複線化完了後の奈良線ダイヤの解析(23年ダイヤ改正)

記事上部注釈
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長い間複線化が行われてきたJR奈良線。当初の複線化計画区間の京都-城陽(宇治ではない!)、山城多賀-玉水が複線化されました。この複線化完了時点でのダイヤを解析しました。

写真1. 2022年初頭では続々工事中であった

2023年奈良線ダイヤ改正の概要

2023年ダイヤ改正での奈良線の変化は大まかに以下の通りです。

  • 基本的に増発はなく、京都-城陽の行き違い待ち廃絶によるスピードアップが目玉
    ※朝ラッシュ時に区間快速が1本だけ増発
  • 日中時間帯のみやこ路快速は単線区間での行き違いもなくし、京都-奈良の所要時間を42分に統一
  • 日中時間帯以降の京都-宇治の普通は15分間隔が基本

詳細は以下の章で述べます。

復習:輸送改善が進んでいた奈良線

写真2. 103系も廃止された(2022年初頭に撮影)

今回のダイヤ改正の詳細について述べる前に、奈良線の輸送改善の歴史を簡単に振り返ります。

もともとJR奈良線はそこまで利便性の高い路線ではありませんでした。1984年に電化して以来、増発・新駅開業に次ぐ歴史でした。

  • 1991年:京都-奈良の快速が日中に運転開始。毎時1本の運転
  • 1997年:JR藤森が開業
  • (参考)1997年時点のダイヤ:日中時間帯は快速毎時1本、普通毎時3本(1本は宇治折り返し)、朝は普通15分間隔、夕方は普通20分間隔
  • 2001年:JR小倉が開業
  • (参考)2003年時点のダイヤ:日中時間帯・夕方時間帯は快速系毎時2本、普通毎時4本(2001年にJR小倉を設置)、京都側の朝ラッシュ時は15分に快速系と普通が各1本

2001年の部分的な複線化(京都-JR藤森、宇治-新田)は大きなできごとで、地方色の強かったダイヤが都市鉄道のものに変わりました。このときに普通・快速の2つの種別から普通・区間快速・快速・みやこ路快速に種別も倍増しています。このダイヤの骨格は現在まで続いています。

本数は確保されたとはいえ、JR藤森-宇治は単線で残り、同区間で行き違い待ちが発生していました。そのしわ寄せは普通に集中し、途中駅で長時間停車することもありました。

2016年より京都-城陽の完全複線化と、単線で残る城陽-木津のうち、中間付近の山城多賀-玉水の複線化を推進し、2023年に完成しました(※)。この施設を活用したダイヤ改正が2023年に行われたのです。

※複線化はダイヤ改正前に完成しています。一般に複線化や複々線化はダイヤ改正の前に完成することが多いです。これはダイヤ改正の切り替えと同時に行うことによる混乱を避けることが主要な理由です(小田急線の複々線化は2018年3月3日ですが、新ダイヤは3月17日です)。

各時間帯のダイヤを眺める

写真3. 221系によるみやこ路快速も定着した(京都で撮影)

それでは、各時間帯のダイヤを眺めてみましょう!

朝ラッシュ時上り(京都方面行き)

朝ラッシュ時の輸送改善をJR側も広報の中心としています。JR側の広報では以下の通り書いています。

平日の朝通勤時間帯において、城陽・新田方面から京都方面の列車を増発します。
また、対向列車との待ち合わせを解消することにより、城陽駅を 7:05 と 7:18 に発車する普通電車は、終点の京都駅まで先着します。

JR西日本公式発表より引用

では、実際の発車時刻を見てみましょう!

表1. 宇治の発車時刻

朝ラッシュ時に区間快速が1本増発されています。また、宇治発7:26~8:12までは12分サイクルに快速系1本と普通1本とすっきりしたダイヤになっています。このパターンは7:10~8:15はだいたい同じパターンです。

では、所要時間はどうでしょうか。適当な電車(普通と快速)を1本ずつ選択してダイヤ改正前後の時刻を比べてみます。

表2. 朝ラッシュ時の時刻比較

普通について見ると、城陽から京都までは所要時間が短縮(47分→38分)されています。これは六地蔵などで行き違い待ちがなくなったためです。奈良と宇治・城陽の間での行き違い待ちによる待ち時間が0になるのことが今回の最大のメリットです。快速について見ると、城陽から京都までのスピードアップはありません(宇治から京都までは1分のスピードアップですが、誤差の範囲でしょう)。

一方、奈良から城陽までの区間はかえってスピードダウンしています。これは、木津から城陽までの複線区間は玉水-山城多賀しかなく、行き違い待ちを排除できないためです。当該の快速は以下の運転時刻です。

  • 奈良7:26→木津7:33→玉水7:42→城陽7:51

では、逆方向の運転時刻を見てみましょう。奈良から木津までは関西本線の複線区間ですので、対向列車のことを考える必要はありません。

木津から玉水は対向列車があり、その対向列車は玉水7:34→木津7:47です。普通奈良行きが棚倉で待ち合わせているのでしょうか。普通奈良行きを待ち合わせている前提であれば、快速京都行きはあと1分程度木津を遅く発車できるようにも見えます。しかし、対向の普通奈良行きは、棚倉の次の上狛で区間快速京都行きを待ち合わせるので、遅れるわけにはいきません。これが木津から玉水まで9分かけている理由でしょうか(日中は7分で走破しています)。

玉水から城陽までは行き違いがありません。ただし、城陽で7:50発普通奈良行きが設定されており、この電車が城陽を発車する前に城陽に到着する必要があります。これが玉水から城陽まで9分かけている(日中は7分で走破している)理由でしょうか。

このように、単線区間では行き違い待ちが残り、所要時間が増加する側面があるのも事実です。日中ダイヤでは少ない複線区間を活用していますが、朝はそうもいかないのです。

日中時間帯のダイヤパターン

従前と同様、ダイヤパターンは変わらず、30分サイクル当たりの内訳は以下の通りです。

  • みやこ路快速:京都-奈良1本
  • 普通:京都-奈良1本、京都-城陽1本

みやこ路快速1本、普通2本体制のまま変わりません。ただし、京都-宇治の普通はきれいな15分間隔に統一されました。これで、京都-宇治であれば最大待ち時間は15分です。てっきり快速停車駅の利便性を考慮し、普通の運転間隔を13-17分として、その17分の間に快速を挿入、快速停車駅は最大13分間隔というパターンを想定していました。

京都の発車時刻を示します(表3)。

表3. 京都の発車時刻の比較

気づかされるのは、城陽行きが快速の3分後から7分後にやや間隔が開くことです。こうすることで、より等間隔になり、利用しやすくなるので、良い変更点と思います。

城陽行きの所要時間は36分から30分に短縮されています。これは黄檗での行き違い待ちがなくなったことに起因しています。奈良線はもともと単線混じりのなかではかなり利便性の高いダイヤを提供していたように見えますが、複線化によってさらに利用しやすくなっています。

さて、単線が残る区間のダイヤはどうなのでしょうか。JR西日本はみやこ路快速の所要時間を上下方向ともに42分に統一したことをPRしています。単線区間が残る区間での行き違いはどのように処理しているのでしょうか。

簡単なダイヤグラムを描いてみました(図1、oudiaを使用、さすがー)

図1. 奈良線の日中時間帯のダイヤ(単線区間は全駅掲載)

これを見ると、みやこ路快速は木津と城陽という単線区間の両端の駅を(ほぼ)同時に発車し、みやこ路快速どうしが奈良線の単線区間ですれ違わないように考慮していることがわかります。このため、みやこ路快速の運転間隔は30分が限界で、20分間隔に増発することが難しいこともわかります。

また、普通どうしも山城多賀-玉水の複線区間ですれ違うように配慮し、普通どうしの行き違い待ちのロスタイムもありません。普通がみやこ路快速を待つ際に玉水や棚倉で数分間停車し、行き違い待ちが1回しか生じないようにしています。

京都-城陽が複線化されたことにより、単線区間に焦点を置いたダイヤを組みやすくなったように見えます。

夕方ラッシュ時のダイヤ

最後に夕方ラッシュ時のダイヤを解析します。

夕方ラッシュ時(京都発19:05まで)は以下の30分サイクル当たりで以下の構成です。

  • 快速:京都-奈良1本
  • 普通:京都-奈良1本、京都-城陽1本

朝と夕方にはみやこ路快速が運転されず、快速の運転です。快速は宇治-城陽間で各駅にとまるという違いがあります。これは戦略的な停車駅選定です。地図を見てみましょう(図2)

図2. 城陽市付近の地図(googleマップより引用)

宇治-城陽間にはJR小倉(「おぐら」と読みます)、新田がありますが、両方とも近鉄京都線に近い立地です。快速が停車すれば京都までの速達性を発揮できます。日中時間帯はこのような住宅地への需要は大きくありませんが、朝夕は住宅地への需要が大きくなるので停車しています。

完成されたパターンのためか、夕方のダイヤパターンも基本的には変わりません。

京都の発車時刻を示します(表4)

表4. 京都の発車時刻の比較

なお、19:35発からは快速ではなく区間快速に置き換わり、城陽-奈良でどの駅でも30分に2回の乗車チャンスが提供されます。快速奈良行きの奈良までの所要時間は48分(改正前は49分)、普通城陽行きの城陽までの所要時間は38分から32分に短縮されています。日中と同様に黄檗での行き違い待ちのための長時間停車がなくなっているためです。

逆にいうと、京都-城陽の行き違い待ち解消以外ではダイヤは大きく変わっておらず、従来の使い勝手がそのまま適用できると考えて良さそうです。

なお、上りもダイヤパターンの骨格は変わっておらず、18時台の毎時1本の快速、19時台以降の毎時1本の区間快速(いずれも奈良断面での時刻)は今まで通りです。

奈良線複線化後ダイヤを解析してみて

写真4. 稲荷駅に入線する205系1000番台

複線化後の奈良線のダイヤを解析しました。単線が混じる路線としては利便性はかなり高いほうであり、京都-城陽の複線化完成で利便性が大幅に向上することはありませんでした。しかし、単線鉄道の宿命である、行き違い待ちから逃れることはできず、そのロスタイムは見逃せないものでした。

今回のダイヤ改正で京都-城陽から行き違い待ちは廃絶され、都市鉄道として満足できるレベルに到達しました。一方で、城陽-木津は単線区間が主体で行き違いが発生します。本数の少ない日中時間帯こそ、快速を中心に行き違い待ちが生じないように工夫していますが、朝は行き違いによるロスタイムは依然として発生しています。

とはいえ、全線単線の時代からは大きく進歩しています(その時代の最終形態は京都断面でも普通毎時3本、快速毎時1本でした)。今後の複線化はなかなか見込めないと思いますが、飛び飛びでも複線化し、行き違い待ちをさらに減らして所要時間短縮に努めてもらえたらと思います。

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