銀座線渋谷駅切替工事に伴う銀座線変則運転




銀座線渋谷駅線路切替工事の影響で銀座線の一部区間が6日間も運転を見合わせています。その現場を訪問するとともに、運休の背景も探りました。

写真1. 表参道の案内も特別仕様

運休の概要

運休の概要は以下の通りです。

・期間:2019年12月28日~2020年1月2日(いずれも終日)
・区間:溜池山王-青山一丁目、表参道-渋谷
    ※浅草-溜池山王はほぼ正常運転、青山一丁目-表参道は約12分間隔
・理由:渋谷駅線路切替工事のため

図1. 東京メトロ作成のポスター

運休の現場を訪問する

では、運休の現場を訪問してみましょう。キーポイントとなるのは渋谷駅、表参道駅、溜池山王駅です。

渋谷駅の様子

渋谷駅は線路切替工事が行われている駅です。そのため、ここでは厳重に警備がなされていました。

写真2. 渋谷の改札は通れない

もともとの降車改札です。ここは工事前から通れませんが、通れない旨の案内がなされていました(写真2)。

写真3. 工事を行っている

工事を実施しています。新しい駅舎が使用開始になるとここは通路として活用されます(写真3)。山手線の中央改札との行き来は単純になりますね。

写真4. 渋谷から各駅への迂回ルート案内

渋谷から各駅への迂回ルートが案内されています(写真4)。渋谷よりでは半蔵門線が銀座線の代替路線として機能していますので、とりあえず半蔵門線を利用すれば何とかなります。

表参道の様子

表参道では、青山一丁目まで2駅だけ運転されているシャトル列車が発車します。途中の外苑前は銀座線しか通っていないので、外苑前専用列車という位置づけでしょう。渋谷から青山一丁目までは銀座線と半蔵門線が並行しているので、フォローは容易です。

写真5. 4番線は降車専用ホームの案内

通常であれば表参道では銀座線は4番線(渋谷)、5番線(銀座方面)という使い分けがなされていますが、今回は4番線は青山一丁目→表参道の到着、5番線は表参道→青山一丁目の発車という使い分けに変更されています。そのため、4番線は降車専用となっています(写真5)。

写真6. 4番線の電光掲示板は運休と表示

4番線の電光掲示板は「運休」とだけ書かれています(写真6)。下手に回送などと書くと混乱するので、このような表記にしているのでしょう。

写真7. 表参道行きがやってきた

4番線に表参道行きがやってきました(写真7)。この電車は折り返し回送となります。このホームに入れるのは、隣の3番線が半蔵門線のホームで、半蔵門線が通常運転しているためです。

写真8. 銀座線の方面は青山一丁目に特別に変更

この日は銀座線は銀座方面には行かず、青山一丁目までしか行きません。そのため、臨時にホームの案内表示も変更されています(写真8)。

写真9. 回送電車が入ってきた

青山一丁目から回送でやってきた電車が5番線に入ります(写真9)。表参道で折り返し青山一丁目行きに変わります。

写真10. 車内の青山一丁目行き

車内の表示です。特別に青山一丁目行きと表示されています(写真10)。

赤坂見附(永田町)の様子

今回の変則的な運転で唯一銀座線の電車がやってこない赤坂見附の様子です。赤坂見附-渋谷方面については半蔵門線で永田町と渋谷を直結していること(永田町と赤坂見附は同一駅構内の扱いです)、赤坂見附-溜池山王については南北線で永田町-溜池山王を行き来できるので、何とかなると踏んだのでしょう。

写真11. 半蔵門線のホームの案内から銀座線が隠されている

半蔵門線の永田町のホームから赤坂見附への連絡通路を眺めます。ここから銀座線に乗れませんので、銀座線の文字が見えないようになっています(写真11)。

写真12. 赤坂見附の路線も丸ノ内線だけ

この措置は通路の案内だけではなく、地図にも表れています(写真12)。

写真13. 電車がやってこない赤坂見附のホーム

電車がやってこない赤坂見附の銀座線ホームです(写真13)。電車がやってこないホームなのになぜ私は入れたのでしょうか。答えは簡単です。赤坂見附のホームは銀座線と丸ノ内線で同じで、丸ノ内線は正常運転なので、丸ノ内線に乗る建前で行動すれば良いのです。

溜池山王の様子

最後に折り返し駅となった溜池山王の様子です。

写真14. 1番線に到着する電車は当駅どまりしかない

通常は1番線は渋谷方面、2番線は銀座方面の電車がやってきます。ただし、工事期間中は1番線は溜池山王止まりの到着ホーム、2番線が溜池山王始発の発車ホームに変更されています。1番線は「当駅止まり」と表示されます(写真14)。

写真15. 乗客が全員降りて空になった車内

溜池山王止まりの車内はすぐに空になります(写真15)。3分間隔を維持するには、すぐに乗客に降りてもらう必要があります。日本の鉄道のオペレーションが細かいのは鉄道会社の努力も大きいですが、乗客の協力があることも見逃してはなりません。テレビやインターネットでの事前アナウンスの成果なのでしょうか、多くの人は「仕方ない」と割り切っている部分があります。

写真16. やや渋谷よりに進む

溜池山王止まりの電車は少し渋谷よりに進んで、そのまま進行方向の向きを変えます(写真16)。

写真17. 2番線に浅草行きがやってきた

2番線に浅草行きがやってきました(写真17)。溜池山王から浅草よりは通常通り利用できます。

変則的な運転になった背景を探る

今回の工事は渋谷駅が関わることです。それなのに、なぜ渋谷とは関係ない青山一丁目-溜池山王も運休したのでしょうか。そして、飛び地のように運転している表参道-青山一丁目は本数が少ないのでしょうか。その理由を解明しましょう。

前提.溜池山王でしか折り返せない

ここで重要な前提が、銀座線の折り返し可能駅が少なく、溜池山王より渋谷よりで折り返せないという事実です。つまり、溜池山王-浅草の運転はできますが、(例えば)赤坂見附-浅草の区間運転ができないということです。そのため、溜池山王-浅草でしか運転できません。逆にいうと、溜池山王から浅草までは通常通りの機能を果たせます。これは通常の運転時に何かトラブルがあった場合にも有効です。赤坂見附で人身事故が発生した場合でも、銀座や上野近辺では運転を継続できるのです。

ただし外苑前は救済したい

普通に考えれば、渋谷-溜池山王は運転できません。でも、本当にそうでしょうか。渋谷-溜池山王の銀座線の各駅を見てみると、外苑前だけ他の路線が通っていない(表参道:千代田線と半蔵門線、青山一丁目:半蔵門線と都営大江戸線、赤坂見附:丸ノ内線と永田町連絡の有楽町線、半蔵門線、南北線)ことに気づかされます。幸いなことに、外苑前の両隣の表参道も青山一丁目も半蔵門線が通っています。ということは、何とか表参道-青山一丁目を運転させれば何とかなります。

ただし、表参道にも青山一丁目にも折り返し設備がありません。ということは通常の方法で運転できません。鉄道というシステムは列車の追突を防ぐことが前提のシステムです。では、どのようにすれば追突しないでしょうか。最もシンプルなのは表参道-青山一丁目の上り線と下り線に1本ずつ車両を動かすことです。これであれば、工事期間中の追突事故は発生しません。実際には(本来の)渋谷方面行きの線路は青山一丁目→表参道は営業運転、折り返しの表参道→青山一丁目は回送運転としました。逆に、(本来の)浅草方面行きの線路は表参道→青山一丁目は営業運転、折り返しの青山一丁目→表参道は回送運転としました。これは本来の線路と逆向きに電車がやってきたら案内上混乱するためでしょう。

つまり、変則的な運転となった理由は折り返しができる駅が渋谷寄りでは溜池山王しかないという設備的な制約外苑前にやってくる電車を0にしないようにするための配慮の結果です。どこぞのフランスの首都のように(エッフェル塔最寄駅のように)全く電車来ない駅が出現することはなく、1路線だけで期間も6日だけ(しかもラッシュがある日を避けている)という影響を最小限に留めている配慮も読み取れます。

表参道に折り返しの設備があれば?

ここまで「現状の設備ではこれが対応できる最大限の策」と述べました。しかし、それは現状の設備が前提となるものです。今回の工事は渋谷駅構内の工事です。ということは、表参道-浅草は何ら影響がありません。一般常識で考えれば、渋谷-表参道の運休で済むはずです。もしも、表参道で銀座線の折り返しができるのであれば、ここまで複雑なオペレーションにする必要はありませんでした。この工事による運休は予期されていたことです。そうであれば、あらかじめ表参道で折り返すように設備改良していれば良かっただけの話です。

幸いなことに、表参道-渋谷は銀座線と半蔵門線が並行していますし、表参道での乗りかえも簡単です。これであれば、不便を強いられるのは銀座線渋谷利用に極小化できていましたし、その利用者もそこまでの不便ではありません。これは通常運転の場合もそうでしょう。このように、不便を強いられないようにするための設備改良もまた必要なことです。こうしてさらに地下鉄が「使いやすい道具」となるようになってもらいたいものです。

銀座線渋谷の工事まとめ

渋谷銀座線新ホームの案内

図2. 銀座線渋谷の新ホームの案内

このように渋谷のホームはやや表参道よりに移設されます(図2)。利用路線によって乗りかえの経路が長くなるという問題はありましょう。ただし、往路と復路で別の通路を歩くというわかりにくさからは解放されます。その切替の際に6日間運休したという事実は新駅舎利用開始後に忘れ去られ、そして歴史の隙間に埋もれていくのです。

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