2021年3月ダイヤ改正で輸送体系が一新された内房線・外房線の末端区間(君津-安房鴨川-上総一ノ宮)。この一部区間に乗り、実際の様子を確認しました。
写真1. 新型車両E131系がやってきた(館山で撮影)
復習:2021年3月ダイヤ改正での変化点
内房線、外房線ともに千葉よりと安房鴨川よりで輸送量が大きく異なります。従来は6両編成や8両編成の列車(10両編成や4両編成もありました)が乗客の少ない場所まで直通していました。内房線こそ君津で分断していたものの、この区間も4両編成が主体でした。
とはいえ、この区間の輸送量は毎時1本、4両編成では過剰とされています。そのため、新たにワンマン運転が可能な車両を導入し、内房線の君津以南と外房線の上総一ノ宮以南は2両編成・毎時1本(※)に再編されました。また、乗客の少ない内房線の君津-安房鴨川と外房線の上総一ノ宮-安房鴨川を通し運転とすることで、安房鴨川での折り返しを削減し、運転系統分断による効率の低下と乗客サービス低下を最小限にとどめる努力はなされています。
※外房線はこのほかに特急列車がおおよそ2時間に1本走ります。
両方向ともに君津では東京直通の快速(総武線経由)に、上総一ノ宮では東京直通(京葉線経由、京葉線内快速)にそれぞれ接続しており、それなりに配慮が見られます。乗客にとってみたら、ワンマン運転で減車されるよりも従来の両数で減便されるほうが被害は大きいです。そのような意味で、サービス低下であることは事実であるものの、ワンマン運転の短編成化はサービス低下が最小限で済むことも事実です。
本記事では深く触れませんが、鹿島線でも同様の措置が取られています。ただし、鹿島線は2時間に1本というダイヤであり、内房線や外房線よりも不便なダイヤであることは事実です。ワンマン化・短編成化するのであれば、せめて毎時1本にするのが礼儀というものでしょう。
なお、車両はE131系という4ドア車両です。ワンマン運転を行う区間に4ドア車というのは一見理解に苦しみます。新潟地区のように3ドア車でも良さそうです。将来的に首都圏の他路線でも投入する意図があり、4ドアを選択したのでしょうが、短編成でより多くの座席数を提供する意味で、3ドア車でも良かったようにも思えます。
内房線の風景を楽しむ
今回、私は館山から浜金谷まで乗車しました。クロスシートに乗っても良いのですが、クロスシートの定員が少なく、競争率が高いことが予想されます。そのため、前面展望を満喫することにしました。
写真2. 館山駅の発車案内
館山駅の発車案内です(写真2)。上下列車が交換することが読み取れます。内房線は列車交換ができる駅が少なく、どうしても停車時間が長くなりがちです。下り列車は5~10分程度、上り列車は3~5分程度停車する列車が多いです。館山という拠点(=乗客の多くが入れ替わる)駅で長時間停車するのはある意味理にかなっています。
写真3. 普通上総一ノ宮行きが停車中
普通上総一ノ宮行き(下り列車)が停車中です(写真3)。E131系が運転開始して1か月も経過していないためか、それなりにファンはいましたが、列車の中は空いており、2両編成に特段の問題があるようには見えません(ただし、平日の高校下校時間はどうなのでしょうか)。
写真4. 普通木更津行きがやってきた
普通木更津行きがやってきました(写真4)。発車案内にあった通り、終点木更津の1つ手前の君津で君津始発の快速に接続します。君津で10分程度停車するのです。
写真5. 館山に停車中
館山に停車中の様子です(写真5)。下り側が直線であり、下り側に片面ホームがあります。今は橋上駅舎ですが、このような配線の駅はたいてい片面ホーム側に駅舎があり、そちらが駅の正面出口です。現に館山も下り線側の東側のほうが市街地が発達しています。
写真6. 館山を発車!
館山を発車しました(写真6)。こちら側の車両にはモーターが付いていないためか、静かな走り出しです。
写真7. 電留線の脇を走る
電留線の脇を走ります(写真7)。隣に停車している車両は特急新宿さざなみ号に使用されている、E257系です。朝に館山にやってきて、夕方に新宿に向かいます。その間、館山の電留線で待機しているのです。
写真8. 意外と山がない
房総半島といえば、それなりに山があるというイメージがあります。しかし、館山付近は平たんな土地が広がっています(写真8)。
写真9. 那古船形に停車!
那古船形に停車します(写真9)。昔は列車交換が可能な配線でしたが、現在は配線がスリム化されています。ダイヤを組みにくいという欠点はありますが、片面ホームなので、こ線橋や構内踏切なしにホームと駅舎の行き来が可能という長所はあります。
写真10. 那古船形に停車中
那古船形に停車中です(写真10)。まだ地形の険しさは感じません。房総半島に山があるといっても、標高500m以下の地点しかありません。千葉県は日本で唯一、最高地点の標高が500mに届かないのです。
写真11. 単線を行く
那古船形を発車しました(写真11)。田舎といえば田舎なのですが、東京から近いこともあり、人里離れた場所という感覚はありません。南房総そのものが温暖で、暮らしやすいという部分もありましょう。
写真12. 直線区間!
直線区間です(写真12)。電化された単線区間、そして若干の起伏。内房線ではなく総武線(佐倉以遠)や成田線と似たような風景であるようにも思えます。いわゆる千葉県のローカル線という風景です。
写真13. カーブがある
カーブがあります(写真13)。そして、集落も現れてきました。次の富浦も近いです。
写真14. 富浦に停車!
富浦に停車します(写真14)。この駅は静かなものですが、特急停車駅です。南房総には学生向けの保養所が多くあり、夏休みになるとにぎわうと聞いています(昔の鉄道ジャーナルにそのような記述がありました)。そのために特急が停車するのでしょうか。
写真15. 山がちになってきた
山がちな地形になってきました(写真15)。山と海が迫る場所にやってきたのです。
写真16. トンネルも近づいてきた
富浦と岩井の間にはトンネルもあります。だんだんトンネルが近づいてきた気配があります(写真16)。
写真17. トンネルを抜けた
トンネルを抜けました(写真17)。このあたりの内房線の最高速度は95km/hとされていて、そこまで速い部類には入りません。しかし、カーブでもそれなりの速度を出し、スピード感はあります。
写真18. 岩井に停車!
岩井に停車します(写真18)。ここにも特急が停車します。
写真19. 直線区間で速度を出す
岩井と安房勝山の間はそれなりに家があり、直線区間もあります。その直線区間で速度を出します(写真19)。写真がブレているので、速度を出していることが伝わるでしょうか。
写真20. 意外と家が多い
意外と家が多いです(写真20)。房総半島はもっと人が少ないイメージがありましたが、温暖な気候のためかそれなりに家があります。
写真21. 安房勝山に停車!
安房勝山に停車します(写真21)。両隣の岩井や保田よりも家が多いですが、ここには特急は停車しません。
写真22. 再び山がちになってきた
安房勝山と保田の間は再び山がちな風景です(写真22)。房総半島には大きな山はありませんが、このような小さな山はあるのです。
写真23. トンネルに入る
トンネルに入ります(写真23)。レンガ造りの風情あるトンネルです。
写真24. 山が近い
山が近い場所を走ります(写真24)。正面に見える山は有名な鋸山でしょうか。
写真25. まもなく保田!
まもなく保田です(写真25)。保田は「ほた」と読みます。鋸山の裏側のアクセス駅でもあります。内房線の君津以南の駅は島式ホーム、海側の駅舎、そして両者を結ぶこ線橋(屋根なし)が共通のようにも見えます。
写真26. 保田に停車!
ここまで各駅にとまっていますが、乗降客はいないことはないものの、そこまで多くはありません。2両編成でじゅうぶんなくらいです。
写真27. 山が迫ってくる
保田を発車すると、山が迫ってきます(写真27)。保田と浜金谷の間には、鋸山がそびえたっています。その鋸山をこえるのです。
写真28. 鋸山が近づいてくる
写真29. 鋸山が近づいてくる
鋸山が近づいてきます(写真28、写真29)。
写真30. 鋸山をトンネルで越えた
トンネルで鋸山を越えました。トンネルを出たらまもなく浜金谷です(写真30)。浜金谷の近くには金谷港があり、金谷港から久里浜まで東京湾フェリーで移動することができます。
写真31. まもなく浜金谷
まもなく浜金谷です(写真31)。ここも海側に駅舎があります。浜金谷周辺は港に近いためか、雰囲気のある喫茶店もあります(私は入っていません!)。
写真32. 浜金谷に到着した
浜金谷に到着しました(写真32)。鋸山から千葉方面に帰る人が多いのか、今までの各駅よりも乗車は多く見られます。浜金谷から北側は2両編成が毎時1本ではやや輸送力不足の気がします。君津を境に毎時3本から毎時1本に変わるのはサービス水準に差がありすぎます。君津-上総湊か浜金谷までは毎時2本でも良いかもしれません。
写真33. 小さな駅で上下列車がすれ違う
上下列車がすれ違います(写真33)。
写真34. 鋸山が見える
鋸山も見えます(写真34)。ここで改札から列車に乗ろうとする乗客とすれ違いましたが、急ぐ様子もなく、駅員さんも急かしている様子もありませんでした。逃すと1時間後ですが、大丈夫でしょうか。私は無関係ながら気になりました。
内房線のローカル区間に乗ってみて
今回、内房線のローカル区間に乗ってみました。館山付近は2両編成が毎時1本走るという輸送力に特段の問題は見られませんでした。ただし、高校生の下校時間帯など、輸送力に不安を覚える場面も想定されます。
このような利用は都市部に近い区間で生じると予想できます。そうであれば、君津-上総湊(か浜金谷)は毎時2本を運転するという工夫も必要かもしれません。千葉-木更津の区間運転に接続するように木更津-上総湊で運転すれば、乗務員をそう増やすことなく、千葉-君津の利便性も向上します。
ワンマン運転の2両編成というのは小回りの利く運用が可能ということです。2両編成ワンマン運転という運行体系を単に「サービス低下を最低限に留める」という消極的な解釈とするのではなく、「同じ車両数・乗務員数でサービスが向上できる」というように解釈を変えてもらいたいものです。
コメント
E131は安房鴨川の長時間停車中に清掃が入ります。モップがけまでする丁寧な掃除ですが、仮に2両を3両に増車すると清掃費が1.5倍になり、意外とこれがJRが減車したがる要因の一つかなと思いました。
209系5両など走らせた日には清掃費2.5倍ですからね。
ごみは持ち帰りましょうねさま、コメントありがとうございます。
安房鴨川での清掃作業、不勉強ながら知りませんでした。ご指摘ありがとうございます。
さて、「2両編成から3両編成に増車することで安房鴨川での清掃代が1.5倍」とのことですが、個人的所感ではそこまで増加しないと思います。この理由は、固定費と変動費の双方が存在するためです。1両だろうが15両だろうが発生する作業(準備作業など)と両数に応じて発生する作業(本作業)の双方があります。ここで、本作業についてはご指摘の通りと思います。しかし、本作業が1.5倍になっても、清掃費は準備作業と本作業ですので、1.5倍にまでにならないと推察いたします。
ただし、ご指摘の論旨については私もマークしていない内容ですので、非常に勉強になりました。