ドイツやオーストリアでの鉄道旅行を考える場合の下調べはどうすれば良いでしょうか。おすすめの目的地を知るにはどうすれば良いでしょうか。そのような疑問に答えるための教科書のような本があるので、紹介します。また、古い本ですので、現状との違いも補足説明いたします。
写真1. 旅先でも気軽に持ち運べるサイズで便利!
ドイツ&オーストリア鉄道の旅の想定読者
本書を読むべき人は以下に当てはまる人です。
・ドイツやオーストリアの鉄道旅行に興味がある
・せっかく海外旅行に行くのであれば、ツアーではなく個人旅行にしたい
・ドイツやオーストリア周辺(チェコやハンガリーなど)にも興味がある
ドイツ&オーストリア鉄道の旅の構成
まず、ドイツ&オーストリア鉄道の旅の基本情報をまとめます。
・著者:野田隆、結解学
・出版社:ダイヤモンド社、ダイヤモンド・ビッグ社
・分量:208ページ
ドイツとオーストリアのおすすめのモデルコースが写真とともに簡単な旅行記形式で記され、その後、国際列車の紹介があります。最後に、ドイツとオーストリアの鉄道旅行術が記されています。
・第1章:ドイツ鉄道の旅
・第2章:オーストリア鉄道の旅
・第3章:国際列車の旅
・第4章:列車の旅の魅力
・第5章:ドイツ&オーストリア鉄道利用術
前半で魅力を感じて、後半で実践的な旅行術を学ぶスタイルです。でも、一番の学びは実際に現地で学ぶことですけどね!
ドイツ&オーストリア鉄道の旅の内容
先ほど述べた5つの章について簡単に紹介します。
第1章:ドイツ鉄道の旅
巻頭特集も含めて11通りの鉄道ルートを紹介しています。その11通りのルートを紹介します。
・モーゼルワイン鉄道
・ライン川景勝ルート:車窓を彩る数々の古城
・大聖堂の町と自由ハンザ都市:高速列車がつなぐ建築遺産
・ヴュルツブルクからベルリンへ:ドイツ中央部の古都を訪ねる
・ベルリンから北ドイツの港町へ:首都の遺産群とハンザ都市の威光
・ハイデルベルクからバンベルクへ:中世ロマンが彩る古城街道
・憧れのSL&登山鉄道① リューゲン軽便鉄道:ドイツさいはての島を走るSL
・憧れのSL&登山鉄道② モリ-鉄道:路面電車のように走るSL
・憧れのSL&登山鉄道③ フィヒテルベルク鉄道:チェコ国境に沿って走るSL
・憧れのSL&登山鉄道④ キームゼー鉄道:プリーンの観光SLとヘレンキームゼー城
・憧れのSL&登山鉄道⑤ ハルツ狭軌鉄道:魔女伝説のブロッケン山へ登る
詳しくは本書をご覧いただければ良いですが、個人的にライン川景勝ルートが印象に残りました。本書を読んだら、絶対に乗りたいと思うことでしょう。もちろん私は実際に行っています。以下のリンクに詳しい旅行記を掲載しています。
1回目の訪問記です。2016年に訪問しています。本書の影響でボッパルトに行っています。2つの記事に分けて記しています。このときにはメジャーな「左岸線」に乗っています。
2回目の訪問記です。ナイトジェットでライン川流域入りし、マイナーな右岸線に乗っています。
ライン川景勝ルートは巨視的にみれば、フランクフルト(ドイツ中西部の都市)とケルン(ドイツ北西部の都市)の間のルートです。ただし、ICE(ドイツの高速列車)では美しい景色を堪能できないので、ICE以外の列車に乗りましょう!もう少し限定すると、マインツからコブレンツが白眉とされます。
写真2. ボッパルトのライン川の蛇行
このほかに、ドイツの歴史ある古都を訪問したりしていますので、実際に本書をめくってみてください。ドイツに行きたくなりますよ!
オーストリア鉄道の旅
オーストリアでは8つのモデルルートが紹介されています。
・ザルツカンマーグート線:山々と湖が輝く優美な保養地
・セメリンク鉄道:アルプスを越えた最初の鉄道
・ヴァッハウ渓谷:美しきドナウの流れに沿って
・インスブルックからザルツブルクへ:ドイツを通過する近道ルート
・アールベルク線:チロル地方のメインルート
・SLで大自然を満喫① シャーフベルク登山鉄道:サウンド・オブ・ミュージックの世界へ
・SLで大自然を満喫② アッヘンゼー鉄道:チロル山中の静寂の湖へ
・SLで大自然を満喫③ ツィラータール鉄道:緑の谷間を走るSL
正直、オーストリアはあまり詳しくありませんが、鉄道においては、ドイツと同じような利便性が確保されている国です。セメリンク鉄道は首都ウィーンと第2の都市グラーツを結ぶ幹線ですが、世界遺産を通る路線です。これらが両立している路線もそうないでしょう!
第3章:国際列車の旅
ドイツやオーストリアはヨーロッパ中央部に位置し、多くの国への直通列車が運転されています。それらの国際列車についても取り上げています。本章では6つを紹介しています。
・ドイツからデンマークへ:バルト海を渡る列車
※この列車は廃止されています。ドイツからデンマーク直通はありますが、別のルートを通り、船に乗らない列車は存続しています。
・ドイツからチェコへ:雄大なエルベ渓谷を走り抜ける
※この列車の塗装は赤系になっていますが、現在は青系に変更されています。また、プラハ本駅に発着するように変更されています。
・オーストリアからチェコへ:中欧の美しき古都の誘い
※この系統は現在はレイルジェットでの運転に変更されています。
・オーストリアからハンガリーへ:ハプスブルクの都をつなぐ旅
※現在はウィーン西駅ではなく、ウィーン中央駅発着に変更されています。本書執筆時点ではウィーン中央駅はありませんでした。ウィーンミッテ駅はウィーン中央駅とは違うよ!
・ドイツからオーストリアへ:バイエルンアルプスからチロルへ
・ドイツからイタリアへ:アルプスの風がつなぐ3ヵ国縦断
景色が良いのは、ドイツからチェコに向かう列車です。ベルリンとプラハを4時間あまりで結びます。ハイライトはドイツとチェコの国境付近でエルベ川沿いを走る区間です。ドイツとチェコというと冷戦時代は国境警備が厳重だったように錯覚してしましますが、この付近の国境は「東ドイツ」と「チェコスロバキア」の国境です。友好国どうしでしたので、そこまで国境警備は厳重ではなかったでしょう。
この区間にも乗ったことがあります。以下の記事に実際の乗車記を記しています。
写真3. エルベ川沿いを走る
第4章:列車の旅の魅力
このように書かれていますが、どちらかというと「この列車があって、こんな感じだ」ということをまとめています。
・高速列車ICE:超特急でゆったり快適な陸旅
・夜行列車シティナイトライン:快適なホテルトレインの旅
※シティナイトラインは2016年12月のダイヤ改正で消滅し、ナイトジェットが引き継いでいます。参考程度に読んでください。
・食堂車グルメ:列車の中で楽しむ食事
主にドイツの列車について書かれていますが、これらの後にドイツの列車の種類とオーストリアの列車の種類が列挙されています。Sバーンはドイツのイメージが強いですが、オーストリアにもあるんですよ!
第5章:ドイツ&オーストリア鉄道利用術
プランニングから駅の利用法、実際の列車の利用法について述べられています。実践的な内容で、細かな点よりも大枠をとらえるために読むべき章です。
ドイツやオーストリアの長距離列車で注意するべき点があります。それは、自由席・指定席という明確な区分がなく、任意指定制という制度を採用していることです。ある席を予約すると、その席は指定席扱いとなり、そうでない席は自由席扱いとなるものです。つまり、事前に席を予約したのであれば、指定番号の席に座れば良いですし、事前に席を予約していないのであれば、予約が入っていない席に座るのです。
写真4. 座席が指定されている区間が明示されている表示
たとえば、この場合、ザンクトペルテンからリンツまでの予約が入っています。ザンクトペルテンまでの利用であれば気兼ねなく座れます。このとき私はウィーンからザンクトペルテンまで乗りましたので、この席は利用可能ということです。
やや書評から外れますが、重要な原理でありながら本書ではわかりにくかったので、僭越ながら補足させていただきました。
この原則はチェコやスイスにも適用されます。フランス、イタリアやハンガリーは全席指定制ですので、この原則は適用されません。国際列車の場合、フランス、イタリアやハンガリーに入るとこの原則は適用されないと覚えましょう!
ドイツ&オーストリア鉄道の旅の感想
ドイツ&オーストリア鉄道の旅を読んだ感想は、「ドイツ鉄道旅行は楽しそう!行ってみたい!」というものです。とても具体的なノウハウはそこまで触れられていませんが、行きたいという気持ちにさせる書籍も良いものです。
そう!日本とは異なる車窓、街並み、そして列車。そうでありながら、実際に旅行すると非常に旅行しやすいことにも気づかされます。
歴史的な経緯から、オーストリアはドイツに近いものがあります(オーストリアもドイツ語を話す国)。そのため、本書ではドイツとオーストリアをまとめています。ドイツとともにオーストリアも魅力的な国です。ぜひとも行ってみましょう!
なお、ドイツ&オーストリア鉄道の旅は取り扱い書店が少ないですので、ネット通販で買うのも手です。ご自身のポイントも貯まるしね!
実際に詳細なプランニングに役立つ書籍
ドイツとオーストリア鉄道旅行を実際にする際には、以下の書籍もあったほうが便利です。
地球の歩き方先生は情報量も多く、大都市の路線図も掲載されていますので、必携といえましょう!ここではドイツ版とオーストリア版を紹介しています。
地球の歩き方ドイツ版です。
また、列車の時刻を調べるためにはヨーロッパ時刻表が役立ちます。この世は便利なもので、ヨーロッパの長距離列車が網羅された時刻表が発売されています。毎年冬に大規模なダイヤ改正がありますので、冬時刻表があれば何とかなります。
海外の鉄道の事情に明るくなるのに役立つ本
また、この書籍を含んだ、海外の鉄道に関するおすすめの書籍を紹介しています。