名古屋鉄道。複々線区間がないイメージがありますが、実際には1駅だけ複々線区間が存在します。そんな神宮前-金山の混雑状況を2026年3月下旬の昼間に確認しました。平均すると全員着席レベルの混雑ですが、中部国際空港発着と名古屋本線特急が混んでいる傾向でした。

写真1. 日中時間帯でも空港の求心力は強い
名鉄名古屋本線の平日日中時間帯の混雑状況のまとめ
- 全般的な混雑率は35%程度であり、理論上は全員着席可能な混雑である
- 最混雑列車は中部国際空港発着の特急であり、車両によって混雑率は80%以上である
- 特急が全般的に混んでおり、快特はやや空いている
- 普通は全般的に空いている
- 準急であっても中部国際空港発着は混んでいる傾向にある
詳細は以下に記します。
名鉄名古屋本線の混雑調査の概要
今回の混雑調査の方法を紹介しましょう。この記事では、定点観測を行い、一定時間の全列車を対象にして各車両の混雑を目視で確認しています。これはプロも行っている調査方法です。
簡単に調査方法を紹介しましょう。一部の個人サイトでは混雑状況を書いているところもありますが、調査方法や混雑指標の言及がないのでう~んと考えてしまうところがあります。そのようなことを踏まえて、弊サイトではきちんと方法を示します(さすがー)。
表1. 混雑ポイントの基本的な概念と混雑率

120ポイント~160ポイントの様子をご覧いただきましょう(写真2-4)。いずれも個人情報を守ることを目的に、画質を落としています。

写真2. 混雑ポイント120ポイントの様子(右上に私の指が写っていますね…)

写真3. 混雑ポイント140ポイントの様子(右上に私の指が写っていますね…)

写真4. 混雑ポイント160ポイントの様子(写真3と異なり、ドア部分が圧迫されていることがわかります)
今回は、名古屋本線唯一の複々線区間の神宮前-金山で観察しました(東側の需要が集まる区間です)。
名鉄名古屋本線(神宮前-金山)の2026年3月下旬(平日日中時間帯)の混雑状況生データ

写真5. 神宮前から金山を走る普通金山行き(澤上橋で撮影)
まず、実際の混雑状況の生データを示します(表2)。
表2. 名鉄名古屋本線(神宮前-金山)の2026年3月下旬(平日日中時間帯)の混雑状況生データ

また、各列車の混雑を視覚化しました(表3)。
表3. 名鉄名古屋本線(神宮前-金山)の2026年3月下旬(平日日中時間帯)の混雑状況生データ

後の分析に役立つように、神宮前から常滑線に入る(神宮前に常滑線から入る)列車については常滑線と表示しています(河和線駅発着も含む)。
名鉄名古屋本線(神宮前-金山)の2026年3月下旬(平日日中時間帯)の混雑状況の分析

写真6. 名古屋本線急行でも4両編成が多い
生データだけ示してもわかりにくいでしょう。そこで、多くの観点から混雑状況を解析します(やさしー)。
復習:名鉄名古屋本線、常滑線のダイヤパターン
混雑状況は、鉄道ダイヤに左右されます(逆に混雑状況を考慮して鉄道ダイヤは決定されます)。そこで、私なりに名鉄名古屋本線と常滑線のダイヤパターンを紹介します。
名鉄は基本的に30分サイクルのパターンダイヤを採用しており、1サイクルあたり以下の構成です。また、金山以西は複線ということもあり、常滑線の普通は金山発着です。金山では名城線との連絡駅であり、栄方面への連絡ができ、金山発着で一定の役割を担えるとのことでしょう。
名古屋本線の構成は以下の通りです。
- 名古屋本線快特:豊橋-名古屋方面(上りと下りで発着駅が異なる)
- 名古屋本線特急:豊橋-名古屋方面(上りと下りで発着駅が異なる)
- 名古屋本線急行:豊橋-名鉄一宮
- 名古屋本線急行:吉良吉田-尾西線方面(尾西線方面は普通)
- 名古屋本線準急:豊明-尾西線方面
- 名古屋本線普通:東岡崎-岩倉2本
常滑線の構成は以下の通りです。
- 常滑線ミュースカイ:中部国際空港-名古屋
- 常滑線特急:中部国際空港-名鉄岐阜
- 常滑線特急:河和-名古屋(平日日中時間帯は全車一般車)
- 常滑線急行:河和-新鵜沼(犬山線方面準急)
- 常滑線準急:中部国際空港-犬山
- 常滑線普通:知多半田-金山2本
名古屋本線は特急系が15分間隔で運転されており、半数は新安城と国府を通過する快特です。これを補完するように急行が15分間隔で運転されていましたが、朝夕に近い時間帯以外は半数が削減されました。このほか、30分間隔で西尾線直通急行が運転され、尾西線に入ります。尾西線方面は普通に変わります。具体的には吉良吉田発は神宮前から普通、吉良吉田行きは名古屋まで普通です。上下で種別変更の駅が異なり、山王は上下で停車本数が異なります。
西尾線直通急行と対をなすように豊明発着準急が設定されます。この系統も尾西線に入ります。
そして、だいたい15分間隔で普通が設定されます。この普通は名古屋以北は名古屋本線の須ヶ口方面ではなく、犬山線方面に向かいます。名古屋本線の名古屋以北の普通は西尾線直通急行が担います。
また、常滑線は中部国際空港方面、河和方面の両系統が運転されます。
ミュースカイが唯一の全車特別車で運転される種別で、神宮前と中部国際空港をノンストップで結びます。一般車の中部国際空港連絡の速達列車として特急が運転されます。これらは30分間隔で途中での追い抜きはありません。名古屋以北で全車特別車の需要はないという判断か、ミュースカイは名古屋発着です。一方、特急は岐阜に直通します。この補完として中部国際空港発着の準急が運転されます。準急は聚楽園でミュースカイを待避しますが、特急より先着します。このため、名古屋市内と中部国際空港の一般車の乗車チャンスは30分に2回です。
河和方面は約15分間隔で特急または急行が運転されます。そして、その間に普通が約15分間隔が知多半田まで運転されます(知多半田以南は急行が各駅に停車)。以前は河和方面は内海系統もありましたが、現在の日中時間帯のダイヤでは内海への直通はありません(富貴で乗りかえ)。なお、太田川以南の常滑線普通は金山からは設定されず、太田川発着です。常滑線でそれなりに利用の多い駅は準急が停車しているという事情もあるのでしょう。
名古屋直通のニーズが高く、かつ駅が多く、路線網も複雑なこともあり、名鉄のダイヤは複雑です。
種別ごとの混雑状況

写真7. 地味ながら役に立つ、西尾線直通急行
種別ごとの混雑状況を分析します(表4、図1)。
表4. 名鉄名古屋本線(神宮前-金山)の2026年3月下旬(平日日中時間帯)の混雑状況(種別ごと分類)


図1. 名鉄名古屋本線(神宮前-金山)の2026年3月下旬(平日日中時間帯)の混雑状況(種別ごと分類)の視覚化
平均すると全員着席レベルの混雑ですが、特急系が混雑する傾向にあります(河和方面の特急は比較的空いてますが)。名古屋本線の特急は快特より空いている数値ですが、調査した時間帯の特急豊橋行きが8両編成(一般車だけでは6両)と長く、混雑率が低くなっています。もしも6両編成なら特急の混雑率は50%以上となり、快特より混雑する傾向です。同様に中部国際空港発着の特急も混雑する傾向でした。
急行や準急は特急系よりやや空いていますが、唯一中部国際空港発着の準急は混んでいる傾向でした。集計結果ではそこまで混雑していませんが、調査した時間帯の準急中部国際空港行きが6両編成と比較的長かったためです。これが4両編成であれば集計結果は60%近くとなり、それなりの混雑だったでしょう。
名古屋本線の豊橋発着急行は意外と空いています。これは、知立と神宮前の先着列車は快特であり、急行の集客範囲が前後、豊明と限られ、かつ直前に別の速達列車が設定されているためです。そのような要素があり、豊橋発着急行と対をなす豊川稲荷発着急行が削減されたことも納得できます。新安城と名古屋を先着する西尾線直通急行が混雑しているのと対照的です。
これらと対照的に普通は空いています。名鉄は駅が多く、それだけ普通の所要時間は長くなります。このため、よほどの短距離でない限り速達列車を使うことになるのです。
名鉄名古屋本線(神宮前-金山)の2026年3月下旬(平日日中時間帯)の混雑状況からダイヤ案を考える

写真8. 8両編成の特急がやってきた
全般的に混雑状況は適正レベルであるとは感じましたが、これは乗客の最も少ない時間帯だからかもしれません。名古屋から離れる方向は帰宅などが始まっており、やや混んでいる傾向もありました。
中部国際空港発着の特急や準急の混雑が目立ちました。かといって、中部国際空港発着の特急を8両編成にするにもホームの長さが足らない駅が多いです。これらの駅を8両編成化して中部国際空港発着の特急を全列車8両編成にすることがベストシナリオです。次に考えられる手段が太田川発着の普通を中部国際空港発着の特急でなく、河和線特急に連絡することです。しかし、名鉄は太田川の構造を乗りかえしやすい構造にしなかったので、これは反感を招くでしょう。そして、準急停車駅の停車間隔が不均一になるという問題もあります。したがって、常滑線特急停車駅を8両編成対応とする一方、それまでは準急を6両編成で運転し、着席需要を準急に誘導するくらいでしょう。あるいは河和方面特急と続行運転する形(中部国際空港発は直前)で金山発着特急を運転するかです。この特急は特別車を連結する必要はないでしょう(快速急行で良いのか?)。
このほかは基本的にそこまで混んでいませんでした。普通に乗客を誘導しつつ他の種別の混雑緩和を想定すると、豊明発着準急を三河線直通急行(または特急)に変更し、知立以西の混雑緩和に役立てる手段があり得ます。ただし、準急利用者にとっては普通に乗ることになり、容易ではありません。
結局、名鉄名古屋本線は普通が遅すぎるがゆえに利用のバランスが悪いダイヤになってしまっています。例えば、神宮前-枇杷島分岐点の複々線化による名古屋本線と常滑線-犬山線の完全分離、そして列車本数の多い名古屋本線の知立-須ヶ口の一部複々線化(列車本数を増やすよりも普通が走りやすくし、普通の速達性を上げる)が根本的な解決法でしょう。例えば、知立-須ヶ口の複々線化が行われれば(神宮前-枇杷島分岐点は急行線、緩行線のどちらかに常滑線系統や犬山線系統が入る)、速達列車への乗客集中も緩和していたでしょう。とはいえ、いち民間企業にそこまでの投資は不可能でしょう。
結局、ダイヤの良しあしはインフラに依存するという基本原理が改めて浮き彫りになったのです。
名鉄の朝ラッシュ時の混雑も実際に確認しています。