スイスの首都であるベルン。首都といえども東京とは異なり、近代的なビルが立ち並ぶのではなく、古くからの市街地が広がり、世界遺産として指定されているほどです。そのような街並みを眺めました。また、アクセス情報などの実用的な情報も書いています。
写真1. 川沿いに広がる旧市街
復習:ベルンについて
多くの人はスイスの首都、ベルン。と言われてもピンとこない人が多いでしょう。そこで、ベルンの基本について復習しましょう。
ベルンの基本情報
図1. ベルンの位置(googleマップより引用)
ベルンはスイス中央部からやや北西に外れた場所にあります。スイスの人口の多くは北部に集中していますから、スイスの大都市の位置のバランス的には良いところでしょう。この地図ではわかりにくい?そうですか。別の地図を示しましょう(図2)。
図2. スイスの各都市の位置関係(wikipediaより引用)
こちらのほうがわかりやすいかもしれません。
スイスで一番人口の多い都市はチューリッヒ、次に人口の多い都市はジュネーブです。一般的にはこの2都市がスイスの首都と認識されていることでしょう。しかし、現実はベルンが首都とされています。これには多くの理由があるのでしょうが、永世中立をうたうスイスでは、国境に近い場所に首都を置くのは得策ではないという判断もあったことでしょう。
首都といえども、ベルンの人口はそう多くありません。おおよそ人口14万人です。東京近郊の調布や府中でも人口20万人を超えていますので、これらよりも少ないのです。もっとも、スイスで一番人口の多いチューリッヒであっても人口40万人で、東京近郊の町田レベルです。スイスの周囲には4つの大国(ドイツ、フランス、イタリア、オーストリア)がありますが、これらの首都いずれも人口200万人程度(ベルリンは350万人です)であることを考えると、ヨーロッパでも人口の少ない首都であることがわかります。
多くの人がご承知の通り、スイスは近代に入ってから「永世中立」を唱えています。スイスの永世中立のスタンスは「攻めてこない限り仲良く付き合うけど、攻めてきたらわかっているよな?」というものです。このような(ある意味)強硬な姿勢のおかげで2度の世界大戦に巻き込まれませんでした(余談ですが、第二次世界大戦ではスイス領空に侵入してきたどちらの陣営の爆撃機を打ち落としています)。第二次世界大戦に巻き込まれないということは、街が破壊されていないということです。また、昔から人口はそう増えていません。そのため、再開発の必要もありませんでした。これらの要因で、昔ながらの街並みが残っています。この街並みが世界遺産に登録されています。
写真2. ベルンの旧市街(arrowsで撮影)
なお、ドイツ語、フランス語、イタリア語が話されるスイスですが、ベルンではドイツ語が使われます。余談ですが、私はドイツ語の超初歩的な知識がありますので、その点は有利です。
ベルンへのアクセス
では、私たち日本人はどのようにベルンに向かえば良いのでしょうか。スイスの有名な国際空港はチューリッヒやジュネーブにあり、ベルンにはありません。ということは、チューリッヒやジュネーブからベルンまで移動する必要があります。幸いなことにジュネーブ国際空港やチューリッヒ国際空港には鉄道駅が直結しており、ここからベルンまで直通しています。(あまり知られていないことでしょうが)スイスは鉄道利用が便利な国です。そのため、直通列車の本数もある程度確保されています。チューリッヒ国際空港やジュネーブ国際空港からの鉄道アクセスについて簡単にまとめましょう。
所要時間:70分程度
系統:IC1(スイスのメイン系統)
運転間隔:60分(チューリッヒ国際空港を毎時18分、ベルンを毎時32分に発車)
運転時間:空港発は7時台~20時台、ベルン発は5時台~18時台
チューリッヒ国際空港からジュネーブ国際空港まで、チューリッヒ中心部、ベルン、ジュネーブ中心部を通るIC1系統が運転されています。この系統はチューリッヒ国際空港からベルンまできちんとした60分間隔で発車しています。細かな時刻は年々変化するのでしょうが、スイスの鉄道運営の基本は変わらないので、「きちんとした60分間隔で70分程度の所要時間で結ばれる」という事実は変わらないことでしょう。なお、別系統も加わるチューリッヒ中心部のチューリッヒ中央駅からベルン駅だと、30分間隔の乗車チャンスが確保されています。
所要時間:116分程度
系統:IC1(スイスのメイン系統)
運転間隔:60分(ジュネーブ国際空港を毎時42分、ベルンを毎時34分に発車)
運転時間:空港発は6時台~20時台、ベルン発は5時台~19時台
ジュネーブ国際空港からもベルンまでも直通しています。チューリッヒ国際空港と同じく、ベルンまできちんとした60分間隔で発車しています。細かな時刻は年々変化するのでしょうが、スイスの鉄道運営の基本は変わらないので、「きちんとした60分間隔で116分程度の所要時間で結ばれる」という事実は変わらないことでしょう。上の要約部分では省略しましたが、ジュネーブ国際空港からベルンまではIR(ICより遅い)も60分間隔で運転されています。そのため、ジュネーブからベルンまでは1時間に2回の乗車チャンスが確保されています(ただし30分間隔ではありません)。
※この区間は(途中のローザンヌからですが)実際に乗りました。時刻表などの情報や車内や車窓の雰囲気についてはローザンヌからベルンへの特急の旅(スイス、インターシティ、19年夏)をご覧ください(別ウィンドウで開きます)。
長々と記しましたが、スイスの国際空港からベルンまで列車でストレスなく移動できるということをご認識いただければじゅうぶんです。
実際に堪能する
ベルンの基本的なことをおさらいした後で、ベルンの旧市街を堪能しましょう。ベルンの旧市街へのアクセスを述べた後に、実際の情景を紹介します。
ベルンの旧市街へのアクセス
「ベルンの旧市街」と言われても、それがどこにあるのかがわからないと、行きつけません。そこで、位置やアクセスの概要を紹介しましょう。
図3. ベルン旧市街のシンボル的な存在、時計塔の位置(googleマップより引用)
旧市街のシンボル的な存在である時計塔の位置を示します(図3)。ベルン駅よりやや東側に位置しています。ベルンは前述の通り人口がそう多くないので、駅と旧市街が離れているということもありません。駅から500mも歩けば旧市街の(駅から遠いほうの)端部に達してしまいます。そのため、歩けばたどり着けます。
でも、せっかくだからトラムに乗ってみたいという人もいることでしょう。そんな人のためにトラムの乗りかたも解説しましょう。公式サイトに路線図があります。
図4. ベルンのトラムの路線図(でも公式感はありませんね)
ベルン駅から時計台(Zeitglockenturm)へはトラムで2つです。トラムのチケットの購入方法ですが、自動券売機で買えることでしょう。でも、ベルンに宿泊する限り、そのような知識は不要です。ベルンに宿泊すると無料でベルン市内の公共交通で使えるチケットをもらえます。そのようなことを考えると、ベルンの駅近くに宿泊施設を予約したほうが良いでしょう。また、私はスイストラベルパスを使っていましたので、やはり市内交通のチケットを買う意味はありませんでした。
※スイストラベルパスを使える範囲については、スイストラベルパスが利用できる路線一覧にまとめています(クリックすると別ウィンドウで開きます)。
写真3. ベルン駅近くにあるトラム乗り場
ベルン駅近くにトラム乗り場があります(写真3)。スイスでは右側通行ですので、旧市街(時計塔)トラム乗り場に向かうトラムは駅の手前側にはなく、離れたほうにあります。
写真4. トラムがやってきた
赤いトラムがやってきました(写真4)。これに乗って2つめの停留所で下車します。この近くに時計塔があります。
旧市街を楽しむ
旧市街を楽しんでみましょう!あれだこれだといううんちくも良いのでしょうが、うんちくを語るより実際にのんびり歩くことが重要です!
写真5. ベルン旧市街の象徴、時計塔
ベルン旧市街の象徴、時計塔です(写真5)。昔はここがベルンの西の端を示す場所でした。1218年から現存するかなり古い建物です。この時計塔をメインストリート沿いに東に進んでみましょう。いわば真のベルン旧市街です。
写真6. クラム通り沿いに由緒正しい建物が並ぶ
駅から旧市街を結ぶメインストリートがあります。この通りの名称はその場で変わります。時計塔の東側の「真のベルン旧市街」ではクラム通りと呼ばれます。
写真7. 泉がある
道路の中央に泉があります(写真7)。この泉は昔からあり、各家庭にとって貴重な水道がわりでした。近代以降になって「道路交通の邪魔だから」といって撤去されずに、今まで残っています。
写真8. どんどん東に進む
この区間には路面電車は走っていません(時計塔付近から南北に分岐します)。そのため、のびのびと通れます。路面電車は好きなのですが、歩行者の立場からは邪魔なのは事実ですから。
写真9. 泉がある
泉は1つだけではなく、多くあります。メインストリートだけでも13か所あります。これは充実した上水道ですね。
写真10. 古い街並みが広がる
このように古い街並みが広がります(写真10)。感心するのは、単に街並みを保存しているだけではなく、現代的な商店が入っています。そう、街に求められる機能もきちんとあります。また、レストランも多くあり、夜も楽しめます。日本の古い街もそのような部分を見習うべきでしょう。単に外観を保存するだけでは、展示物にしかならず本当の活性化はなされないことでしょう。
写真11. 監獄塔が見える
時計塔の西側も見てみましょう。駅と時計塔の間にあるのが監獄塔です(写真11)。この塔の下を路面電車が通っています。
写真12. 地下の倉庫を改造したショップ
興味深い光景があります。地下の倉庫を改造したショップがあります(写真12)。
写真13. 旧市街にショップが入っている
旧市街にショップが入っています(写真13)。やはりこの旧市街は生きているのです。
橋からアーレ川を楽しむ
ベルンはアーレ川沿いに発達してきました。そのアーレ川は深い渓谷になっており、アーレ川に架かる橋からは独特の景色が楽しめます。
写真14. コルンハウス橋手前の子喰い鬼の泉
では、時計塔の北にあるコルンハウス橋を渡ってみましょう。その橋の手前に1544年に造られた泉があります(写真14)。この泉は有名な泉で、子喰い鬼の泉といいます。
写真15. おっかない高さにある橋
橋を渡る前にその高さを確認してみましょう(写真15)。おっかない高さにあります。飛び降り防止のために、ネットがありますね。アーレ川は深い渓谷を形成しています。ルクセンブルクに似ているといえばわかるでしょうか(ルクセンブルクもマイナー?そうですね)。
写真16. アーレ川と行きかう列車
写真17. アーレ川と行きかう列車
この橋は南北に伸びています。この橋の西側を歩き、東側から戻るというオペレーションを採用しました。この橋の西には鉄道があります。この鉄道もアーレ川を渡っています。列車がひんぱんにやってきます(写真16、写真17)。この列車は近距離列車でしょうか。
写真18. アーレ川がかなり下に見える
アーレ川がかなり下に見えます(写真18)。ちょっと怖いですね。少し寒い気温でしたが、川で泳いでいる人も見かけました。寒さへの耐性は人それぞれですが、泳げるほど水質が良いということです。
写真19. また列車がやってきた
また列車がやってきました。この列車はスイス各地を結ぶIRでしょうか(写真19)。
写真20. 橋の中央までやってきた
橋の中央にやってきました(写真20)。怖いですね…。
写真21. 対岸にやってきた
対岸にやってきました(写真21)。断崖絶壁に家が張り付いています。観光客としては絵になる光景ですが、地域住民は坂の上り下りという手間がかかります。
写真22. 反対側から戻る
では、反対側から戻りましょう!残念ながら線路はありませんが、一般にはこちらのほうが絵になる光景でしょう。
写真23. アーレ川沿いに旧市街が広がる
アーレ川に沿って旧市街が広がります(写真23)。単に旧市街があるだけでは世界遺産に指定されないことでしょう。このような川との共演があることがベルンの魅力を高めているような気がします。
写真24. 旧市街はアーレ川より上にある
旧市街をよく見てみましょう。アーレ川より上にあります(写真24)。そのため、アーレ川が増水しても旧市街は水害にあいにくいことが予想できます。昔から人が住んでいる理由は何かしらあるものです。そして、住んでいない理由も。
写真25. 緑と川の共演
緑と川の共演も見られます。観光客相手に商売する旧市街の近くでは、地域の人がサッカーをしています。旧市街には街の機能があり、その近くでは地域住民が普通に暮らしています。
ベルンのまとめ
ベルンの観光名所はいろいろあるでしょう。そのような情報は市販のガイドブックに記されています。でも、この街の魅力は細かな観光名所ではなく、旧市街に流れるゆったりとした時間、旧市街が保存されているのではなく、きちんと街として現役として機能していること(夜になると多くの飲食店が開いていました)、旧市街近くで市民生活が営まれていることでしょう。そう、旧市街が現役の市街として機能していることがベルンの最大の魅力と気づきました。
日本人観光客はほとんど見かけませんでしたが、立ち寄ると良い街ですし、1泊するとなお良いでしょう。スイス観光で脚光を浴びることはありませんが、それはもったいないと感じたベルン滞在でした。
さて、前後ではどこに行ったのでしょうか?
←(前)ルツェルンからベルンまでの乗車記(スイス、列車旅、19年夏)
ベルンの旧市街を堪能する(アクセスも紹介、19年夏)←今ココ!
ベルン駅を楽しむ(構内図や接続の様子も収録、19年夏)(次)→
★この旅行記の案内・目次・まとめページはこちら
ハンガリー、スイス、フランス旅行のまとめと振り返り
※それぞれ別ウィンドウで開きます。
スイスでの鉄道旅行でのノウハウを収録した記事
スイスではどのように鉄道旅行を楽しめば良いのでしょうか。初心者向けの情報から裏技まで収録しました。