315系統一後の中央線名古屋地区のダイヤを探る

記事上部注釈
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315系電車に統一された中央線名古屋地区。315系の高性能を活かしたダイヤに変革します。そんなダイヤを探りました。

写真1. 名古屋に停車中の315系電車

中央線名古屋地区の変遷

写真2. 千種に停車中の211系と313系の併結10両編成(2022年に撮影)

1980年代から中央線名古屋地区は「短編成を組み合わせ、その時間帯に合わせた輸送力を確保する」というやりかたを採用してきました。朝は10両編成、日中は最短3両編成、夕方は6~10両編成という時期もありました。

これを見直したのは2008年です。日中時間帯の3両編成を原則廃絶(愛知環状線経由岡崎直通の1往復とセントラルライナーのみ残存)し、日中時間帯を4~6両(一部は7両や8両)に増強しました。さらに2012年ダイヤ改正で7両編成をなくしました。このときは夕方の7両編成を6両編成に減車するかわりに、10両編成に増強するなどややチグハグな面が見られました。これは、8両編成にすると朝の10両編成を組めないことが多く(増結用2両編成は少なかった)、7両編成を組むことで輸送力を調整していたことができなくなったという負の側面が露呈されていたことになります。

このように、3両編成(本当になくなったのは2013年)や7両編成の廃絶などの多少の合理化が進んだものの、2両編成、3両編成、4両編成を組み合わせ、4両編成、6両編成、8両編成、10両編成を組成していたのが近年までの中央線名古屋地区の実態でした。

ところで、(私の印象ですが)近年は機械を導入する費用よりも人間を採用するコストのほうが高くつく印象があります。他方で時間帯で編成両数を変えるためは増解結が必要で、それには人手がかかります。また、短編成であれば運転台付き車両を多く導入する必要があり、いうほどコストは安くなりません。

このようなことがあり、中央線名古屋地区は新車を導入する際に(比較的新しい313系電車を含めて置き換え)、新形式の8両編成に統一したのでした。実際には新形式の315系電車が投入されてすぐの2022年3月ダイヤ改正で8両編成に統一し、2023年10月に本当に315系に統一されました。多様性が特徴だった中央線名古屋地区は、1年半で特急以外は全列車同一形式の8両編成に統一されたのです。

ここまでまとめると以下の通りです。

  1. 日中時間帯の短編成高頻度化を実現するために、日中の3両編成~朝夕の10両編成まで編成長を細かく調整していた時代(~2008年)
  2. 日中時間帯の3両編成を増強し、4両編成~10両編成で細かく調整していた時代(2008年~2012年)
  3. 7両編成を6両~10両に置換し、4両編成、6両編成、8両編成、10両編成の4種の時代(2012年~2022年、ただし2013年まではわずかに3両編成は残っていた)
  4. 暫定的に8両編成に統一し、編成組成はいくつかパターンがあった時期(2022年~2023年)
  5. 315系8両編成に統一された時期(2023年10月~)

315系電車は130km/h運転が可能な形式です。また、従来より特急が130km/h運転していました。そのため、従来の110km/h運転を前提としたダイヤから、130km/h運転を前提としたダイヤに変更することが可能です。2024年3月ダイヤ改正ではこのような前提でなされました。

2024年3月ダイヤ改正での中央線名古屋地区の変更点

写真3. 2形式併結の6両編成は歴史のエピソードに消えた(2022年に矢田川橋りょうで撮影)

ここまでダイヤ改正の前提条件をまとめました。それを前提にダイヤ改正の詳細を記します。

ダイヤ改正の概要

中央線名古屋地区に関する内容を抜粋すると以下の通りです。

中央線では、315系統一により、所要時間を短縮します。
中央線では、名古屋~中津川間の快速・普通列車を315系に統一したことにより、最高速度を
130㎞/hに引き上げ所要時間を短縮します。

中央線の昼間時間帯の快速列車をすべて新守山、神領に停車させます 。
中央線では、昼間時間帯の快速列車をすべて新守山と神領に停車させ、「区間快速」として運転します。なお、区間快速が運転する時間帯は名古屋~高蔵寺間の普通列車を1時間あたり最大2本削減します。

JR東海ニュースリリース(2024年3月ダイヤ改正について)

簡単にいうと、スピードアップと日中時間帯の減便です。

名古屋駅発車時刻の比較

減便基調のダイヤ改正か、増発基調のダイヤ改正かを確認するために、名古屋駅発車時刻をダイヤ改正前後で比較しました(表1)。

表1. 名古屋発車時刻の新旧比較

日中時間帯の減便のほかに目立った減便はなく、明らかな時刻変更もありません。8:02発の快速は普通に変更されていますが、多治見での2分停車を1分停車にするなどの努力もあってか、多治見着時点では4分の所要時間増加ですが、中津川到着は1分しか遅くなっていません。

夕方の普通瀬戸口行きが毎時01分発から00分発に変更されています。神領までの所要時間は変わっておらず、中央線の間隔適正化(8分間隔、6分間隔から7分間隔、7分間隔)を重点的に考えた格好です。なお、単線の愛知環状鉄道線内の都合か、瀬戸口到着はそのままであり、瀬戸口までの所要時間は1分増加しています。

日中時間帯のダイヤ解析

今回の焦点となった日中時間帯のダイヤについて簡単に解析します。

  • 特急:毎時1本(名古屋-長野)
  • 区間快速:毎時3本(名古屋-中津川2本、名古屋-瑞浪1本)
  • 普通:毎時3本(名古屋-高蔵寺1本、名古屋-多治見2本)

従来の平均7.5分間隔(快速毎時3本、普通毎時5本)から平均10分間隔に変更し、そのぶん名古屋-高蔵寺の普通を削減しました。これだと名古屋近郊の快速通過駅で20分のダイヤホールが開くので、区間快速と称し、快速をこれら2駅(新守山と神領)に停車させた格好です。高蔵寺以北の快速通過駅はもともと毎時2本だったので、ここは従前どおりです。

快速は従来は約20分間隔、中津川行きはそのうち2本のみでしたから、もともと中津川まで向かう快速は等間隔ではありません。今回は名古屋発02分が瑞浪行き、22分と42分が中津川行きとし、42分発が高蔵寺で特急に抜かれます。このため、高蔵寺以遠では快速どうしが27分開き、高蔵寺以遠では中津川行きがほぼ30分間隔になります。上りは多治見で待避し、同じように中津川発断面でほぼ30分間隔です。

ただし、下りの待避駅の高蔵寺はやや近すぎで、上りの多治見での待避時間(8分のロスタイム)は無駄になっているように見えます。下りは多治見まで逃げ切れますでしょうし、上りも土岐市に変更することも可能でした。可能であれば、特急を待つ区間快速は中津川発着でなく瑞浪発着として、遠方との所要時間を伸ばさないように工夫すべきでした。

なお、普通の待避駅を新守山とし、ここでの待避時間を適正化することを重点を置いたダイヤなのでしょう。

次に、所要時間の変化を解析します。ここでは、待避なし普通の名古屋-多治見、待避なし速達列車の名古屋-中津川、待避あり速達列車の名古屋-中津川を特定の1本で比較します。

case1. 待避なし普通

  1. (待避なし普通下り、改正前)名古屋11:09→多治見11:53
  2. (待避なし普通下り、改正後)名古屋11:12→多治見11:55
  3. (待避なし普通上り、改正前)多治見11:45→名古屋12:28
  4. (待避なし普通上り、改正前)多治見11:44→名古屋12:26

公平を期すために休日のほぼ同じ時刻で比べましたが、上下ともに1分スピードアップしています。

case2. 待避あり速達列車

  1. (待避あり快速下り、改正前)名古屋11:45→中津川13:08
  2. (待避あり区間快速下り、改正後)名古屋11:42→中津川13:05
  3. (待避あり快速上り、改正前)中津川11:49→名古屋13:13
  4. (待避あり区間快速上り、改正後)中津川11:51→名古屋13:16

ダイヤ改正前後で所要時間は下りは維持、上りは1分増加です。上りの中津川から多治見まで1分繰り下げ、多治見での特急待ち時間を1分短縮すれば、区間快速化による所要時間増加0分と良好なシナリオとなりました。

case3. 待避なし速達列車

  1. (待避なし快速下り、改正前)名古屋11:24→中津川11:40
  2. (待避なし区間快速下り、改正後)名古屋11:22→中津川11:38
  3. (待避なし快速上り、改正前)中津川11:49→名古屋13:13
  4. (待避なし区間快速上り、改正後)中津川12:51→名古屋13:16

ダイヤ改正前後で所要時間は下りは維持、上りは1分増加です。

区間快速化による所要時間増加は最小限におさえ(名古屋-多治見で1分程度)、普通は1分減少と、全体的に停車駅増加によるデメリットは最小限におさえたダイヤです。8両編成化やそれによる減便こそあれど、等間隔化や所要時間の増加は最小限と、減便のデメリットを感じさせない完成度の高いダイヤに見えました。JR東海さんはこのあたりはしっかりしている印象があります。

所要時間の比較

朝夕は軽微な運転時刻変更こそあれど、ダイヤの骨格は守られています。とりわけ夕方は名古屋発で17時台から20時台まで20分に1本の快速、20分に1本の普通多治見行き、20分に1本の普通高蔵寺行き(毎時1本は愛知環状線直通瀬戸口行きだが、中央線的には高蔵寺行きと同等)という安定感のあるダイヤを維持しています。

では、所要時間はどうでしょうか。朝の上りの快速普通、夕方の下りの快速普通で比べます。

case1. 朝の上りの比較

中津川始発で名古屋を8:30ごろに着く快速で比較します。

  1. (改正前)中津川6:59→多治見7:40→千種8:12→名古屋8:26
  2. (改正後)中津川7:02→多治見7:43→千種8:13→名古屋8:26
  3. (参考、22年改正前)中津川7:00→多治見7:43→千種8:12→名古屋8:24

2022年ダイヤ改正で所要時間が増加した列車ですが(増発したため)、所要時間はもとに戻っています。金山→名古屋で時間を要する列車ですが、その影響を排除するために千種までの所要時間も記しました。

名古屋を8:30ごろに着く普通で比較します。

  1. (改正前)多治見7:45→千種8:21→名古屋8:34
  2. (改正後)多治見7:46→千種8:22→名古屋8:34
  3. (参考、22年改正前)多治見7:48→千種8:22→名古屋8:34

改正前より1分スピードアップしていますが、22年ダイヤ改正前までは復元されていません。過密ダイヤ化による影響を排除するほどまではスピードアップしていないということです。もともと中央線名古屋地区は「列車」を運転するための設備であり、(近隣でいう)名鉄のように「電車」を運転させる設備ではなく、運転間隔を縮めるのは難しいのでしょう。

case2. 夕方下りでの比較

名古屋を18時すぎに発車する快速と普通で比較します。

  1. (改正前)名古屋18:07→千種18:18→多治見18:44→中津川19:25
  2. (改正後)名古屋18:07→千種18:18→多治見18:43→中津川19:22
  3. (参考、22年改正前)名古屋18:07→千種18:17→多治見18:44→中津川19:24

2022年ダイヤ改正で微妙にスピードダウンしていますが、今回はそれ以上にスピードアップし、22年ダイヤ改正以前よりもスピードアップしました。

名古屋を18時すぎに発車する無待避の普通でも比較します。

  1. (改正前)名古屋18:13→千種18:24→多治見18:57
  2. (改正後)名古屋18:13→千種18:24→多治見18:56
  3. (参考、22年改正前)名古屋18:13→千種18:23→多治見18:55

千種から多治見までの所要時間は32分ともとに戻りました。ただし、近年の停車時間増加や余裕時間増加の傾向を取り入れると、車両だけのスピードアップには限界があるのかもしれません。

中央線名古屋地区のダイヤを眺めてみて

写真4. 315系が走る様子(特急しなのから撮影)

従来から続いた多車種、多編成の中央線名古屋地区。2023年10月に単一車種、単一両数に統一され、2024年3月にはその真価が発揮されます。

このダイヤ改正で日中時間帯の減便や停車駅増加という側面もあります。これに対し、JR東海は等間隔化や所要時間の原則維持で、そのデメリットを最小限にするという策を取りました。また、朝夕はわずかながらスピードアップし、新型車両統一の正の面も見せています。

これからも合理化が求められる場面があるでしょう。それは仕方ありません。その場合は等間隔化や所要時間の短縮などによって、極力利便性を維持する努力を欠かさないでもらいたいものです。

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