東急直通開始時の相鉄のダイヤを解析

記事上部注釈
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2023年3月18日。相鉄新横浜線が全通し、東急経由で都心に直結します。とはいえ、従来の横浜発着の重要性が落ちることもありません。これらを両立しようとするダイヤの工夫を探り、ダイヤを細かく解析しました。

写真1. これからの横浜発着の主力は快速

注意

本記事では都心直結について着目しています。そのため、都心より向こう側(おおむね池袋・水道橋・飯田橋以遠)の行先や種別については着目していません(副都心線系統であれば池袋発着、和光市発着、川越市発着の違いには注目していないということです)。

東急直通開始時点の相鉄のダイヤのまとめ

基本的に以下の通りです。

  • 西谷の重要性を鑑み、(西谷通過の種別である)急行は廃止
  • 東急東横線-湘南台方面、東急目黒線-海老名方面、JR線-海老名方面が主体
  • 西谷発着などを駆使し、横浜方面の利便性は基本的に現状維持

詳細は以下の章で記します。

東急との直通の概要

写真2. このカラーの車両が地下鉄に直通(大和で撮影)

まず、東急との直通運転の概要を記します。

  • 東急東横線(副都心線や東武東上線)直通は基本的に相鉄いずみ野線に向かう
  • 東急目黒線(南北線よりも三田線のほうが多い)直通は基本的に海老名方面に向かう
  • JR線との直通は従来通り、海老名発着
  • 直通電車が多くなるぶん、横浜方面のフォローのために西谷発着を設定

東急直通は基本的に運転系統ごとに分けられます。東急側が2方向(渋谷方面と目黒方面)、相鉄側も2方向(海老名方面と湘南台方面)に分岐していますから、理論上は4通り設定できます。つまり、東急目黒線-相鉄本線、東急目黒線-相鉄いずみ野線、東急東横線-相鉄本線、東急東横線-相鉄いずみ野線の4通りです。しかし、全体の本数が多くないなか、4つの系統をすべて設定すると利便性はそこまで上がりません。

そのため、全体的な利便性を考慮し、運転系統を2通りに絞りました。

  • 東急東横線(渋谷方面)-相鉄いずみ野線(湘南台方面)
  • 東急目黒線(目黒方面、主に都営三田線)-相鉄本線(海老名方面)

相鉄の都心直結プロジェクトにはもう1つあり、2019年11月30日からのJR経由での新宿直通です。その新宿直通は海老名方面ということを考えると、全体的に最適化されていると考えます。

ここで相鉄視点から見てみましょう!

  • 海老名方面:都心直結は2つのルートがあるが、JR線直通と東急線直通で目的地が異なる
  • 湘南台方面:都心直結は1つしかルートはないが、全体の輸送量が少ないなか、日中時間帯の需要の多い渋谷方面に絞っている

このように、相鉄本線から都心方面の目的地が系統によって異なっています。もしも、東急直通もJR直通も渋谷方面だと、(相鉄から向かうときは良いにしても)都心部から相鉄沿線に向かう際に、時刻によってJR駅に向かうか地下鉄駅(や東急駅)に向かうかを考えなくてはなりません。しかし、東急直通とJR直通で目的地が異なっていれば、そのような心配は不要です。そのような意味で、相鉄本線から見た際に東急直通とJR直通の目的地を分散させたのは適切でした。

また、東急目黒線直通は目黒発着ではありません。その先に地下鉄南北線と都営三田線に分岐します。目黒で折り返すのは常用できませんから、地下鉄に直通します。その行先は地下鉄南北線ではなく、相都営三田線です。都営三田線のほうが8両編成化が進み、8両編成か10両編成の相鉄線に適合しているという運転上の理由もありましょう。そして、都営三田線は内幸町(新橋駅近傍)、日比谷(有楽町駅近傍)、大手町(東京駅近傍)を通り、都心部を網羅します。

一方、地下鉄南北線は永田町こそ通るものの、沿線のインパクトは都営三田線に劣るでしょう。また、(文京区付近以南では)地下鉄南北線は都営三田線よりもやや西側を通り、東横線の先の地下鉄副都心線にやや近づき、直通効果が分散(※)してしまうという可能性もありましょう。

このような理由があり、東急目黒線への直通先は都営三田線が主体となり、地下鉄南北線はサブ的な役割です。

※地下鉄南北線の通る市ヶ谷と、地下鉄副都心線の通る新宿三丁目は、都営新宿線でわずか2駅です。都営新宿線と都営三田線が交差する神保町と、新宿三丁目は4駅離れています。

私のような(常に鉄道のことを考えている)特異な者は都営三田線直通でも地下鉄南北線直通でも白金高輪で乗りかえられることを知っています。しかし、相鉄利用者(に限らず多くの鉄道利用者)は、日常乗っていない路線の事情を知りません。そのような意味で、運転系統を集中させ、効果的な路線に絞ったのがわかります。

なお、東急東横線直通は、基本的に地下鉄副都心線に直通し、直通効果を新宿三丁目や渋谷に波及させています。これも直通する以上は当然でしょう。むしろ、相鉄-JR直通が新宿折り返しというほうがイレギュラーに見えます。これは「りんかい線の車両が相鉄に入れない」「相鉄の車両がりんかい線に入れない」制約を重視したのでしょうが、JR線直通も池袋以北に直通させるのを基本にしたほうが良いでしょう。これは、埼京線沿線から渋谷や大崎に直通する電車が増えるというメリットも大きいです。地下鉄副都心線の先には東武東上線と西武線が控えていますが、西武線への直通は皆無で東武東上線の直通は存在します。これは、東武鉄道と西武鉄道の温度差もありましょう。相鉄(に乗る乗客)視点では小竹向原まで向かえばあとはどこに向かおうと大差ないですので、ここでは深く掘り下げないことにします。

なお、これら運転系統の固定は日中時間帯のことであり、本数の増える平日の朝や深夜の車両留置が関わる早朝や深夜などについては、東急東横線-海老名方面や東急目黒線-湘南台方面の系統もあります。

これで複雑になるのが車両運用です。副都心系統、南北系統、三田系統での車両の制約を記します。

  • 副都心系統:相鉄車はメトロ線内まで入れるが、東武線には入れない。メトロ車と東武車(そして西武車も)相鉄には入れず、相鉄線に入れるのは東急車と相鉄車のみ
  • 南北系統:メトロ車や埼玉高速車は相鉄に入れない(そして三田線にも入れない)
  • 三田系統:都営車は相鉄に入れない(そして南北線にも入れない)

東急車は「オールマイティ」として関係線区に入れますが(三田線系統と南北線系統相互の折り返しも可能です)、他の各者は制約だらけです。同じ東急車であっても東横線用と目黒線用は融通が利きませんから、折り返しには苦慮するでしょう。

柔軟な運用を可能にするのであれば、副都心Gと南北・三田Gでそれぞれ共用し、副都心Gは何でも可能、南北・三田Gも何でも可能にする(可能であれば東急車は目黒線用8両編成と東横線用8両編成は相互に折り返し可能なようにする、相鉄車8両編成は副都心Gと南北・三田G双方入線可能にする)と、融通は利くようになるでしょう。将来的にはこのような方策も安定輸送には大切かもしれません。

西谷折り返しの設定

写真3. 西谷は横浜方面と都心方面の分岐点

今回のダイヤ改正で西谷から新横浜線に入る列車本数は、日中時間帯において毎時2本から毎時6本に増発されます。差し引き毎時4本の増発になりますが、これを全て西谷以北(海老名・湘南台方面)の増発にするのは非効率的です。そのため、従来の横浜発着を置き換えるものもあります。こうすると、直通に関係のない横浜-西谷が不便になります。これをフォローするために、西谷発着を設定しています。

なお、西谷発着も接続列車も基本的に各駅停車であり、横浜への速達輸送を妨げない形です。

これに伴い、西谷を通過する種別である急行は廃止されます。西谷のジャンクション機能が高まったことと、都心側・郊外側の輸送上の境界が二俣川から西谷に変わったことによることが理由でしょう。

このように、直通もしつつ、横浜への連絡も無視できないことから各駅停車の一部を西谷発着にしたのでしょう。

相鉄線内のダイヤを解析する

写真4. この線路を通り、都心方面に乗り入れる(多摩川付近で撮影)

さて、概要がわかったところで、時間帯ごとのダイヤを解析しましょう。

各時間帯のダイヤの概要

それぞれの時間帯のダイヤは以下の通りです。

朝ラッシュ上り
横浜への速達列車のうち15分間隔の急行が、東急目黒線直通の各駅停車に変更。いずみ野線の各駅停車の一部を東急直通に変更。その各駅停車の一部は通勤特急に変更。そのぶんの各駅停車は西谷始発を設定。
日中時間帯
横浜発着各駅停車の毎時2本を東急東横線-湘南台の各駅停車(東急線内は急行)に変更。このほかに東急目黒線-海老名の各駅停車を毎時2本増発。JR線直通の各駅停車と横浜発着特急に統一。
夕方ラッシュ下り
毎時6本ずつの横浜発着急行・横浜発着快速を毎時10本の横浜発着快速に変更(横浜よりの速達列車は毎時2本減便)。東急東横線からいずみ野線の特急を設定。明確なダイヤパターンは見られない。

これらの詳細を見てみましょう。

朝ラッシュ上り

朝ラッシュ時ダイヤの概説

おおむね30分サイクルです。1サイクルの内訳は以下の通りです。

  • 通勤特急:いずみ野線→東急東横線1本
  • 特急:海老名→JR線(新宿方面)2本(だいたい15分間隔)
  • 特急:海老名→横浜2本(だいたい15分間隔)
  • 通勤急行:海老名→横浜2本(だいたい15分間隔)、湘南台→横浜1本
  • 各駅停車:海老名→東急目黒線2本(だいたい15分間隔)、湘南台→東急目黒線2本(だいたい15分間隔)、湘南台→東急東横線1本、西谷→横浜4本(15分に2本)

海老名からは特急系と各駅停車系(通勤急行含む)が15分に2本ずつ運転されます。この内訳は2019年のJR直通のころから変わっていません。ただし、2019年以降は急行横浜行きが15分に2本運転されていましたが、うち1本は東急目黒線直通に変わり、もう1本は通勤急行に変わりました。急行から通勤急行に変更することにより、所要時間が増すばかりか鶴ヶ峰・西谷に停車して乗客が集中することが懸念されます。当該の通勤急行の多くは新横浜線の連絡もありませんので、急行のまま残置していても問題はなかったように見えます。

なお、急行から通勤急行に変わり、所要時間は以下の通りです(一例を示します)。

  • (改正前)瀬谷7:51→横浜8:13
  • (改正後)瀬谷7:49→横浜8:12

もともと二俣川→西谷のダイヤが過密だったこともあり、所要時間はそこまで増えていません。もう1本の東急目黒線直通電車は二俣川でいずみ野線からの通勤急行に接続してます。そのため、横浜への乗車チャンスは維持されています。ただし、二俣川で乗りかえられる通勤急行は西谷で2分停車(特急新宿行きの接続待ちのため)するため、所要時間は増加しています(一例を示します)。

  • (改正前)瀬谷7:43→横浜8:05
  • (改正後)瀬谷7:41→二俣川7:49/7:52→横浜8:06

これは二俣川-西谷が複線であり、横浜方面と新横浜線の双方を二俣川で同時に発車させられないためです。せめて鶴ヶ峰-二俣川だけでも複々線であれば、鶴ヶ峰での停車時間で時間差を付けるというテクニックで、二俣川を同時に発車できました。

湘南台からは通勤急行は基本的にそのまま残り、各駅停車の一部が東急線直通に振り替えられ、さらにその一部は通勤特急に変更されています。通勤特急通過駅は朝ラッシュ時であっても10分程度の間隔になる場面もあります。このフォローはありません。前述の海老名からの各駅停車目黒方面行きに接続する通勤急行を増発しても良かったかもしれません。

本数の比較による詳細な解析

では、朝ラッシュ時の上りの発車時刻を比べ、減便の有無を確認しましょう。

表1. 海老名発上り発車時刻の比較

並べると、以下のことがわかります。

  • 急行横浜行きが各駅停車目黒方面行きに振り替え、急行を通勤急行に変更した程度の違いである
  • ただし、8:11発特急新宿方面行きは8:08発特急目黒方面行きに振り替え
  • そのぶん、8:06発通勤急行横浜行きは、8:02発各駅停車新宿方面行きに振り替え

基本的には急行横浜行きを各駅停車目黒方面行きに振り替え(二俣川までの停車駅は同じ)られていますが、目黒線への特急が欲しいのか、8:00~8:12ごろの振り替えは3段階を経ています。原則の急行横浜行きを各駅停車目黒方面行きに変更後に、各駅停車目黒方面行きと特急新宿方面行きの種別を入れ替えています。

では、所要時間はどうでしょうか。海老名から横浜まで向かうことを考えましょう。

  • (改正前)海老名7:32→横浜8:03
  • (改正後)海老名7:31→横浜8:00

乗りかえなしの場合は所要時間が短縮されています。瀬谷から(乗りかえなしの場合の+1分と合わせれば)横浜までの所要時間も考慮すると、所要時間はイーブンです。

表2. 湘南台発上り発車時刻の比較

並べると、以下のことがわかります。

  • 一部の各駅停車が目黒線や東横線に行先を変更
  • 行先を変更したうえで種別を通勤特急に変更

通勤急行の本数が減っているのは気になるのですが、基本的に各駅停車を都心方面に振り分け、その一部を通勤特急に変更しています。

湘南台からの所要時間を比べましょう。

  • (改正前)湘南台7:22→横浜7:56
  • (改正後)湘南台7:17→横浜7:51

所要時間は変わっていません。ダイヤ改正前では二俣川で特急新宿方面行きと相互連絡、ダイヤ改正後は二俣川で各駅停車目黒方面行きと相互連絡、西谷で特急方面行きと相互連絡しており、所要時間が増す要因があるにも関わらず、所要時間は変わっていません。これは後述する減便によって達成されています。

表3. 二俣川発車時刻の比較

二俣川から横浜に向かう電車を抜粋した時刻を示します(表3)。ダイヤ改正後は東急線直通電車に乗ったうえで、西谷始発の各駅停車に接続するパターンもあります。横浜への連絡という意味では東急線内の方面・行先や、西谷までの種別(各駅停車か通勤特急-いずれも二俣川から西谷までは各駅に停車-か)は大きな意味を持ちません。そのため、ここでは簡単のために接続列車の存在のみを示しています。

基本的に以下のぶんが減便されています。

  • いずみ野線からの通勤急行と本線からの急行が続行する場面で、本線急行を減便(実際には東急目黒線への各駅停車に振り替え)
  • 一部の各駅停車と急行を減便

海老名からの急行横浜行きの半数は東急目黒線に直通する各駅停車に振り替えています。当該の各駅停車から横浜に向かう接続列車は用意されておらず、いずみ野線からの通勤急行横浜行きに乗りかえる形です。西谷からは通勤急行が15分に2本、特急が15分間隔、各駅停車が15分に2本が運転されます。

乗客の多い海老名からの通勤急行の混雑が心配になります。ダイヤ改正前の通勤急行が15分間隔でしたから、ダイヤ改正後の通勤急行が15分に2本というのは、鶴ヶ峰と西谷にとってはサービス水準が維持というよりも向上しています。停車駅は削減するほうが難しいですから、海老名からの通勤急行は急行のまま残置させ、様子を見るのが無難であったように感じます(ある程度ゆとりがあったら鶴ヶ峰と西谷に停車させる通勤急行に変更)。

ただし、減便によって、海老名からの特急の速度向上などが実現されているのも事実です。

新横浜線開業による効果

新横浜線開業による効果を見てみましょう。新横浜へのアクセス向上は言うまでもありませんが、ここでは、都心への所要時間を比較します。

(例1) 二俣川から東京(大手町)に向かう場合

  • (改正前)二俣川7:34→横浜7:49/7:58→東京8:28
  • (改正後)二俣川7:26→目黒8:11→大手町8:31(推定時刻)

横浜から東京へは東海道線が圧倒的に速く、直通効果をあまり見込めません。新線開業によって横浜乗りかえの解消にはそうはたらきません。

ただし、都営三田線には都心部に多くの駅があります。例えば、日比谷と有楽町で比べましょう。

(例2) 二俣川から有楽町(日比谷)に向かう場合

  • (改正前)二俣川7:30→横浜7:43/7:50→有楽町8:31
  • (改正後)二俣川7:26→目黒8:11→日比谷8:29(推定時刻)

有楽町には京浜東北線しかとまりませんから、東海道線の高速性は発揮されません。こうすると、二俣川からの所要時間差は2分しかなく(横浜での乗りかえ時間7分はやや厳しいかもしれない)、都心側の目的地しだいでは利用価値があります。

(例3) 湘南台から渋谷に向かう場合

  • (改正前)湘南台7:22→二俣川7:40/7:41→渋谷8:25
  • (改正後)湘南台7:33→渋谷8:31
  • (参考小田急)湘南台7:29→下北沢8:21/8:27→渋谷8:34

ダイヤ改正後はいずみ野線の通勤特急ですが、JR線経由よりわずかに所要時間は短縮されています。(例えホーム上乗りかえであっても)乗りかえが不要になり、直通するうえに所要時間が短縮されるのは大きいです。

なお、湘南台から渋谷へは小田急利用の場合よりも有利になる点も見逃せません。

これらの3つの例では既存のルートが有利になる場所で考えましたが、都営三田線や地下鉄南北線は都心のあらゆる場所を網羅し、都心直結の意味合いもありましょう。

日中時間帯

写真5. 相鉄車との競演が実現しなかったメトロ7000系

日中時間帯のダイヤ概要

日中時間帯の30分サイクルのパターンダイヤであることには変わらず、30分サイクル当たりの構成は以下の通りです。

  • 特急:横浜-海老名1本
  • 快速:横浜-海老名2本
  • 各駅停車(横浜発着):横浜-湘南台2本、横浜-西谷1本
  • 各駅停車(直通):新宿-海老名1本、渋谷方面-湘南台1本、目黒方面-海老名1本

ダイヤ改正前は特急の運転が変則的で、下りは新宿→海老名、上りは海老名→横浜となっていて、下りの横浜発は快速の(ほぼ)10分間隔、上りの横浜着は特急30分間隔と快速が30分に2本、そして上りの新宿行きは各駅停車という陣営でした。西谷-海老名は快速も各駅にとまるので、同区間は各駅にとまる種別が毎時6本、特急が毎時2本となり、(行先が異なるとはいえ)上下の辻褄は合っていた格好です。上下で種別が異なっていたのは、JR直通が36分着/44分発と海老名で効率よく折り返せるように配慮したためです。

とはいえ、JR線直通が下りは特急、上りは各駅停車というのはわかりにくいです。そのため、今回はJR線直通を各駅停車に統一しました。二俣川-海老名の特急停車駅は大和だけですが、大和も海老名も新宿から小田急線が直通します。そのため、特急では新宿直通の効果は少ないと見え、各駅停車にしたのは良い方向でしょう。

気になる折り返し時刻ですが、45分着/13分発と28分もの折り返し間合いをとっています。1面2線の海老名で28分も線路をふさぐのはスマートではありませんから、2面4線のかしわ台に回送するのでしょうか。

新設の直通はそれぞれ30分間隔で設定されました。渋谷方面-湘南台相鉄線内各駅停車30分間隔目黒方面-海老名相鉄線内各駅停車30分間隔です。いずれも東急線内は急行運転です。湘南台発着は既存の横浜発着を置き換え、海老名発着は相鉄線内は増発の設定です。湘南台発着の各駅停車をカバーする形で横浜-西谷の各駅停車を設定しています。

横浜発着の時刻確認

まず、横浜発の時刻を確認します(表4)。

表4. 横浜発車時刻の比較

基本的に2021年ダイヤ改正時(JR線直通が各駅停車に統一)と変わりません(前述の通り2022年ダイヤ改正後は下りの新宿発着は特急だったのでそれとは異なるが)。変わったのは湘南台行きのうち3本に1本が西谷行きに変わり、西谷で新横浜線からの湘南台行きに接続していることです。

快速でも特急でも二俣川で湘南台行きに接続しており、その点も長年の相鉄ダイヤから変わりません。気になるのは、20分発の各駅停車の西谷到着が33分、目黒方面からの海老名行きが西谷を33分に発車しています。これらは接続を取るのでしょうか。接続を取るのであれば、横浜から海老名への乗車チャンスは毎時8回に増えます(とはいえ20分発は1分後に発車し、後の快速よりも4~5分先着するだけですが)。

下りの所要時間は以下の通りです。

  • (改正前、特急利用)横浜13:08→西谷13:16/13:17→海老名13:36
  • (改正後、特急利用)横浜13:09→海老名13:36
  • (改正前、快速利用)横浜13:19→海老名13:55
  • (改正後、快速利用)横浜13:19→海老名13:55
  • (改正前)横浜13:19→湘南台13:52
  • (改正後)横浜13:19→湘南台13:51

一部で分単位での所要時間の変化はありますが、ダイヤ改正前後でおおむね変わらず、横浜利用の際は従前の本数や所要時間であることがわかります。

上りの時刻の確認

上り方向の発車時刻を確認します。まずは本線側の海老名です(表5)。

表5. 日中時間帯の海老名発車時刻の比較

海老名発車時刻を示しました。ダイヤ改正の概要で紹介した通り、海老名断面では毎時2本増発されています。増発となる目黒方面行きは相鉄では短い8両編成で、増発ぶんが短い編成なのはある意味理にかなっているのでしょうか。

従来のダイヤでは快速が10分間隔と20分間隔でしたが、ダイヤ改正後は8分と22分と最大待ち時間は増えてしまいました。とはいえ、新宿行きは西谷で特急横浜行きに乗りかえることができ、その場合の待ち時間は12分です。また、各駅停車目黒方面行きは西谷で各駅停車横浜行きに乗りかえられ、後の特急より1分早く横浜に着きます。

ただし、三ツ境などの特急通過駅から横浜に向かうのに、直通電車が22分が来ないのは印象的にはしんどいと思います。

次に、いずみ野線の上りとして湘南台の発車時刻を示しました(表6)。

表6. 日中時間帯の湘南台発車時刻の比較

ダイヤ改正前後でみごとに各駅停車しかありません。日中時間帯のいずみ野線は空いており、増発はありませんでした。そのかわりでしょうか。東急線直通は渋谷方面行きで、10両編成が充当されます。

  • (改正前、特急利用)海老名12:22→横浜12:48
  • (改正後、特急利用)海老名12:21→横浜12:47
  • (改正前)海老名12:05→横浜12:39
  • (改正後)海老名12:01→横浜12:36
  • (改正前)湘南台12:27→二俣川12:44/12:45→横浜12:59
  • (改正後)湘南台12:25→二俣川12:42/12:43→横浜12:57

海老名から快速利用の場合では所要時間が2分増加しますが、そのほかは所要時間が変わりません。下りと同じく、横浜への利用の場合は従前どおりの使い勝手です。

新横浜線開業による効果

では、新横浜線開業による効果はどうでしょうか。新横浜へのアクセス改善は当然ですから、ここでは省略します。ここでは、都心へのアクセスについて記します。

(例1) 東京(大手町)と二俣川の移動

  • (改正前下り)東京12:37→横浜13:03/13:13→二俣川13:31(横浜13:08には間に合わないと仮定)
  • (改正後下り)大手町12:41→目黒12:59→二俣川13:38(大手町発車時刻は推定)
  • (改正前上り)二俣川12:15→横浜12:29/12:42→東京13:08
  • (改正後上り)二俣川12:25→目黒13:06→大手町13:24(大手町到着時刻は推定)

適当に時間帯を選び、所要時間を比べてみました。簡単のために横浜と東京の移動は東海道線利用としています。横浜乗りかえの場合は所要時間が54分程度、三田線直通では所要時間が58分程度です。そのため、(横浜乗りかえよりも)数少ない直通電車によるメリットはなさそうに見えます。

(例2) 有楽町(日比谷)と二俣川の移動

  • (改正前下り)有楽町12:35→新橋12:37/12:40→横浜13:03/13:13→二俣川13:31
  • (改正後下り)日比谷12:43→目黒12:59→二俣川13:38(日比谷発車時刻は推定)
  • (改正前上り)二俣川12:15→横浜12:29/12:42→新橋13:04/13:09→有楽町13:12
  • (改正後上り)二俣川12:25→目黒13:06→日比谷13:22(日比谷到着時刻は推定)

こちらも適当に時刻を選び、所要時間を比べてみました。日中時間帯は京浜東北線は有楽町にとまりませんから、東海道線と山手線を新橋で乗りかえると仮定しました。所要時間はほとんど変わりません。これであれば、(真の目的地次第ですが)直通電車を利用する動機にもなりましょう。

(例3) 渋谷と湘南台の移動

  • (改正前下り)渋谷12:37→二俣川13:21/13:25→湘南台13:42
  • (改正後下り)渋谷12:47→湘南台13:51
  • (参考、小田急利用)渋谷12:45→下北沢12:51/12:57→湘南台13:39
  • (改正前上り)湘南台12:16→二俣川12:33/12:34→渋谷13:19
  • (改正後上り)湘南台12:25→渋谷13:31
  • (参考、小田急利用)湘南台12:23→下北沢13:06/13:12→渋谷13:19

ダイヤ改正前から渋谷と相鉄を直通する電車はJR線経由で運転されています。そこで、JR線直通が設定されていないいずみ野線で比較しました。所要時間はJR線経由と東急線経由でそこまで変わらず、直通開始による所要時間短縮はありません。ただし、JR線経由よりも「魅力的」な場所も多く、そのような意味で東急直通の意味は大きいです。

ただし、湘南台と都心方面のアクセスは小田急のほうが圧倒的に有利であり、湘南台単体で見た場合は相鉄・東急直通の利便性は高くありません。あくまでも途中駅と渋谷方面の行き来の利便性向上という観点でとらえるのが良いでしょう。

夕方ラッシュ時下り

ダイヤパターン概説

夕方ラッシュ時はもともと東急は15分サイクル(目黒線は微妙にずれているが)、JR埼京線は20分サイクルと一致しません。そのサイクルの異なる2つの系統が乗り入れてきますので、相鉄線内は明確なパターンがありません。

横浜発18時台の内訳は以下の通りです。

  • 特急(新宿-海老名)3本
  • 特急(目黒方面-海老名)1本(ただし前後に1本ずつ設定あり)
  • 特急(渋谷方面-湘南台)1本
  • 快速(横浜-海老名)7本
  • 快速(横浜-湘南台)3本
  • 各駅停車(横浜-湘南台)2本
  • 各駅停車(横浜-西谷)4本
  • 各駅停車(目黒方面-海老名)2本
  • 各駅停車(渋谷方面-湘南台)2本

表7. 横浜発18時台の発車時刻比較

横浜-西谷は各駅停車が約10分間隔で運転されており、その合間に快速が毎時10本運転されます(表6)。いちおう、30分に5本を設定しようという意図が見えます。ダイヤ改正前は毎時6本の急行と毎時6本の快速が設定されていましたから、速達列車は毎時2本の減便です。また、他の時間帯と同様に急行が廃止されています。

ダイヤ改正前は快速海老名行きに乗ると、新宿からの特急に接続するパターンが確立していました。ダイヤ改正後もそれは健在です。例えば、横浜発18:53の快速海老名行きは西谷で特急海老名行きに接続し、海老名に19:22に到着します。ダイヤ改正よりも1分スピードダウンしていますが、許容範囲内でしょう。

では、急行から快速に変更され、所要時間はどうでしょうか。

  • (改正前)横浜18:44→海老名19:18
  • (改正後)横浜18:41→海老名19:20

これは相当のスピードダウンです。この原因は横浜→二俣川の停車駅増加で説明できます。ダイヤ改正前の急行は10分で走破するのに対し、ダイヤ改正後の快速は15分もかかっています。西谷にとめるべき事情はあれど、星川通過の通勤急行を設定できたようにも思えます。そうすれば、スピードダウン幅はもう少し少なかったことでしょう。

視線を新横浜線に移しましょう。東急からの各駅停車を両方向に毎時2本設定(日中時間帯と同じ本数)し、それ以上については特急を戦略的に設定し、都心から海老名・湘南台への速達性を確保しているように見えます。特に、いずみ野線は各駅停車(線内の各駅にとまる快速含む)だけの設定から(毎時1本とはいえ)都心直結の特急も設定し、都心直結の利便性を線内の奥にも波及させようという意図が見えます。

横浜発と都心直結便の双方が重なる二俣川発の時刻を示します(表8)。

表8. 二俣川発の発車時刻比較(海老名方面)

目黒方面からの各駅停車は18:35発しか示していませんが、19:03発も設定されており、(横浜断面でいうところの18時台には)毎時2本相当設定されています。

表9. 二俣川発の発車時刻比較(湘南台方面)

こちらには渋谷からの各駅停車が毎時2本、特急が毎時1本設定されています。横浜発の各駅停車も設定されています。特急はいずみ野で各駅にとまる電車に接続しています。

新横浜線開業の効果

さて、新横浜線開業の効果を見てみましょう。新横浜アクセスの向上は言うまでもありませんので、都心からの所要時間を考察します。

(例1) 東京(大手町)→二俣川

  • (改正前)東京18:08→横浜18:34/18:44→二俣川18:54
  • (改正後)大手町18:02→目黒18:21→二俣川19:00(大手町発車時刻は推定)

朝ラッシュ時や日中時間帯と同様、大手町から相鉄線沿線への所要時間の優位性はありません。では、有楽町(日比谷)ではどうでしょうか。

(例2) 有楽町(日比谷)→二俣川

  • (改正前)有楽町17:57→横浜18:37/18:44→二俣川18:54
  • (改正後)日比谷18:04→目黒18:21→二俣川19:00(日比谷発車時刻は推定)

横浜での乗りかえが解消され、所要時間は同等です。これであれば、新横浜線の効果はあるのかもしれません。

(例3) 渋谷→湘南台

  • (改正前)渋谷18:01→二俣川18:45/18:55→湘南台19:12
  • (改正後)渋谷18:24→湘南台19:22
  • (小田急利用、参考)渋谷18:25→下北沢18:32/18:38→湘南台19:21

特急利用のパターンで小田急と所要時間が互角ですので、新宿や渋谷から湘南台へは小田急が優位でしょう。しかし、いずみ野線であれば、渋谷からの利便性は小田急よりも勝ります。

東急直通と新横浜線開業のダイヤを見てみて

写真6. ここに相鉄車が加わる日も近い

今回、新横浜線開業と東急直通のダイヤを相鉄の視線から眺めました。都心直結が実現しても、横浜が相鉄の拠点であることには変わりないでしょう。そのため、横浜側の利便性を確保することも必要です。新横浜線開業で横浜乗りかえ客が減るのを見越し、横浜側の速達列車が減便されています。このような部分にダイヤ作りの難しさが見えます。

JRの中距離電車に比べ、東急はもともと速達性に優れるわけではありません。したがって、直通後でも東京などへの所要時間はそこまで短縮しません。では、このプロジェクトは無意味だったのでしょうか?そのようなことはないでしょう。

私たち「マニア」と呼ばれる人は直通と乗りかえの利便性を比べてしまいます。しかし、世の中の人の多くは都心や山手線の駅から1本で向かえない場所は、そもそもその地域の存在そのものが認識されません。よって、(都区内で働く)多くの人は相鉄線沿線は住居の選択肢として認識されません。今回の直通はそのような認識を変える、革命的なできごとなのです。

また、(本記事では取り上げませんでしたが)横浜市のネットワーク強化にもつながる路線です。(今すぐ)この路線で直接恩恵を受ける人は少ないでしょうが、この点は得てしてどの路線でも同じです。しかし、このネットワーク性は大都市圏を支える1つのインフラとなっていくでしょう。

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コメント

  1. きくなちゃん より:

    > 柔軟な運用を可能にするのであれば、
    > 可能であれば東急車は目黒線用8両編成と東横線用8両編成は相互に折り返し可能なようにする、相鉄車8両編成は副都心Gと南北・三田G双方入線可能にする

    現段階だと車上子位置の違いやドアコック位置の違いがネックなんですよね……
    特にドアコック位置は南北線のフルハイトホームドアに起因する制約なので、将来投入する新車では東横方面も南北線仕様に合わせて設計しておくのがいいのかなと感じました。
    車上子の統一はいつかやってほしいですが、コストがやばそう。

    • tc1151234 より:

      きくなちゃんさま、コメントありがとうございます。

      仕様が異なるのですか…。

      南北線建設当時に有楽町線(=有楽町線新線=副都心線)と仕様を統一すれば良かったのでしょうが、1990年代に南北線と有楽町線(の一部)が同じ路線に乗り入れるとは、予想しづらいでしょう。そのため、当時に仕様を統一するという発想に至るのは困難だったでしょう。つくづく将来を見据えたインフラ設備の設計の難しさを感じます。