イタリア北部のミラノとスイス南部のルガノ。両者は同じイタリア語圏ということもあり、移動は比較的簡単です。そんな両都市を列車で移動しました。

写真1. ミラノ中央駅に停車中のユーロシティ(EC)チューリッヒ行き
復習:ミラノとルガノの移動方法概論
最初にミラノとルガノの移動方法を紹介します。
- 所要時間:1時間20分程度
- 列車種別:ECまたはRE
- 運転頻度:毎時1本~2本
- 運賃:最低16.4CHF
図1. ミラノとルガノの位置関係(googleマップより引用)
ミラノとルガノの位置関係を示しました(図1)。両都市はそこまで距離はなく、所要時間は1時間20分前後です。ここで興味深いのは、ECでもREでも所要時間が変わらないどころか、REのほうが所要時間がやや短いことです。よって、先発がECでない限り、ECに乗る意味はありません。
運賃は(日本でいう)特急扱いのECよりも(日本でいう)快速扱いのREのほうが安いです。REの場合、16.4CHF(スイス国鉄公式サイトで検索、なぜかイタリア国鉄公式サイトでは買えなかった)です。それも列車限定でなく、4時間有効です。ECの場合、イタリア国鉄公式サイトで検索すると、25€(列車限定チケットの前売り)~30€(直前購入)です。為替レートは時々刻々と変わりますが、ユーロとスイスフランはほぼ等価(スイスフランが若干高いことが多い)ですので、ローカル列車のREに乗るのが全般的にメリットはありましょう。
ユーレイルグローバルパスの場合は、ECでもREでも有効ですが、イタリア発着のECの場合はイタリア国内は座席指定が必要です。その場合、1人15€かかります。
イタリア国内でレイルパスを使う際に必須の座席予約方法をまとめています。シートマップを見たうえでの座席指定は不可能でした。都合悪い席の場合は、乗客どうしで入れ替えるので、まあ問題はありませんが。
イタリア国鉄の座席指定方法(レイルパス使用時、日本で安価に予約可能)
REはミラノ-ロカルノに毎時1本、ECはミラノ-チューリッヒ方面に1時間に1本か2時間に1本です。ルガノまでは双方を利用できるので、毎時1本~2本となるのです。もっともロカルノ-キアッソ間はREが毎時2本なのにイタリアに入ると毎時1本に減るのはちょっと…(ECと重なる時間帯で不経済なのはわかりますが)。

写真2. チューリッヒまで直通するEC(ミラノ中央駅で撮影)

写真3. イタリア語圏で完結するRE(ルガノ駅で撮影)
ミラノ発着のスイス方面のECは最新の低床車両(写真2)、そしてローカル列車も同様の車両(写真3)です。したがって、車両面の違いも大きくありません。そのような意味でもECに乗る価値は大きくありません。
私はスイスの食堂車を堪能してみたいという不純な動機でこの区間でECを利用したわけですが…。
ミラノからルガノまで実際にECに乗る
御託はこの程度にして、実際にECに乗りましょう!

写真4. 人が多いミラノ中央駅
ミラノ中央駅は人が多いです(写真4)。ヨーロッパ地区の駅には改札がないことも多いですが、アムステルダム中央駅と同様、ここミラノ中央駅には改札があります。

写真5. チューリッヒ行きとトリノ行きが並ぶ
チューリッヒ行きとトリノ行きが並びます(写真5)。スイス国鉄も赤系の塗装を採用しているので、イタリアの高速列車と並んでも違和感は大きくありません。

写真6. 駅舎側は2等車なので歩く
駅舎側は2等車なので、先頭方向に向かって歩きます(写真6)。食堂車は外観が異なるのでわかりやすいです。

写真7. 新しいジルノの側面
側面の様子です(写真7)。新しさを感じます。ようやく1等車まで来ました。1等車が駅舎側でないのは不親切に感じますが、終点のチューリッヒ中央駅は(地上ホームの場合)反対側が駅舎側になるので、両立は難しいのです。機関車がないだけ、「必ず1両ぶん歩く」ことがないのは最低限のマナーを守っているとも表現できます。
ECの車内
ECの車内を簡単に紹介します。ミラノ-チューリッヒを運転しているECは通称ジルノ(Giruno)のRABe501系電車です。

写真8. 1等車の車内
1等車の車内です(写真8)。こちらは電球色の車内照明です。

写真9. 1等車の車内
1等車の車内です(写真9)。こちらは車内の照明が昼光色です。この区画は静かに過ごせる車両という建前でしたが、隣の4人席に座った4人組は楽しくカードゲームをやっていましたよ!この人たちの1人が2人向かい合わせの席であり、私が4人向かい合わせの席が指定されていました。これは不合理と思いましたが、先方も戸惑っていた様子で、ジェスチャーだけで座席交換が完了しました。欧州旅行では、運行側が完璧なサービスを提供しない一方で、乗客が臨機応変に助け合いながら対応する様子を見てきました。完璧なサービスを求める日本はちょっと堅苦しいのかもしれません。

写真10. デッキは中央部にある
デッキは中央部にあります(写真10)。これはA室とB室に分けて喫煙/禁煙、自由/指定/グリーンの組み合わせを短編成で実現するためではなく、客室端部は台車があり、その区画は床を高く、デッキ部分を床を低くし、ホームとの段差を縮めるためです。まあ、欧州全土でホームかさ上げをすれば、車両に余計な費用をかけなくて済みますが、それはなかなか難しいでしょう。

写真11. 車内の様子
車内の様子です(写真11)。

写真12. 車内の様子
1等車の座席から車端部を撮影しました(写真12)。全般的にシックな配色であり、個人的に好みの配色の車内です。

写真13. ボックス席の様子
ボックス席の様子です(写真13)。欧州の鉄道において座席割と窓割が一致しない例は多いですが、スイスに限るとボックス席前提の窓割で設計し、座席割にそれに合わせています。そして向かい合わせリスクに対しては、輸送力を比較的多く確保するという、ある意味力技で対処しています。まあ、日本のように回転リクライニングシートとそれに合わせた窓割にすれば良いと思いますが…。

写真14. 食堂車の様子
食堂車の様子です(写真14)。大きなテーブルがあり、食事に適した仕様になっています。スイスではICとECは原則的に全列車食堂車付きという仕様です(ドイツ車を使うドイツ方面のICなどは除く)。南隣の国も見習ったらどう?

写真15. カウンターが閉まっている
カウンターが閉まっていました(写真15)。これでは食堂車でなく、談笑車です。スイス国内から営業だったのでしょうか?

写真16. 食堂車側から2等車を眺める
食堂車側から2等車を眺めました(写真16)。
ミラノからルガノまでの車窓
さて、ミラノからルガノまでの車窓を楽しみましょう!

写真17. ミラノ中央駅を発車!
ミラノ中央駅を発車しました(写真17)。

写真18. 線路をくぐる
線路をくぐります(写真18)。東方向とミラノ・ポルタ・ガリバルディ駅を結ぶ線路かな?

写真19. ミラノ郊外の風景
ミラノ郊外の風景です(写真19)。

写真20. 高規格道路をまたぐ
高規格道路をまたぎます(写真20)。大きな都市の近くに高規格道路があるのは先進国に共通することです。

写真21. ミラノ郊外を走行中
ここまで食堂車にいましたが、食堂車にいる意味もないので、自分の座席に戻ってきました。そのため、進行方向左側の車窓が展開します(写真21)。
それにしてもゆっくりと走っています。そのおかげで遅れています。

写真22. 緑が多くなってきた
ミラノ付近より緑が多くなってきました(写真22)。

写真23. コモ付近を走行中
コモ付近を走行中です(写真23)。このあたりはイタリア北部の「湖水地方」であり、多くの湖沼が点在します。ただし、残念ながら進行方向右側にコモ湖が見えるので、進行方向左側に座っている私からはなかなか見えません。

写真24. キアッソ付近を走行中
キアッソ付近を走行中です(写真24)。コモはイタリア側の都市、キアッソはスイス側の都市です。つまり、国境を越えたことになります。

写真25. パスポートコントロールの予告はあったが
この直前のコモ付近では「国境検問があるからIDについて聞く」と表示されていました(写真25)が、結局それらしい動きはありませんでした。キアッソ駅でもそのようなこともありませんでした。

写真26. 高規格道路をまたぐ
高規格道路をまたぎます(写真26)。

写真27. ルガノ湖が見える
車窓にルガノ湖が見えました(写真27)。湖と山、スイスらしさを感じる風景です。

写真28. ルガノ湖を楽しむ
ルガノ湖を楽しみます(写真28)。地中海性気候のイタリアから温暖湿潤気候のスイス(高標高地域を除く)ということと想像していましたが、ミラノそのものも温暖湿潤気候でしたね…。

写真29. ルガノ湖を渡る
ルガノ湖を渡ります(写真29)。

写真30. 進行方向右側にルガノ湖が見える
進行方向右側にルガノ湖が見えます(写真30)。

写真31. 湖沿いにルガノの街が広がる
湖沿いにルガノの街が広がります(写真31)。

写真32. ルガノに到着!
こうしてルガノに到着しました(写真32)。8分遅れての到着です。ロカルノ行きに短時間で接続していますが、ホームは別です(遅れを待たずに発車しましたが同一ホームから間に合ったかもしれません)。そのような意味では日本の大手民鉄レベルの乗りかえ利便性は確保されていません。諸外国に日本の大手民鉄レベルの利便性を求めるのは間違い?そうかもしれません…。
ミラノからルガノまで移動してみて

写真33. 食堂車非営業リスクに備え、ミラノ中央駅のピザ屋で腹ごしらえした
今回、ミラノからルガノまで列車で移動しました。スイス国鉄が関係しているためか毎時1本が約束され、ECも食堂車付きというカタログスペック上のサービスは良好でした。しかし、イタリア国内で速度を出さないために8分の遅れや、食堂車非営業というカタログスペック外の不具合も感じました。
他方、乗客どうしで座席を交換したり、非営業の食堂車では談笑車に変更したりと、乗客が堅苦しくなくふるまっている様子を見ることができました。このような様子を眺めると日本と異なる国にいることを実感しました。
ここまで詳細に解説しました。公式サイトから予約できると思いますが、日本語で予約できないことに不安を感じる人もいるかもしれません。下記のサイトであれば、日本語で予約できるので安心です。
Omio:ヨーロッパ鉄道旅行交通予約サイト
また、その予約にはクレジットカードが便利です。
個人的にはエポスカード海外旅行に使えるカード:エポスカードで詳細を紹介しています。