ベルリンSバーンに親しむ(18年ベルリン旅行記)

ベルリンでも有力な交通手段のSバーン。そのSバーンを活用しましたので、その概要と実際の様子をお伝えします。

フリードリヒ駅に停車中のS5系統のリヒテンベルク行き

写真1. フリードリヒ駅に停車中のS5系統のリヒテンベルク行き

ベルリンSバーンの概要

ベルリンSバーンといきなり言われてもチンプンカンプンという人も多いでしょう。そのため、私が簡単に解説します。ベルリンはドイツの首都、Sバーンは都市内電車(とでも訳しましょうか)という意味です。日本に例えると、JR山手線、埼京線や大阪環状線というイメージです。ただし、ベルリン市内でほとんど完結しています(ベルリン市外はポツダムくらいかな)。1927年に運転開始して以来順調に発展…ではなく、紆余曲折がありました。第二次世界大戦末期のベルリン市街戦による施設の破壊、そして東西ベルリン分割がやっかいなできごとでした(興味があれば下記コラムを参照)。

補足.戦後の東西ベルリンとSバーン

第二次世界大戦に敗戦国となったドイツは戦勝国によって分割されました。ベルリンも例外ではありません。西側管轄の西ベルリンと東側運営の東ベルリンに分割されます。ところが、ベルリンのSバーンは周囲に合わせて東ドイツ国鉄が運営(東京の各路線がJR東日本による運営と同じイメージです)しました。戦後しばらくは東西ベルリンは一体となっていましたが、冷戦の激化でどんどん異なる方向に進み出します。

さまざまな事情がありますが、1961年にベルリンの壁が建設されてしまいます。これに怒ったのは西ベルリン市民です。そうなりますと、西ベルリン市民の移動に「東ドイツ」運営のSバーンは利用されなくなってしまいます。

これに東西ベルリンともに頭を抱えました。そこで、1984年に西ベルリン地区のSバーンだけは西ベルリンによる運営になりました。東西ドイツ再統一後、1994年からは再び東西は同一運営に戻りました。

※ドイツ再統一(1990年)から1993年までは2つの国鉄が共存していました。これにはさまざまな理由があるでしょうが、大きな理由は再統一じたいが急に行われたためと解釈しています。準備が間に合わなった(それだけ東ドイツがボロボロだった)のでしょう。

現在は、ベルリン市民の足として活躍しています。ドイツの他の都市のSバーンは赤と白がベースカラーですが、ベルリンSバーンは赤と黄色の独自の塗装を採用しています。なので、遠くから見ても判別が可能です。

Sバーンには改札はありません。そのかわり検札があり、有効な乗車券を持っていないと罰金です。「検札きたらやだな~」と思って無賃乗車するのは精神衛生上良くありません。その都度乗車券を購入することも面倒ですから、最初の乗車時に1日乗車券を購入することも手でしょう。

ベルリンSバーン路線図

図1. ベルリンSバーンの路線図(地下鉄Uバーンなどもありますけど…)

路線図を示しました(図1)。それでもわかりにくいでしょうから、3つの系統があることさえ把握すれば問題ないでしょう。以下で簡単に紹介しましょう。

東西方向:ベルリン市街線

ベルリンSバーンで観光客が乗る系統がこれでしょう。ベルリン動物園駅、フリードリヒ駅、アレクサンダー広場駅など、ベルリンの繁華街を串刺しに結びます。長距離列車の拠点であるベルリン中央駅も通る系統です。後に述べる2つの系統よりも乗客が多く、8両編成が多くを占めています。私が見た限り、中心部は10分に3本が運転されています。郊外部分に行くと複数の系統に分かれて10分間隔になります。さらに郊外方向に行くとそれが半減する系統があるようです。

南北方向:ベルリン地下線

ブランデンブルク門やポツダム広場などのエリアを通ることもあり、それなりに利用客が見られます。私が見た限り、中心部は10分に3本が運転されています。郊外部分に行くと10分間隔になります。さらに郊外方向に行くとそれが半減する系統もあります。こちらは6両編成の姿も確認できました。

郊外をめぐる:ベルリン環状線

ベルリンの中心部を東西方向に伸びるのがベルリン市街線、ベルリンの中心部を南北方向に伸びるのがベルリン地下線です。その交点を中心とした円を描いているのがベルリン環状線です。環状線は中心部や観光名所を通らないことから、観光客が乗ることはまずないでしょう。ベルリン郊外の住宅地をひたすら走るのです。そのぶんベルリンの真の姿を見られるともいえましょう。

ベルリンSバーンと触れ合う

ここまでは、それなりの解説でした。ここでは、それぞれの路線に乗車した際の記録をさらすことにしましょう。

ベルリン市街線

私がベルリン滞在中に最もよく乗った路線です。ベルリン中央駅に停車中のSバーン

写真2. ベルリン中央駅に停車中のSバーン

Sバーンからの車窓

写真3. ベルリンSバーンからの車窓(ベルリン中央-フリードリヒ通り)

ベルリンSバーンからの車窓

写真4. ベルリンSバーンからの車窓(フリードリヒ通り-ハーケーシャマルクト)

ベルリンSバーンからの車窓

写真5. ベルリンSバーンからの車窓(どこか忘れました)

ベルリン中央駅から東側に向かってみましょう。ベルリン中央を出ると都心的な光景が広がります(写真3)。この光景はハーケーシャマルクト付近まで続きます。都心らしい区間で私は気に入っています。ハーケーシャマルクトを過ぎると、団地群が広がります。東ドイツ時代に建設された未来的な建造物ですね。

次に、ベルリン中央駅から西側にも乗ってみましょう。

川を渡る

写真6. 美しい川を渡る

大通りを行く

写真7. 大通りを行く

美しい住宅街

写真8. 美しい住宅街

写真9. 戦勝記念塔が見える

ベルリン動物園駅付近の繁華街

写真10. ベルリン動物園駅付近の繁華街

美しい住宅街

写真11. 美しい住宅街

ヴェストクロイツ駅周辺の複雑な線路配置

写真12. ヴェストクロイツ駅周辺の複雑な線路配置

実は写真6-8と写真9-12は別の機会に乗車しています(同じ日なのですが)。そのため、進行方向が異なっていますので、ご了承ください。

ベルリン中央を出たら、のんびりとした住宅街を走ります(写真6-9)。この途中にアクセントとなるのが、進行方向右側(南側)の戦勝記念塔でしょう。ベルリン動物園付近は繁華街です(写真10)。ただし、繁華街そのものは駅からやや離れていますので、車窓からは繁華街そのものを眺められません。その後も同じような住宅街を通ります。見事な団地群は存在しません。西ベルリン側はそのような団地を建設しなかったのです。

ベルリン地下線

地下線の車窓を取り上げてもつまらないでしょう。そこで、地上に上がったところから取り上げます。

フリードリヒ通り駅に到着するSバーン

写真13. フリードリヒ通り駅に到着するSバーン

オラニエンブルカー付近で地上に上がる

写真14. 地上に上がる

ベルリン地下線への1つのチャンネルがフリードリヒ通りでしょう(写真13)。ベルリン中央の隣で、周囲も繁華街なのです。ただし、ちょっと薄暗く、鉄道に興味のない観光客だと避けるかもしれません。

繁華街感の薄い車窓

写真15. 繁華街感の薄い車窓

ベルリン郊外になってきた(ゲズントブルンネン付近)

写真16. ベルリン郊外になってきた(ゲズントブルンネン付近)

車窓的にはあまり面白くない景色が続きます。とは言っても、郊外に行けば雄大な景色が広がって、「遠くにきた」という感じになれると思います。

ベルリン環状線

ベルリンには環状線があります。私はゲズントブルンネンとヴェストクロイツまで乗車する機会に恵まれました(というよりわざと乗りに行った)ので、紹介します。観光客が降りない真のベルリンの姿があらわになるのです。環状線は41系統と42系統がありますが、ルートは違いありません。41系統が内回り、42系統が外回りというイメージです。

南北方向の路線と分岐する

写真17. ゲズントブルンネンを発車して南北方向の路線と分岐する

ゲズントブルンネンは、環状線と南北方向の路線が立体交差するのではなく、同一平面上になっています(この様子は後述します)。そのゲズントブルンネンを発車すると線路がわかれます。

途中駅を近郊列車が通過する

写真18. 途中駅を近郊列車が通過する

途中駅を近郊列車が通過しました。近郊列車はベルリン中央からシュパンダウ(ベルリンの外れのほう)までノンストップの系統もあります。そのような系統はもちろん、環状線を脇目に通過します(写真18)。

郊外を行く

写真19. 郊外を行く

郊外を行く

写真20. 郊外を行く

ベルリンの郊外的な風景の中を走ります(写真19-20)。多くの人の生活はこのような変哲もない住宅街にあるのです。

長距離線と並走する

写真21. 長距離線と並走する

長距離線と並走します(写真21)。ベルリンのSバーンは専用の線路を与えられています。どこかの武蔵野線のように「貨物列車や各種臨時列車とうまくやってね!」ということはありません。線路の多さは日本以上と感じました。迂回路が整備されているのです。

旧型車両とすれ違う

写真22. 旧型車両とすれ違う

ベルリン市街線や地下線を通る系統では見られなった旧型車両も見られました(写真22)。480形というようです。1986年から1994年までに投入された車両のようです。205系電車とほぼ同期といえます。

ベルリンの真の姿を見せる

写真23. ベルリンの真の姿を見せる

ベルリンの真の姿を見せる

写真24. ベルリンの真の姿を見せる

ベルリンの郊外的な風景の中を走ります(写真23-24)。このような風景を走る中、途中駅でガラの悪い2人組が私の座っているボックス席に座りました。ガラが悪いだけで何も危害は与えられませんでしたが、あまり心地よいものではありませんでした。しかし、これがベルリンの真の姿かもしれません。

ヴェストクロイツ駅の発車案内

写真25. ヴェストクロイツ駅の発車案内

ヴェストクロイツで発車案内を撮影しました。これによると、6両編成が5分間隔で運転されているようです。山手線のように「東京・品川方面」と直近の行先を表示すれば親切でしょう。このように考えると、東京の電車は親切なのでしょう。

ヴェストクロイツ駅で出会った旧型車両

写真26. ヴェストクロイツ駅で出会った旧型車両

そのヴェストクロイツで旧型車両(480形)に出会えました。環状線では多く使用されているようです。480「形」が良いのか480「型」が良いのかはわかりませんが、どうせ公式(ドイツ鉄道)は使用する漢字を決めていない(ドイツ語には漢字はない!)ので、われわれ趣味者の訳しかたの違いに過ぎません。

標準な車両の内装を観察する

480形電車についての話題が出たところで、現代の車両について眺めることにしましょう。481形というようです。独特のインバーター音、そして高加速(すごいよ!)が特徴の車両といえます。

481形の外観

写真27. 481形の外観

改めて481形の外観を観察しましょう。運転席からの前面展望は良さそうですが、客席からの前面展望は期待できません。暗いガラスで仕切られています。

2両ごとに車体がまとまっている

写真28. 2両ごとに車体がまとまっている

481形の特徴は2両ごとに1つの単位であることでしょう(写真28)。ここは通り抜けができません。日本にはない感覚ですから、驚きを隠せません。

赤いドア!

写真29. 赤いドア!

それよりも目に付くのは、赤いドアです(写真29)。このドアは閉まる際に独特のチャイムが鳴ります。

ボックス座席が中心の内装

写真30. ボックス座席が中心の内装

東京の電車と大きく異なるのが内装でしょう。吊革がなく、ボックス席が中心の車内です(写真30)。吊革はあったほうが良いと思います(地下鉄にはあったかもしれません)。

ボックス席と出入り口の間の仕切り板

写真31. ボックス席と出入り口の間の仕切り板

そのボックス席からドアを眺めます。ドア部分の間に透明の仕切り板があることに気づきます(写真31)。これは、着席している人に外の寒気が直接吹き付けないようにするための配慮と解釈できます。冬(1月)の平均気温は0.5℃と東京(5.2℃)よりも5℃も低いのです。

フリードリヒ通り駅

フリードリヒ駅は東西方向と南北方向の交点で1つのポイントとなる駅でしょう。そんなフリードリヒ駅とその周辺の風景を披露しましょう。

そんなフリードリヒ駅をICEが通過する

写真32. そんなフリードリヒ駅をICEが通過する

拠点と述べたばかりですが、長距離列車は通過します(写真32)。このICEは通過です。

フリードリヒ通り駅にリヒテンブルク行きがやってきた

写真33. フリードリヒ通り駅にリヒテンブルク行きがやってきた

そんな中、Sバーンがやってきました(写真33)。写真1の進入時の写真です。

フリードリヒ通り駅:近郊列車も停車する

写真34. フリードリヒ通り駅:近郊列車も停車する

近郊列車は停車します(写真34)。ただし、ホームいっぱいに停車しない場合がありますから、その場合はホームを移動する必要があります。停車位置を事前に確認すれば良い?日本とは違って乗車位置表示はありません。私もこのときにあわてて移動しました。

フリードリヒ通り駅を出てちょっと歩くと

写真35. フリードリヒ通り駅を出てちょっと歩くと

フリードリヒ通り駅からちょっと歩いてみましょう。気になる路地があります。ここを入っていきましょう(写真35)。

フリードリヒ通り付近の高架橋が見えてきた

写真36. フリードリヒ通り付近の高架橋が見えてきた

すると、高架橋が見えました(写真36)。

水路から見たフリードリヒ通り駅

写真37. 水路から見たフリードリヒ通り駅

最後に水路から眺めたフリードリヒ通り駅を紹介しましょう(写真37)。これがフリードリヒ駅の姿です。高架橋はともかく、駅のつくりが琴似、桑園に似ていますね(わからない人はスルーしてください)。

ゲズントブルンネン駅

図2. ゲズントブルンネン駅の位置

ゲズントブルンネン駅って何?そう思った人も多いでしょう。ベルリンの中心部から見て北側に位置する駅で、南北方向の路線と環状線が交差する駅です(図2)。通常の交差駅では立体交差なのですが、ここでは同一平面上に展開しています。また、南北方向の路線と環状線は同一ホームで乗り換えられます。

南北方向の電車が入線

写真38. 南北方向の電車がゲズントブルンネンに入線

私が南北方向の電車に北側(郊外側)から乗っていたときのことです。ゲズントブルンネンに入線しました。このホームの反対側が環状線(外回り、41系統)になります。このとき電車が遅れていましたので、同時到着はかないませんでした。

環状線が内側の方向別配置

写真39. 環状線が内側の方向別配線

そのゲズントブルンネンです。環状線が内側の方向別配線が特徴です。このときは、環状線(内回り、42系統)と南北方向の電車の同時発車はありませんでした。環状線は5分間隔、南北方向は3分20秒間隔なので、10分に1回は同時発車、そして同時発車しない場合でも1分40秒の待ち時間で接続するダイヤにすれば良さそうです。

同時に発車して離れる

写真40. 同時に発車して離れる

ただし、同時に発車する例もありました(写真40)。これは環状線側(内回り、41系統)から南方向に向かう電車を撮影したものです。

余談:ドイツ料理がおいしい店

観光ガイドには、ベルリンにあるドイツ料理のおいしいレストランの情報が少なかったです。そこで、私が1つ紹介します。Sバーンの高架下にドイツ料理がおいしい店がありました。

ドイツ料理がおいしい店

写真41. ドイツ料理がおいしい店

図3. 店の位置

Sバーンの高架下にある店です。ティアガルテン駅の出口からすぐという好立地です(だからこのページに掲載しました)。高架下であっても、列車の走行音は気になりません。この店は賑わっていますので、満席で入れないかもしれません。店の前で飲んだりしている人がいたので、自由な雰囲気を感じました。地元の常連で賑わっていて、観光客はいませんでした。

まとめ

ベルリンSバーンはベルリン市民に根付いていることが実感できました。総じて安全が保たれている(ただし夜間の郊外はわかりません)こともわかりました。ベルリン中央駅と環状線を結ぶ系統が新設されるという情報も聞いております。これからは戦争や分割に巻き込まれることなく、継続的に発展して欲しいものです。

前後を読みたい!

ベルリンの観光名所を見てみましょう!以下のページにまとめています。

ベルリン観光のおすすめスポットとモデルコース(18年ベルリン観光)

ベルリン観光では、前後でこれらを観光しました。

←(前)シュプレー川の遊覧船に乗る:クルーズ体験(2018年ベルリン観光)

(次)ベルリン市東部を観光する(2018年ベルリン観光)→

※別ウィンドウで開きます。

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