東北新幹線「やまびこ」号のグランクラス乗車記(上野→福島)

記事上部注釈
弊サイトでは実際に利用したサービスなどをアフィリエイトリンク付きで紹介することがあります

東北新幹線で存在感を放っているグランクラス。速達列車のはやぶさ号だけでなく、汎用的なやまびこ号にも連結されています。そんなやまびこ号でグランクラスを堪能しました。

写真1. 国内でも最高峰の車内と表現できる

復習:東北新幹線とグランクラス

まず、東北新幹線の列車名について簡単に整理します。

  • はやぶさ:最高速度320km/hの全車指定席の列車名(一部列車の一部区間は特定特急券により自由席特急券と同額で乗車可能)
  • はやて:全車指定席の列車名(一部列車の一部区間は特定特急券により自由席特急券と同額で乗車可能)
  • やまびこ:自由席付きの多停車型タイプ(運転区間が短いとなすの号と命名される)

2025年現在、はやて号は基本的に運転されませんので、あまり深く考える必要はありません。

基本的にはやぶさ号とやまびこ号の違いを知れば問題ありません。はやぶさ号は大宮-仙台ノンストップで全車指定席です。一方、やまびこ号は大宮-仙台で停車駅があり、自由席の設定があります。やまびこ号の区間運転便がなすの号です。

簡単にいうと長距離便のはやぶさ号、中距離のやまびこ号、短距離のなすの号という陣営です。このほか、秋田新幹線に向かうこまち号、山形新幹線に向かうつばさ号もありますが、東北新幹線内では連結運転をするので、ことさら意識する必要はありません。

東北新幹線には3つの等級があります。普通車、グリーン車、そしてグランクラス車です(表1)。

表1. 東北新幹線の3つの等級

普通車グリーン車グランクラス
座席指定指定席
自由席
全席指定全席指定
列数5列4列3列
連結列車全列車全列車E5系のみ
料金標準やや高額高額

いわゆるミニ新幹線を除き、東京-大宮で共有する高崎方面列車も除いた記述。

非常に簡単に書きましたが、リーズナブルな普通車やや高額なグリーン車、そして高額なグランクラスという構成です。高額な等級は本来、最速達列車であるはやぶさ号だけに連結する性質ですが、東北新幹線をE5系で統一したいという意図もあり、なすの号にもグランクラスが連結されます。

本来、グランクラスにはドリンクや食事が付きますが、乗る乗客がほとんど見込まれないなすの号にもドリンクや食事を提供すると人件費がかかります。そのため、利用率が低いと見込まれるE5系列車には食事サービスなしのグランクラスがあります。これは乗客自身が食事の有無を選択できるわけでなく、乗車列車によって食事の有無が自動で決定されます。

  • 例えば、東京9:36発、はやぶさ13号新函館北斗行きは食事付きのグランクラス
  • 例えば、東京9:40発、やまびこ55号盛岡行きは食事なしのグランクラス

すなわち、はやぶさ13号では食事なしのグランクラスサービスは選択できませんし、逆にやまびこ55号では食事付きのグランクラスサービスを選択できません。

東京から福島のグランクラス料金

では、東京地区から福島までのグランクラス料金はどの程度なのでしょうか。東京地区の3駅からの料金を示します(表2)。

表2. 東京地区から福島までの価格(通常期)

普通車指定席グリーン席グランクラス
東京9110円12770円15920円
上野8900円12560円15710円
大宮8570円12230円15380円

グランクラスは普通車指定席と比べ6810円高い価格です。福島に停車するやまびこ号は食事なしのグランクラスだけですので、結果として安くつきます。東京-福島の所要時間は1時間30分ほどですので、1時間あたり4000円~5000円の価格ということです。

グランクラスの内装

さて、グランクラスの内装はどのようなものでしょうか。

写真2. グランクラスの雰囲気

グランクラスの雰囲気です(写真2)。2列+1列の横3列配列です。この写真ではわかりにくいと思いますが、室内の照明は全て間接照明です。いいかえると、光源が見えません!

写真3. グランクラスの雰囲気

グランクラスの雰囲気を別の角度から撮影しました(写真3)。革張りの座席、ダークブラウンの仕切壁と高級感を漂わせる雰囲気です。

写真4. 座席の様子

座席の様子です(写真4)。

写真5. 座席の背面

座席の背面です(写真5)。バックレストがあり、後ろの人に気をつかうことなく、座席を倒すことができます。

写真6. 座席の操作ボタン

座席の操作ボタンがあります(写真6)。座面と背もたれが動きます。

写真7. リクライニングした状態

リクライニングした状態です(写真7)。

写真8. ひじかけにコンセントがある

ひじかけにコンセントがあります(写真8)。オーソドックスな形状で、ライフサイクルの長い鉄道車両には適切な形です(個人的にはType-C型のコンセントを好みません)。

写真9. ひじかけにテーブルが内蔵されている

ひじかけにテーブルが内蔵されています(写真9)。

写真10. テーブルを引き出した

テーブルを引き出しました(写真10)。意外と小さく、パソコン作業するには不適切です。

写真11. 床はカーペット敷き

床はカーペット敷きです(写真11)。赤色系の色相が採用されており、いかにも高級感があります。

写真12. 床にも間接照明が当てられる

その床にも間接照明が当てられています(写真12)。「床を直接照らさない」という間接照明の定義には当てはまりませんが、目線に光源が入らないという意味で間接照明と表記しました。

写真13. 窓枠の照明

窓枠にも間接照明が採用されています(写真13)。

写真14. 窓枠の間接照明

窓枠の間接照明です(写真14)。

写真15. 天井の照明

天井の照明です(写真15)。

写真16. 天井の照明

天井の照明です(写真16)。全般に暗い空間ですが、読書灯があり、それが当たっている範囲は明るいこともわかります。

写真17. 天井の照明が直接照明でないとわかる

別の角度から撮影すると、天井の照明の真下の壁が明るくなく別の場所が明るいことから、天井の照明が直接照明でないことがわかります(写真17)。

やまびこ号のグランクラスに乗る

御託はこの程度にして、実際にやまびこ号のグランクラスに乗ります。

写真18. やまびこ号が入ってきた

上野にやまびこ55号がやってきました(写真18)。仙台以南が通過駅あり、仙台以北は各駅にとまる設定です。東京でなく上野から乗るのは、特急料金210円の節約です。このようなせこい者はグランクラスにお呼びでない?そう思います。

写真19. 目立つ入口

入口から別世界の様子です(写真19)。

写真20. 特別な空間を感じる仕切扉

照明の効果もあり、特別な空間を感じさせる仕切扉です(写真20)。

写真21. 特別な空間が広がる

特別な空間が広がります(写真21)。私のほかには東京→宇都宮で1人乗っていたくらいです。土曜日の午前中下りという旅行には好都合な時間帯ですが、かなり空いている印象です。

写真22. 田端あたりの光景

上野を発車し、車内の雰囲気に圧倒されていたら、いつの間にか田端付近まで進んでいました(写真22)。このあたりは北区であり、自宅に帰る表現は「北区に帰宅」なのでしょうか。

写真23. 都区内の住宅街を走る

都区内の住宅街を走ります(写真23)。

写真24. 川を渡る

川を渡り、埼玉県に入ります(写真24)。この区間は速度は出ませんが、徐々に旅に出るという雰囲気が出ます。最高速度が130km/hに引き上げれましたが、走りを見るともう少し速度を出せそうな気がします。これは高速走行に特化した車両がゆえに感じる感想かもしれません。

写真25. 住宅街を走る

住宅街を走ります(写真25)。

写真26. 住宅街を走る

住宅街を走ります(写真26)。

写真27. 高い建物が増えてきた

高い建物が増えてきました(写真27)。

写真28. 大宮に停車!

大宮に停車します(写真28)。多くの路線との結節点とあり、埼玉県の多くから集客できる場所であるとともに、都内の西側も強みを持つ駅です。そのため、全列車が停車します。ここからわがグランクラスにも多くの乗客がやってきた…と思ったら、通り抜けて別の車両に入る乗客でした。

写真29. 大宮を発車!

大宮を発車します(写真29)。

写真30. すでに200km/hを越える

すぐに200km/hを越えました(写真30)。

写真31. 住宅街を走る

住宅街を走ります(写真31)。

写真32. 速度が落ちた

速度が落ちました(写真32)。大宮断面で6分前にはやぶさ号が走っていて、そのはやぶさ号が遅れ、追いついたのでしょうか?

写真33. 山が見えてくる

関東平野を北上するにつれて、山が見えてきました(写真33)。

写真34. ややのどかな風景になってきた

ややのどかな風景に変わってきました(写真34)。

写真35. 宇都宮付近の風景

宇都宮付近の風景です(写真35)。さすが北関東で一番の都市だけあり、建物が多いです。宇都宮に停車しましたが、わがグランクラスから1人が降りただけで乗る人はいませんでした。

やまびこ55号の東京発車は9:40、宇都宮発車は10:31とグランクラスで過ごせるのは50分程度です。(上野時点で座っていたので東京から乗っていたと仮定しても)50分に対して、5950円の支払いはちょっともったいないような気がします。まあ、このような計算をする者はグランクラスにお呼びではないということでしょう。

写真36. 宇都宮を発車!

宇都宮を発車しました(写真36)。

写真37. 徐々にのどかな風景に変わる

徐々にのどかな風景に変わってきました(写真37)。

写真38. 山が近づいてきた

山に近づいてきました(写真38)。

写真39. 那須塩原を通過!

那須塩原を通過します(写真39)。ここはもともと東那須野という駅名でしたが、近くの西那須野と黒磯で新幹線の新駅を誘致した結果、中間のここが新幹線の駅に選ばれました。そして、特急停車駅だった両駅には今や特急は停車せず、ここ那須塩原が特急/新幹線の停車駅として残っています。さらに、その那須塩原が都市名という地名にも採用されています。

東那須野駅当時にはこのようになるとは夢にも思わなかったでしょう。

写真40. ひなびた風景を走る

那須塩原は東北新幹線の関東最北端の駅です。そして、那須塩原をこえると、いよいよ東北地方に入ります。そんなことを感じさせる風景です(写真40)。

写真41. 小川を渡る

小川を渡ります(写真41)。

写真42. 都市に入る

都市に入ります(写真42)。福島県のほぼ中央に位置する郡山の中心に近づいてきたのです。

写真43. 郡山に停車!

郡山に停車します(写真43)。向かいのホームに停車しているのは、郡山どまりのなすの255号です。なすの号は2時間間隔の設定です。これでは各駅の停車本数は2時間に1本のように見えますが、2時間に1本は東京-福島を各駅に停車するやまびこ号が存在し、結果として毎時1本の乗車チャンスが確保されています。

というよりE2系がまだいたんだ!

写真44. 郡山を発車!

郡山を発車しました(写真44)。

写真45. 磐越西線が分岐する

磐越西線が分岐しました(写真45)。特急では役不足、快速だと力不足という印象があります。本当は新幹線列車が直通できれば会津若松へのシェアを奪えそうなのですが…。

写真46. 市街地が広がる

市街地が広がります(写真46)。

写真47. 雪が見える

ところにより雪が見えます(写真47)。

写真48. 雪が消えた

雪が消えました(写真48)。このときは雪はありませんでしたが、1週間後に日本全国で大雪が降りました。きっとここも雪が積もっているのでしょう。

写真49. まもなく福島

まもなく福島です(写真49)。

写真50. 向かいのホームに東京行きが入線!

やまびこ55号は12番線に入線しました。向かい側の11番線には東京行きが停車中でした。そして、山形方面からのつばさ号が入線してきました(写真50)。

写真51. やまびこ55号のドアが閉まる

そして、つばさ号からやまびこ号に乗りかえる乗客を見届け、ドアが閉まりました(写真51)。

接続待ちをしているように見え、鉄道のネットワーク性の重要性を再認識した瞬間です。確かに米沢地区から仙台地区の最速手段になり得ます。このような接続を維持するのが鉄道の競争力を維持する1つの方策です。

このように現場でないとわからないことがあるのです。

グランクラスに乗ってみて

写真52. グランクラスの座席はエンボス加工が施され、座ってもすべらない

今回は軽食なし、おもてなしなしの「設備だけのグランクラス」に乗りました。おもてなしがないということは、いいかえると接客がないことを意味します。裏を返すと、くつろいでいる最中に「接客」を受けることなく、マイペースに過ごせるということです。

最初に座席の設備を見た際に、テーブルが小さく作業をしにくいという点も気になりました。しかし、すぐにこれで問題ないことに気づきました。

グランクラスはくつろぐための空間です。くつろぐにはパソコン作業は邪魔であり、誰かがパソコン作業すると、他の人もくつろげません。したがって、テーブルを大きくしないことは、くつろぐためにあえて設置しなかったという、いわば戦略的な非設置です。個室を設置しなかったのも(グループ客が隔離されると騒がしくなり、その音が漏れることによる)くつろぎの阻害とされたのでしょう。このように、グランクラスには「引き算の美学」を感じました。

また、シートは革張りでしたが、革の表面はエンボス加工が施されており、滑らないように工夫されていました。

このようにグランクラスには「乗りたい」という内装を実現しつつ、悪い意味で目立つ意匠は存在せず、「意識しない快適さ」を意図していたように感じます。まさにJR東日本の担当者の下記のコメントが具現化された車内といえましょう。

これらの工夫が目立ってしまうのではなく、(中略)何も感じさせないことが最も重要なのである

E653系のポイント(鉄道ジャーナル1998年7月号、p44~p45より引用)

あとは自由席が満席の場合、車内で発券しグランクラスの快適さを乗客に印象付けることができれば、JR側の収益も増すことでしょう。

このようなさりげない高品質な空間のグランクラス。輸送全体のバランスもありましょうが、このようなサービスは末永く維持いただきたいものです。

スポンサーリンク

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする