スイスでも有名な観光地、ツェルマット。交通の要衝のブリークからアクセスすることもあるでしょう。そんなブリークからの道中を紹介します。

写真1. ツェルマットに到着したMGB鉄道の展望電車
注意Matterhorn Gotthard Bahnの略称がMGBです。Bahnの日本語訳は鉄道ですので、MGB鉄道という表現は重複表現です。しかし、MGBだと鉄道会社を示すと直観的にわかりにくいと想定し、本記事ではあえてMGB鉄道という表現としました。
復習:MGB鉄道とツェルマットへの移動
最初にMGB鉄道とツェルマットへの移動方法について簡単に紹介します。
図1. ブリークとツェルマットの位置関係(googleマップより引用)
ブリークとツェルマットの位置関係を示しました(図1)。ツェルマットまでの鉄道はスイス国鉄による運営でなく、MGB鉄道(Matterhorn Gotthard Bahn)による運営です。ブリークとフィスプの間は国鉄とMGB鉄道が並走しています。
MGB鉄道だと直通列車の所要時間は1時間30分程度、運転間隔は1時間間隔です。この列車はブリークとツェルマットの区間運転であり、ブリーク以東には行きません。このほかに、アンデルマット-フィスプの系統とフィスプ-ツェルマットの系統を乗りつぐパターンが1時間間隔で設定されます。この場合はフィスプでの乗りかえ時間が21分あり、所要時間が1時間40分ほどかかります。
すなわち、以下の乗りかえパターンです。
- ブリークn:22→ツェルマット(n+1):50
- ブリークn:38→フィスプn:50/(n+1):11→ツェルマット(n+2):17(※1)
- ツェルマットn:06→ブリーク(n+1):45(フィスプで14分停車)
- ツェルマットn:37→フィスプ(n+1):47/(n+2):08→ブリーク(n+2):20(※2)
おおむね6<n<19(nは自然数)で成立。
※1. ブリークn:57発のIR95系統に乗るとフィスプ(n+1):05着なので、乗りかえ可能
※2. ブリークで(n+1):54発のIR95系統に乗ると(n+2):02着
一般化した表示で示しましたが、ブリーク10:38発フィスプ行きに乗った場合はn=10を代入し、ツェルマットに12:17に到着するということです。この場合、10:57発のIR95系統(ジュネーブ方面行き)に乗り、フィスプで乗りかえたほうが便利でしょう。
ブリークからフィスプへの列車の発車時刻を15分くらい繰り下げたほうがバランスが良い気がしますが、始発のアンデルマットで15分の接続時間でディセンティスからの列車の接続を取っています。その列車はクールでチューリッヒからのIC3系統の接続を取っています。よって、ブリークからの列車設定時刻を繰り下げるのは得策ではありません。
表1. クールからブリークまでの接続関係
これらの接続関係を簡単に表にまとめました(表1、表2)
| IC3 | RhB | MOB | |
| クール着 | 7:52 | ||
| クール発 | 7:55 | ||
| ディゼンティス | 9:11 | ||
| ディゼンティス | 9:14 | ||
| アンデルマット | 10:22 | ||
| アンデルマット | 10:37 | ||
| ブリーク | 11:33 | ||
| ブリーク | 11:38 | ||
| フィスプ | 11:50 | ||
| フィスプ | 12:11 | ||
| ツェルマット | 13:17 |
表2. ブリークからクールまでの接続関係
| MOB | RhB | IC3 | |
| ツェルマット | 6:37 | ||
| フィスプ | 7:47 | ||
| フィスプ | 8:08 | ||
| ブリーク | 8:20 | ||
| ブリーク | 8:23 | ||
| アンデルマット | 10:20 | ||
| アンデルマット | 10:28 | ||
| ディゼンティス | 11:39 | ||
| ディゼンティス | 11:44 | ||
| クール | 13:02 | ||
| クール | 13:08 |
もう少し工夫すれば、アンデルマット-フィスプの系統とブリーク-ツェルマットをまとめて1本に統合でき、余ったブリーク-フィスプの系統と、現行のフィスプ-ツェルマットをまとめてブリーク-ツェルマットとすることは可能そうです。そして、ブリーク-ツェルマットの約30分等間隔が実現します。
ただし、ブリーク連絡は国鉄のIR95系統によって可能なことと、ダイヤ乱れに対する余裕時間確保のために現行ダイヤとしているのでしょう。

図2. MGB鉄道の路線図(公式サイトより引用)
理解の一助となるようにMGB鉄道の路線図を示しました(図2)。
なお、MGB鉄道は私鉄ですが、スイストラベルパスやユーレイルパスグローバルパスは有効です。有効なパスであればツェルマットまでは追加料金はかかりません。
ブリークからツェルマットまで実際にMGB鉄道に乗る
御託はこの程度にして、実際にMGB鉄道に乗ってツェルマットに向かいましょう。
Stage1. ブリークからフィスプ

写真2. 国鉄から乗りかえる場合は駅の外に向かう
国鉄から乗りかえる場合は、駅の外に向かいます(写真2)。11番線から14番線がMGB鉄道の駅です。

写真3. 駅前に出ると路面電車のような駅がある
駅前に出ると路面電車のような駅があります(写真3)。やや急いでいたので、国鉄駅のホームからここまで1分57秒で着けました。手前の11番線に停車しているのが、先発のフィスプ行きです。10:34に国鉄駅に着き、10:38発のMGB鉄道列車に乗るという、厳しめのスケジュールでしたが間に合いました。
ブリーク駅の構造については、以下の記事で紹介しています。

写真4. 旧式車両の内装
旧式車両の内装です。

写真5. ブリークを発車!
ブリークを発車しました(写真5)。

写真6. 国鉄の線路の脇を走る
国鉄の線路の脇を走ります(写真6)。

写真7. 国鉄の線路が2段ある
手前に線路が見えますが、よく見ると山肌にも複線電化の線路があります(写真7)。あちらはベルン方面への線路です。

写真8. 線路がどんどん登っていく
線路がどんどん登っていきます(写真8)。手前に見える線路はジュネーブ方面、奥の線路はベルン方面と使い分けされていました。

写真9. 国鉄の線路を見ながら走る
国鉄の線路を見ながら走ります(写真9)。

写真10. 国鉄は複線、こちらは単線
国鉄は複線ですが、こちらは単線です(写真10)。ブリークとフィスプの間は国鉄はIC(ベルン方面)が毎時1~2本、IR(ジュネーブ方面)が毎時2本、このほかに地域列車も走ります。対するMGB鉄道は毎時2本だけです。したがって、両駅間の競争は国鉄が圧倒的有利です。
もっともスイスは国鉄と私鉄は補完するような関係性ですので、この区間で国鉄が圧倒的有利であっても別に良いのでしょう。

写真11. 山が見える
山が見えます(写真11)。私は進行方向右側、つまり北側の車窓を見ていますので、ツェルマットやマッターホルンとは反対方向の車窓です。

写真12. 国鉄の地域列車とすれ違う
国鉄の地域列車とすれ違いました(写真12)。

写真13. フィスプに停車!
そうしているうちにフィスプに停車します(写真13)。

写真14. フィスプに停車!
MGB鉄道のフィスプも見えました(写真14)。
Stege2. フィスプでの乗りかえ

写真15. ツェルマット行きと対面接続
ツェルマット行きとは対面接続で、それなりに便利です(写真15)。せっかくなので外の空気を吸いましょう!

写真16. 氷河急行が通過!
ホームで空気を吸っていると、氷河急行が通過しました(写真16)。

写真17. 白ではなく少しだけ青みがかかっている
氷河急行の車体は微妙に青みがかかっています(写真17)。

写真18. 近代的なフィスプの街を見ながら通過!
近代的なフィスプの街を見ながら氷河急行があっという間に通過しました(写真18)。

写真19. 国鉄の長距離列車が到着!
国鉄の長距離列車が到着しました(写真19)。カメラの時刻から推定すると、ロマンスホルンからのICでしょうか。

写真20. 多くの乗客が降りてきた
多くの乗客が降りてきました(写真20)。これらの乗客が全員こちらに向かうのではありませんが、チューリッヒやベルンからツェルマット方面への流動の多さを実感します。あちらのフィスプ到着が毎時04分、こちらの発車が毎時11分と接続を意識したダイヤとわかります。
これを見ると、チューリッヒ空港からフィスプへの直通列車を確保する重要性もわかります(チューリッヒ直通は2時間間隔ですが)。

写真21. ブリークからの列車が到着
ブリークからの列車が到着しました(写真21)。実用上はあちらに乗り、こちらに乗りかえるほうが良いでしょう。
Stage3. フィスプからツェルマット
ここからが風光明媚な区間です。
今回乗った車両の車内について、簡単に紹介しています。

写真22. フィスプを発車!
フィスプを発車しました(写真22)。
動画1. 川沿いを走る
川沿いを走ります(動画1)。

写真23. 川を眺める
川を眺めます(写真23)。

写真24. 川を眺める
川を眺めます(写真24)。

写真25. シュタルデン・サースに停車!
シュタルデン・サースに停車します(写真25)。ここではラックレールの姿も見えます。まさに山を登る鉄道です。

写真26. 斜面を眺める
斜面を眺めます(写真26)。スイスらしいログハウスです。

写真27. カルペトランに停車!
カルペトランに停車します(写真27)。

写真28. 反対方向とすれ違う
反対方向とすれ違います(写真28)。こちらも8両編成ですが、向こうもそれなりに編成両数は多いです。列車本数を増やすには複線区間がある程度必要ですが、山奥で土地が限られているのでそれはなかなか難しいです。その代案として編成両数をある程度確保し、輸送力を確保しています。

写真29. 崖を見上げる
崖を見上げます(写真29)。

写真30. 川を渡る
川を渡ります(写真30)。

写真31. 小さな滝が見える
小さな滝が見えます(写真31)。

写真32. 山奥の風景
山奥の風景です(写真32)。

写真33. ラックレールがある
ふと見るとラックレールがあります(写真33)。

写真34. 急流が見える
急流が見えます(写真34)。

写真35. 家が見える
進むと家が見えます(写真35)。

写真36. ザンクト・ニクラウスに停車!
ザンクト・ニクラウスに停車します(写真36)。

写真37. やや平たんになる
やや平たんになります(写真37)。

写真38. 集落を見ながら進む
集落を見ながら進みます(写真38)。

写真39. スプリンクラーが作動中!
スプリンクラーが作動中でした(写真39)。

写真40. 小さな滝が見える
小さな滝が見えました(写真40)!

写真41. 山肌を眺める
山肌を眺めます(写真41)。

写真42. 渓流を眺める
渓流を眺めます(写真42)。

写真43. 谷を眺める
川が作り上げた谷を眺めます(写真43)。

写真44. 氷河が見える
氷河が見えます(写真44)。

写真45. 氷河を拡大!
カメラのズーム機能を活用し、氷河を拡大しました(写真45)。

写真46. 高い峰が見える
高い峰が見えます(写真46)。これは1つの絶景と感じます。これに魅せられてスイスに向かう人が多く、国鉄のICなどを乗りついでここまで来る意味があると感じます。

写真47. やや開けてきた
やや開けてきました(写真47)。

写真48. テッシュ付近を走行中
テッシュ付近を走行中です(写真48)。このあたりは開けていますが、それを生かして大規模な駐車場を設置しています。そして、テッシュとツェルマットの間は通常の自動車交通を禁止し、テッシュとツェルマットの行き来は鉄道に集約しています。これはひとえにツェルマットの環境保護のためです。そのシャトル列車は20分間隔で運転しています。

写真49. 川沿いを走る
川沿いを走ります(写真49)。

写真50. 行き違い用の設備もある
行き違い用の設備もあります(写真50)。1時間当たりシャトル列車3往復、一般列車2往復、そして(時間帯によっては)氷河急行1往復と、山奥では破格の毎時6往復をさばくための設備です。

写真51. ツェルマットに近づく
ツェルマットに近づきます(写真51)。

写真52. 貨物列車ともすれ違う
貨物列車ともすれ違います(写真52)。

写真53. 人でごった返すツェルマットに到着!
人でごった返すツェルマットに到着です(写真53)。

写真54. この先は線路はない
この先は登山鉄道を除き、線路はありません(写真54)。

写真55. 車止めが終点を感じさせる
車止めが終点を感じさせます(写真55)。

写真56. ツェルマットに到着した電車
ツェルマットに到着した電車です(写真56)。電車は折り返しフィスプに向かいます。
ブリークからツェルマットに移動してみて

写真57. 高い峰が見え期待がふくらむ
今回、スイス南部に焦点を当てたこともあり、このあたりで最も有名な観光地のツェルマットに向かってみました(曇天や雨天は別の行動計画がありましたが、晴れたので本命のツェルマットに向かいました)。
ツェルマットまでの車窓は(今、振り返れば)鉄道が建設できるレベルの山間部です。しかし、それでも沿線風景の美しさはなかなかのものでした。ツェルマットでやりたいことに気を取られ、MGB鉄道の車内の時間はおろそかになりがちです。しかし、それはもったいないです。
また、列車本数は制約があるものの、ツェルマット地区は5両編成~8両編成が組成されていたように見え、じゅうぶんな輸送力を確保していました。ゆとりをもって座ることができ、せっかくの風景なのに混んでいるなかの苦行も強いられませんでした。
そして、(乗客にとって)自由度が高いスイスの鉄道、天候に左右される観光地めぐりには非常に適しているシステムとも感じたのです。
ここまで詳細に解説しました。公式サイトから予約できると思いますが、日本語で予約できないことに不安を感じる人もいるかもしれません。下記のサイトであれば、日本語で予約できるので安心です。
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