方向に分岐する、重要な分岐駅です。
写真14. Centralに到着!
Centralに到着しました(写真14)。リマト川東側の旧市街とチューリッヒ中央駅の中間に位置し、観光客視点でも重要な場所です。
さて、別の断面も紹介しましょう。
写真15. Bellevue付近の風景
旧市街の南側でチューリッヒ湖近くのBellevueの光景です。近くにオペラで有名な劇場もあり、ここに行く人も多いと思います。
図5. Bellevue付近の地図(googleマップより引用)
写真16. Bellevue付近の路面電車の路線図
停留所付近に掲げられていた路線図です(写真16)。
写真17. Bellevueの停留所案内
多くの方向に向かい、道路上に敷設するという都合上、どうしてものりばが離れてしまいます。そこで、停留所にのりば案内が掲載されていました(写真17)。
写真18. 8系統がやってきた
8系統がやってきました(写真18)。先ほどは7連接車体でしたが、この車両は3連接車体で別の形式であることがわかります。
写真19. 8系統の車内
このときの車内です(写真19)。欧州の路面電車の多くは進行方向片側(たいてい右側)にしか出入口がありません。日本のバスと同様、運転席は片方にしかないのです。でも進行方向逆向きの座席があるのは何だろう?日本ほど進行方向にこだわっていないと理解することにします。
写真20. 進行方向最後尾の様子
では、進行方向最後尾の様子はどうでしょうか。最後尾には運転席もなく、客室です(写真20)。
写真21. 最後尾から眺める
最後尾から去り行く街並を眺めることができます(写真21)。私は鉄道初心者ですから、形式はわかりません。すみません…。
チューリッヒのSバーン
チューリッヒの中心部だけでなく、郊外に向かう場合はSバーンを使うこともあります。そのSバーンについても紹介します。
Sバーンはドイツ語圏で近郊電車を示す語句であると言われるのが一般的です。ただし、Sバーンもそれぞれであり、専用の線路で10分間隔(複数系統が重なる中心部は山手線も顔負けの10分に3本運転)のベルリン、1系統のみで30分間隔しかやってこないマクデブルクなど実態はさまざまです。
写真群1. 実態の異なるSバーン
日本のJRの「電車」といっても専用の線路を使う山手線、「列車」と同じ線路を使い日中は40分間隔が開く常磐線快速(同じ停車駅の常磐線を含めると10~20分間隔)、山奥の青梅線という異なる実態が共存することと同じです。
では、チューリッヒのSバーンはどうでしょうか?
チューリッヒ旧市街の南側のStadelhofenにやってきました。
図6. Stadelhofenの位置(googleマップより引用)
写真22. Stadelhofenにやってきた
「Sバーンの章なのにトラムを掲載するのはどうかしている」「早くSバーンを見せろ」という声が聞こえます。しかし、写真22をよく見てください!チューリッヒの路面電車と異なる色の電車が見えます。これがまさしくチューリッヒSバーンです。
写真23. S18系統は路面電車然としている
S18系統だけは路面電車然とした系統です。Wikipedia先生を見ると、この系統だけは国鉄系の会社が運営していないようです。
最初に例外的な系統を紹介しましたが、他のSバーンはスイス国鉄と同じ線路を使い(一部は専用の線路もあるでしょう)、中心部では高頻度運転を実施しています。
写真24. Stadelhofen駅を見下ろす
Stadelhofen駅を見下ろします(写真24)。傾斜地にある駅で、街と一体化しています。スイスの駅には改札がなく、自由に入れるのです。
写真25. 山側にやってきた
山側の道路にやってきました(写真25)。ここは駅構内なのでしょうか。それとも道路なのでしょうか。区分けされていないので、わからなくなってしまいます。
写真26. 発車標
発車標です(写真26)。Zürich HBと書いてある系統はチューリッヒ中央駅を通ってどこかに向かう系統です。18:41、18:45、18:47、18:52、18:55、18:57と続くことがわかります。ただし、系統番号は異なり、郊外部では本数が少なくなることが読み取れます。あえて日本の鉄道に例えると、まるで異なる系統が重なり本数を確保する相鉄新横浜線の羽沢横浜国大-西谷のようでしょうか。
写真27. Sバーンがやってきた
Sバーンがやってきました(写真27)。ここから中央駅までは地下線を走行します。
写真28. 着席重視の2階建てクロスシート車
この地下線を通る系統は着席重視の2階建てクロスシート車が多いように見えました(写真28)。ドイツやウィーンのSバーンのような電車による運転ではなく、機関車けん引方式の列車も多く見られました。都市近郊鉄道は電車というイメージがあるとびっくりするものです。
写真29. 車内には乗りかえ案内が表示される
車内には乗りかえ案内が表示されます(写真29)。これは隣国ドイツも同様でした。
写真30. チューリッヒ中央駅の地下ホーム
チューリッヒ中央駅の地下ホームです(写真30)。チューリッヒ中央駅は頭端式の駅に見えますが、地下ホームがあり、通り抜けが可能になっています。長距離列車も地下ホーム(31~34番線に見えた)を使います。
チューリッヒ中央駅で見ると、機関車が中間に連結されていたり、夕方なのにチューリッヒ中央駅で降りる人が多かったりと(乗る人のほうが多い先入観があった)、現地に向かわないとわからないことが多い印象がありました。
写真31. Sバーン専用の発車標がある
チューリッヒ中央駅にはSバーン専用の発車標があります(写真31)。長距離列車も発車する30番台の番線や多くのSバーンが発車する40番台の番線と異なり、20番台から発車するSバーンもあります。
写真32. チューリッヒ中央駅の20番台の番線は独立傾向
S4とS10が発着しています(写真32)。今までに見たことのない車体・色です。それもそのはずでスイス国鉄でなく、Sihltal-Zürich-Uetliberg-Bahn(略称SZU)が運営しているためです。ただし、利用者としては運営会社の違いを意識することはなく、運賃制度も共通ですから、「チューリッヒの電車」とだけ認識すれば問題ありません。
チューリッヒのケーブルカー
写真33. リンデンホフの丘から眺めるチューリッヒ市内
チューリッヒ市内は山がちで傾斜も多いです(写真33)。鉄道は傾斜に弱い乗り物です。その欠点を補うためにチューリッヒではケーブルカーが運行されています。
そのうち2つに乗ってみましょう!
図8. ケーブルカー24系統
1つはCentralから出ています(図8)。ケーブルカーだからといっても特別なことはなく、一般の運賃体系に組み込まれています。
写真34. ケーブルカーのりば
ケーブルカーのりばです(写真34)。本数も多く、10分も待ちません。
写真35. 多くの人が降りてきた
多くの人が降りてきました(写真35)。地元の足として活用されていることがわかる場面です。
写真36. 難なく乗れた
輸送力が小さいので1台待つことも想定していましたが、そんなことはなくすんなり乗れました(写真36)。
写真37. 発車!
発車しました(写真37)。
写真38. ぐんぐん登る
ぐんぐん登ります(写真38)。
写真39. 下る車とすれ違う
下る車とすれ違います(写真39)。山上側には半屋外の空間もあるのですか、楽しそー。
写真40. さらに登る
さらに登ります(写真40)。まもなく終点です。
写真41. 到着!
到着し、駅舎から外に出ました(写真41)。
もう1系統乗りました。
図9. ケーブルカー23系統の地図(googleマップより引用)
先ほどより少し長いケーブルカー23系統です。
写真42. 人々に付いてケーブルカーのりばに向かう
私は鉄道初心者ですので、現地のプロフェッショナルに付いて行き、ケーブルカーのりばに向かいます(写真42)。
写真43. ケーブルカーがやってきた
ケーブルカーがやってきました(写真43)。
写真44. ケーブルカーの様子
ケーブルカーの様子です(写真44)。意外と混んでいました。
写真45. 発車!
発車しました(写真45)。
写真46. ぐいぐい登る
ぐいぐい登ります(写真46)。この傾斜を通常の鉄道やバスで克服しようとすると、大回りを強いられます。それをショートカットできるケーブルカーが合理的と納得できます。
写真47. だんだん見晴らしが良くなってきた
山の上に向かうにつれ、徐々に見晴らしも良くなってきます(写真47)。
写真48. 到着!
到着です(写真48)。こちらのケーブルカーは新しい雰囲気がしますが、どうなのでしょうか。
写真49. こぢんまりとした駅舎
こぢんまりとした駅舎です(写真49)。ここも通常のトラムと同様の運賃体系ですので、見た感じはトラムと同様の券売機がありました。ケーブルカーだからといって特別視していない様子が伝わります。
写真50. 周囲の光景
周囲の光景です(写真50)。素晴らしい見晴らしでしょ?
写真51. Central付近を通るケーブルカーの線路
Central付近に戻ってきました。ケーブルカーの線路が見えます(写真51)。
チューリッヒの都市交通に触れてみて
写真52. チューリッヒの都市交通の主力、トラム
スイス最大都市チューリッヒを移動するのに多くの交通機関を使いました(交通機関を使うために移動したとか言わない!)。ここで感じたのは多くの種類の交通機関を状況に応じて使い分けていることです。輸送力が必要なのか、勾配への対応が必要なのか、その中間なのか、という特性に応じているということです。
そして、それはあくまでも技術的側面での対応であり、利用客にとってはどのような形態かは関係ありません(極論、魔法のじゅうたんでも目的地に着けば関係なし)。チューリッヒの都市交通は方式の異なる複数の交通機関であっても同じ運賃体系のもとに利用できるように工夫されています。
チューリッヒの都市交通は総合交通体系からデザインされており、都市交通の1つの完成系として存在しているように思いました。
重要旅行前にインターネット環境とクレジットカード(VISAブランドが使えるカードが望ましい)も忘れずに!
私は以下の2つを手配しましたが、類似のサービスであれば問題ないと思います。
- エポスカード(VISAブランドが使える年会費無料のカード)
- 海外WiFiレンタル【WiFiBOX】(余計な付属品がないので軽く、通信速度も満足できるコストパフォーマンス良好な通信環境)