ハンガリーの首都であるブダペストには地下鉄やトラムの他に郊外電車や国鉄による近距離列車が運転されています。これらの交通機関に乗り、観光客の行かない「真のブダペスト」に向かってみました。また、国鉄でブダペスト市内交通券の使用可否も考察しています。
写真1. 郊外電車の始発駅の情景
ブダペストの交通機関の総論
ブダペストには多くの交通機関がありますが、多くの観光客が乗るのが地下鉄とトラムです。一方、ブダペストの郊外に向かっているのが郊外電車や国鉄線です。
図1. ブダペスト郊外の路線一覧(トラムは省略されています、公式サイトの路線図より)
この路線図にはRail tickets or Budapest-passes are validon the following railway lines within the city boundaries:と書いてあり、その下にはPassengers holding Budapest-passes require extension tickets for journeyscrossing the city boundariesとも書いています。これを訳すと、「ブダペストに関するチケットは市内境界線までは有効で、境界線の外側には別途チケットが必要です。」という意味に読み取れます。逆にいうと、ブダペストカードや各種乗車券はブダペスト市内であれば郊外電車や国鉄でも使える、ということです。このことは地球の歩き方先生にも、各種大手旅行サイトにも書いていません。
郊外電車は5号線~9号線です。図1で紫色が5号線、茶色が6号線、橙色が7号線、桃色が8号線と9号線(郊外側で分岐しています)です。7号線は全線がブダペスト市内であるほかは、すべてブダペスト市外まで伸びています。国鉄路線は郊外方面に延びています。これらの路線がブダペスト中心部と郊外を結ぶ路線で、ブダペスト都市圏を都市圏として機能させているために重要な役割を担っています。
では、実際に乗ってみましょう。
郊外電車HÉV-vonalakに乗る
郊外電車は市内から近い郊外まで結ぶ路線です。5号線がSzentendrei、6号線がRáckevei、7号線がCsepeli、8号線がGödöllői、9号線がsömöriと名づけられています。それぞれ郊外側の行先に関連した命名のようです。私は5号線に乗り、国鉄線と接続するAquincumまで乗りました。
写真2. バーチャニー広場に郊外電車が停車している
5号線の始発駅はバーチャーニ広場です。ここでは地下鉄2号線や王宮の丘方面に向かうトラム(19系統と41系統)もやってくる駅です(写真2)。ここから北の郊外に向かいます。この駅は3線しかありません。東京の私鉄の始発駅と比べるとこんなもんか、とも思いますが、ブダペストのターミナル駅と比べると狭いですね。ただし、狭いほうが利用客は便利です。5号線は10分間隔でやってきます。
写真3. マルギット橋駅に入線する郊外電車
ここから1駅は地下区間を走ります。この区間を乗るのであれば、地上を走り景色も良いトラムのほうが良いです。私は1駅次のマルギット橋から乗りました(写真3)。
写真4. 運転席後ろは前が見えない!
たまたま先頭の車両に乗ったので、運転席と客席との仕切りを見てみました。すると、中央に扉があり、その扉にはのぞき窓があります。しかし、その窓にはカーテンが閉じられていました(写真4)。彼らが前面展望が可能な日本に来たら驚くのでしょうか。
写真5. 車内はボックスシート
車内はボックスシートです(写真5)。このときは若者が多く乗っていましたが、若者向けのイベントが沿線で行われていたようです(途中で一斉に降りていました)。
写真6. ドナウ川沿いを走る
写真7. ドナウ川沿いを走る
このようにドナウ川沿いを走ります(写真6-7)。
写真8. 途中駅はのどか
このようなのどかな駅を通ります(写真8)。駅に改札口がないので、どこからでも駅に入れるという長所があります。
写真9. 途中駅を通る
このような立派な建物の駅もあります(写真9)。
写真10. ドナウ川沿いを走る
写真11. ドナウ川沿いを走る
ドナウ川沿いを走ります(写真10-11)。このあたりはもう中心部から離れており、観光名所はありません。対岸に見える建物は素敵な歴史的建造物ではなく、(おそらく)社会主義時代に建設された大規模団地群です。このような場所は観光客相手の「よそ行きのブダペスト」ではなく、ブダペスト市民が暮らす地域です。私はこのような場所を真のブダペストと命名することにしました。(真のプラハと同じパターンですね)
写真12. イベントで多くの人が降りた
途中の駅では多くの人が降りました(写真12)。地元の人向けのイベントは地価の高い中心部ではなく真のブダペストで開催されます。
写真13. Aquincumに到着
そうしているうちに、Aquincumに到着しました(写真13)。国鉄線をくぐったので、境界に到着する前に降りる決断をしました。どちらにせよ、特に目的地はありませんから、どこで降りようと自由なのです。というより、ドアの中央に手すりがついていて、日本の通勤ラッシュのようなスムーズな流れは期待できませんね。
写真14. 郊外電車の発車を見送る
こうして郊外電車との触れ合いは幕を閉じました(写真14)。
国鉄でハンガリー市内を移動する
広いインターネットを眺めても、ブダペスト市内を国鉄で移動したという記事には巡り合いませんでした。そのため、国鉄でブダペストカードが使えるのかもわからないまま、Aquincumに放り込まれてしまいました。ここで、駅員に聞こうと思いました。
写真15. 国鉄の高架線が見える
国鉄の高架線が見えます(写真15)。郊外電車を陸橋で渡って、国鉄の駅に向かいます。ブダペスト西駅に行くには、奥の線路の列車に乗る必要があります。
写真16. 陸橋を渡って郊外電車がやってきた
陸橋を渡って線路を見ると、郊外電車の姿が見えました(写真16)。
写真17. 新しい国鉄電車が去っていった
国鉄駅が近づくと、新しくてきれいな国鉄電車がやってきました(写真17)。東に向けて去っていきました。これはブダペスト西駅行きです。ん?この次の電車はいつだろう?
写真18. 駅員のいない駅構内
駅員にブダペストカードを使えるか聞こうかを考えていましたが、この駅には駅員がいません(写真18)。そうすると、プロフェッショナルに聞くことができません。せっかく使えるセリフを日本で考えたのにね(Can I use this ticket?、日本で考えるほどのセリフでもありません)!
写真19. 高機能な自動券売機
高機能な自動券売機があります(写真19)。下に駅名を選べるボタンがありますので、そこのブダペスト西駅を選択するだけのことです。変にタッチパネルじゃなくてよかった!
写真20. 4時間利用可能なチケットが出てきた
ブダペストカードを使えるのか不安なので、チケットを買いました(写真20)。233フォリントなので、たかだか60円です。上で書いた通り、ブダペストカードは使えますので、無駄な支出になってしまいましたね。
写真21. 6両編成の郊外電車が発車した
郊外電車が見えます(写真21)。ハンガリーは右側通行ですので、これは市内行きの電車です。
写真22. 17:51発の電車に乗る
発車案内を眺めます(写真22)。17:51発の電車に乗ります。一般的な旅行ブログでは、機関車けん引列車のヨーロッパの国際列車も「電車」で表記している例も見かけますが、ここは鉄道ファンのブログです。そのような無神経な表記はいたしません(※)。それなのに、写真の説明に「電車」と入れています。でも、これは大丈夫です。ちゃんと電車がやってきましたから。
※このようなときは「列車」と表記すれば全く問題ありません
写真23. 美しい車内
電車がきました(そして撮影し忘れました)。乗りこむと、ほとんど満席です。このような新しい機能的な車両です(写真23)。
写真24. ドナウ川を渡る
電車は東に向かいますので、すぐにドナウ川を渡ります(写真24)。
写真25. 住宅街の駅に停車
住宅街の駅に停車します(写真25)。ここからどんどん西駅に向けて混雑すると思いきや、意外と空きました。西駅が中心部にはないので、途中の駅で降りて乗りかえたりすることや、ブダペスト市内では本数の多い地下鉄、トラム、バスに乗る人が多く、国鉄は見向きされないという事情もあるでしょう。
写真26. イケメンの車掌さんによる検札
検札は頻繁に行われます(写真26)。私もレシートのようなありがたみのないチケットを見せました。
写真27. 真のブダペストを走る
迫力ある団地群です(写真27)。これは真のブダペストというべき光景です。
写真28. 団地と低層住宅の落差が激しい
団地の手前をよく見てみましょう(写真28)。低層住宅があり、高層住宅との落差を感じます。
写真29. 途中駅に停車
同様の光景です(写真29)。
写真30. のどかな場所を行く
ただし、ずっと団地が続くわけでもなく、線路が分岐したり、のどかな建物が見えたりもします(写真30)。
写真31. さまざまな車両がとまっている
さまざまな車両がとまっています(写真31)。ターミナル駅が近づいていることを感じます。東京のJR線にも尾久や田町などの車両基地がありますが、それと似ていることです。
写真32. まもなく西駅!
ブダペスト中心部に特徴的な建物が現れると、西駅はもうすぐです。
写真33. 西駅に到着!
このようにして、ブダペスト国鉄(近距離列車)との触れ合いは幕を閉じました。ブダペストにはヤーノシュ山近くに興味深い鉄道があります。次回はそれにも乗ってみましょう!
さて、前後ではどこに行ったのでしょうか?
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