中央ヨーロッパの2024年ダイヤの要点

記事上部注釈
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欧州では毎月12月にダイヤ改正を実施します。その変化が激しい中央ヨーロッパ地区で2024年ダイヤの要点をまとめました。

写真1. 今回はベルリン直結の列車が増やされる

重要

本記事で詳細に解説しますが、ドイツの鉄道に関する内容を一通り、そして詳しく解説した書籍を出版いたしました。同人誌の流通ルートで販売していますが、いわゆる萌え絵は一切なく一般的な同人誌に嫌悪感を示す人でも抵抗ない内容・体裁になっています。

ドイツ関連

ドイツ地区では主要な変更点は以下の通りです。

  • ベルリンからパリ、ブリュッセルへのナイトジェットを運転(すでに設定のヨーロピアンスリーパー)
  • ベルリン-ミュンヘンの速達化
  • 一部のベルリン-ケルンをハムでの分割をなくしスピードアップ
  • ベルリン-アムステルダムのスピードアップ

ナイトジェットの新系統新設

写真2. ナイトジェットの車両(チューリッヒ行き、ベルリン中央駅で撮影)

ナイトジェットの新系統が設定されました。ベルリン発ブリュッセル行きとベルリン発パリ行きです。これらはマインハイムまで連結され、マンハイムでウィーン発と連結されます(マンハイムで客扱いはありません、詳細な時刻はブリュッセル行きパリ行きをお確かめください)。ナイトジェットらしい効率的な運用と思います。

ヨーロピアンスリーパーとは?

ベルリンとブリュッセルを結ぶ夜行列車はもう1系統あり、本項で記したフランクフルトでなくオランダ経由です。ドイツ鉄道などの運行でなく、別会社による運営です。

  • ベルリン中央22:56→アムステルダム中央6:31→ブリュッセル南9:27(冬は木日に運転、春以降は火木日に運転)
  • ブリュッセル南19:22→アムステルダム中央22:34→ベルリン中央6:20(冬は月金に運転、春以降は月水金に運転)

ナイトジェットがベルリン発で月水金に運転、ヨーロピアンスリーパーは火木日に運転なので、双方で相補的に運転され、上手に棲み分けされているように見えます。

ベルリンとミュンヘンのスピードアップ

ニュースレターには以下のように書かれていました(機械翻訳後に私で意訳)。

ベルリンとミュンヘン間のICE は、速達タイプの本数を設定することで利便性が向上します。所要時間約4時間の列車は、現在2時間ごとに運行されています。さらに、ベルリン ジュートクロイツとニュルンベルク中央駅の間で各方向3往復がノンストップで運行され、所要時間がさらに短縮されます。ミュンヘン中央駅からベルリン中央駅間の最速所要時間は3時間46分になりました。

European Time Tableのニュースレター

実際のダイヤは以下の通りです。

表1. ベルリンからミュンヘンへの時刻

列車名ベルリンミュンヘン記事
ICE501430917日曜運休
ICE17015341042日曜運休
ICE10016001002
ICE5036281103
ICE11037041111
ICE7017341242
ICE10038121202最速達型
ICE5058281301
ICE11059041309
ICE7039341401
ICE50710281504
ICE110711041508
ICE70511341642
ICE100512041601
ICE50912281701
ICE110913041710
ICE70713341803
ICE169514041917
ICE160114291903
ICE111115041911
ICE70915342043
ICE100716112002最速達型
ICE60316292103
ICE111317042112
ICE80117342244
ICE100918122201最速達型
ICE160518122303
ICE111519042307
ICE11192004001
ICE16072029114金曜運転

※灰色の文字の列車はニュルンベルク-ミュンヘンはアウクスブルク経由

表2. ミュンヘンからベルリンへの時刻

列車名ミュンヘンベルリン記事
ICE1008553953
ICE8045061022
ICE11146521057
ICE6026571130
ICE10067561142最速達型
ICE8027131222
ICE11128521257
ICE16008501329
ICE16948391353
ICE8009551422
ICE111010521457
ICE50810571530
ICE100411561542最速達型
ICE70811141622
ICE110812521657
ICE50612561733
ICE70613541822
ICE110614521857
ICE50414571930
ICE100215561942最速達型
ICE70415142022
ICE110416502057
ICE50216552130
ICE100017512152
ICE70217092222
ICE110218522257
ICE50018562332
ICE101819552350
ICE6002056126日曜運転

※灰色の文字の列車はニュルンベルク-ミュンヘンはアウクスブルク経由

なかなか難しい運行形態です。ここでベルリンとミュンヘンとその周辺の路線図を示します(図1)。

図1. ドイツ南部の路線図(OpenRailwayMapより引用)

この路線図で緑系の色が通常の最高速度、赤系の色が最高速度の高い区間、黄色系はその中間とご認識ください。

ベルリン-ミュンヘンの経路は1通りではなく、複数の経路があります(エアフルト-ニュルンベルクは単一の経路ですが)。

ベルリン-エアフルトはハレ経由が速達性に優れ、ライプツィヒ経由は速達性がやや欠けます(ライプツィヒ中央駅で方向転換する点も見逃せない)。ただし、これによる所要時間差は12分程度とそこまで大きくありません。一方、ニュルンベルク-ミュンヘンは大方が直線状のルートを取りますが、一部アウクスブルクを通る便があります(アウクスブルクの位置は図1のミュンヘンの「ミ」の左上です)。これによる所要時間差は50分程度です。

パターン外のアウクスブルク経由を除くと、おおむね以下の構成です。

  • 2時間に1本、所要時間4時間程度の速達便を運転(ハレ経由)
  • 2時間に2本所用時間4時間半程度の標準的な便を運転、半分はハレ経由(速いルート)、もう半数がライプツィヒ経由(遅いルート)

このように分解して考えるとそう難しくありません。今回のポイントは2時間間隔の速達便に加え1日3往復のノンストップ便を設定したことです。

なお、ニュースレターにはベルリン ジュートクロイツ(Bahnhof Berlin Südkreuz)と書かれていますが、これはベルリンの南側の拠点駅です。駅周辺の様子は全く異なりますが、東海道新幹線が全列車品川に停車するようなものです(それよりも一部の便だけでもポツダム広場に停車させては?)。

補足.フランクフルト系統との関係

ベルリンとエアフルトの間はベルリンとフランクフルトを結ぶ経路と重なります。ベルリン-ミュンヘンをハレ経由で結ぶ便は、ベルリン-フランクフルトをライプツィヒ経由で結ぶ便と相互に接続し、ライプツィヒ-ミュンヘンの乗車チャンスを毎時1回確保しています(ベルリン-フランクフルトをライプツィヒ経由で結ぶ便は2時間間隔なので、ベルリン-ライプツィヒは毎時1回の乗車チャンスがある)。

逆の接続はありませんが、フランクフルト-ライプツィヒはさらに別のICEが2時間間隔で運転され、フランクフルト-ライプツィヒは2時間に2回の乗車チャンスが確保されています。(地方分権のためか)特定の都市が発達せず、網目状に発達したネットワークのドイツらしい考えられたダイヤです。

もっとも私がフランクフルトからベルリンまで向かう速達便に乗ったときは、この便が40分近く遅れ、エアフルトでの接続はありませんでした…。そのため、このような接続は理論上とご認識ください。

ベルリン-ケルンのハム駅での分割省略

ベルリンからケルン方面のICEはデュッセルドルフ行きと連結されています。両者はハムで連結・切り離しします。

図2. ベルリンとルール地区の位置関係(OpenRailwayMapより引用)

ハムはルール地方の北東部にあり、ここから南西に向かうとケルン、西に向かうとデュッセルドルフに行けます(図2)。デュッセルドルフは州都、ケルンは州で最も大きな都市ということがあり、ともに重要です。そのため、ベルリンとケルン方面を結ぶ便はハムで連結・切り離しします。個人的には別列車として運転し、ベルリン-ハノーファーの乗車チャンスを30分間隔で確保するのが良いと思っていましたが…(識者に言わすとベルリン-ハノーファーで高速新線と在来線が同じ線路を共有するので難しいそうです)。

今回のダイヤ改正で一部のベルリン-ケルン便が独立運転となり、連結駅のハムを通過することになります。2時間に1本は従来通りの連結便、2時間に1本は独立運転です。独立運転する便の改正前後の時刻の比較です。

  • 改正前:ベルリン中央12:46→ハノーファー中央14:31→ケルン中央17:09(ハム停車)
  • 改正後:ベルリン中央12:57→ハノーファー中央14:40→ケルン中央17:15(ハム通過)
  • 改正前:ケルン中央12:48→ハノーファー中央15:31→ベルリン中央17:15(ハム停車)
  • 改正後:ケルン中央12:45→ハノーファー中央15:22→ベルリン中央17:04(ハム通過)

なお、連結便はケルン側の発車時刻が1分変更になり、所要時間が1分伸びています。連結がなくなり通過になって5~6分のスピードアップとは地味に思えますが、余裕時間をとったのでしょうか?

ハムは通過になりますが、デュッセルドルフ発着が従前どおり停車するため、ベルリン方面とハムの乗車チャンスは毎時1回確保されます。

6時間間隔で設定されているベルリン-ケルン間のノンストップ便は改正前と同様に設定され、所要時間も4時間程度と変わりません。一部のノンストップ便はベルリン東駅でなくベルリン中央駅発着で、シュパンダウまでの所要時間が短いので、ベルリン中央駅は地下ホーム発着なのでしょう。

ベルリンとアムステルダム間のスピードアップ

ベルリンとアムステルダムの間にはICが2時間間隔で運転されています(ハノーファーまでは先の章のICEと同じ経路です)。そのICについて約30分間所要時間が短縮されました。

  • (改正前)ベルリン中央10:33→ハノーファー中央12:40→アムステルダム中央16:49
  • (改正後)ベルリン中央10:07→ハノーファー中央11:56→アムステルダム中央16:00
  • (改正前)アムステルダム中央11:00→ハノーファー中央15:18→ベルリン中央17:25
  • (改正後)アムステルダム中央11:59→ハノーファー中央16:01→ベルリン中央17:51

これは、国境駅のバート・ベントハイム(Bad Bentheim、図3)での機関車付け替えの省略が寄与しています。改正前後の時刻表を比較するとおよそ9分のスピードアップです。

図3. バート・ベントハイム(Bad Bentheim)の位置

また、ベルリンとハノーファーの間が2時間7分から1時間50分と、17分所要時間が短縮されています。ダイヤ改正前後を比べると、従来停車していたシュテンダルとフォルクスブルクを通過し、ICEより先着しています。

先の章で、ベルリン-ハノーファーの乗車チャンスが2時間に3回に増えたと記しましたが、これが入らない穴にこのICが入っているので、実際にはベルリン-ハノーファーの乗車チャンスは毎時2回に増加しています(ベルリン発毎時46分と偶数時の07分と57分、ハノーファー発毎時31分、奇数時22分、偶数時04分)

なお、改正前ではベルリンとハノーファーをICE、ハノーファーとアムステルダムをICで移動すると10~13分短縮されていましたので、それと比較しても10分程度短縮されています。

オーストリア関連

写真3. ナイトジェットに気合の入るオーストリア国鉄(2019年にウィーン中央駅で撮影)

オーストリア地区の主要な変更点は以下の通りです。

  • ナイトジェットの拡充
  • ウィーンとベルリンの連絡列車の増発
  • イタリア連絡便のレイルジェット化
  • ウエストバーンのブレゲンツ乗り入れ

ナイトジェットの拡充

ナイトジェットが拡充されました。主な新設系統はドイツに関わるものですが、従来の系統も新型車両が導入されました。新型車両の特徴は以下の通りでしょう。

  • (トイレとシャワーが同じ空間であり、日本人の私には斬新すぎる配置ですが)全部屋がシャワー付きとなった(従来はシャワーなしの部屋もあった)
  • 簡易寝台(クシェット)にソロタイプのプライバシーが保たれるタイプがデビュー

最初はハンブルク発着便に使われ、そのうちウィーン-ブレゲンツ便にも使われる予定です。

なお、ナイトジェットのウィーン-ベルリン便ですが、ヴロツワフ経由からプラハ経由に変更されます。この列車に乗るだけで4か国制覇になったのですが、3か国制覇と減ってしまってちょっと残念ですね。

ウィーンとベルリンの連絡列車増発

ウィーンとベルリンの直通列車が1本増発されました。増発列車の内訳は以下の通りです。

  • ICE94:ウィーン中央6:13→ベルリン中央13:50
  • ICE95:ベルリン中央14:04→ウィーン中央21:47

ウィーンはオーストリアの首都、ベルリンはドイツの首都で両者はドイツ語圏の2つの大都市です。これらの都市を結ぶ列車はドイツ語圏のつながりの強化につながり、とても興味深いものです(個人的な感想ですが、両都市は欧州の都市でトップ2に好きな都市です)。

これにより、ウィーンとベルリンの間の直通列車は1日5往復体制となりました。

図4. ウィーンとベルリンの位置関係(OpenRailwayMapより引用)

大まかな経路を示しました(図4)。チェコを通るルート(白色)とドイツとオーストリアで完結するルート(黒色)があります。今回紹介したICE94/95は黒色のルートを通ります。このほかの列車は以下の通りです。

  • ICE94:ウィーン中央6:13→ベルリン中央13:50(黒色)
  • ICE92:ウィーン中央10:13→ベルリン中央17:53(黒色)
  • RJ256:ウィーン中央13:10→ベルリン中央21:54(白色)
  • IC296:ウィーン中央19:13→ベルリン中央6:32(黒色)
  • NJ456:ウィーン中央22:10→ベルリン中央8:18(白色)
  • RJ257:ベルリン中央6:15→ウィーン中央14:49(白色)
  • ICE93:ベルリン中央10:04→ウィーン中央17:47(黒色)
  • ICE95:ベルリン中央14:04→ウィーン中央21:47(黒色)
  • NJ457:ベルリン中央19:21→ウィーン中央7:00(白色)
  • IC297:ベルリン中央22:29→ウィーン中央10:47(黒色)

白色の経路のほうが短いですが、所要時間はかかります。また、3~4時間間隔で昼行列車が発車し、夜行列車が2往復運転されています。

イタリア直通便のレイルジェット化

4月以降、ミュンヘン-ヴェローナ方面のEC(ユーロシティ)の3往復がレイルジェットに変わります。これによる時刻変更はありません。

図5. ミュンヘンとヴェローナの位置関係(googleマップより引用)

この系統はオーストリア車による担当で、オーストリア車の旧型からオーストリア車の新型に変わるということです。ナイトジェットも含めオーストリア車がイタリアに乗り入れますが、イタリア車のオーストリア乗り入れはあまり聞きません。車両運用の費用精算の考えかたが日本と異なるのでしょうが、車両キロを統一しようという首都圏の民鉄を見ていると不思議に感じます。

ウエストバーンのブレゲンツの延長

写真4. ブレゲンツの様子

オーストリアにはウエストバーンという私鉄があります。日本の私鉄と異なり、国鉄の線路を私鉄列車が運転されています。日本でいうと、総武線の線路を「東関東レールウェイ」の列車が走るようなものです。日本ほど線路密度が高くないためにできる芸当です。

そのウエストバーンはウィーンとザルツブルクの間を30分間隔で運転されており、そのいくつかはザルツブルクより西に運転されています。今回のダイヤ改正でオーストリア西端のフォアアールベルク州に足を伸ばします。当該列車の運転時刻は以下の通りです。

  • 968便:ウィーン西15:08→ザルツブルク中央17:39→ブレゲンツ22:47
  • 961便:ブレゲンツ5:10→ザルツブルク中央10:22→ウィーン西12:52

オーストリア国鉄のレイルジェットがウィーン中央からブレゲンツまで6時間50分、毎時1回相当の乗車チャンス(直通は2時間間隔、2時間に1回はフェルトキルヒ乗りかえ)があることと比較して勝ち目はなさそうに見えますが、安さと停車駅の多さで勝負しているのでしょう。

中欧地区のそのほかの要点

上でドイツとオーストリアの主要なトピックを述べましたが、中欧地区のそのほかのトピックを紹介します。

写真5. チューリッヒに着いたミュンヘンからのユーロシティ

チューリッヒ-ミュンヘンの増発(スイス地区)

スイスのチューリッヒとドイツのミュンヘンを結ぶ国際列車は2時間間隔で運転されています。ただし、下記の2本が日曜のみの運転であり、それ以外の曜日は4時間のダイヤホールが生じていました。今回のダイヤ改正前に毎日運転となり、2時間間隔の安心感があります。

  • チューリッヒ中央10:55(改正後は10:54)→ミュンヘン中央14:27
  • ミュンヘン中央15:33→チューリッヒ中央19:04

チューリッヒ中央に19:04に着く便に乗ったことがありますが、後が4時間のダイヤホールとあってか、スイスの列車としては混んでいました。増発も当然と思います。

タリスからユーロスターへの変更(ベルギー地区)

運営会社が統合されたため、タリスユーロスターに変更されました(2023)。ブリュッセルを中心にパリ、アムステルダム、ケルンを結ぶ列車をユーロスターと呼ぶことはもはや常識ですが、しばらくはタリスという表記も見られるでしょう。その際は、ユーロスターと読み替えて理解するのが良いと思います。

2024年新ダイヤに触れてみて

写真6. 欧州は工事運休が日本の比でないほど多い

2024年の新ダイヤ。中欧地区は増発の話が多く、鉄道がますます活発になっている様子がわかります。これは鉄道輸送を鉄道会社に100%任せず、国がサポートしているという要因もありましょう。この良し悪しは立場や価値観によって変わるでしょう。

日本の鉄道サービスはこれらの国々に劣ることはないと思います(新幹線の3分続行などの頻発運転や広いシートピッチは魅力的です)。ただし、このような国々の勢いも日本に欲しいとも思ってしまいました。

重要

本記事で詳細に解説しますが、ドイツの鉄道に関する内容を一通り、そして詳しく解説した書籍を出版いたしました。同人誌の流通ルートで販売していますが、いわゆる萌え絵は一切なく一般的な同人誌に嫌悪感を示す人でも抵抗ない内容・体裁になっています。