2020年7月のことです。JR新宿駅に自由通路が開通し、東西に分断されていた新宿エリアの回遊性が向上します。しかし、その陰で「裏技」が消滅します。その詳細に迫ってみました。
写真1. 裏技の消滅!
※東西連絡通路の様子も収録しています(新しいウィンドウで開きます)。
復習:新宿駅東西連絡通路の開通に伴う変化
新宿駅東西自由通路の概要
この記事を書いている2020年7月上旬段階では、新宿駅の東西を結ぶ連絡通路はありません。新宿駅の東西を行き来する人は
・北側を回って地下鉄丸ノ内線新宿駅に沿って伸びる通路を横切るか、
・南側を回って甲州街道を横切るか、
の2パターンしかありませんでした。
これでは新宿駅西口エリアから東口エリアへの行き来は不便です。そのため、JRは2012年から東西連絡通路を建設していました。
では、どのように変化するのでしょうか。私の説明よりも上手な図がありましたので、それを掲載いたします(写真2)。
写真2. 新宿駅東西通路の概要
簡単にいうと、従来の乗り換え通路(北通路)を自由通路に転用し、新たな乗りかえ通路を新設するというものです。従来の乗りかえ通路は7番線付近から16番線までをカバーしていましたので、新たな乗りかえ通路もそこをカバーすればじゅうぶんです。
切替前の様子を確認する
では、実際の様子を西口側から眺めてみましょう。
写真3. 西口から改札を眺める
昔から新宿駅のシンボルであった、西口改札です(写真3)。ここをまっすぐ向かうと東口に着きます。2020年7月19日初電からここは自由通路として開放されます。ただし、JRの敷地ですので、時間制限はありましょう(深夜・早朝の行き来は可能になるのかな?)。
写真4. 自由通路に転用される北通路
では、進んでみましょう。北通路を見てみます。何やら表示があります。改札を出た場所の案内表示でしょう。
北通路は13番線~16番線への階段はありますが、そのほかのホームへの階段はありません。以前は7番線~12番線への階段もありましたが、今回の切替を前に別の通路に移されています。そのときは疑問に思いましたが、今回の切替を見据えていたのでしょう。
写真5. 16番線の案内
現在は北通路から16番線への階段がありますが、7月19日からは自由通路になるため、ここに階段があると不都合です。そのため、この階段は閉鎖されます(写真5)。閉鎖されるのは7月18日(切替前日)ではなく、7月17日の終電です。土曜日で必要な切替工事を行うのでしょう。
金曜の深夜はこの階段とその先の山手線ホームは大混雑します。そんなメインの階段を閉鎖できるのでしょうか。
写真6. 西改札への通路
西改札になる通路を眺めます。一見現在の改札より狭く見えますが、案内図を見ると改札口は2つに分けられています。そのため、狭くても良いのでしょう。
写真7. 西改札となる場所を眺める
西改札になる場所の西側です(写真7)。柵があるのは改札の準備段階といっても良いですね。ここまで通路から離れているのは、自由通路になったときに幅を拡張するためです。
写真8. これからの連絡通路
北通路が自由通路に転用された瞬間、北通路の機能がなくなります。そのため、別途連絡通路を新設する必要があります。その通路を眺めてみます(写真8)。従来の北通路よりも狭いように見えます。しかし、工事中のスペースを除けば、それなりの通路幅となるでしょう。試しに幅をはかってみたところ、従来の北通路は14歩ぶん、現在のこの通路は9歩ぶん、工事中のスペースが5歩ぶんですので、幅は同等となるのでしょう。
写真9. 新設される東改札
新設される東改札です(写真9)。この先が現在の北通路、そしてこれからの東西自由通路です。
写真10. 新設される東改札
自由通路側から眺めてみました(写真10)。有人改札になる予定の場所も確認できます。
写真11. 現在の東口改札
東改札の改札機の数が少ない印象がありましたが、現在の東口改札も同じようなものですから、そこまで問題にならないのでしょう。東口エリアは中央東改札(旧名称:中央東口)もありますから、流動も分散します。
さきほど、13~16番線への階段がなくなると記しました。代替の階段はあるのでしょうか。先ほどの通路に戻って確認します。
写真12. 山手線への階段
最近、山手線への階段が新設されました(写真12)。現在の北通路からの階段の代替となるものです。
写真13. 階段の様子
階段にはエスカレータも併設されています。廃止となる通路にはエスカレータがありませんでしたので、改善されていますね。
写真14. 階段の移設
階段の移設についてきちんと説明がなされています。7/11~7/17の1週間で新しい階段に慣れてほしいのか、1週間だけ併存期間となります。
古い階段は狭く、特に金曜日の深夜時間帯はホームも含めてカオスでした。階段が広がることでこのカオスが緩和され、洗練された新宿駅に姿を変えることになります。ただし、東口エリアの繁華街から山手線への移動距離は長くなってしまいますね。これが今回の変更の唯一の負の側面でしょうか。
新宿駅中央東口から小田急線・京王線への通り抜け
新宿駅では特殊な取り扱いをしています。詳細は以下のリンク先に掲載しています。
要点をまとめると、「東口エリアから不便な小田急線と京王線の人は、特別にJRの中央東口を利用できます」というものです。
これは、新宿の東口からJRの構内を通らずに小田急線や京王線に乗ることが難しかったからです。しかし、7/19からは自由通路が開通し、JRの改札内を通らずに東口から小田急線や京王線に乗ることができるようになります。現在の北通路を通る形ですね。
そうであれば、上記の裏技の意味はなくなってしまいます。では、実際はどうなのでしょうか。
写真15. 特殊な取り扱い終了の説明
やはり特殊な取り扱いは終了してしまいます(写真15)。東口エリアから京王線や小田急線に乗るには、JRの中央東口を利用するのではなく、自由通路を通ることになります。
ただし、中央東口(中央東改札)から小田急線や京王線への移動距離は増えてしまいます。ただし、従来の東口方面からの利用者にとっては移動距離はそう変わりません。また、新宿の繁華街は中央東口よりも東口のほうが近いです。このような背景がありますから、そこまで不利益を被る人は少ないでしょう。むしろ、「わかりにくい特殊な扱い」から「誰でもわかる取り扱い」になることによるメリットのほうが大きいでしょう。
このように、自由通路が完成します。そうすると、新宿駅の東西で分断されてきた今までの暗い過去はなくなり、回遊性が向上します。しかし、その陰で通向けの新宿駅の裏技はなくなります。そう、特殊な取り扱いは時代の隙間に埋もれるのです。
※東西連絡通路の様子も収録しています(新しいウィンドウで開きます)。