木次線。マイナーな路線ですが、1つ代表する観光列車があります。それがトロッコ列車奥出雲おろち号です。なかなかマイナーな存在ですが、見どころが多く、ぜひとも乗りたい列車でもあります。そんな奥出雲おろち号に乗ってみました。
写真1. 備後落合行きでは客車が先頭で前面展望を満喫できる!
復習:奥出雲おろち号の概要
さて、奥出雲おろち号の概要を簡単に紹介しましょう。
・運転区間:木次-備後落合
※繁忙期は出雲市-木次を延長運転し、出雲市→備後落合の運転です
・運転時刻:木次10:08→備後落合12:36(出雲市は8:45発)、備後落合12:57→木次15:57
・形態:全車指定席(自由席の設定なし)
・運転本数:1往復(運転日注意)
・編成:2両編成(トロッコ車と控え車の2両編成)
基本的には木次と備後落合の間で運行されます。この列車に接続するように宍道-木次の定期列車が設定されており、宍道-備後落合の移動ができるようになっています。繁忙期の一部は木次始発ではなく出雲市始発になります。ただし、復路の行先は木次のままです。いずれにしても、松江始発ではないので、松江から利用する場合は別の列車で移動する必要があります。
2両編成で1両がトロッコ車、もう1両が控え車です。トロッコ列車は繁忙期は多くの設定日がありますが、必ずしも晴れや曇りという天候に恵まれるとは限りません。そのような場合には、屋根のある控え車で移動することになります。なお、1号車のトロッコ車両の指定券を確保していれば、2号車の控え車の同番号の席を使えます(1号車の1D席を確保している人は2号車の1D席を使えるということです)。
実質的には1両編成で運転されているのと同じですので、GWなどのような繁忙期は座席がすぐに売り切れてしまいます。そのため、座席の確保は最優先で行うと良いでしょう。
図1. 木次線のルート(宍道から備後落合、googleマップより引用)
参考までに、木次線の経路を示します(図1)。普段はこの南半分を運行しています。
松江からのアクセス:普通列車
さて、実際に乗ってみましょう。私は松江に宿泊しましたので、松江から普通列車で移動します。
写真2. 松江から乗った普通益田行き
松江では9:02発普通益田行きに乗ります。松江周辺は電化されていますが、一部を除いて普通列車は気動車による運転です。今回もその原則通り、気動車がやってきました。2両編成で座ることができました。
写真3. ボックスシートが並ぶ車内
車内はボックスシートが主体です(写真3)。車体長の短い120系気動車に比べれば「当たり」の部類です。でも、都市間輸送に充当するのであれば、転換式クロスシート車のほうが良いようにも思います。山陽地方では当たり前のようにやっています。
雨の中、宍道に到着です。
奥出雲おろち号に乗る
さて、いよいよメインイベントの奥出雲おろち号への乗車です。
奥出雲おろち号の車内の紹介
まずは、車両とその内装を簡単に紹介しましょう。
写真4. 備後落合側の先頭
備後落合側の先頭です(写真4)。こちらは運転席があり、運転席脇は前面展望スペースです。
写真5. 宍道側の先頭
宍道側の先頭です(写真5)。こちらはディーゼル機関車が連結されています。そのため、前面展望は不可能です。前面展望を満喫したければ、備後落合行きに乗るしかないということです。
国内で客車が先頭に立って運転する例は珍しいのではないかと思います。私の知る限り、JR北海道のノロッコ号くらいです。でも、諸外国ではこのような列車は多いです(例を写真6と写真7に示します)。
写真6. ドイツのIC(コブレンツで撮影)
写真7. チェコのレイルジェット(ウィーン中央駅で撮影、これはオーストリア車ではなくチェコ車)
でも、諸外国のこのような類の列車と異なるのは、前面展望に配慮されていることかな?
写真8. トロッコ車両の外観
こちらがトロッコ車両の外観です(写真8)。窓の部分が切り取られ、風を大いに感じられる車両であることがわかります。
写真9. トロッコ車両の車内
トロッコ車両の車内は木の椅子が4人向かい合わせで設置されています(写真9)。座り心地が悪い?でも、いいんです。トロッコ列車に快適さを求めるのは間違いです!
写真10. トンネルでは雰囲気がある
トンネルでは雰囲気があります(写真10)。でも暗くて揺れる車内ではなかなか良い写真を撮れません!実際にはもっと美しいです。実際に行ってみてね!
写真11. 前面展望は良好!
運転台は進行方向左側にあり、右側は開放されています(写真11)。120系気動車で培ったノウハウが生かされているのでしょうか。
写真12. 控え車の車内
写真13. 控え車の車内
控え車の車内です(写真12、写真13)。簡易リクライニングシートが並びます。簡易リクライニングシートは背中に体重をかけないとすぐに戻る仕様です。個人的な体験で恐縮ですが、私の人生初の簡易リクライニングシート体験となりました。
平野部の風景:宍道→木次
さて、雄大な景色を眺めましょう!
写真14. 自然が豊か!
山陰本線からちょっと外れただけで急にのどかな景色になります(写真14)。
写真15. 山あいの土地を行く
山あいを走ります(写真15)。まだここは宍道からそう時間が経過していません。
写真16. 原風景が広がる
日本の原風景という光景が広がります(写真16)。
写真17. 駅に停車!
原風景の中の駅に停車します(写真17)。旅行者にとってはこのような景色は良いですが、このような場所だと日常的な利用客が見込めなさそうです。
写真18. 加茂中という駅だった
どうやら加茂中という駅に停車中だったようです(写真18)。
写真19. 昔の宿場町の風情の場所を走る
昔の宿場町のような風情を感じます(写真19)。特別な観光地ではありませんが、このような原風景が観光地の風景よりも良かったりするものです。
写真20. 再び集落に入った
さきほどの集落を抜けて田園風景の中を走り、また集落に入ります(写真20)。
写真21. まもなく出雲大東に停車!
まもなく出雲大東に停車します(写真21)。千葉県にある大ターミナル太東と漢字が異なります。
写真22. 赤川を渡る
赤川を渡ります(写真22)。
写真23. 巨大迷路の看板がある
巨大迷路の看板があります(写真23)。心の駅陽だまりの丘のものです。巨大迷路が気になって調べてしまいました。
写真24. また巨大迷路の看板が見えてきた
また巨大迷路の看板が見えてきました(写真24)。周囲がまたこんもりとした森になっています。
写真25. 水田が広がる
5月上旬ということもあり、田植えの水田が多いです(写真25)。
写真26. 街に入ってきた
木次が近づいてきて、周囲に建物が増えてきました(写真26)。
写真27. 木次に停車!
木次に停車です(写真27)。右手には普通列車(オールロング車!)が停車しています。木次線の場合、銀色の車両がオールロングシート車、朱色の車両がクロスシートが設置された車両です。
写真28. 木次に停車!
駅名標を眺めると、木次線の色が黄色であることが読み取れます(写真28)。車両も黄色系なので、イメージはあっています。左の駅名標は…勝手にどうぞ!
ここで車内販売の人が乗り込んできました。寒いし、控え車に戻ることにしましょう!
山間部の風景:木次→備後落合
さて、控え車から山間部の風景を堪能しましょう。私は通路側の席しか取れませんでしたが、空席が多く、ところどころ窓側の席に座れました(周囲を観察すると同様の人が多かったです)。
写真29. いよいよ山を登る
いよいよ山を登ります(写真29)。
写真30. 緑が美しい
美しい緑が広がります(写真30)。
写真31. 緑の間に家が広がる
緑の間に家が広がります(写真31)。
写真32. 緑が広がる
このように緑が広がります(写真32)。
写真33. 水田が段々畑のようになっている
水田が段々畑のように広がっています(写真33)。
写真34. 木次線最長のトンネルに入る
木次線最長のトンネルに入ります。最長のトンネルではトロッコ車両で素敵なイルミネーションが点灯するというので、行ってみました(写真34)。
写真35. 天井のイルミネーション
天井のイルミネーションです(写真35)。竜でしょうか。
写真36. 緑が広がる
緑が広がります(写真36)。中国山地はそこまで険しいわけではありませんが(だから鉄路が建設された)、山深さは感じます。
写真37. 緑の中にも民家がある
緑の中にも民家があります(写真37)。このあたりの家の瓦は赤色が多いです。
写真38. 川を渡る
川を渡ります(写真38)。
写真39. 亀嵩に停車!
亀嵩にとまります(写真39)。ここからそばの車内販売があります。多くの利用客が買っていましたが、そばアレルギーの私は食べられません。
写真40. 山あいのふるさとの光景
山あいのふるさとといえる光景が広がります(写真40)。
写真41. 山の中にも平たんな場所がある
山の中ですが、平たんな場所があります(写真41)。
写真42. 出雲横田に停車!
写真43. 出雲横田
出雲横田にとまります(写真43)。このあたりは奥出雲町の横田地区の中心駅と聞いています。古さがイカしている駅舎です。
写真44. 水田が広がる
水田が広がります(写真44)。
写真45. 山が迫ってきた
また山が迫ってきました(写真45)。
写真46. 山の風景が続く
このような景色が続きます(写真46)。
写真47. 出雲坂根に停車
出雲坂根に停車します(写真47)。ここ出雲坂根では3段式スイッチバックがあります。2回進行方向を変えますから、結果として進行方向は変わりません。
図2. 出雲坂根の3段式スイッチバック(googleマップより)
出雲坂根のスイッチバックの概要を示します(図2)。ここからスイッチバックとループ線を駆使して高い坂に挑みます。地図を見ると、まっすぐ三井野原まで線路を伸ばしたほうが良いように思いますが、それは困難です。何しろ勾配に強い道路もループ線を描いているほどですから。
写真48. スイッチバック
出雲坂根そのものもスイッチバックですが、少し進むともう1回進行方向を変えます。合流する線路は備後落合方面への線路です(写真48)。
写真49. ループ状を登っていく
ループ状の線路を登っていきます(写真49、正確にはループ線ではありません)。
写真50. 見晴らしが良くなった!
見晴らしが良くなりました(写真50)。最後尾のデッキにいたのですが、車掌さんが親切に「あと5分で素晴らしい風景が広がる」と教えてくれました。
写真51. 国道がループしている
ループしている国道も確認できます(写真51)。
写真52. 国道314号の橋が見える
国道314号の橋が見えます(写真52)。立派な国道なのですが、通行量が少ないです。
写真53. 国道314号の橋が見える
国道314号の橋をちょっと別のアングルで眺めてみました(写真53)。出雲坂根と三井野原の間が奥出雲おろち号のハイライトです。
写真54. 広島県に入った
広島県に入りました(写真54)。この瞬間、奥出雲「町」から庄原「市」に入りましたが、依然として山の光景です。
写真55. スキー場の光景が広がる
スキー場の光景が広がります(写真55)。
写真56. 山荘もある
山荘もあります(写真56)。三井野原スキー場があるのです。
写真57. 油木に停車!
最後の停車駅の油木に停車します(写真57)。広島県に入っても米子支社管轄なので、駅名標の色は黄色のままです。
写真58. 山中を行く
最後の駅、備後落合に近づくにつれて、だんだんと山が深くなっていきます(写真58)。備後落合は芸備線と木次線の結節点ですが、山奥にあって、「秘境駅」とされています。
写真59. 芸備線と合流したあたり
芸備線と合流したあたりです(写真59)。このあたりに食堂があります。ここの食堂は安くて干渉しないという旅行者にはうってつけの店舗です。駅から遠いのが難点ですが、国道の合流地点を優先した結果でしょう。
写真60. 備後落合に着いた奥出雲おろち号
備後落合に到着しました(写真61)。山奥に着きました。
奥出雲おろち号に乗ってみて
奥出雲おろち号は比較的簡素な観光列車という印象を受けました(売店スペースなどはない)。また、特別なアテンダントさんもおらず、車掌さん2人体制で運行していました。私が見た限り車内改札はなく、乗客の自主性に任されている列車のように感じました。これはこれで良いことでしょう。
ただし、指定席に座っている人が全員指定席券を所持しているのかという点は気になりました。本来であれば、乗客全員の指定席券を確認するという管理型が望ましく、さらにいえば東急のS-trainのように別の席に座っている乗客の席を車掌さんが自動で振り替えるシステムが望ましいです。
奥出雲おろち号は旅行客にとっては素晴らしい列車です。1日でも長続きすることを望むとともに、正直者が馬鹿を見ることがないようにしてもらいたいものです。
さて、前後ではどこに行ったのでしょうか?
奥出雲おろち号の乗車記(車内と車窓を収録、宍道→備後落合、21年GW)←今ココ!
芸備線の山中を堪能する(乗りつぎ時刻表と車窓も収録、備後落合→三次、21年GW)(次)→
※それぞれ別ウィンドウで開きます。