オーストリアのブレゲンツとスイスのチューリッヒ。両者はミュンヘンとチューリッヒを結ぶ幹線上にあり、それなりの利便性が確保されています。そんな両都市を国際列車で移動しました。
写真1. チューリッヒ中央駅に着いたEC
復習:ブレゲンツとチューリッヒの移動
まず、ブレゲンツとチューリッヒを結ぶ列車について紹介します。
- 所要時間:1時間30分程度
- 本数:1日6往復(一部1日7往復)
- 運転間隔:2時間間隔、一部に4時間間隔あり
図1. ブレゲンツとチューリッヒの位置関係(googleマップより引用)
ブレゲンツとチューリッヒの位置関係を示しました(図1)。この間をECは1時間半足らずで結びます。昔はこの区間は1日4往復でした(2016年12月ダイヤ)が、ドイツ国内の電化やリンダウの経由駅の移設などがあり、今や1日6往復です。2023年時点でのミュンヘンとチューリッヒの時刻を示します(表1、表2)。
補足欧州では国内列車の特急相当をIC(インターシティ)、異なる国を結ぶ特急相当をEC(ユーロシティ)と呼ぶことが多いです。高速列車は別のブランド名(ICEやTGVなど)で呼ばれます。
表1. ミュンヘン-チューリッヒの時刻表
ミュンヘン | ブレゲンツ | チューリッヒ | 運転日 |
---|---|---|---|
655 | 900 | 1027 | |
855 | 1100 | 1227 | |
1055 | 1300 | 1427 | 日曜 |
1255 | 1500 | 1627 | |
1455 | 1700 | 1827 | |
1655 | 1900 | 2027 | |
1855 | 2100 | 2227 |
表2. チューリッヒ-ミュンヘンの時刻表
チューリッヒ | ブレゲンツ | ミュンヘン | 運転日 |
---|---|---|---|
733 | 902 | 1104 | |
933 | 1102 | 1304 | |
1133 | 1302 | 1504 | |
1333 | 1502 | 1704 | |
1533 | 1702 | 1904 | 金曜 |
1733 | 1902 | 2104 | |
1933 | 2102 | 2304 |
- チューリッヒ=チューリッヒ中央
- ミュンヘン=ミュンヘン中央
- 運転日に記載のない列車は原則毎日運転
現在のような運転本数になり、スピードアップしたのは2020年12月ダイヤ改正からです。これまで4時間20分、1日4往復体制が3時間30分、1日6往復体制となったのです(2022年12月ダイヤ改正で曜日限定で7往復体制に増発された)。
とはいえ、現在でも4時間のダイヤホールが存在し、手放しで称賛される運行体系ではありません。通年で1日7往復、終日2時間間隔の実現は最低限のマナーであり、可能であれば現在の初発前にブレゲンツ始発を、終列車後にブレゲンツ行きを増発するとさらに良いでしょう!
さて、これほど近いほうのチューリッヒとブレゲンツ。他には行きかたはないのでしょうか。実は、チューリッヒとザンクト・マルグレーテンは毎時1本のIRが運転され、ザンクト・マルグレーテンとブレゲンツは毎時1~2本のローカル列車が運転されています。この両者を乗りつぐことで、チューリッヒとブレゲンツの乗車チャンスが確保されています。例を示しました。
- ブレゲンツ11:47→ザンクト・マルグレーテン12:04/12:13→チューリッヒ13:51
- チューリッヒ12:09→ザンクト・マルグレーテン13:47/13:55→ブレゲンツ14:10
ただし、この経路は所要時間が30分以上余計にかかるので、乗り遅れた場合の保険程度にご認識ください。
ここまで詳細に解説しました。公式サイトから予約できると思いますが、日本語で予約できないことに不安を感じる人もいるかもしれません。下記のサイトであれば、日本語で予約できるので安心です。
Omio:ヨーロッパ鉄道旅行交通予約サイト
また、その予約にはクレジットカードが便利です。
個人的にはエポスカード がおすすめです。海外旅行に使えるカード:エポスカードで詳細を紹介しています。
(参考)図1. スイスの長距離ネットワーク(公式サイトより引用、リンクをクリックするとスイス国鉄サイトからご自身の端末にそのままダウンロードされます)
(参考)図2. ドイツの長距離列車網(図の下のほうの88番が当該の系統です)
ブレゲンツからチューリッヒまでの列車旅
さて、実際に乗ってみましょう!私はユーレイルパスグローバルパスを選択しましたが、今やモバイルで買う時代です(現地で窓口に並ばずに使えるのが使い勝手が良いと思います)。それには、インターネット環境を整えるのが必須です。海外WiFiレンタル【WiFiBOX】などのサービスを利用するのが良い選択肢です。
写真2. チューリッヒ行きは4番線から発車
チューリッヒ行きは4番線から発車します(写真2)。
写真3. ブレゲンツ駅の表示
ブレゲンツ駅の表示です(写真3)。1つの番線に来るのが1時間に1本とは日本の地方都市レベルです。
写真4. チューリッヒ中央駅行きがやってきた
ブレゲンツにチューリッヒ中央駅行きがやってきました(写真4)。スイス国鉄の振り子電車です。
写真5. 1等車に乗りこむ
1等車に乗りこみます(写真5)。このときは多くの乗客が乗っていたので、車内を撮影できませんでした。1等車であっても席がほとんど埋まっていました。スイス国内で考えられないことです(私が乗った長距離列車はみんなある程度の空席がありました)。
写真6. 車内の様子
車内の様子です(写真6)。多くの乗客が降りたチューリッヒ中央駅で撮影しました。スイス国鉄の車両としては珍しく、向かい合わせでない席が多いです。
写真7. 座席視点から
座席視点から車内を撮影しました(写真7)。
写真8. 向かい合わせの席はテーブルが付いている
ブレゲンツ時点でかろうじて撮影した1枚です(写真8)。車内がかなり混んでいることがわかります。ベルリン中央駅のカウンターで座席を手配して良かった!
写真9. 出入口もおしゃれ
出入口もおしゃれです(写真9)。
写真10. 食堂車は満席
頼みの綱、食堂車も満席です(写真10)。
写真11. ブレゲンツを発車!
ブレゲンツを発車しました(写真11)。緑が美しい!
写真12. のどかな風景を走る
のどかな風景を走ります(写真12)。
写真13. のどかな風景を走る
のどかな風景を走ります(写真13)。
写真14. ライン川を渡る
ライン川を渡ります(写真14)。ライン川を境にオーストリアからスイスに入ります。といっても、オーストリアもスイス(このあたり)はドイツ語圏ですから、そこまで変わった感じはありません。
写真15. ザンクト・マルグレーテンに停車!
ザンクト・マルグレーテンに停車します(写真15)。ここからチューリッヒ方面は毎時1本のIRが加わります。
写真16. 湖が見える
湖が見えます(写真16)。見える時間はあまり長くありませんが…。
写真17. ボーデン湖沿いを走行中
ボーデン湖沿いを走行中です(写真17)。
写真18. ロールシャハを通過!
ロールシャハを通過します(写真18)。目の前に停車していたのは振り子電車を使ったICです。このICはチューリッヒからベルンを経由しない東西幹線を通り、ジュネーブまで向かいます。ドイツ・オーストリア国境近くの東の駅から、フランス国境近くの西の駅まで毎時1本が運転されているのもまた興味深いです(実際には各区間の本数を確保することと、主要駅での折り返しを省略する意味合いが強いと思いますが)。
写真19. ボーデン湖沿いの線路が分岐していく
ボーデン湖沿いの線路が分岐します(写真19)。
写真20. マンションがある
マンションがあります(写真20)。スイスというと山小屋風の家が思い浮かびますが、スイス北部はスイスのなかでも人が多い地域で、このような建物が多いのです。2019年にスイスで初めて列車に乗ったときに「スイスの車窓はつまらないものだ」と思ったものです(その感想はすぐに裏切られましたが)。
写真21. ボーデン湖から遠ざかる
ボーデン湖から遠ざかります(写真21)。
写真22. のどかな風景を走る
のどかな風景を走ります(写真22)。
写真23. ザンクト・ガレンに到着!
ザンクト・ガレンに停車します(写真23)。スイス第7の都市です。ここからチューリッヒまで毎時4本の速達列車が運転されます。
写真24. 渓谷を走る
渓谷を走ります(写真24)。この起伏の激しさはスイスらしい風景のように見えます。
写真25. のどかな風景を走る
スイスのなかでは人口の多いほうですが、スイスです。のどかな風景が広がります(写真25)。
写真26. のどかな風景を走る
のどかな風景を走ります(写真26)。
写真27. ヴィル付近を走行中
ヴィル付近を走行中です(写真27)。ヴィルは主要駅停車タイプがとまる駅です。とはいえ、わがECは最速達列車なので、通過します。
写真28. のどかな風景を走る
のどかな風景を走ります(写真28)。
写真29. のどかな風景を走る
このようなのどかな風景を走ります(写真29)。
写真30. 住宅が増える
住宅が増えてきました(写真30)。
写真31. 線路も増えてきた
線路も増えてきました(写真31)。
写真32. 線路が多い
線路が多いです(写真32)。
写真33. ヴィンタートゥールに停車!
ヴィンタートゥールに停車します(写真33)。スイス第6の都市です。ここからチューリッヒまでさらに本数が増えます。でも、乗車チャンスは毎時2本レベルです。これはチューリッヒ中央駅での接続を考慮したものです。
写真34. のどかな風景を走る
のどかな風景を走ります(写真34)。チューリッヒまで30kmもありませんが、のどかな風景を走ります。日本の大都市よりコンパクトなのです。チューリッヒはスイス最大の都市ですが、人口は40万人に達していません。
写真35. 住宅が少し増える
住宅が少し増えてきました(写真35)。
写真36. チューリッヒ空港に到着!
チューリッヒ空港に到着しました(写真36)。向かいのホームにはコンスタンツ発のIRが停車しており、この列車到着直前に発車します。ヴィンタートゥールからチューリッヒまでこの列車とこのIRが続行運転をします。これはチューリッヒ中央駅で多くの方向からの列車をほぼ同時に到着・発車させて接続を確保するためです。
ここで車内が空きました。チューリッヒ空港やその周辺が目的地の人が降り、空港から乗る人は先行のICに乗るためでしょう。
写真37. チューリッヒ空港を発車!
チューリッヒ空港を発車しました(写真37)。このあたりは線路が多いです。多くのパターンのう回路が整備されています。
写真38. 建物が増えてきた
建物が増えてきました(写真38)。チューリッヒの市街地に近づいてきたのです。
写真39. チューリッヒに到着!
チューリッヒ中央駅に着きました(写真39)。
ブレゲンツからチューリッヒまでの国際列車に乗ってみて
今回、ブレゲンツからコンスタンツまでの国際列車に乗ってみました。かろうじてオーストリアを通ることで、ドイツ・オーストリア・スイスの3か国にまたがる国際列車です。ブレゲンツから乗る人は少なかったですが、席はかなり埋まっており、ミュンヘンとチューリッヒの流動の多さを感じました。
乗ったのは夕方にチューリッヒに到着する便で混んでいたのかもしれません。これだけ需要が多い路線であれば、終日2時間間隔を確保し、朝夕は1時間間隔で輸送力と利便性を確保することが必須と感じました。そして、国境線にかかわらず移動需要が発生する欧州のダイナミックさを改めて感じたものです。