東急東横線の混雑状況(平日朝ラッシュ時、祐天寺→中目黒)

東京と横浜を結び人気の高い東急東横線。以前は渋谷と横浜を結ぶだけの路線でしたが、現在は新宿地区にも直結します。また、将来は新横浜や相鉄にもつながり、守備範囲が広がる路線です。そのような東横線の混雑はどの程度なのでしょうか。朝ラッシュ時に一番混む区間の混雑状況を実際に現場で調べました。

東横線中目黒に到着するY500系

写真1. 中目黒で多くの乗客が日比谷線ホームに向かう

東急東横線ラッシュ時の混雑状況

以下、長い文章を読みたくない人のために、簡単に結論をまとめます。

・通勤特急がダントツに混雑していて、ドア付近のみならず車内中ほども圧迫が見られるほど混雑している
・各駅停車はマシだが、ドア付近には圧迫が見られるほどには混雑している
・一番混むのは中目黒基準で7:50~8:50であり、8:20ごろの通勤特急が混雑のピークである

混雑調査の概要

簡単に調査方法を紹介しましょう。一部の個人サイトでは混雑状況を書いているところもありますが、調査方法や混雑指標の言及がないのでう~んと考えてしまうところがあります。そのようなことを踏まえて、弊サイトではきちんと方法を示します(さすがー)。

調査区間の選定

混雑調査は最混雑区間で行うべきでしょう。東横線は、川崎市や横浜市からの乗客を都心まで運んでいます。都心方面への乗客は中目黒から地下鉄日比谷線に乗りかえます。そのため、朝ラッシュ時の調査区間は祐天寺(中目黒の1つ郊外よりの駅)→中目黒の混雑を扱うことにしました。

調査方法と調査結果

弊サイトでは混雑ポイントという概念を導入しております。その概要を示します(表1)。

表1. 混雑ポイントの概要

乗車ポイントの概要

せっかくなので、120ポイント~160ポイントの様子をご覧いただきましょう(写真2-4)。いずれも個人情報を守ることを目的に、画質を落としています。

混雑ポイント120ポイント相当

写真2. 混雑ポイント120ポイントの様子(右上に私の指が写っていますね…)

混雑ポイント140ポイント相当

写真3. 混雑ポイント140ポイントの様子(右上に私の指が写っていますね…)

混雑ポイント160ポイント相当

写真4. 混雑ポイント160ポイントの様子(写真3と異なり、ドア部分が圧迫されていることがわかります)

混雑調査結果とその分析

生データを示した後に、詳しい分析をしましょう。

混雑状況の生データ

まずは、各列車の各号車ごとの調査結果を示します(表2)。各列車の混雑率も示すことにしましょう。

表2. 東横東横線の平日朝ラッシュ時上りの混雑状況(祐天寺→中目黒)

東横線混雑状況(平日朝ラッシュ時、祐天寺→中目黒)

今回、初めて190ポイントという指標を使用しています。これは、座席前の乗客が前に倒れている(座席上の壁や窓に手を投げ出している)ため、180ポイントよりも混雑していると判断したためです。結果から述べると、最ピーク1時間の混雑率は156%でした。公式の発表は168%ですので、それなりにちゃんとした調査と考えています。調査したのが2月後半ですから、通常よりも2%程度空いている時期であることにご留意ください(※)。この補正があると私の調査結果からは160%程度となり、公式の記録とおおむね一致します。

※このあたりは3月に向けて通勤電車が空く理由に書きました。

一番混んでいるのは、8:20ごろに到着する通勤特急です。

混雑状況の分析

では、混雑状況を分析します。混雑ポイントは実は定性的評価です。定量的評価ではありません。もっと簡単にいうと、混雑ポイントは、数字と実際の乗車人数が比例関係にはありません。そのため、比例関係にある混雑率に換算して評価することにします。その後、再度混雑率に換算して定性的(わかりやすい言葉)に表現することにします。

※大手サイトを見ると、簡単に述べられていることが多いです。しかし、実際には始発駅、行先、種別、前列車間隔などで混雑がばらついています。この記事では安易に簡単に述べることはせずに、要因を詳しく分析します。

混雑ピーク時間帯の分析

私は100分調査しましたが、その中で最混雑時間帯はどこなのでしょうか。東横線は15分サイクルのパターンダイヤですので、その枠に当てはめて考えます(表3)。

表3. 時間帯ごとの混雑状況まとめ

東横線混雑状況(平日朝ラッシュ時、祐天寺→中目黒、時間帯層別)

単なる数字の羅列ではわけがわからないでしょうから、定性的な状態もまとめました。このデータを見ると中目黒着7:50~8:50の1時間が最ピーク60分とわかります。私の手元の都市交通年報(2010年度版)と一致していますので、私の考察は正しいのです!

種別ごとの混雑状況

種別ごとの混雑状況を示します(表4)。

表4. 種別ごとの混雑状況

東横線混雑状況(平日朝ラッシュ時、祐天寺→中目黒、時間帯と種別層別)

通勤特急が混雑しており、各駅停車は比較的余裕があることがわかります。とはいっても、「余裕のある」各駅停車であってもドア付近の圧迫が見られることは事実です。ましてや通勤特急になると座席前もある程度埋まり(=満員になって)きつい満員電車というのが現状です。急行はその中間です。

穴となる列車

では、ラッシュの前後も含めて全てが満員なのでしょうか。答えはNoであり、比較的混雑がましな列車があります。具体的には以下の各駅停車です。

・中目黒8:53発各駅停車渋谷行き
・中目黒9:01発各駅停車渋谷行き
・中目黒9:08発各駅停車和光市行き
・中目黒9:22発各駅停車渋谷行き

これらの電車を見たときに「空いている」と感じました。では、なぜ空いているのでしょうか。それがわからないとダイヤ改正された際に空いた電車を予想できません。最初に考えたのは渋谷行きだから空いているということです。しかし、この中には和光市行きもあります。よって、行先によって混雑に差があると考えるのは妥当ではありません。そこで、時刻表を眺めました。すると、これら4本の電車には祐天寺で後の急行なり通勤特急に抜かされるという共通点がありました。そう、祐天寺で通過待ちする各駅停車は空く傾向にあるのです。このため、ラッシュピーク1時間に祐天寺で通過待ちする各駅停車はありません。もしも通過待ちすると多くの乗客が速達列車に乗りかえてしまい、速達列車が今よりも混雑するためです。

また、ラッシュピーク時であっても、中目黒8:32発の各駅停車渋谷行きは比較的空いています。この各駅停車は中目黒で急行の待ち合わせをするために、多くの乗客が自由が丘で降りるためと推定できます。そのうえ、直前の急行が学芸大学の乗客を拾うこと、渋谷行きのため副都心線まで向かう乗客も避けることも指摘できます。他のラッシュピークの時間帯の各駅停車は急行の直後かつ渋谷行きという条件の電車はありません。この電車を新宿三丁目まで延長運転すれば、だいぶ混雑のバラつきは抑えられそうです(※)。

※調査が終わった後に中目黒から池袋まで乗車しましたが、渋谷と新宿三丁目で結構降りました。そのため、新宿三丁目まで行けば東横線からの通勤需要はおおむね満たされると推定します。

混雑状況からダイヤを考える~相鉄線からの流入を見越して

明らかに通勤特急が混雑しています。菊名と自由が丘で各駅停車と連絡する以上、これは当然です。また、現状でも混雑していますが、東急新横浜線が完成し相鉄線からの乗客が流入(直通がなくとも同一ホーム乗りかえができれば流入します)するとどうでしょう。公式には168%とされていますが、この数字が高くなることは簡単に想像できます。

ではどうすれば良いのでしょうか。答えの1つが各駅停車の一部を通勤特急に格上げすることです。各駅停車は8両編成、通勤特急は10両編成です。そのため、1本振り替えるごとに2両の輸送力増強が実現します。現在、15分の間に速達列車2本、各駅停車4本の割合ですが、それを速達列車3本、各駅停車3本とするのです。こうすれば、最ピーク1時間の間に8両の輸送力増強が実現します。たったの8両ですが、相鉄や新横浜方面からの流入の受け皿の1つにはなるでしょう。当然、8両だけでは流入する乗客の受け皿には足りませんが、メインは目黒線方面でしょうから、雀の涙程度の輸送力増強でまかなえることでしょう。

このように、人気が高くて直通予定があるために、東横線は将来も混む路線として地味に君臨することでしょう。この混雑を緩和するのが目黒線です。バイパス線として目黒線の輸送改善と地下鉄との直結を行っていた東急の先見の明には感心するものがあります。目黒線が目蒲線のままだったらと思うとゾッとしますね。

東急東横線の混雑関連のデータ

ここまで特定の駅での混雑調査結果という「狭くて深い」情報を提供してきました。では、混雑関連のデータをまとめたページのような「広くて浅い」情報を提供しているページはないのでしょうか。そのような声にお応えして、以下のページを用意いたしました。

東急東横線(混雑基本データ)

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