小田急新ダイヤの混雑状況(夕方、現地調査、代々木上原)

比較的余裕のある唐木田快速急行
写真1. 比較的余裕のある唐木田行きの快速急行

2018年に「新ダイヤ」がスタートした小田急。夕方時間帯には唐木田行きの快速急行が登場したり、従来の千代田線からの多摩線直通急行が伊勢原行きになったりと、変化が目立ちます。全体的に増発されているので、混雑が激化することはないでしょう。それでも、唐木田行きの快速急行の前後14分が町田方面への速達列車がないなど、気になる箇所があります。実際の混雑状況はどうなのでしょう?ちゃんと均等な混雑になっているのでしょうか?実際の混雑状況を確認しましたので、報告いたします。

こちらもチェック!関連リンク

日中時間帯の小田急の混雑調査(代々木上原-東北沢)
日中時間帯の混雑状況も調べています。新ダイヤ初日のワクワク感も伝わるでしょうか?

小田急の混雑状況(複々線化後新ダイヤ、朝ラッシュ時現場調査)
朝ラッシュ時間帯の混雑状況も調べています。新ダイヤが定着した晩秋に調査していますので、「日常」の姿を収録できています(ファンらしき人は1人も見かけませんでした)。

小田急新ダイヤの解析~ダイヤ改正の意図は?変化点は?
この新ダイヤの意図を探っています。当然、夕方のダイヤの解析を行っています。本記事の参考になると思います。

小田急の夕方混雑状況の要点

以下で詳細な分析をしますが、(分析を読み気がしない人のために)先に結論をまとめると以下の通りです。

・混雑度合いは快速急行が厳しく、急行、準急、各駅停車の順にゆるくなる
町田を通る快速急行はおおむねドア部分が圧迫させる混雑
前よりの車両はやや混雑がゆるい
→新宿で出口から遠いという立地のためでしょう
・快速急行といえども唐木田行きはドア部分の圧迫は認められない
→新百合ケ丘で町田方面の各駅停車(なり準急)に接続するので快速急行唐木田行き穴場的な列車、急行よりも空いている

実際の混雑状況

今回は、代々木上原発車時点での混雑状況を確認しました。最混雑区間は下北沢-世田谷代田ですが、下北沢だと観察が難しいこと、そして代々木上原時点でおおかたが決まることを考慮しました。

代々木上原発車時点での生データ

生データを示します(表1)。

表1. 夕方時間帯の代々木上原発車時点の混雑状況

18.4 代々木上原夕方下り混雑

※千代田線内で列車が遅れており、その影響で一部の列車が遅れていました。

表2 .混雑ポイントの概要

乗車ポイントの概要

調査中に気づいたこと

調査中に気づいたことを記しましょう。

各駅停車から速達列車へののりかえ

新宿からの各駅停車がやってきたときのことです。代々木上原で各駅停車を降りて、次の速達列車を待つ人が見られました。新宿からわざわざ各駅停車に乗ってから代々木上原で乗りかえるようなことはしないでしょう。また、近距離利用の人は代々木上原でわざわざ急行にのりかえることをしないでしょう。つまり、南新宿、参宮橋、代々木八幡から長距離移動する人がいることを意味します。これは、南新宿、参宮橋、代々木八幡付近の職場からある程度離れた場所にある自宅に帰宅する層がそれなりに存在することを意味します。

先着列車の案内がない

代々木上原で列車を観察していると、駅員が先着放送をしていませんでした。これは調査日に列車が遅れていたこともあるでしょうが、複々線であるがゆえに列車の順序がはっきりと断定できないことがあったのでしょう。登戸まで向かうならば速達列車が先着ということがわかりますし、近い駅はそもそも速達列車が停車しないので、先着案内がないことが大きなデメリットとなることはないでしょう。

先発であってものりかえない

千代田線内遅れの影響で、急行小田原行きと急行伊勢原行きがホーム両面に並びました(写真2)。

千代田線からの急行と新宿発の急行が並ぶ

写真2. 急行が並ぶ

このとき、千代田線からの急行が先発しました(先に入線していた急行小田原行きを先発させれば良いのに…)が、急行小田原行きから千代田線からの急行に乗りかえる人はそこまでいませんでした。所要時間の差は2分程度と読んでいて乗りかえるほどのものではないと判断したのでしょう。

調査結果の分析

この日は列車が遅れていたため、前列車間隔がいつもと異なります。しかし、新宿発時点ではそこまで間隔が乱れていなかったこと、千代田線からの列車が同様に遅れていたことから、混雑の傾向はいつも通りと仮定します。

種別ごとの傾向

まず、種別ごとの混雑状況を集計しましょう。混雑ポイントを混雑率に換算してから、算術平均を求めます(表2)。

表2. 代々木上原発車時点での混雑状況

18.4 代々木上原下り混雑まとめ

予想通りというか、快速急行が比較的混雑しています。これは3本に1本ある唐木田快速急行も含めた数値ですので、他の快速急行の混雑はこれ以上のものがあります。急行もそれなりに混雑しています。準急は実質的には「経堂対策」列車といえるのか、比較的余裕がありました。現在は夕方ラッシュ時になると、新宿から経堂への速達列車は存在しません。現在のダイヤでは新宿発着の急行と、千代田線からの準急が連絡しています。この接続は30分に2回あり、この接続を活用して、新宿から経堂への乗車チャンネルを確保しているともいえます。各駅停車はさらに空いていました。全種別の平均乗車率は96%でした。

現在は新宿発着の各駅停車は8両編成ですが、代々木八幡のホーム延伸工事が行われています。これが完成した暁には新宿発着の各駅停車も10両編成にできます。各駅停車の乗車率は低いので、各駅停車を10両編成するかわりに毎時8本から毎時6本に減便することも考えられます。余った毎時2本(30分間隔)に快速急行を新たに設定することも1つの手です。

唐木田快速急行の存在

予想通りといえますが、唐木田行きの快速急行は比較的空いていました。この時間帯の急行・快速急行で唯一120ポイント(吊革が全て埋まっていない混雑状況)が存在していました。やはり町田に向かわない速達列車は空いているのです。新百合ケ丘で町田方面に乗り換えられることが定着すれば、もう少し混雑が均等になるかもしれません。ただし、京王への対抗策としてあえて唐木田行きの快速急行を空かせたのかもしれません。これで混雑した京王から(比較的)空いている小田急へのシフトを狙うという意図です。町田方面であれば、確実に着席できる特急があるのです。

新百合ケ丘のホーム構造は、速達列車から多摩線各駅停車と小田原線各駅停車の双方に同一ホームで接続できない構造です。これを1番ホームが小田原線の急行用、2番ホームが小田原線の各駅停車用、3番ホームが多摩線用として、2番ホームが両面で乗り降り可能な構造であれば良かったのです(参考:写真3)。

普通電車が通路となって乗りかえられる

写真3. 中線の普通を通って乗りかえられる例(阪神尼崎)

この快速急行をはさんで13分間も町田方面への先着列車が存在しません(18:31と18:44の間)。この13分のダイヤホール後の快速急行(18:44発)の混雑が気になっていました。しかし、対となる快速急行(18:29発)と混雑状態はそこまで差はありません。続行の急行がある程度の乗客を吸収していること、唐木田行きの快速急行が町田や相模大野への乗客も運んでいるためでしょう。また、18:44発の急行が藤沢行きで、奥が浅い(藤沢に向かうならJR利用が多いでしょうし、田園都市線経由で帰宅する人も多いため)がゆえにあまり利用されないこともあるのかもしれません。

千代田線からの急行

所定ダイヤでは向ヶ丘遊園で快速急行を待ち合わせします。そのため、空いていると予想しました。その予想に反して、千代田線からの急行はかなりの混雑が観測されました。この要因として、以下のことが考えられます。

・千代田線から急行停車駅まで乗りかえなしで帰宅できるために狙い乗車していること
・快速急行に乗っても2分程度しか早く着かないこと
・追い抜かされる快速急行が江ノ島線に向かうので、本厚木方面に向かうにはこの急行に乗るしかないこと
・何より快速急行が混雑していること

また、この日は快速急行に抜かされないことがわかり、当該の急行から降りなかったこともあるでしょう。追い抜く快速急行と行先が異なるようにしたことなど、うまく考えたものです。

夕方の小田急の混雑調査のまとめ

速達列車どうしを比較すると、そこまで混雑に差が生じていませんでした。あえていうと、快速急行唐木田行きは比較的ゆとりがありました。それでも巧みに行先を組み合わせて、とんでもなく混んでいる列車を生じさせていない(とても混雑しそうな18:44発は小田原行きでなく藤沢行きにして、混雑のピークを避けている)ことを認識できました。

一方で、快速急行と各駅停車で混雑に大きな差が生じていたことも事実です。新宿発着の各駅停車については、10両編成にすることと引き換えに毎時2本減便することもじゅうぶんに可能でしょう。そしてそのぶんを快速急行に振り替えることで、混雑の激しい快速急行の混雑を和らげるのです。そこで産まれた余裕で急行を経堂に停車させることも1つの手でしょう。これは、現在の(おおむね)15分サイクルから(おおむね)10分サイクルに変更する必要があります。このダイヤ案については、有識者に任せましょう。

こちらもチェック!関連リンク

日中時間帯の小田急の混雑調査(代々木上原-東北沢)
日中時間帯の混雑状況も調べています。新ダイヤ初日のワクワク感も伝わるでしょうか?

小田急の混雑状況(複々線化後新ダイヤ、朝ラッシュ時現場調査)
朝ラッシュ時間帯の混雑状況も調べています。新ダイヤが定着した晩秋に調査していますので、「日常」の姿を収録できています(ファンらしき人は1人も見かけませんでした)。

小田急新ダイヤの解析~ダイヤ改正の意図は?変化点は?
この新ダイヤの意図を探っています。当然、夕方のダイヤの解析を行っています。本記事の参考になると思います。

小田急小田原線の混雑基本情報

ここまで現場での調査という「狭くて深い」内容を示しました。では、基本的な混雑データなどの「広くて浅い」情報はないのでしょうか。そのような声にお応えして、以下のページを作成いたしました。

小田急線(混雑基本データ)

スポンサーリンク

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする

コメント

  1. GK より:

    >これを1番ホームが小田原線の急行用、2番ホームが小田原線の各駅停車用、3番ホームが多摩線用として、2番ホームが両面で乗り降り可能な構造であれば良かったのです。

    私もそのような形態を考えたことがありますが、片側2面3線にする場合は仰るようなホームの使い方ではあまりうまく機能せず、急行用のホームを両面にして柿生方面にも五月台方面にも乗り換えられるようにする形態のほうが有機的です。

    ただし小田急の場合そのようにしてしまうと新百合ヶ丘を通過するロマンスカーが駅構内を高速通過できなくなるという弊害が生じてしまいます。
    また、現在新百合ヶ丘駅は複線区間内にありますので仮にこのように改良してもあまり問題ないですが、もし複々線区間が新百合ヶ丘まで延伸された場合は平面交差が発生し駅構内で頻繁に線路横断が発生することになりダイヤ上のネックになります。

    阪神尼崎や阪急西宮北口のように全列車が必ず停車する駅であれば、中間駅で両面ホームを導入しても機能するのです。

    通過列車の存在する駅では導入に問題が多いことはきちんと考慮しなくてはならないと思います。

  2. tc1151234 より:

    GKさま、コメントありがとうございます。確かに、2番ホームを速達列車が使用するのも手でしょう。こうすれば、利用客の多い速達列車から柿生方面にも五月台方面にも同一ホームを利用できますし、将来的に計画されている(ただし実行されるのだろうか?)複々線区間の新百合ケ丘延長時も問題ありませんね。

    小田急の伝統的な「内側に急行線」という原則が崩れてしまいますね。この伝統は速達列車の速度を落とさないようにするという目的があると理解していますが、現状では相模大野(通過線を直進すると引上線!)や向ヶ丘遊園(通過列車は45km/hまで減速!)というデメリットのほうが大きいと考えます。今言っても遅いですが、代々木上原-登戸の複々線は外側に急行線という形態が良かったように思います。