スイスの首都ベルンの玄関口、ベルン駅。ここはスイス国内各方面へのターミナルであるだけではなく、スイス国外への列車も発着します。そのベルン駅を楽しんでみました。また、構内図など必要な情報も盛り込んでいます。
写真1. ベルン駅そのものは意外とモダンな建物
ベルン駅の概要
まず、ベルン駅の概要を示すことにします。多くの読者さまは海外の鉄道に疎いと推定しているためです。
図1. ベルンの位置(googleマップより引用)
ベルンはスイス中央部からやや北西に外れた場所にあります。スイスの人口の多くは北部に集中していますから、スイスの大都市の位置のバランス的には良いところでしょう。この地図ではわかりにくい?そうですか。別の地図を示しましょう(図2)。
図2. スイスの各都市の位置関係(wikipediaより引用)
スイスの周囲には4つの大国があります(ドイツ、フランス、オーストリア、イタリア)。この大国の首都は人口が200万人程度(ベルリンは350万人程度)ですが、ベルンの人口は14万人程度にしか過ぎません。鉄道の需要は人口に依存する面がありますので、あえて人口を記しました。
図3. スイスの鉄道網(長距離列車を収録)
スイス国鉄は国内のあらゆる場所にネットワークを広げています(図3)。余談ですが、多くの日本人がツアーで乗る「氷河急行」や「ベルニナ急行」は私鉄路線の列車なので、この運転系統図には入っていません。各外国から国際列車がやってきますが、基本的にスイス国内ではこのネットワークに組み込まれます。例えば、チューリッヒからパリのTGV(TGVはフランスの高速列車です)は、チューリッヒからバーゼルまでスイス国内を走りますが、この区間はスイス国内を運転する列車のネットワークに組み込まれるということです。
では、ベルンからスイス国外に向かう列車はどこに向かうのでしょうか。手元のヨーロッパ時刻表を参照して書き出してみました。
イタリア方面:ミラノ直通(1日1往復のみ)
フランス方面:直通なし(パリ-チューリッヒ系統にバーゼルで連絡)
ドイツ方面:ベルリン直通(1日3往復)、ハンブルク直通(1日1往復)
オーストリア方面:直通なし(チューリッヒ発着便にチューリッヒで連絡)
最も多いのはドイツ方面です。これらはいずれもICEで運転されます。ICEはフランクフルトに向かい、そこからベルリンかハンブルクに向かいます。ベルリン行きはフランクフルトからベルリンはエアフルトを経由しません(つまりある程度時間がかかる経路を走るということです、下の※参照)。ベルリン直通、ハンブルク直通いずれもインターラーケンに向かい途中でベルンに立ち寄るという感覚です。
※フランクフルトとベルリンのICEの詳細は列車でのフランクフルトとベルリンの移動(時刻表あり、18年対応)にまとめています。この時刻表は2019年も大きく変わっていません。
イタリア方面の直通もあります。1日1本だけですが、ミラノまで直通するEC(国際列車)があります。一方、フランスやオーストリア直通はありません。チューリッヒにはオーストリア・ハンガリー直通の列車、フランスのTGVの発着、クロアチアやスロベニアに向かう夜行列車があることとは大違いです。
これらの内容を確認すると、ベルンは限られた国際列車のみが発着し、国内列車のターミナルという面が強いことがわかります。ただし、欧州旅客列車時刻表会議事務所はベルンにあったりと、決してベルンがヨーロッパのネットワークでは軽視するべき駅ではないことは事実です。
ここまでネットワークにおけるベルンの位置づけについて述べましたが、ベルン市内の玄関駅としての役割はどうでしょうか。
図4. ベルン駅の位置(googleマップより引用)
ベルンといえば旧市街が有名ですが、その旧市街から西に1kmもない場所に駅はあります。また、駅前にはトラムのターミナルもあり、ベルンの玄関口として機能していることもわかります(ベルン旧市街は都市としての機能はきちんと果たしています)。
ベルン駅を楽しむ
それでは、ベルン駅を探索しましょう。公式サイトで構内図を確認できます。
図5. ベルン駅構内図(公式サイトのPDFファイルより)
ベルン駅構内は地上には13番線まであり、地下に2線あります。また、旧市街に近いほうが1番線となっています。では、実際に中に入ってみましょう!
写真2. 駅の裏口的な場所から入る
私が宿泊したホテルは正面の出入口よりも裏口的な出入口が近かったです。ベルン駅の西側に目的地がある場合は、階段を下るのではなく、階段を登りましょう!これはどの旅行ブログにも書いていない生情報ですね!そのような出入口から入ってみましょう(写真2)。
写真3. 駅の裏口は改札がない(正面にもないけど)
この出入口に限らず、改札はありません。ヨーロッパの多くの駅には改札はありません。特にスイスでは改札がない長所を生かしてさまざまな場所に出入口を設けています。
写真4. メインの案内表示機
メインの案内表示が見えます(写真4)。スイスに限らずヨーロッパの駅では、出発表示は方面別に分かれていません。これはこれで不便な気がします。日本でいえば空港の出発案内のノリですね!
写真5. カウンターがある
メインの場所は地下のコンコースです。こちらにはチケットカウンターなどの設備が充実しています(写真5)。
写真6. 待合室は吹き抜けがある
待合室には吹き抜けがあり、開放的な雰囲気です(写真6)。ベルン駅はモダンな雰囲気です。この点、同じドイツ語を使う首都駅(ベルリン中央駅やウィーン中央駅)に似ています。ベルン駅は通過型の駅です。この点もベルリン中央駅やウィーン中央駅に似ています。よくヨーロッパの駅は頭端式の駅だとしたり顔で語る人がいますが、そうでない大ターミナルもあるのです。
写真7. 店舗がある
駅には改札はありませんので、駅構内も街の1つです。そのためか、店舗も充実しています。日本だと改札の外側と内側で人の流れが遮断されますが、スイス方式ではそのようなことはありません(ただし改札があることは多くのメリットがありますので、今すぐ日本で改札をなくすのは困難です)。
写真8. 近距離列車は地下にホームがある
近距離列車用のホームが地下にあります(写真8)。このホームからの列車に乗ってみたかったのですが、時間と体力の都合で断念しました。いくらスイストラベルパスを持っていても、体力が追い付かないこともあるのです(お腹が空いていたのが一番の理由です)。
写真9. 地下通路は店舗が充実
地下通路は店舗が充実していました(写真9)。また、地下通路は洗練された雰囲気でした。でも、チューリッヒ中央駅のほうがもっと洗練されていたような気がします。これは、ベルンはチューリッヒより人口が少ないため、やむを得ないかもしれません。
写真10. 正面出口に出る
地下通路を1番線側に向かうと、立派な駅舎が出迎えてくれます(写真10)。モダンな建物です。こちらの駅舎は旧市街に向いています。つまり、駅の東側の旧市街に向かいたい場合は、階段を登るのではなく、階段を降りる必要があるということです。
ベルン駅での接続風景
ベルン駅はスイス国内でも有数の拠点です。しかし、スイスは1極集中の国家ではありません。各地方ごとに特色があります。これは鉄道輸送でいえば、「ベルン(やチューリッヒ)との連絡を考えればOK!ではない」ことを示します。言いかえると、各地方と各地方の輸送を考えねばならないことを示しています。
では、どのように各地方と各地方の輸送を考慮するのでしょうか、言いかえると任意の場所から任意の場所への輸送をどのように便利にするのでしょうか。まず、フランスのようなターミナル分散型の考えはアウトです。1つの都市にターミナルが1つというのが鉄則です。そうでなければ、都市内でターミナルからターミナルに移動する手間が生じてしまうからです。スイスはこの点は合格です。チューリッヒ、ジュネーブ、ベルン、バーゼルなど中央駅(か代表駅)があるからです。もう1つの基本が、列車の接続をきちんと取ることです。この点を見てみましょう!
写真10. ジュネーブ行きが3番線から発車
今は18:00より少し前の時間です。ルツェルン始発のジュネーブ空港行き(IR15)が18:04に発車すると記しています。IR15というのは、系統番号です。IRはICよりも停車駅が多いパターンです。ICが特急とすれば、IRは急行とでも訳すのが適切でしょうか。それとも、ICが速達タイプの特急で、IRが地域密着型の特急と訳すのが適切でしょうか。
写真11. インターラーケン東行きも同時刻に発車
もう少し引いてみましょう。バーゼル始発インターラーケン東行き(IC61)も同じ時刻に発車します(写真11)。さっきより少し時間が経っているので、3番線・4番線ともに列車がやってきていることが見て取れます。
写真12. 別ホームにはブリーク行きとバーゼル行きが入る
別ホームに視点を移しましょう。チューリッヒ方面からやってきたブリーク行き(IC8)とインターラーケン東始発のバーゼル行き(IC61)もやってきます(写真12)。
写真13. ブリーク行きがやってきた
チューリッヒ方面からのブリーク行きがやってきました(写真13)。
写真14. ジュネーブ空港行きが発車!
写真15. インターラーケン東行きも発車!
そうしているうちに、ジュネーブ空港行き、インターラーケン東行きが発車しました。これら4本の列車がほぼ同時に到着、発車することによって、以下の接続が確保されています。
チューリッヒ→ベルン→ブリーク(IC8)
バーゼル→ベルン→インターラーケン東(IC61)
インターラーケン東→ベルン→バーゼル(IC61)
ルチェルン→ベルン→ジュネーブ空港(IR15)
実際には、ブリーク→ベルン→チューリッヒ(IC8)やジュネーブ空港→ベルン→ルチェルン(IR15)もやってきます。これらがジャストタイミングで接続することで、スイス各地からスイス各地へのアクセスが確保されています。おおむね毎時00分前後と30分前後に同時に到着、同時に発車することで、接続時間を最小限にしています。そう、このようなみごとな接続は常に展開されているのです。
このためには主要駅と主要駅の間を60分(あるいは30分)を切る所要時間にせねばなりません。チューリッヒとベルンの間は既存の線路ではどうあがいてもこれを達成できません。そのため、オルテン付近(オルテンはチューリッヒとベルンの間の駅です)とベルンの間は高速新線を建設しました。また、高速新線の恩恵にあずかれないベルンを経由しない、チューリッヒとローザンヌ(やジュネーブ)の列車は車体傾斜装置をもった車両を導入して、所要時間を短縮しています。このようなさまざまな施策のおかげで、スイスの鉄道は便利に機能しているのです。スイスの鉄道の見どころの1つはこのようなネットワークにあります。「氷河急行」や「ベルニナ急行」のような観光客受けする列車ばかりがスイスの鉄道ではないのです。
さて、前後ではどこに行ったのでしょうか?
←(前)ベルンの旧市街を堪能する(アクセスも紹介、19年夏)
ベルン駅を楽しむ(構内図や接続の様子も収録、19年夏)←今ココ!
ベルンからバーゼルまでの列車旅(スイス、乗車記、19年夏)(次)→
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