ドイツでジャーマンレイルパスより安く乗る方法

記事上部注釈
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ドイツの鉄道旅行を計画する際、ジャーマンレイルパスと包括チケットの価格を比べるのはよくやることです。しかし、もう1つの手段を忘れがちです。その手段についてまとめました。

美しいDEの一般型車両

写真1. ブランデンブルクチケットではポーランドのシュチェチンまで行くことが可能

重要

本記事で詳細に解説しますが、ドイツの鉄道に関する内容を一通り、そして詳しく解説した書籍を出版いたしました。同人誌の流通ルートで販売していますが、いわゆる萌え絵は一切なく一般的な同人誌に嫌悪感を示す人でも抵抗ない内容・体裁になっています。

よくわかる結論

ジャーマンレイルパスや包括乗車券でない手段としての結論は以下の通りです。

  • ジャーマンレイルパスよりも州別チケットや全国共通チケットが安い
  • ただし、ICEやICを使えないという難点がある
  • また、平日の9:00まで使えない難点がある(土曜・日曜とドイツの祝日は終日利用可能)
  • 1つの州で完結する場合は州別チケット、2つの州の組み合わせは全国共通チケット

考えかたの詳細を以下に示します。

復習:ジャーマンレイルパスと包括乗車券の概要

写真2. ICEから眺める美しい風景(フランクフルトからベルリンのICEから撮影)

まず、ジャーマンレイルパスと包括乗車券について紹介しましょう。

  • ジャーマンレイルパスドイツ全土のドイツ鉄道やそれに準ずる鉄道路線を利用可能。一部ドイツ国外の鉄道路線も利用可能(ここでは詳細には立ち入りません)
  • 包括乗車券:特定の列車の乗車券と指定席券が組み合わさった乗車券。日本の感覚では返金不可の格安航空券に近い(返金できるプランもあるが、格安ではなくなる)

よく言われるのは、列車に乗り遅れない(あるいは出発時間が大幅に早まらない)場合は包括乗車券、旅程に機動性を持たせたい場合はジャーマンレイルパスという選択肢です。

例) フランクフルト中央駅からケルン中央駅までICEで移動する場合(2等の場合、2か月程度先の予約を想定)

  • 包括乗車券:キャンセル不可(Super Sparpreis)だと55.9ユーロ、キャンセル可能+変更不可(Sparpreis)だと63.9ユーロ、キャンセル可能+変更可能(Flexpreis)92.8ユーロ
  • ジャーマンレイルパス:4日のフレキシーパスで229ユーロ(単純計算で1日当たり68ユーロ)

この場合、キャンセル可能なプランだと包括乗車券のほうが安く、変更可能なプランだとジャーマンレイルパスのほうが安い計算です。包括乗車券の価格は需要と供給に応じて臨機応変に変わりますから、この価格が絶対的なものではありません。しかし、イメージとしてつかみやすいでしょうから、具体的な区間と価格を示しました。

補足

ドイツ(やスイス、オーストリア)では高速列車などが基本的に自由席(事前に座席指定も可能だが、必ずしも必要なわけではない)ですから、鉄道パス利用で機動的に動けます。一方、フランスやイタリアの高速列車は基本的に全車指定席ですから、鉄道パスがあっても指定席が空いていない(それも鉄道パスで購入できる指定席はより少ない!)と機動的に動けません。

したがって、上の内容はドイツ(やスイス、オーストリア)だからこそ成立するとご認識ください。

高速列車を使わない場合は?

写真3. コブレンツで見かけたライン川右岸線の電車

では、上記で記したケルンとフランクフルトの移動は果たして高速列車だけで可能なのでしょうか?答えは異なり、地域列車だけでも移動が可能です。

フランクフルト中央9:08→コブレンツ10:54/11:16→ケルン中央12:31

高速列車が通らない経路ではライン川沿いの風景を楽しめますし、途中下車しての観光もまた良いものでしょう。ここでは一例を示しましたが、このような例のように1日で長距離移動することは意外と少なく、高速列車(ICE)や特急列車(ICやEC)で向かえない場所に行くこともあり、ICEやIC(EC)を使わないほうが便利な移動のことだってあるはずです。

ジャーマンレイルパスよりも安い、地域パスなどの乗り放題チケットがあります。これらの欠点は制約が厳しいことですが、そこは頭の使いどころです。

地域パスや全国共通チケット(Quer-Durchs-Land-Ticket)

写真4. ブランデンブルク州を走る列車

ドイツには16の州があります。それぞれの(※)で1日乗り放題チケットが用意されています。また、2つ以上の州を使う場合は全国共通チケット(Quer-Durchs-Land-Ticket)利用が安くて便利です。

※3つの都市州(ベルリン、ハンブルク、ブレーメン)には専用の乗り放題チケットはありません。それぞれ周囲を取り囲む州の乗り放題チケットに含まれています。例えばベルリン州はブランデンブルク州に囲まれていますが、ブランデンブルク州のチケットにベルリン州全域が含まれているというようにです。

価格などは各州で異なりますが、全体に共通しているのは以下の通りです。

  • ICE、IC、ECは利用不可能、利用可能なのはRE(快速に相当)、RB(普通に相当)、Sバーン(都市圏電車に相当)が主体
  • 都市内交通(地下鉄Uバーン)と路面電車も利用不可能(これは包括乗車券やジャーマンレイルパスも共通です)
  • 利用可能なのは、平日の9:00以降土曜・休日の終日(平日・休日関わらず日付変更は翌日の3:00まで)
  • 1人から利用可能だが、複数人で同一行程で利用すると割安(1人用~5人用あり)

日本の感覚でいうと、平日の朝ラッシュ時に使えない青春18きっぷのようなものです。ただし、青春18きっぷとは異なり、通年利用可能で1人・1日から購入・利用可能です。また、複数人数で利用すると割安で、極端な設定だとブランデンブルク州チケットのように1人~5人で33ユーロと定額のこともあります。1人だと1人当たり33ユーロなのが5人だと1人当たり6.6ユーロとなるのです。

厳密な計算では異なりますが、事実上2つ以上の州をまたがって利用する場合、全国共通チケットのほうが安いです。

補足

2つ以上の州にまたがって利用する場合、全国共通チケットのほうが安いことを証明するには以下の式が成立することを証明する必要があります。

(最安の州の価格) + (2番目に安い州の価格) > (全国共通チケットの価格)

2つの州の合計金額は「(最安の州の価格)と(2番目に安い州の価格)の合計金額」に等しいか、これより高いです。そのため、2つの州の合計金額の最安値を求めれば大小関係を比較できます。

これを計算すると、1人利用~4人利用の場合は上記の式が成立します。よって、4人までの場合は2つの州の乗り放題チケットを別々に買うよりも、全国共通チケットを買うほうが安くなります。

ただし、5人利用の場合は、(ブランデンブルク州)+(ヘッセン州)の合計金額が71ユーロ、全国共通チケットが72ユーロですから、ブランデンブルク州とヘッセン州を別々に買うほうが安いです。ところで、ブランデンブルク州とヘッセン州は隣接しておらず、この両者を移動するのであれば、別の州も通ることになります。つまり、事実上(ブランデンブルク州)+(ヘッセン州)を買うことはないでしょう。

5人利用でもこれ以外の組み合わせでは全国共通チケットのほうが安いです。よって、事実上、2つ以上の州を利用する場合は全国共通チケットのほうが安いと結論付けられます。

各州のチケットの価格と全国共通チケットの価格

では、肝心な価格はどうでしょうか。具体的な価格を示す前に、州の位置関係を示します(図1)。

図1. ドイツの各州の位置関係(ドイツ鉄道公式サイトより引用)

ドイツには16の州があり、うち3つを除く13州が一般的な州、3つが都市州(都市で1つの州を形成)です。

有名な都市や観光地がどの州にあるかを示します。

  • ベルリン:ベルリン州(鉄道的にはブランデンブルク州と共同運営的な側面あり)
  • フランクフルト:ヘッセン州(意外なことに州都ではない!)
  • ミュンヘン:バイエルン州
  • ケルン:ノルトラインヴェストファーレン州(ここも州都ではない!)
  • ハンブルク:ハンブルク州(乗り放題的にはニーダーザクセン州)
  • ローテンブルク:バイエルン州(ここに限らず「人気の観光地」はバイエルン州が多いよ!)

それぞれの州の価格を示します(表1)。

表1. 各州のチケットの価格(価格はユーロ、「2人」は2人での価格(2人利用の1人当たりではない))

州(日本語表記)
州(ドイツ語表記)
1人 2人 3人 4人 5人
全土
Quer-Durchs-Land-Ticket
44.0 51.0 58.0 65.0 72.0
バーデン=ヴュルテンベルク
Baden-Württemberg
25.0 32.0 39.0 46.0 53.0
バイエルン
Bayern
27.0 36.0 45.0 54.0 63.0
ブランデンブルク
Brandenburg
33.0 33.0 33.0 33.0 33.0
ヘッセン
Hessen
38.0 38.0 38.0 38.0 38.0
メクレンブルク=フォアポンメルン
Mecklenburg-Vorpommern
25.0 31.0 36.0 41.0 46.0
ニーダーザクセン
Niedersachsen
25.0 31.0 36.0 41.0 46.0
ノルトラインヴェストファーレン
NRW
31.9 47.9 47.9 47.9 47.9
ラインラント=プファルツ
Rheinland-Pfalz
26.0 32.0 38.0 44.0 50.0
ザールラント
Saarland
26.0 32.0 38.0 44.0 50.0
ザクセン
Sachsen
27.0 35.0 43.0 51.0 59.0
ザクセン=アンハルト
Sachsen-Anhalt
27.0 35.0 43.0 51.0 59.0
シュレースヴィヒ=ホルシュタイン
Schleswig-Holstein
28.0 32.0 36.0 40.0 44.0
テューリンゲン
Thüringen
27.0 35.0 43.0 51.0 59.0

旅程計画のうえでは、上の章で例示したフランクフルトからケルンまではヘッセン州、ラインラント=プファルツ州、ノルトラインヴェストファーレン州を通ります。そのため、州別乗り放題チケットを使う1人旅行の場合は、38.0+31.9+26.0=95.9ユーロかかります。全国共通チケットはこれより安く、44.0ユーロで済みます。

このほかにも強力なカードがあり、1か月有効のドイツ全土の乗車券があります。それがDeutschland-Ticket (D-Ticket)(49ユーロ)です。毎月1日~末日まで有効で、同じ月に2日以上旅行する際は有用な選択肢です(6/30と7/1のように月をまたぐと2か月ぶん必要になるので注意!)。全国共通チケットを2日ぶん使うと88ユーロですから、それより割安なのです。ただし、複数人数での割引はないので、3人で2日ぶんを利用する場合は、ドイツ全土チケットのほうが割安です。

  • (全土チケット3人×2人) 58ユーロ(1日3人利用)×2日=116ユーロ
  • (Dチケット) 49ユーロ(2日利用)×3人=147ユーロ

差額が10ユーロ程度であれば、結果としてDチケットのほうが割安になるかもしれません。ドイツ全土チケットはSバーンを除く都市内交通で使えませんが、DチケットはSバーンを含む都市内交通でも使えるためです。

※ドイツ全土チケットについては、ドイツ鉄道の公式サイトが最も正確です!

地域パスや全国共通チケットの購入方法

これらを買うのはそう難しいことではありません。地域パスを購入するページ(英語版)や全国共通チケットを購入するページ(英語版)から目的となる地域の地域パスを選択し、クレジットカードで支払います。ここで、英語の地名表記とドイツ語の地名表記が異なります。例えば、バイエルン州は英語表記でBavariaです(ドイツ語表記のBayernとは異なります)。

全国共通チケットのページにある注意事項の主要部分をピックアップしましょう。

  • チケットは、最大6か月前から旅行の直前まで購入できます(前日までなどのような制約はなし)。
  • 月曜日~金曜日午前9時~翌日午前3時
  • 土曜日、日曜日、ドイツ全土の祝日: 深夜0時から翌日の午前3時まで(州別の祝日は平日扱いということでしょう)
  • 対象列車:DBや協力鉄道会社が運営するすべての地域列車(RB、IRE、RE)およびSバーン
  • 自由席および2等のみ(RBやREには基本的に指定席はなかったような…)
  • バーンカードによる割引:なし
  • 変更や払い戻しなし
  • チケットを購入する際には、すべての乗客の姓名を入力する必要があります。チケット購入後の名義変更はできません

本当に青春18きっぷのイメージですね!ただし、青春18きっぷとは異なるのは、通年利用可能なことと、半年前から発売していることです。半年前から発売しているとはいえ、払い戻し不可なことと直前まで発売(極端な表現ですが、23:59まで発売しているという意味でしょう)なことを考えると、せいぜい1日前まで買えば良いでしょう。

もう1つ重要なことは名義変更ができないことです。そのため、青春18きっぷとは異なり、誰かに譲渡できません。青春18きっぷと異なり、1人1日ぶんから購入できるので「余ったから誰かに譲る」こともないでしょう。

補足

駅の券売機で買いたいという場面もあるでしょう。実際に私がマクデブルク中央駅で購入した様子を示します。

1) 何はともあれ英語表記に変える

※欧州において英語はイギリス国旗です。ドイツ語のままで良ければ、デフォルトで問題ありません(ドイツであればドイツ国旗、オーストリアであればオーストリア国旗が表示されます)

2) ここではトップに示されていたので、Quer-Durchs-Land-Ticketを選択

※マクデブルクのあるザクセンアンハルト州の乗り放題チケットもありますね!

3) 人数を選択

※デフォルトでは1です。more than 5とありますが、これは日本語でいう6人以上を指します。英語のmore than はその数字を含まないことに注意です。

4) いつから使うかを選択

※この機能のおかげで前日までに事前に買うことができます。

5) DBのポイントを貯めるか?

※これでDBのポイントが貯まります。DBカードの類を作る必要があるのかな?私は大して乗らないので、Do not collectとしています。

6) 概要が表示されるので確認しPayを選択

7) 脇にあるカードリーダーに差し込む

※脇にカードリーダーがあるので、そこに差し込みます。さすがエポスカード、すぐに反応しました!

8) 取り出すのを忘れずに!

※紙によるパスです。下のほうから出てくるので紙を忘れずに!

9) 最後に名前を書く!

※無記名の状態で発券されますので、ここに名前を書きます(不正使用を防ぐためでしょう)。そして、本人であることを証明する書類(たいていパスポート)を忘れずに持ち歩きましょう!

ジャーマンレイルパスとの比較

写真5. ジャーマンレイルパスではこのようなチェコ車に乗れる(ベルリン中央駅で撮影)

最後にジャーマンレイルパスとの比較の1つの考えかたを示しましょう。ジャーマンレイルパスは3日用で192ユーロ、5日用で241ユーロです(いずれも2等用、フレキシーパス)。

ここで得になるパターンと損になるパターンを示しましょう。いずれも単独旅行を想定した計算で、州別チケットではなく全国共通チケットを想定した計算です。

例1) 本当は4日ぶんの移動の場合

本当は4日ぶんの移動の場合、わざわざ5日用を購入すると241ユーロです。もしも、この4日間の最低1日でもICやICEを使わない場合、その1日用に全国共通チケット44ユーロぶんを購入します。すると、ジャーマンレイルパスは3日用192ユーロ+全国共通チケット44ユーロ=236ユーロとなり、5日用を購入するよりも5ユーロ安くなります。

例2) 本当は5日ぶんの移動の場合

本当の移動が5日ぶんの場合、そのうち1日ぶんを全国共通チケットに切り替えたところで、ジャーマンレイルパス購入日数は変わらず(4日用の設定はない)、かえって損します。

例では1人旅行で示しましたが、2人の場合などでも計算の考えかたは同じです。全国共通チケットでなくとも州別チケットであっても同様の計算です。

いずれにしても、全行程ジャーマンレイルパスから置き換えたときの合計金額を算出してから、金銭面での損得を考えて最終的に決めたいものです。

地域パスを紹介してみて

写真6. ノルトラインヴェストファーレン州では鉄道網が発達しており、地域めぐりも楽しい(かもしれない)

今回、意外な存在の地域パスを紹介しました。鉄道パスを1日ぶん節約するには良いパスでもあります。ただし、平日は朝9時までは使用できず、ICEやIC(EC)には使用できないなどの注意が必要です。

長距離をブンブン移動するばかりが旅行ではありません。地域をじっくり回るのも旅行の醍醐味でしょう。そのような醍醐味に気づく1つのきっかけのチケットを紹介できていれば望外の喜びです。

ここまで詳細に解説しました。公式サイトから予約できると思いますが、日本語で予約できないことに不安を感じる人もいるかもしれません。下記のサイトであれば、日本語で予約できるので安心です。


Omio:ヨーロッパ鉄道旅行交通予約サイト

また、その予約にはクレジットカードが便利です。

個人的にはエポスカード がおすすめです。

海外旅行に使えるカード:エポスカードで詳細を紹介しています。

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