ユーレイルパス(グローバル)でドイツで使える範囲

記事上部注釈
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ドイツでも使えるユーレイルパス(グローバル)。とはいえ、ドイツ国内でも使えないエリアがあります。それをまとめてみました。

重要

ユーレイルパスグローバル、ジャーマンレイルパスともにドイツ国内での有効範囲は基本的に変わりません。

写真1. ドイツ西部の要衝、コブレンツに入線する列車(2018年5月に撮影)

重要

本記事で詳細に解説しますが、ドイツの鉄道に関する内容を一通り、そして詳しく解説した書籍を出版いたしました。同人誌の流通ルートで販売していますが、いわゆる萌え絵は一切なく一般的な同人誌に嫌悪感を示す人でも抵抗ない内容・体裁になっています。

簡単にわかるまとめ

簡単にわかるまとめです。

  • 地域の路線は例外的な区間(ブランデンブルク州の一部区間)を除き、利用可能である
  • 都市内交通(トラム、地下鉄)やSLが運転されている観光鉄道は利用可能である
  • 長距離の格安交通(FixTrain)も利用可能である
  • 一部の航路でも50%引きで利用可能である

詳細は以下に記します。

復習:ユーレイルパス(グローバル)とは?

図1. ユーレイルパス(グローバル)の有効範囲(ユーレイルパス公式サイトより引用)

まず、ユーレイルパスについて簡単にまとめます。

  • 有効範囲:欧州33か国
  • 有効期間:1日単位(夜行列車は「到着して降りるまで」1日を延長)
  • 乗れる列車:国鉄線全線(国によっては民営化した全国鉄道網-日本でいうJRのような存在-)の全列車(国によっては特急系が全席指定席で、指定席券が必要な場合あり)
  • 発売単位:任意の4日~15日(4,5,7,10,15日)または連続15日~3か月(15日,22日,1-3か月)
  • 等級:1等または2等
  • 資格:33か国非在住者(在住者はインターレイルパスがあります)

ユーレイルパスは欧州(トルコは欧州かどうか議論はあると思いますが)の33か国で使用できる、鉄道の乗り放題チケットです。非常に大ざっぱな書きかたをすると、「欧州33か国で利用でき、特急にも乗れる青春18きっぷ」というイメージです。

「青春18きっぷ」と同じく、任意の1日が有効です。夜行列車については、1日が延長されます。具体的には、夜行列車を降りる駅まで有効です。ジャーマンレイルパスなどでは夜行列車には「19時ルール」があり、19時以降に夜行列車に乗る場合は、翌日にカウントされるのですが、この「19時ルール」とは異なりますので、ご留意ください。

そして、「青春18きっぷ」と同じく、適用期間と適用日があります。青春18きっぷであれば、「12/10~1/10の任意の5日間有効」というような規定があります。それと同じです。4~7日有効のものは1か月間、10日・15日有効のものは2か月有効です。つまり、15日有効のものは任意の2か月(約60日の間の任意の15日で効力を発揮)の間に使えるということです。

有効な路線や列車は該当国の国鉄の原則全列車です。夜行列車も含みます。ドイツのように民営化した国では、国鉄相当(日本でいうJR相当)に乗ることができます。ただし、都市内交通では使えないところが多いです。パリのメトロやドイツ語圏のUバーンでは使えません。とはいえ、国鉄で運営しているSバーンでは使えますし、パリのRERは北駅より郊外よりで使えます(北駅より郊外はフランス国鉄の運営)。

※使用可能な国と鉄道会社のリストは公式サイトのリストをご覧ください。オーストリアから並んでいるのは、英語のアルファベット順のためです(オーストリアはAustriaと書きます)。

1等用と2等用が用意されています。2等用は2等車(日本の普通車相当)、1等用は1等車(日本のグリーン車相当)に乗ることができます。

ドイツで使える範囲

写真2. デュッセルドルフに入線する近郊列車にも乗れる(2018年5月に撮影)

ドイツではドイツ鉄道(日本でいうJR、欧州各国でいう国鉄に相当)のほかに、私鉄が走っています。この私鉄にも2通りあります。

  • 地域交通を担う私鉄:ドイツ鉄道を補完する意味合いが強く、どちらかというと準国鉄的な位置づけ
  • 第2種鉄道的な私鉄:ドイツ鉄道が主に使う線路を使い、独自に列車を走らせる。どちらかというと、ドイツ鉄道と競合する関係

私の印象では、ドイツ鉄道と競合する私鉄はユーレイルパスは使えず、そうでない私鉄はユーレイルパスは使えます。

補足

欧州各国(ドイツを含む)は国鉄線と並走する民鉄電車はまれです。東海道線や横須賀線と並行し、独自に速達輸送を行うような京浜急行電鉄のような路線はないといっても過言ではありません。あっても、路面電車に毛の生えた鉄道が郊外区間で専用軌道を走る程度です。

使える路線一覧

使える路線一覧です。ドイツ鉄道(DB)はもちろんのこと、代表的な私鉄路線で使えます。公式サイトにドイツで使える範囲一覧が示されています。特記事項がない限り、制約なしで使えます。

  • Abellio Rail GmbH(ABR):ドイツ中東部に路線網を広げる会社です。ヴェストファーレン州地区でも地域の列車を運転しています。
  • Abellio Rail Mitteldeutschland GmbH(HEX):ドイツ中東部(ザクセン・アンハルト州地区)で運用している会社です。ベルリン-ゲッティンゲンの直通列車を除く全列車を利用可能です(かつてのハルツ・エクス急行の会社です)
  • agilis Eisenbahngesellschaft mbH & Co. KG:ドイツ南部(バイエルン州)で運用している会社です。
  • agilis Verkehrsgesellschaft mbH & Co. KG:ドイツ南部(バイエルン州)で運用している会社です。
  • Arriva Openbaar Vervoer B.V.:オランダの鉄道会社です。
  • Bayerische Oberlandbahn GmbH:ドイツ南東部の鉄道会社です。ザクセン州が中心です。
  • Bayerische Regiobahn GmbH(BRB):ドイツ南部(バイエルン州)の鉄道会社です。フュッセン(ノイシュバンシュタイン城に近い都市)も範囲に含まれています。
  • Bentheimer Eisenbahn AG:ドイツ北西部の鉄道会社です。
  • Berchtesgadener Land Bahn GmbH(BLB):Berchtesgaden – Freilassing – Salzburg Hbf(オーストリア)のみ利用可能
  • Bodensee-Oberschwaben-Bahn GmbH & Co. KG:ボーデン湖(ドイツ南西部)近くの鉄道会社です。Aulendorf – Friedrichshafen Hafenのみ利用可能
  • cantus Verkehrsgesellschaft mbH:ドイツ中部(フルダ、カッセル付近)の鉄道会社です。
  • City-Bahn Chemnitz GmbH:ケムニッツ(ザクセン州の都市)の都市交通です。St. Egidien – Glauchau、Chemnitz Hbf – Burgstädt、Chemnitz Hbf – Niederwiesa、Chemnitz Hbf – Mittweidaのみ利用可能
  • DB ZugBus Regionalverkehr Alb-Bodensee GmbH:ドイツ鉄道のバーデン ヴュルテンベルク州の運営部門で、現在はバス路線が主体です。鉄道路線は利用可能、バス路線は利用不可能です
  • Die Länderbahn GmbH DLB:ドイツ南部で運営する鉄道会社です。wikipediaのほうがわかりやすいと思います。
  • Eisenbahn-Bau- und Betriebsgesellschaft Pressnitztalbahn mbH:ザクセン州(ドイツ南東部)の鉄道設備の保有会社です。ザクセン州から遠く離れたドイツ北東部(バルト海近く)一部区間で列車も運行しており、Bergen auf Rügen – Putbus – Lauterbach Moleで利用できます。
  • Eisenbahnen und Verkehrsbetriebe Elbe-Weser GmbH(EVB):ニーダーザクセン州の鉄道会社です。Bremerhaven – Cuxhaven、– Rotenburg(Wümme) – Verden(Aller)で利用できます。
  • Erfurter Bahn GmbH:テューリンゲン州周辺の(ドイツ中東部)の鉄道会社です。エアフルト周辺の地域交通です。
  • erixx GmbH:ハノーファー周辺の鉄道会社です。
  • eurobahn GmbH & Co. KG:ヴェストファーレン州(ドイツ北西部の州)やオランダで運転する鉄道会社です。
  • Go-Ahead Baden-Württemberg GmbH:シュトゥットガルト(ドイツ南西部)周辺の地域交通です。
  • Go-Ahead Bayern GmbH:ミュンヘン-リンダウなどの路線を運営するバイエルン州の地域交通です。
  • Hessische Landesbahn GmbH(HLB):ヘッセン州(フランクフルトのある州、ドイツ西部)を中心とする鉄道会社です。
  • metronom Eisenbahngesellschaft mbH:ドイツ北部(ハノーファーやハンブルク)の鉄道会社です。
  • National Express Rail GmbH:ノルトライン・ヴェストファーレン州の鉄道会社です。ケルンやデュッセルドルフが中心です。
  • NEB Betriebsgesellschaft mbH:ベルリン近郊の鉄道会社です。wikipediaのほうが路線網がわかりやすいと思います。
  • NordWestBahn GmbH:ブレーメン近郊の鉄道会社です。確かにブレーメンはドイツの北西部に位置しているので、この会社名は理にかなっていると思います。
  • ÖBB-Personenverkehr AG:オーストリア国鉄です。ナイトジェット(夜行列車)のドイツ国内区間の利用が可能です(寝台車など料金が必要な場合があります)。
  • ODEG Ostdeutsche Eisenbahn GmbH:ベルリン近郊とその周辺の鉄道会社です。Hagenow – Parchim、 Rhena – Parchim、Görlitz Hbf – Hoyerswerda、Zittau – Cottbusは利用できません。利用できない区間は公式サイト路線図から見るとわかりやすいと思います(例えばZittau – Cottbusは路線図の右下にあります)。
  • REGIO-Bahn GmbH:ノルトライン・ヴェストファーレン州の鉄道会社で一部の路線を運営しています。
  • RegioTram Gesellschaft mbH:カッセル近郊(ドイツ中部)の地域輸送の鉄道会社です。Warburg – Hofgeismar – Kassel Hbf、Wolfhagen – Kassel Hbf、Melsungen – Kassel Hbfのみ利用可能です。
  • Rurtalbahn GmbH:デューレン(ノルトライン・ヴェストファーレン州に位置し、ケルンとアーヘンの中間あたり)の地域輸送です。
  • Saarbahn GmbH:ザール地区(ドイツ西部、フランスに近い地域)の地域輸送です。Saarbrücken Hbf – Sarreguemines(フランスの駅)のSバーンのみ利用可能です。
  • S-Bahn Berlin GmbH:ベルリンのSバーンです。というより、ベルリンのSバーンもドイツ鉄道の直営ではなかったのか…。
  • S-Bahn Hamburg GmbH:ハンブルクのSバーンです。というより、ベルリンのSバーンもドイツ鉄道の直営ではなかったのか…。
  • SBB GmbH:SBB(スイス国鉄のドイツ語表記)のドイツ国内区間です。ドイツ南西部のコンスタンツ(=コンスタンツはスイスとの国境付近)近郊の輸送を担っています。Engen – Radolfzell – Konstanz、Zell im Wiesenthal – Lörrach – Basel Bad Bf、Weil am Rhein – Lörrach – Steinen、Schaffhausen – Erzingenの利用が可能です。というより、Basel Bad Bf(バーゼルのドイツ鉄道の駅)-Basel(SBB)以外は利用可能では?この区間はスイス国内でドイツ国外です。
  • Süd Thüringen Bahn GmbH:チューリンゲン州(ドイツ南東部の州)の南部の地域輸送を担っています。トラムも運転していますが、トラムには無効です。
  • SWEG Südwestdeutsche Landesverkehrs-GmbH:ドイツ南西部の地域輸送を担っています。
  • Transdev Regio Ost GmbH(MRB):ライプツィヒ(ドイツ東部の都市)近郊の地域輸送を担っています。
  • Trans Regio Deutsche Regionalbahn GmbH:コブレンツ(ドイツ西部の都市)近郊の地域輸送を担っています。マインツ-ケルン(ライン川左岸を通る幹線鉄道)のローカル列車が主体です。
  • Usedomer Bäderbahn GmbH(UBB):ドイツ北東部のバルト海沿いのリゾート地の鉄道を運営しています。 Barth – Stralsund Hbf – Greifswald – Züssowで利用できます。
  • VIAS GmbH:フランクフルト近郊の地域輸送を担っています。
  • WestfalenBahn GmbH(WFB):ドイツ北西部の数路線を運営しています。ブラウンシュバイク-ハノーファー-エムデン(北海沿いでオランダとの国境近く)の系統が主体です。
  • Zweckverband Ringzug SBH (Betreiber SWEG):ドイツ南西部の地域輸送を担っています。wikipediaの路線図のほうがわかりやすいと思います。

基本的に地域輸送を担う鉄道会社は何も考えることなく利用できます。ただし、都市の路面電車や地下鉄は利用不可能です。同じく都市鉄道であってもSバーンは利用可能です。あえていえば、ドイツ北東部のブランデンブルク州を利用する際に、agenow – Parchim、 Rhena – Parchim、Görlitz Hbf – Hoyerswerda、Zittau – Cottbus間は利用不可能であること、ベルリンからハルツ地方に向かう直通列車のベルリン-マクデブルクは利用不可能(ベルリン地区からマクデブルク行きのRE1系統は問題なし)なことに注意すれば問題ないでしょう。

重要

2018年までに書かれたブログなどを見ると、マクデブルクからハルツ地方(クヴェトリンブルクなど)に向かうHEX(HalzElbe Express)は利用可能と書いています。現在もこの路線は利用可能なのですが、運営会社がAbellio Rail Mitteldeutschland GmbHに変わっています。2018年までに書かれたブログや書籍の記述は読み替えてください。

使えない路線

逆に使えない鉄道会社はどこでしょうか。日本のムック本にも取り上げられるような観光客に人気の鉄道会社や私が気づいた鉄道会社を列挙します。

  • ハルツ狭軌鉄道(Harzer Schmalspurbahnen)(HSB):ブロッケン山に登る、SLで有名な鉄道会社です。
  • モリー鉄道(Mecklenburgische Bäderbahn Molli (MBB)):ドイツ北東部の海岸沿いのSLで有名な鉄道会社です
  • リューゲン軽便鉄道(Rügensche Kleinbahn):ドイツ北東部の海岸沿いのSLで有名な鉄道会社です
  • FlxTrain:ドイツで長距離列車を運転している格安系の会社です。ドイツ鉄道と競合する関係にあります。
  • 各地の地下鉄、路面電車:日本でもJRではなく市営地下鉄などが運営していると考えると、何となく理解できるでしょうか。

半額で利用できるフェリー

このほかに半額で利用できるフェリーがあります。

  • フィンライン(ドイツからフィンランドやスウェーデン方面):トラフェミュンデ (Travemünde)(ドイツ) - ヘルシンキ (Helsinki) (フィンランド)とトラフェミュンデ (Travemünde)(ドイツ) - マルメ (Malmö) (スウェーデン)
  • ステナライン:ドイツから各方面
  • ボーデン湖沿いを渡りスイスに向かう路線:リンダウ-ロールシャハ(スイス)、フリードリヒ スハーフェン-ロマンスホルン(スイス)フリードリヒスハーフェン-ロマンスホルンは半額ではなく、全額割引です(実際に利用した際に確認しました)

公式サイトには上2つしか紹介されていませんでしたが、ユーレイルパスグローバルパスはドイツだけでなく(欧州各国の1つである)スイスでも適用できます。そのスイスでの適用範囲を見ると、ボーデン湖を渡りドイツに至る路線についても50%引きとの記述があります。そのため、ボーデン湖の航路もここでは記しました。

ユーレイルパス(グローバル)の適用範囲を確認してみて

そんなフリードリヒ駅をICEが通過する

写真3. ベルリン市内を快走するICE(2018年4月に撮影)

今回、ユーレイルパス(グローバル)でのドイツでの適用範囲を記しました。公式サイトではドイツに隣接する区間も記していたのですが、ドイツに隣接する各国でユーレイルパス(グローバル)を使用できるので、ここでは省きました。

都市内交通や観光鉄道には利用できませんが、思いのほか利用できる範囲が広く、私鉄であることをことさら意識する必要はありません。また、ドイツではICE(高速列車)も含んで座席は任意指定制で、座席をあらかじめ指定する必要はありません(座席を確実に確保したければ座席を予約する意味は大きいです)。そのため、鉄道パスの最大の長所である機動性を生かすことができる地域です。

そのような意味で、ドイツは鉄道旅行には非常に適した国であることを再認識しました。

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