山手線の混雑状況(朝ラッシュ時、新大久保→新宿、現場調査結果)

記事上部注釈
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山手線で最も混むとされる、内回りの新宿方面行き。実は2021年3月ダイヤ改正で本数が少し減らされています。では、実際の混雑はどうでしょうか。最混雑区間の状況を実際に確認してみました。

写真1. 新宿に着いた山手線内回り(2021年6月に撮影)

山手線内回り(新大久保→新宿)の混雑状況のまとめ

実際に朝ラッシュ時の状況を確認したところ、以下の状況でした。

・最混雑時間帯は7:46~8:45の60分間と推定される
・ただし、この間の混雑は一定ではなく、8:15~8:30ごろである
・9号車、10号車(渋谷よりの車両)が混んでいて、1号車と4号車(池袋よりの車両)が空いている

詳細なデータやその解析は以下の章で示します。

混雑調査の概要

今回の混雑調査の方法を紹介しましょう。この記事では、定点観測を行い、一定時間の全列車を対象にして各車両の混雑を目視で確認しています。これはプロも行っている調査方法です。

簡単に調査方法を紹介しましょう。一部の個人サイトでは混雑状況を書いているところもありますが、調査方法や混雑指標の言及がないのでう~んと考えてしまうところがあります。そのようなことを踏まえて、弊サイトではきちんと方法を示します(さすがー)。

弊サイトでは混雑ポイントという概念を導入しております。その概要を示します(表1)。

表1. 混雑ポイントの概要

乗車ポイントの概要

せっかくなので、120ポイント~160ポイントの様子をご覧いただきましょう(写真2-4)。いずれも個人情報を守ることを目的に、画質を落としています。

混雑ポイント120ポイント相当

写真2. 混雑ポイント120ポイントの様子(右上に私の指が写っていますね…)

混雑ポイント140ポイント相当

写真3. 混雑ポイント140ポイントの様子(右上に私の指が写っていますね…)

混雑ポイント160ポイント相当

写真4. 混雑ポイント160ポイントの様子(写真3と異なり、ドア部分が圧迫されていることがわかります)

今回は新宿到着時の混雑を確認しています。

山手線(内回り、新宿到着時点)の混雑の生データ

生データを示します(表2)。

表2. 山手線混雑状況(朝ラッシュ時、新大久保→新宿、現場調査結果、生データ)

山手線混状況(朝ラッシュ時、新大久保→新宿、現場調査結果、生データ)

※始発は池袋始発か否かを区別するために記載、行先は大崎行きか否かを区別するために記載

この時間帯の混雑率は115%程度でした。詳細なデータの解析は以下の章で行います。

山手線内回り朝ラッシュ時の混雑状況分析

写真5. 新宿に停車中の様子

上で詳細な混雑状況を述べましたが、もう少しわかりやすくするために混雑状況を分析しましょう。

時間帯別の混雑状況

一般に朝ラッシュ時は60分間の平均混雑率で表されますが、その混雑時間帯60分間で混雑は一定ではなく、10分ずらしただけで混雑が大きく異なります。そのような意味で、10分間単位での混雑の分析も重要です。7:46~8:54の約70分間について分析してみましょう。

表3. 山手線混雑状況(朝ラッシュ時、新大久保→新宿、現場調査結果、10分間隔層別)

山手線混雑状況(朝ラッシュ時、新大久保→新宿、現場調査結果、10分間隔層別)

ここを見ると、混雑時間帯60分間は7:46~8:45であり、その混雑率は118%です。念のため、5分ずらした時間帯(7:41~8:40)で計算してみると、その混雑率は117%です。どちらでも大差はありませんが、ここではより混んでいる7:46~8:45を採用することにしました。

7:46~8:15はダラダラと混雑率が相対的に高い状態が続き、8:16~8:25にピークを迎えます。この後の8:26~8:35にやや空いてきて、8:36以降は急激に空いてきます。実際の混雑ピークは8:16~8:30です。混雑のピークを過ぎると混雑が急激に緩和するという傾向は他の路線と変わりません。

特に、8:46以降は混雑率が100%以下と大都市のラッシュ時としては空いている部類に入ると思います。

号車ごとの混雑傾向

号車ごとの混雑を分析します(表4)。ここでは、最混雑時間帯の7:46~8:45の平均です。

表4. 山手線混雑状況(朝ラッシュ時、新大久保→新宿、現場調査結果、60分間号車別混雑状況)

山手線混雑状況(朝ラッシュ時、新大久保→新宿、現場調査結果、60分間号車別混雑状況)

・7~11号車が混んでいる
・1、2、4号車が空いている
・3、5、6号車はその中間である

非常に乱暴にまとめてしまうと、渋谷よりの車両が混雑していて、池袋よりの車両が空いています。以前のイメージでは新宿駅の東口・西口に近い車両は1号車でしたが、新宿駅の東西連絡通路が完成したことにより、以前よりも渋谷よりに階段の場所がずらされました。そのため、混雑する車両が渋谷よりなのでしょう。

また、池袋での私鉄からの乗りかえが集中する号車もこの要因でしょう。東武からの乗りかえはまんべんなく散らばっているのに対し、西武からの乗りかえは11号車よりに集中しがちな傾向にあります。そのため、池袋から新宿方面に向かう人は11号車よりに集中するのでしょう。

始発駅による違い

始発駅による違いも重要です。今回の調査対象のうち1本だけ池袋始発がありますが、当該列車は前後と比べて空いています。これは山手線に実際に乗るとわかります。内回りに乗っていると池袋で多くの乗客が降りますが、一部の乗客は乗り続けています。池袋始発ではこの乗客が乗っていません。そのため、池袋始発は大塚以遠の乗客がいないために空いているのです。

社会情勢による影響

新型肺炎ウィルスの脅威が語られたことにより、世界は感染症対策が優先されています。その影響で「在宅勤務」が急にクローズアップされてきました。新型肺炎ウィルスの脅威が語られる前の2019年の混雑率は156%とされています。今回の調査結果は118%ですから、実に24%の減少です。現実には1本減らされていますので、2019年のままの本数であれば今回の調査結果の混雑率は113%程度であり、減少幅は28%程度です。

ただし、いつまでも新型肺炎ウィルスの脅威ばかり語っているわけにはいきません。いつしかインフルエンザと同様に共存することになるでしょう。また、その際には「在宅勤務」の割合が下がり、「出社勤務」の割合が増えることになるでしょう。その割合がどの程度になるかは私の脳では計算できませんが、おおよそ2019年の「出社勤務」が100%とすると、「在宅勤務」は85%となりましょう。おおよそ、この調査時と2019年の調査時の中間値となりましょう。

混雑調査結果からダイヤを考える

写真6. 山手線発車から中央線各駅停車到着までは一瞬の静けさが訪れる

今回の混雑調査結果では混雑率118%でした。また、運転間隔は2分50秒です(1周の所要時間68分から割るとちょうど割り切れる)。ある程度運転間隔が開いていることもあり、新宿進入時はスムーズでした。ところで、新宿停車時間がやや長めに感じました。10秒程度は短縮できそうです。山手線内回りの運転間隔は新宿の停車時間に依存するとされますから、これで2分40秒間隔も運転上問題ないでしょう。

一方、ホームドアが開く際のロスタイムが2秒程度あり、この点も気になります。もしも山手線全駅でこのロスタイム2秒を削減できれば、(全30駅で)1分の所要時間短縮です。つまり、1周の所要時間は67分が可能です。そして、最高速度を100km/hとすれば、もう少し余裕は発生しそうですが、これを所要時間短縮に充当するのも現実的ではありません。

ともかく、1周の所要時間を68分から67分に変更すると、現在の2分50秒間隔を基本としつつ、6か所ぶんを2分40秒とすることが可能です。現在、8:15~8:30が最ピークですから、そこを2分40秒間隔にするのが良さそうです。調査日の混雑率が125%程度ですから、これが118%に緩和します。一部の「在宅勤務」の「出社勤務」に戻されても、混雑率は140%程度に抑えられます。逆にいうと、新型肺炎ウィルスの脅威が語られなくなり、「通常の病気」として共存した場合には混雑率が150%程度になってしまいます。これを防ぐには、最ピーク時の運転間隔を10秒でも短縮することが必要です。

可能であれば、2021年ダイヤ改正前と同様に1運用増やしてもらいたいです。すると、2分40秒間隔を基本としつつ、わずかに2分50秒間隔にすることが可能です。本来ならばこのようなことを考えるべきでしょう。

山手線混雑基本データ

山手線の混雑に関する基本的データを集めました。

山手線(混雑基本データ)

このページでは山手線の混雑状況について基本的なデータをまとめています。また、私が実際に現場で調査した結果へのリンクも記しています。

また、混雑に関する一般的な傾向をまとめました。

電車の混雑の一般的な傾向

多くの通勤電車は朝ラッシュ時に混んでいます。多くの現場で調査した結果からみられる一般的な傾向をまとめました。
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