東北新幹線スピードアップ決定!(盛岡-新青森の320km/h化)




東北新幹線のスピードアップが正式に決定されました(朝日新聞やネットニュースに発表されました)。この背景と意味を考えてみましょう。

写真1. 高速化の主役、E5系


現状の確認:2019年始の状況

現在の最高速度は以下のとおりとなっています。

東京-大宮:110km/h
大宮-宇都宮:275km/h
宇都宮-盛岡:320km/h
盛岡-新青森:260km/h

今回は一番下の盛岡-新青森のスピードアップです。ここを260km/hから320km/hに向上させようという計画です。この背景について探ることにします。

盛岡-新青森:整備新幹線区間

東北新幹線は大宮-盛岡がまず開業しました。その後、都心側のターミナルを上野、東京と延長しています。また、北側の盛岡-新青森についても2001年の盛岡-八戸開業、2010年の八戸-新青森開業と路線を伸ばしてきています。盛岡-新青森は設備が新しいにも関わらず、最高速度は設備の古い区間よりも低いのが現状です。

では、なぜそのようなことになっているのでしょうか。そのキーワードは「整備新幹線」です。整備新幹線の詳細は省略しますが、基本的には1970年代の設計で計画・建築されたためです。この時代の最新鋭の設備が最高速度260km/hなのです。また、JRがその設備を買い取る形ではなく、鉄道・運輸機構から設備を借りているため、JRの独断で最高速度を向上させられません。ただし、JRと鉄道・運輸機構の協議で最高速度を上げることはじゅうぶんに可能でしょう。

今回は両者の協議がまとまって320km/hに対応させる工事を行うようになったのです。

高速化工事の概要

基本的には、設備的にはそれなりに対応可能です。現在は260km/hで走っていますので、それに対応する防音設備しかないありません。これを320km/hまで対応する設備に変えるのです。具体的には、主要な内容は以下の通りです。

・防音壁のかさ上げ
・吸音板の設置
・トンネル出入口の設備改良

防音壁のかさ上げは車窓がより見にくくなることを意味します。個人的には、かさ上げする部分は透明なタイプにしてもらって、少しでも車窓を犠牲にしないような工夫を忘れないでもらいたいものです。

この工事でどの程度スピードアップするのか簡単に計算してみましょう。盛岡-新青森の距離は178.4kmです。ここを時速260km/hから320km/hにスポードアップします。単純な算数で計算します。

現状:178.4km ÷ 260km/h = 41.2分
高速化後:178.4km ÷ 320km/h = 33.5分

おおむね7.7分のスピードアップです。実際には全部の区間を320km/hで走行することはできません(駅前後は到着と発車のため最高速度を出せませんね)。このことを考慮すると、6分程度のスピードアップとなることでしょう。

※新聞の報道には10分という数字が書いていますが、これは北海道新幹線区間のスピードアップを含んだ数字と推定します。

高速化の意味を確認する

6分程度のスピードアップでは、何も変わらないという指摘もあるでしょう。だからスピードアップは無意味という結論に至りがちです。確かに、現在は2時間59分で結んでいる東京-新青森が2時間53分に短縮されたからといって、航空機からのシェアがそうそう増えないでしょう。それに青森市じたいへの需要もそう多くないことでしょう。しかし、だからといってこのスピードアップが無意味とは考えません。以下でそれを確認しましょう。

スピードアップは合わせ技

スピードアップは合わせ技です。東京-大宮で最高速度110km/hから130km/hに上げる計画があります。この計画では埼玉県内での速度向上に留まり、都区内の速度向上はなされないとも聞いています。そのため、1分程度のスピードアップでしかありません。都区内のスピードアップも果たせばもう1分スピードアップできるでしょうが、線形などのネックがある以上、仕方ありません。それでも、可能なところをスピードアップしようという姿勢は賞賛に値します。

ここでの速度向上は1分です。先ほど挙げた盛岡-新青森のスピードアップは6分です。これを合わせれば7分のスピードアップです。これでも大したことはない?そのような声もあるでしょう。もしも、都区内のスピードアップあるいは、埼玉県区間の160km/h化などを重ねれば、東京-大宮はさらに2分程度スピードアップすることでしょう。すると、9分のスピードアップです。2時間59分だったのが2時間50分になればまあまあのインパクトはあるでしょう。このように、細かなスピードアップを重ねることで、全体として大きなインパクトになるのです。

北海道新幹線札幌延伸を見越した策

東北新幹線の先には北海道新幹線が控えています。東京や仙台から北海道まで乗る客にも盛岡-新青森のスピードアップのメリットがあります。東京-新函館北斗まで4時間2分(2019年ダイヤ改正前の最速達列車)です。これが3時間56分に短縮します。これで新函館北斗への需要も(わずかに)高まることが期待できます。また、新青森-新函館北斗は4分短縮することが決まっています。この他に、東京-大宮の1分短縮もあります。これらを合わせると、3時間51分です。現在の投資が完了したら新函館北斗まで11分短縮されるのです。

ただし、新函館北斗そのものの需要は大きくありません。函館市は20万人都市にしか過ぎません。また、北海道の観光資源の多くは道南にはありません(大沼周辺の観光資源は素晴らしいということはじゅうぶんに知っております)。これらからすると、函館地区のために投資することによるメリットは多くありません。

ここで、もう少し先の未来を眺めてみましょう。さまざまな意見はあるでしょうが、北海道新幹線は札幌に延長されることが決まっています。東京と札幌の航空路線は世界一の需要を誇っています。その数は年間1000万人です。もしもこの需要が全て新幹線に移行したら、北海道新幹線は一気にドル箱路線となります。単純計算で毎日片道当たり13690人です。E5系の定員が731人ですから、18本以上が満席になる計算です。乗車率60%としても1日31本が必要になる計算です。毎時2~3本必要な計算です。これは東京(首都圏)-札幌の需要ですから、区間需要も加わることになります。

現実問題、シェア100%は無理な話です。シェア確保のためにはスピードアップが必要です。現状の延長線では東京-札幌の所要時間は5時間です。これをいかに短縮するかが重要です。2019年3月に実施される青函トンネル区間の4分短縮、盛岡-新青森の6分短縮、東京-大宮の1分短縮、これで所要時間は4時間49分になります。11分の差など大したことはないでしょうが、人によっては航空機から新幹線に変更する人もいるでしょう。

不文律の変更

現在、最高速度320km/hで運転されていて、(実現するかどうかは別として)そのうち360km/h運転することを計画しています。それなのに、北海道新幹線の建設中の区間は260km/h対応でしかありません。もしも320km/hなり360km/hなりに変更すれば航空機との競争上、有利にはたらきます。なぜ260km/hなのかというと、「整備新幹線」として計画されているからです。しかし、今回のスピードアップで「整備新幹線」であっても320km/h運転が可能なことが示されました。新函館北斗から札幌までの新線を320km/hあるいは360km/h対応の新線として建設してもらいたいものです。新函館北斗-札幌まで320km/h運転とすれば、10分は短縮することでしょう。すると、所要時間は4時間39分です。これだとそれなりにシェアは高まりますね。

今回のまとめ

今回のスピードアップは6分でしかありません。それでもスピードアップは合わせ技であること、札幌延伸(東京-札幌は世界一需要の大きい航空路線!)を踏まえた対応であることからすると、有意義な内容です。まさに、「この1歩は小さな1歩だが、偉大な1歩である」ということです。

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