電車の混雑におけるコロナの影響の推定(東京23区篇)

新型肺炎ウィルス(新型コロナウィルス、以下本記事ではコロナ)の爆発的流行防止のために、実施されている外出自粛。この影響で人の流れも大幅に減少しています。では、ラッシュ時の混雑がどの程度減少しているのか推定しましょう。

山手線E235系(新宿)

写真1. 東京の代表的通勤路線である山手線を、東京の代表的な駅である新宿から眺める

本記事ではあくまでも記事執筆時点での最新の情報をベースに筆者が推定したものです。社会情勢の変化などで変動されることが予想されます。

推定のまとめ

推定のまとめを示します。このような社会情勢の中では、実態を駅で確認することは不謹慎です。そのため、各種統計から推定しております。

・推定では、通常の1/3程度しか利用されていない
・混雑率はおおむね60%である

推定の方法

利用人数のデータは東京都から開示されています。以下のリンク(公的機関としてはとてもわかりやすいサイトです)からご覧いただけます。

都内の最新感染動向

このページには都営地下鉄の自動改札通過人数が記録されています。1/21~1/24を基準としてどの程度減少したのかが、開示されています。

1/21~1/24は日本で流行する直前かつ、長期休暇にかかっていないごく普通の平日です。つまり、この期間の利用者数は「いつもの」利用者数といえます。このデータは都営地下鉄の自動改札の出場者数のものです。自動改札の出場者数は鉄道の利用者数に比例すると考えられます。利用者数に比例するということは、(ダイヤ改正で若干の輸送力変化はあっても)輸送力は変わりませんから、混雑率にも比例します。

都営地下鉄だけが特別な変動をするとは考えにくいです。首都圏の全路線で同様の変化(※)をすると予想できます。

※例えば都営地下鉄だけが顕著に利用が減り、東京メトロの利用は減らないということは考えにくいです。都営地下鉄でも東京メトロでも、あるいはJR線でも同様の傾向が生じるということです。

その説を補強するデータがあります。上記ウェブサイトには、東京の主要3エリア(新宿、渋谷、東京の3エリア)の利用者数のデータも示されています。新宿、渋谷、東京で朝の8時台の出場者数は以下の通りになっています(いずれも4/10時点、基準は1/24)。

新宿:-61.7%
渋谷:-65.9%
東京:-67.7%

いずれも-60%~-70%の利用者数です。地域によって「顕著に減少している」、「全然減少していない」という差はありません。つまり、どのエリアでも均一に減少しているということです。

さて、都営地下鉄の7:30~9:30の出場者数は4/13~4/16の時点で-64.9%となっています。1000人の利用者がいたら、649人減少し、残り351人だけが利用しているということです。いいかえると、普段の35.1%しか利用していないということです。ざっくりとした感覚ですが、従来の1/3しか利用していないことを示します。

推定の結果

では、普段の1/3しか利用していないとどの程度の混雑になるのでしょうか。現在入手できる最新のデータは2018年度(2018年の秋に実測したデータ)です。その数値を基準に考えましょう。混雑率が100%の路線であれば、混雑率は35.1%まで減少しています。

表1. コロナにおける外出自粛時の混雑推定データ

会社路線最混雑区間混雑率混雑率
普段現在
JR山手線(外回り)上野→御徒町151%53%
山手線(内回り)新大久保→新宿158%56%
京浜東北線(北側)川口→赤羽171%60%
京浜東北線(南側)大井町→品川185%65%
中央線(快速)中野→新宿182%64%
中央線(各駅停車)代々木→千駄ヶ谷95%33%
総武線(快速)新小岩→錦糸町181%64%
総武線(各駅停車)錦糸町→両国196%69%
東海道線川崎→品川191%67%
横須賀線武蔵小杉→西大井197%69%
埼京線板橋→池袋183%64%
常磐線(快速)松戸→北千住154%54%
常磐線(各駅停車)亀有→綾瀬152%53%
京葉線葛西臨海公園→新木場166%58%
宇都宮線土呂→大宮142%50%
湘南新宿ラインデータなしデータなしデータなし
東京メトロ銀座線赤坂見附→溜池山王160%56%
丸ノ内線新大塚→茗荷谷169%59%
丸ノ内線四ツ谷→赤坂見附165%58%
日比谷線三ノ輪→入谷157%55%
東西線木場→門前仲町199%70%
東西線高田馬場→早稲田130%46%
千代田線町屋→西日暮里179%63%
有楽町線東池袋→護国寺165%58%
半蔵門線渋谷→表参道168%59%
南北線駒込→本駒込159%56%
副都心線要町→池袋152%53%
都営地下鉄浅草線本所吾妻橋→浅草133%47%
三田線西巣鴨→巣鴨158%55%
新宿線西大島→住吉156%55%
大江戸線中井→東中野159%56%
小田急小田原線世田谷代田→下北沢157%55%
東急東横線祐天寺→中目黒172%60%
田園都市線池尻大橋→渋谷182%64%
目黒線不動前→目黒174%61%
池上線大崎広小路→五反田131%46%
大井町線九品仏→自由が丘155%54%
京王京王線下高井戸→明大前165%58%
井の頭線神泉→渋谷149%52%
西武池袋線椎名町→池袋159%56%
新宿線下落合→高田馬場159%56%
東武東上線北池袋→池袋136%48%
伊勢崎線小菅→北千住150%53%
京急本線戸部→横浜143%51%
京成本線大神宮下→京成船橋130%46%
押上線曳舟→押上149%53%
つくばエクスプレス青井→北千住169%59%
北総鉄道新柴又→京成高砂91%32%
りんかい線大井町→品川シーサイド137%48%
ゆりかもめ竹橋→汐留99%35%
東京モノレール浜松町→天王洲アイル101%35%
日暮里舎人ライナー赤土小学校前→西日暮里189%66%

本当は最混雑時間帯に実態を調査するのがスジでしょうが、「外出自粛」時に「個人の趣味」のために混んでいる駅で観察するのも適切ではありません。そのため、推定データとなる点をご了承ください。

東海道線、横須賀線や埼京線は普段でもここまで混んでいません。これは湘南新宿ラインの輸送力が統計に入っていないためです。また、常磐線、総武線(快速)についてもここまで混んでいません。これはグリーン車の輸送力が統計に入っていないためです。このような不具合はありますが、単純のためにここでは「公式」発表の混雑率を参考にしました。

混雑率は60%前後となっています。混雑率60%はどの程度なのでしょうか。座席の60%が埋まる状況を混雑率60%というわけではありません。混雑率60%弱というのは、座席が埋まっていて、なおかつドア付近に数人が立っている状況です。最も混んでいる地下鉄東西線であっても、混雑率は70%程度です。これは、座席が埋まっていて、座席前の吊革が1/4程度埋まっている状況です。

いずれにしても、統計上は押しくらまんじゅうのように詰めこまれることはない、というのが「外出自粛」期間中の東京の通勤電車の情景です。

混雑ポイント120ポイント相当

写真2. 混雑率70%程度の混雑率の様子

アフターコロナ:今後について

現段階で「外出自粛」後のことを想像するのは不謹慎かもしれません。しかし、現在のような状況が永遠に続くとは考えにくいです。いつか、コロナが収束して、コロナと共生する時代がやってくることでしょう。これは、コロナ撲滅成功を意味するわけではありません。いうなれば、交通事故を含めて自動車社会を受け入れた(交通事故がこわいからといって、自動車をなくすことを言う人はそういません)ときの様子です。

では、「外出自粛」解除後の首都圏の電車の混雑はどうなるのでしょうか。そのときは商業施設が再開され、「夜」の店も再開することでしょう。そのため、現在のような混雑は続くとは思えません。とはいえ、「外出自粛」を機に始まった在宅勤務が皆無になるとは思えません。10人いる職場のうち、1人~2人(※)が在宅勤務になるのが現実的なラインでしょう。

※この1人~2人というのは特定の人を指しているわけではありません。誰を在宅にするかというのは職場の事情もありましょう。しかし、本記事のような電車の混雑を取り上げる場合は誰であってもそう変わりません。

となると、コロナ前の混雑の1割程度が緩和するという計算です。混雑率180%の路線であれば、162%までに緩和することを示します。

いつも乗る電車が満員でうれしい人はそういないでしょう(満員電車がうれしいのはスリと痴漢だけといわれます)。コロナという不幸なものがきっかけではありますが、きっかけはともあれ、通勤電車の混雑が少しでも空くようになってもらいたいものです。