首都圏の外環状線の性質をもつ武蔵野線。日中時間帯はそこまで混んでいるイメージはありませんが、実態はどうでしょうか。京葉線との接続駅の西船橋で観察しました。
写真1. 西船橋で多くの乗客が交錯する
武蔵野線の混雑状況まとめ
武蔵野線の混雑状況(西船橋断面)をまとめると以下の通りです。
- 午前中は府中本町方面行きより京葉線方面行きの混雑が激しい
- 京葉線直通は南船橋行きよりも東京行きのほうが混んでいる
- 全般的に8号車が空いている
詳細は以下に記します。
混雑調査の概要
今回の混雑調査の方法を紹介しましょう。この記事では、定点観測を行い、一定時間の全列車を対象にして各車両の混雑を目視で確認しています。これはプロも行っている調査方法です。
簡単に調査方法を紹介しましょう。一部の個人サイトでは混雑状況を書いているところもありますが、調査方法や混雑指標の言及がないのでう~んと考えてしまうところがあります。そのようなことを踏まえて、弊サイトではきちんと方法を示します(さすがー)。
弊サイトでは混雑ポイントという概念を導入しております。その概要を示します(表1)。
表1. 混雑ポイントの概要
せっかくなので、120ポイント~160ポイントの様子をご覧いただきましょう(写真2-4)。いずれも個人情報を守ることを目的に、画質を落としています。
写真2. 混雑ポイント120ポイントの様子(右上に私の指が写っていますね…)
写真3. 混雑ポイント140ポイントの様子(右上に私の指が写っていますね…)
写真4. 混雑ポイント160ポイントの様子(写真3と異なり、ドア部分が圧迫されていることがわかります)
今回は総武線との連絡駅の西船橋-船橋法典で確認しました。
武蔵野線の混雑状況(平日日中時間帯)の生データ
写真5. 西船橋では府中本町行きは比較的空いている
まず、武蔵野線の混雑状況の生データを示します(表2)。列車ごとの混雑率については、計算のしやすさ(混雑ポイントは序列指標であり、足し算ができない)から、混雑率で示しています。
表2. 平日日中時間帯の武蔵野線の混雑状況(西船橋-船橋法典)
また、列車ごとの混雑率を視覚化しました(表3)。
表3. 平日日中時間帯の武蔵野線の混雑状況(西船橋-船橋法典、視覚化)
このように見ると、府中本町方面行きよりも西船橋方面行きが1.5倍混んでいることがわかります。京葉線沿線の大型施設へ向かう流れと、放射軸への流れが重なり、混雑傾向がここまで異なるのでしょう。例えば、新松戸-新八柱であれば、放射軸への流れ(府中本町方面行き)と京葉線への流れ(京葉線方面行き)が分散したということです。
武蔵野線の混雑状況(平日日中時間帯)の解析
写真6. 西船橋に停車中の東京行き
上で生データを示しました。しかし、それだけではわかりにくいかもしれません。そこで、以下の章で詳細に解析いたします(やさしー)。なお、列車ごとの混雑を分析するに当たり、弊サイトの指標である混雑ポイントから、一般的な混雑率に変換しています。これにより、序列指標から定量的な指標に変換され、計算などが便利になるためです。
復習:武蔵野線のダイヤ
混雑状況と鉄道ダイヤは大きく関わります。そのため、武蔵野線のダイヤを簡単に紹介します。
日中時間帯の武蔵野線のダイヤは単純です。南船橋-府中本町、東京-府中本町の各駅停車がそれぞれ20分間隔で運転され、武蔵野線内は10分間隔です。日中時間帯は武蔵野線内は全線通し(※)が10分間隔だけです。大宮直通のむさしの号やしもうさ号の運転、途中駅どまりの設定もありません。
※武蔵野線の鶴見-府中本町は通常は旅客営業をしていないので、ここでは考えません。
いいかたを変えると、武蔵野線は各駅停車のみが10分間隔で運転され、西船橋から先は南船橋行きと東京行きの交互になるということです。
系統別の混雑状況
今回は上下方向ともに(府中本町行きが上りです)、東京発着・南船橋発着を把握できるように観察しました。そこで、方向と発着駅で分析しました(表4、図1)。
表4. 平日日中時間帯の武蔵野線の混雑状況(西船橋-船橋法典、系統別)
図1. 平日日中時間帯の武蔵野線の混雑状況(西船橋-船橋法典、系統別)
上記分析結果から、以下の傾向が読み取れます。
- この時間帯(午前中)は京葉線方面への流動が大きい
- 京葉線への流動も東京方面指向が高く、南船橋行きは避けられる傾向にある
- 府中本町行きは始発駅による差は小さい
一般的に午前中は都心部への流動が大きく、郊外への流動が小さいです。また、京葉線沿線は大型レジャー施設があり、これへの流動もありましょう。船橋法典-西船橋は都心への流動(西船橋乗りかえ総武線、東西線方面)も京葉線への流動も同一方向であり、上下線の混雑差が顕著に発生した可能性を指摘できます。
号車ごとの混雑傾向
次に、号車ごとの混雑傾向を分析します(表5、図2)。
表5. 平日日中時間帯の武蔵野線の混雑状況(西船橋-船橋法典、号車ごと)
図2. 平日日中時間帯の武蔵野線の混雑状況(西船橋-船橋法典、号車ごとのグラフ)
全般的に中央よりの車両が混んでいて、端の車両が空いている傾向にあります。特に府中本町よりの先頭車は空いていて、穴場的な車両です。
上下で8号車の混雑傾向が異なる理由を考察します。8号車は例えば新八柱の出口最寄ですが、西船橋発車時点ではそこまで混んでいません。日中時間帯は慣れていない人も多く、降車駅の出口に便利な車両を選ぶ傾向は弱いです。新八柱で降りる人も8号車を選択しないのでしょう。逆に、西船橋到着時点では8号車はそれなりに混んでいます。新八柱で乗る人がそれなりに多いことがわかります。
写真7. 武蔵野線の階段の位置(南浦和駅で撮影)
東武野田線や新京成線との比較
千葉県北西部で環状軸と機能している東武野田線、半環状軸として機能している新京成線と混雑状況を比べました(3路線とも松戸市と船橋市を通っています)(表7、図3)。奇しくも全線とも10分間隔が基本であり、混雑状況を比べるのはそれなりに妥当でしょう。
表7. 千葉県北西部の環状軸の混雑度合いの比較
図3. 千葉県北西部の環状軸の混雑度合いの比較
上3つが都心方面からの流れ、下3つが都心方面からの流れで示しました。以下の傾向が読み取れます。
- 混雑度合は武蔵野線 = 新京成線 < 東武野田線である
- 新京成線は上下方向による差は小さく(3路線のなかでやや遅い時間帯に調査したからかもしれない)、両方向輸送である
東武野田線は急行運転という出血サービスを行っているためか、やや空いています。武蔵野線は駅間距離が比較的長く、埼玉県方面にもつながる環状軸の王者ということもあり、それなりに利用されています。新京成線は古くからの住宅街を通り、地域輸送として一定の地位を得ているのでしょう(途中駅での乗り降りが多いように感じました)。東武野田線は住宅街としての歴史が浅いためか、比較的閑散としていました。もともと線形は良好ですから、急行運転により環状軸としての活路を見い出だそうとしているかもしれません。
東武野田線(東武アーバンパークライン)の混雑状況(平日日中時間帯、新船橋-船橋、現場調査結果)
新京成電鉄の混雑状況(平日日中時間帯、松戸-上本郷、現場観察結果)
混雑状況から昼間の武蔵野線ダイヤを考える
写真8. 船橋法典よりですれ違う
では、混雑状況から武蔵野線のダイヤを考えてみます。全体的に混雑率が40%程度であることから、(それなりに乗客が多い船橋法典-西船橋であることも考慮すると※)全般としては各駅停車のみの10分間隔ダイヤは適正とわかります。
※手元の都市・地域交通年報によると、2015年度の通過人員(定期外、下り)は南浦和-東浦和で35,776人(1日当たりで換算するため366で割る)、船橋法典-西船橋で30,953人(1日当たりで換算)です。最混雑区間で50%弱と推定できます。
一方、京葉線方面への混雑も見られます。これはあまり良い傾向ではありません。供給過剰を覚悟するのであれば、京葉線の15分サイクルに合わせ、武蔵野線も15分に2本の運転とすることです。単純な混雑緩和と利便性向上を図るのであれば、東京-府中本町と南船橋-府中本町を各15分間隔で運転し、武蔵野線内は6~9分間隔(9分間隔のほうに貨物列車を入れる)とすることです。
もう1つの方策は東京-府中本町の各駅停車を30分に2本、南船橋-府中本町の各駅停車を30分間隔、そして付加価値を付けるために海浜幕張-大宮の快速を運転し、海浜幕張-大宮の快速は西船橋で東京-府中本町の各駅停車に相互連絡するのです。快速が入る部分は11分間隔とすれば、それなりに速達運転はできるでしょう。
ただし、これは過剰かもしれません。現状でできることは、朝夕に近い時間帯にピンポイントで東京-西船橋の区間運転を増発し、京葉線東京行きの混雑を分散させるくらいでしょう。
武蔵野線の混雑に関する記事
ここまで特定の駅・特定の時間帯という深くて狭い情報をお伝えしました。では、武蔵野線全体の混雑に関する情報はないのでしょうか。
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