2020年3月ダイヤ改正における東海道新幹線の変化を探る

記事上部注釈
弊サイトでは実際に利用したサービスなどをアフィリエイトリンク付きで紹介することがあります

N700系シリーズに統一された東海道新幹線。そして、このことを機に「のぞみ」のスピードアップと「のぞみ」の増発がなされました。では、実際にはどのようなダイヤなのでしょうか。簡単に考察してみました。

N700系のぞみ入線(小倉)

写真1. これからの車両N700系シリーズ(小倉で撮影、東海道新幹線内の駅ではない)

2020年3月ダイヤ改正の概要

では、東海道新幹線のダイヤはどのように変わったのでしょうか。まずは、主な変化点をまとめましょう。

・東京-新大阪の全ての「のぞみ」号が所要時間2時間30分以内
・のぞみの毎時12本化
 ※実際に毎時12本にするのは繁忙期のみ。閑散期は毎時4本なのは変わらず
・東京-広島・博多方面のスピードアップ

今回の1番のポイントは東京-新大阪の「のぞみ」が全て2時間30分以内で運転する点です。最短は2時間21分(のぞみ64号)、最長でも2時間30分です。今までは2時間33分かかっていた「のぞみ」もありました。品川駅開業前の「のぞみ」号はおおむね2時間30分で結んでいました。ようやくのぞみ運転開始時と同等の所要時間に戻ったのです。新幹線は早さが正義ですので、1分でもスピードアップすることは正しい選択です。3分でも短縮するのは非常に響きます。「3分のスピードアップが何?」という人もいるでしょう。でも、そんなことを言う人もご自身は朝の通勤時に1分でも早く移動するために、空いている各駅停車ではなく、混んでいる急行に乗ってたりするものです。

ただし、「のぞみ」運転開始時同じ所要時間2時間30分といっても、当時とは質が異なります。この当時は東京側の停車駅は東京だけでした。一方、現在は品川と新横浜に停車します。この2駅のほうが便利な人にとっては、当然現在のほうが便利です。

次のポイントは「のぞみ」の毎時12本ダイヤです。大型連休、お盆、年末年始の新幹線の混雑はテレビジョンでも放映されるくらいです。そのようなテレビジョンを見ると「新幹線は乗車率150%で発車しました」などと報じられています。このような状況であれば、列車を1本でも増発して少しでも混雑を緩和するほうが良いです。のぞみ1本を増発すれば1343人が座れます。ましてや2本の増発であれば、さらに混雑が緩和することでしょう。計算上、乗車率150%の「のぞみ」が10本のところ、12本に増発すると乗車率は125%まで緩和します。

実際にはここまで混雑は緩和しないことでしょう。あなたが繁忙期に特定の時間(たとえば、大阪駅に朝10時到着)に大阪に行くとしましょう。もしも、適切な時間帯に新幹線の空席がなかったとしましょう。そうすると、前の時間にシフトさせるなり、別の交通手段で向かうなりという対策をとるはずです(あるいは自由席に乗るという手もあります)。もしも、「指定席が確保できなかったために航空機を利用する」という人が1人でもいたら、JR東海にとっては販売機会の損失を意味します。のぞみが毎時2本増発することにより、JR東海は販売機会を確保でき、新幹線の利用者も増えることでしょう(もちろんダイヤ改正前よりは混雑は緩和しているはずです)。満席が続出する路線での増発は正義といえるのです。

東京-新大阪のスピードアップに伴い、山陽新幹線直通利用の場合もスピードアップしています。新大阪-博多は6駅停車で2時間28分と変わっていませんが、東京-新大阪で3分程度のスピードアップがなされているので、トータルでは東海道新幹線内のスピードアップぶん所要時間が短縮されています。特に東京-広島は所要時間が4時間程度です。所要時間4時間だと航空機とのシェア争いでシビアな戦いを強いられます。その所要時間4時間程度の区間で所要時間が1分でも短縮することは競争力の維持という観点から重要です。

これが今回のダイヤ改正の概要です(多くのブログさんはこれでおしまいでしょうが、弊サイトはこれで概要です)。上で示した3点についてもう少し詳しく掘り下げましょう。

品川に入線する700系

写真2. このような「足手まとい」が引退することで今回のダイヤ改正が実現(700系、実際に乗ったときに品川で撮影)

東京-新大阪の全ての「のぞみ」が2時間30分以内を実現

東京-新大阪の全ての「のぞみ」号が所要時間2時間30分以内を実現します。これは画期的なことです。実際には日中時間帯は所要時間が2時間27分~2時間30分とばらつきがあります。車両性能上は所要時間2時間21分が可能で、のぞみ265号(東京21:24→新大阪23:45)とのぞみ64号(新大阪21:24→東京23:45、実際は博多始発)はそれを実現しています。では、全ての「のぞみ」号が所要時間2時間21分を実現しない事情は何でしょうか。それは「ひかり」号や「こだま」号があり、部分的に速度を落としているためです。今回は「ひかり」号、「こだま」号を含めてN700系シリーズに統一したため、待避駅までなるべく早く逃げて後を追う「のぞみ」号のスピードアップが実現したのです。

ダイヤ改正前後の所要時間の比較

東京と新大阪の発車時刻表を示します(表1、表2)。

まずは、東京発の下り時刻です。ここでは、便宜上ダイヤ改正とダイヤ改正の所要時間を示し、その短縮時間も記載しています。

表1. 2020.3ダイヤ改正(東海道新幹線、東京発車時刻表)

2020.3ダイヤ改正(東海道新幹線、東京発車時刻表)

東海道新幹線は臨時列車も含めてダイヤが成立しています。そのため、臨時列車抜きの議論は無意味です(大本営発表のダイヤ改正プレスリリースでも臨時列車を掲載しています※)。したがいまして、表には臨時列車も示しています。

コラム.臨時列車の運転状況

では、日常的に臨時列車はどの程度運転されているのでしょうか。ここでは、そこまで利用の多くない12時台で考えます。

a) 4月中旬の水曜日(4/15の場合)
・東京→新大阪の臨時列車
 12:18発の「のぞみ347号」が運転されます。
・新大阪→東京の臨時列車
 12:39発の「のぞみ356号」が運転されます。

b) 4月中旬の金曜(4/17)の場合
・東京→新大阪の臨時列車
 12:18発の「のぞみ347号」、12:42発の「のぞみ159号」が運転されます。
・新大阪→東京の臨時列車
 12:21発の「のぞみ350号」、12:39発の「のぞみ356号」が運転されます。

このように、最も乗客の少なさそうな月の中旬の水曜の昼間でさえ、毎時1本の臨時列車があり、その2日後には毎時2本の臨時列車が運転されることがわかります。このように、臨時列車抜きではダイヤ議論が成立しないのです。

また、東京発毎時21分と42分(新大阪発毎時15分と33分)は定期列車で運転される時間帯もあります。そのため、ダイヤを議論する際にはこれらも定期として取り扱うのも1つの手でしょう。

次に、上りの発車時刻です(表2)。ダイヤ改正前後で時刻が移動しているようにも思えますが、便宜上、発車時間で区切り、ダイヤ改正とダイヤ改正の所要時間を示し、その短縮時間も記載しています。

表2. 2020.3ダイヤ改正(東海道新幹線、新大阪発車時刻表)

2020.3ダイヤ改正(東海道新幹線、新大阪発車時刻表)

上りも同様に所要時間が短縮されています。プレスリリースには下りしかありませんでしたが、上りも所要時間が短縮されていることも確認できます。下りだけ改善したので、プレスリリースには下りだけ書いたように勘ぐってしまったのです。私の勘ぐりは失礼でしたね…。

ダイヤ改正前後の所要時間比較の解析:例1.東京毎時00分発

では、どのように所要時間を短縮したのでしょうか。本来であれば、12本ある「のぞみ」号の1本1本を検証するべき(それも上下線)なのでしょうが、ここでは簡単のために一部のみの解析といたします。最初の例として、下りで所要時間2時間33分から2時間30分に短縮した例を示します。

この例に当てはまるものは、下りでいうと毎時00分発(ダイヤ改正前後で新大阪行きで変わらない)です。具体的に例を挙げると、以下の通りです。

・(ダイヤ改正前)東京12:00→名古屋13:41/13:43→新大阪14:33
・(ダイヤ改正後)東京12:00→名古屋13:39/13:41→新大阪14:30

このように東京→名古屋で2分、名古屋→新大阪で1分短縮されています。では、どのように3分短縮したのでしょうか。

毎時00分発の「のぞみ」号の1本前は「こだま」号が走っています。この「こだま」号を追い抜くまでは、なかなかスピードは上がりません。東京から新横浜まではどちらも各駅に停まるので関係ありません。「こだま」号は次の小田原で「のぞみ」に道を譲ります。ダイヤ改正前の「こだま」の新横浜→小田原の所要時間は16分、ダイヤ改正後は15分(いずれも上りで確認)です。ダイヤ改正で「のぞみ」と「こだま」の間隔は20秒詰まっています(ダイヤ改正前で3分20秒間隔、ダイヤ改正後には3分00秒間隔)が、「こだま」の所要時間短縮で20秒の詰まりを挽回しています。

この後、もう1本前の「こだま」を掛川で抜いています。当該の「こだま」は東京を11:27に発車し、掛川を13:08に発車しています。ダイヤ改正前の「こだま」は東京を11:26に発車し、掛川を13:10に発車しています。加速性能が向上したために3分短縮しています。これで名古屋まで前を邪魔する「こだま」や「ひかり」はありません。細かな解析では話は違うのでしょうが、「こだま」が東京から掛川まで3分スピードアップしたために、今回取り上げた「のぞみ」は東京→名古屋で3分のスピードアップが可能、ただし直前の「こだま」の発車時刻が繰り下がったので、1分のスピードダウン、都合2分のスピードアップということになります。

では、名古屋から新大阪まではどうしてスピードアップできたのでしょうか。ダイヤ改正前も後もこの「のぞみ」号の前を走り、邪魔をする「ひかり」や「こだま」はありません。これは、車両性能向上によるスピードアップでしょう。

ダイヤ改正前後の所要時間比較の解析:例2.東京毎時51分着

次の例として、所要時間2時間37分から2時間30分に短縮した例を示します。先ほどは下りで解釈しましたが、今度は上りで解析することにしましょう。下りの解析が2つ続くと飽きるだろうという私の気づかいでもあります(さすが、私が飽きただけなんて秘密!)。

この例に当てはまるものは、上りでいうと毎時51分着(ダイヤ改正前後で新大阪発で変わらない)です。具体的に例を挙げると、以下の通りです。

・(ダイヤ改正前)新大阪12:13→名古屋13:05/13:07→東京14:50
・(ダイヤ改正後)新大阪12:21→名古屋13:11/13:12→東京14:51

新大阪→名古屋で2分短縮、名古屋→東京で4分短縮、名古屋で1分短縮(実際には秒単位では短縮なしで時刻表上そう見えるだけでしょう)、となっています。では、どのように7分短縮したのでしょうか。

新大阪→名古屋では前を走る「こだま」や「ひかり」はありません。理論上、もう3分早く到着できますが、名古屋からの過密ダイヤのために時刻調整していると理解しましょう。では、新大阪を3分遅く出れば、という指摘もありましょう。しかし、ダイヤ改正前は3分後に名古屋まで各駅に停車する「ひかり」が走っています。そのため、ダイヤ改正前はどうしても新大阪を12:13に発車する必要がありました。ダイヤ改正後は当該の「ひかり」は新大阪→名古屋を2分短縮しています。そのため、このひかり号を追い抜けるようになりました。そのようなこともあり、新大阪→名古屋は2分短縮できています。

名古屋を13:07(ダイヤ改正後は13:12)に出発しています。名古屋から東京までは「ひかり」号は当該の「のぞみ」号を邪魔しません。一方、「こだま」号を2本追い抜いています。ダイヤ改正前後で「こだま」の待避駅が異なりますので、単純には比較できません。では、「こだま」号の所要時間はどうでしょうか。ダイヤ改正前は「こだま」号の名古屋→東京の所要時間は2時間42分と2時間48分の交互、ダイヤ改正後の「こだま号」の所要時間は2時間40分です。平均5分の短縮です。こだま号に思いっきり阻まれていた当該の「のぞみ」(※)は5分短縮できたと解釈できます。

※当該の「のぞみ」は東京に毎時51分(ダイヤ改正前は毎時50分)に着いています。この直前の電車は「こだま」号です。この「こだま」号を逃げ切らせるために、当該の「のぞみ」号がゆっくり走っていたとも解釈できます。

電球色が美しいN700系

写真3. 東海道新幹線の普通車はみんなこのような車内になる

のぞみ号の増発

のぞみ号が毎時10本から毎時12本に増発しました。この2本はどのように増発したのでしょうか。過密ダイヤの東海道新幹線のことですから、どこにねじ込む隙間があったのでしょうか。

答えは、全体的に列車の間隔を詰めて、新たな隙間を作った、というものです。東京発の時刻表を示します。

表3. 東京の発車時刻表

2020.3ダイヤ改正(東海道新幹線、東京発車時刻表、ひかり・こだまあり)

今回も臨時列車を含み、臨時列車は細字で表記しています。「ひかり」と「こだま」は臨時列車はないので、全て定期列車です。ダイヤ改正前は10分に3本の運転、つまり3分20秒間隔運転でした。一方、ダイヤ改正後は3分間隔運転です。3分20秒間隔運転から3分間隔運転にすることで、1時間に2本の増発の枠ができました。この増発の枠で「のぞみ」を毎時2本増発することが可能になったのです。

(ダイヤ改正後でいう)毎時06分、15分、36分、45分については増発の余地があるように見えます。この毎時4本の枠は東京からの回送列車用の枠です。そのため、この時間帯については列車を設定できません。では、回送列車のいない品川から新大阪までであれば列車を設定できそうにも見えます。しかし、「こだま」号のことを忘れてはいけません。「のぞみ」号が9分間隔が開く(6分+3分)ところに「こだま」号を入れていて、ここで「こだま」の待避時間を産みだしているのです。ここに列車を設定してしまうと、「のぞみ」号が大幅にスピードダウンしてしまいます。

3分20秒間隔から3分間隔にするために、加速の良いN700系に統一させたともいえます。加速性能の悪い700系は今やお荷物でしかなかったのです。

東京から新大阪以西への到達時間短縮

東京から新大阪以西への到達時間が短縮されています。定期列車の「のぞみ」は東京-博多が毎時2本、東京-広島が毎時1本、東京-新大阪が毎時1本運転されています。

では、どの程度所要時間が短縮されているのでしょうか。東京発、新大阪発12時台についてそれぞれ表にまとめました(表4、表5)。

表4. 2020.3ダイヤ改正(東海道新幹線、山陽方面所要時間、下り)

2020.3ダイヤ改正(東海道新幹線、山陽方面所要時間、下り)

下りについては若干スピードアップしています。いずれも、東京→新大阪での所要時間短縮ぶんが反映されている形です。良くも悪くも山陽新幹線内のスピードアップはありません。

2012年3月の時刻表を眺めると新大阪→博多は2時間29分または2時間34分で結んでいます。現在は2時間28分で結んでいるので、その当時よりはスピードアップしています。ただ、もう少しスピードアップできなかったのでしょうか。のぞみ64号が2時間21分で結んでいますから、2時間25分運転は可能な気がしますが…(のぞみ64号は日中時間帯の「のぞみ」よりも停車駅が少ない)。

表5. 2020.3ダイヤ改正(東海道新幹線、山陽方面所要時間、上り)

2020.3ダイヤ改正(東海道新幹線、山陽方面所要時間、上り)

上りは広島発の「のぞみ」で山陽新幹線内スピードアップが実現しています。これは、ダイヤ改正前に当該の「のぞみ」の直後に「さくら」が設定されていて、3分程度早く出発していたためです。今回のダイヤ改正で「さくら」を福山で待避させていて、「のぞみ」の時刻調整はなくなりました。「さくら」はのぞみ64号より2駅多く停車しています。1駅停車で4分かかるとしても、博多→新大阪で2時間29分運転(6駅停車の場合、現在は待避なしで2時間36分運転)が可能なような気もします。もし、それが実現したら、山陽新幹線全体のスピードアップも可能でしょう。

そのほかの気づき

JR東海のプレスリリースでは触れていないけど、変化した点についても述べましょう。

こだまの名古屋での接続

「こだま」は毎時2本運転されています。うち1本は名古屋折り返し、もう1本は東京-新大阪の運転です。このうちの1本が名古屋で緩急結合することになりました。これにより、「のぞみ」との乗りかえによって、東京-米原を2時間10分(上りは2時間12分)で結ぶことになります。ダイヤ改正前でも名古屋ですぐにやってきますので、そこまで差はありません(下りは2分短縮、上りは変わらず)。

ひかりの所要時間の推移

今まで「のぞみ」や「こだま」の所要時間を眺めてきました。では、「ひかり」ではどうでしょうか。「ひかり」は毎時2本設定されていますが、2つのパターンがあります。ここでは、AとBと分けることにします。

パターンA:「のぞみ」停車駅に静岡県内の3駅を加えたもの(静岡、浜松は必須、熱海と三島は交互に停車)
パターンB:東京-名古屋でほとんど「のぞみ」並みの停車駅(小田原または豊橋に停車)、名古屋-新大阪各駅停車

もちろん、このパターン名はこの記事に限って使用するものです。間違えても日常会話で「ひかりのパターンAが~」などと話さないようにしましょう(そんな日常会話はしない?ですよね!)

では、下りの時刻を比較します(表6)。

表6. 2020.3ダイヤ改正(東海道新幹線ひかり下り)

2020.3ダイヤ改正(東海道新幹線ひかり下り)

所要時間2時間53分の電車と2時間56分の電車があったのが、2時間54分に統一されています。残念なのは、パターンAでは京都で「のぞみ」の待避のために6分停車していることです。後続の「のぞみ」は新大阪止まりです。ここで停車して待つ意味がないように思えます。京都で5分停車時間を削減すれば、岡山まで相当早く着けるのにもったいないです。

※コメント欄にも記しましたが、待避なしだと先発の「こだま」と待避する「のぞみ」の間を走ることになりますが、この間隔が微妙に狭いです。そのため、ダイヤ上仕方なく京都で待ち合わせをした可能性も指摘できます(上りは待避しないと運転できない)。

やや残念なのは、パターンBが名古屋で5分停車して、臨時の「のぞみ」を待っていることです。いくら「のぞみ誘導ダイヤ」といっても、必ず「のぞみ」がやってくるのであれば、まだ理解できます。しかし、待つ相手は臨時列車なので、無駄に5分停車していることにもなってしまいます。とはいえ、臨時列車あってのダイヤなので仕方ないです(そのため、「やや」残念と言いかたを和らげました)。

なお、パターンBの静岡での停車時間が8分から5分に短縮されたこともあり、東京から浜松までの所要時間は6分も短縮されています。これは大きな改善です。

次に、上りの時刻を比較します(表7)。

表7. 2020.3ダイヤ改正(東海道新幹線ひかり上り)

2020.3ダイヤ改正(東海道新幹線ひかり上り)

下りと同じです。所要時間が平準化され、全体としてはややスピードアップが実現していることも同じです。

速度レコード列車:のぞみ64号

のぞみ64号がレコード列車であることは変わりません。山陽新幹線内で停車駅を厳選し、東海道新幹線内も(列車本数が少ない深夜なので)トップスピードを維持します。

(ダイヤ改正前)博多18:59→広島20:01→新大阪21:20/21:23→名古屋22:12→東京23:45
(ダイヤ改正後)博多18:59→広島20:01→新大阪21:20/21:24→名古屋22:12→東京23:45

秒単位の処理の関係か、新大阪→東京で2時間21分を実現しています。ダイヤ改正前は2時間22分でしたから、1分の短縮です。これで、東海道新幹線のレコードは更新されます。山陽新幹線内も2時間21分で走破しています。残念なのは、新大阪で4分も停車していることです。もしも新大阪での停車時間が2分で済むのであれば、博多を19:01に出発可能です。そうすれば、東京への最終便が19時台となり、印象が変わっていました。航空便は福岡空港だと21:20発まであるので、歯は立ちませんが…。

2020年3月東海道新幹線ダイヤ改正のまとめ

「のぞみ」のスピードアップと増発の両方を実現させたダイヤ改正です。一般に、増発とスピードアップは一般的に両立しません。しかし、今回のダイヤ改正ではそれが実現しました。これは車両取替によって加速性能が優れた車両に統一された点が大きいです。また、大局的に見た場合、改悪された箇所が見当たらないのも称賛に値します。東海道新幹線は日本の大動脈です。そのような路線では早さと増発は正義です。そのような正義を実現しつつ、大きな改悪の箇所が見当たらないのは、地道な改善を続けるJR東海らしいです。今後も大動脈として機能し続けることでしょう。

そして、将来的にはリニアが開業し、やや輸送力に余裕が生じます。そうなったならば、食堂車の連結など、「航空機にはないサービス」の実現も視野に入れてもらいたいものです。

レイルジェットの食堂車

写真4. ヨーロッパの列車に連結されている食堂車(ウィーンからブダペストの列車で撮影)

また、個人的な感性となってしまいますが、電球色の照明と青系の座席はアンバランスです。E5系のような座席カラーに変更することで、アンバランスさを解消してもらいたいとも思います。

E5系普通車車内

写真5. E5系の車内(照明の色と座席の色がそれなりに合っている)

スポンサーリンク

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする

コメント

  1. 萩本一 より:

    大変興味深く拝見いたしました、京都駅で下り「ひかり」が5分停車の記載が、実は上りにも、「ひかり」510号が京都駅に6分停車02分着・08分発、新大阪発臨時「のぞみ」374号04分着・06分発、の待ち合わせをいたします。素人考えで恐縮ですが、6分あれば米原駅で追い越せば良いと思うのです、いかがでしょうか?

    • tc1151234 より:

      萩本一さま、コメントありがとうございます。そして、興味深くご覧いただいて望外の喜びです。

      表7に上りのダイヤを記載しましたが、わかりにくかったでしょうか。東海道新幹線は東京駅を基準にダイヤを作成しているという事情があるでしょうから、ご指摘のように京都を基準に考えるのは難しいでしょう(米原まで逃げたところで、米原発以降の時刻は変わらないという意図です)。では、当該の「ひかり」号の新大阪の発車を5分遅く(6分の待避時間から1分の停車時間を引いた数字)すれば良い、という指摘もできます。つまり、毎時48分に発車するのではなく、毎時53分に発車するということです。ただし、毎時54分に「こだま」が発車しています。よって、(他の部分をいじらないとすると)現在のダイヤでないと成立しないことがわかります。

      下りは何とかなりそうですが、やや厳しい面が見られます。この点については、当初私が書いたときには気づかず、コメントの返信で気づいた次第です。結果として貴重な気づきの場を得ることができました。改めてありがとうございました。